さぁ行かう、人外連れてV企業へ(某南米移住ポスター風)
新章「企業編」開始です。
神凪 ハマの炎上が収まった頃、俺と美納葉はとある場所に呼び出されていた。
とある場所と勿体ぶるのもなんだから、簡潔に言おう。
トワイライトプロダクション、ライバーズの事務所である。
「おお!ここか!」
「・・・・・何度でも言うけど絶対粗相はするなよ?」
「大丈夫!トイレは済ませてきたから!」
「違ぇよ⁉︎そっちの意味じゃないからな⁉︎」
「・・・・・迷惑を掛けないでってこと?」
「おい何故心底不思議そうな顔をする?」
小首を傾げる美納葉。とても殴りたい。いつも迷惑を被っている俺の気持ちを考えて欲しい。
今回、ライバーズの総本山に呼ばれた理由はまだ分からない。
一応、会議をする的な事はメールで送られて来たけれど、詳細は知らされてないのだ。
けれど、大体理由は分かる。
「絶対怒られる!」
そりゃそうだよな。事務所を通さずにコンタクトをとった挙句、敵対者とコラボだもん。
絶対怒られる、というか起訴されて社会的にに消される。少し考えたら分かることだ。
そんな事を考えながら俺が事務所の入口でぐずぐずしていると、美納葉が俺の腕を引き、無理矢理事務所内に引っ張ってきた。
「早よこいや!」
美納葉の人外レベルのパワーに思い切り引きずられた俺はなすすべ無く事務所に放り込まれ、床に転がる。
「痛え・・・・・!」
勿論受け身は取るのだが、痛いのには変わりはない。
腰をさすりながら立ち上がり、事務所の中を見渡す。
中は意外とこじんまりとしていた。一見すると、普通の中小企業のようだ。本社はとても大きいのだが。
まぁ、トワイライトプロダクションの本社みたいな馬鹿でかい建物だったら個人情報を守る上で不安だからかもしれない。なにぶんこちらは『顔バレ』という現象があるのだから。
入り口の隅には受付があって、背筋を伸ばした女性が立っていた。
「お待ちしておりました。延暦寺 小町様、本能寺 我炎様ですね。こちらでもう暫くお待ち下さい。関係者証を発行します」
口調も丁寧だし、動きもテキパキしていて好感が持てる対応の仕方だった。
「・・・・・ウェヒヒ」
ん?今なんか奇声が聞こえた様な・・・・・?
そう思い、目の前で関係者証をコピーしている女性を見やる。すると、
「・・・・・・・・・・一度言ってみたかったんだぁ・・・・・ウェヒヒ」
女性が小声で何か言いながら奇声を発していた。
・・・・・あーうん・・・・・・・・・・だと思った。どうしてこうも俺の周りにはヤバい人が多いのだろうか。
そうして、精神がちょっとヤバめな人に連れられて、俺達は廊下に出たのだった。
◆◇◆◇◆
「・・・・・な、なんだこれ⁉︎」
廊下に繋がる扉を開けた瞬間、俺は驚愕した。
「・・・・・は、花びら?」
そうなのだ。花びらが廊下に散らばっていたのだ。しかも規則的に一本の線になっている。
「・・・・・花瓶を落としたぐらいじゃこんなのにはならないだろ・・・・・そもそも水溜まりがないし」
「ああ、"あの方"ですね。きっと」
「"あの方"って誰⁉︎怖いんですけど⁉︎」
妖怪かよ、というツッコミは言わないでおいた。本当に妖怪がいそうだから。
「この花びら多分薔薇だよ!私この事務所を花びらでいっぱいにしたくなった!花束買ってきて!」
「うるせぇ美納葉!今別のことで頭がいっぱいなんだ!これ以上いらんことをするなよ!それと花束は買わん!」
美納葉がまた何かやらかそうとしていたから全力で止める。
そんなことをしていると、『会議室』と書かれた紙が貼り付けられている扉の前に着いた。
どうやらここで俺達は裁かれるらしい。
ドアを引き、中に入る。勿論ノックは忘れない。美納葉はドアを蹴り開けようとしていたから、全力で止めた。
「失礼します」
「控えおろう!」
「この馬鹿!・・・・・こいつの事は無視して下さい」
美納葉に猿轡を噛ませ、前を見る。
頭上から花びらが(物理的に)降り注いでいるイケメンがニコッ、と爽やかな笑みを浮かべた。
「やぁ!こんにちは!トワイライトプロダクション、ライバーズ部門所属の山田 太郎の中の人です!」
「お前かァァァァァァァ!!!!?」
思わぬ所で廊下の花びらの犯人が発覚したのだが、誰がこの状況を想像出来ただろうか。
「まぁまぁ、落ち着いて!」
「これが落ち着けるか」
「花びらが降ってくるなんて普通だって!」
「俺が知っている範囲ではそんな事が起こるのは少女漫画の世界だけだ」
「謎に幼馴染が修羅場ってるのは普通だって!」
「あんた分かっててやってる?」
そこまで話すとそのイケメンは再度破顔し、
「あははっ!流石に最後のは冗談だよ!せいぜい道を曲がる時に『いっけなーい!遅刻!遅刻!』って言ってる女子とぶつかるぐらいだよ?」
「それが現実なら俺達はフィクションに生きてる事になるんだが?」
というか何処から降ってるんだろう、この薔薇の花びら。と思って見上げると、なんの変哲もない天井。天井に加工を施した様子もない。どうやら本当にイケメンの頭の上数センチから生成されているらしい。いや、どゆこと?
「・・・・・もうやだ」
どうしてこの世には人外な人が多いのだろうか。え?気のせい?嘘だッ!俺の周りに沢山いるもん!
付き合いきれるか!俺は帰らせて貰う!と、ばかりに俺は背後の扉を開く。
用事が出来たと受付の女性に言ったら、きっと出口まで案内してもらえるだろう。
「ウェヒヒヌボボカペアベバレレコポォ!!!!!」
俺は扉をそっと閉じた。
いやいや、流石に見間違えだろう。
再度扉を開く。
「ウェヒヒヌベベアヴオッチョッンンンカボベルバビバゾガナハゴポオルベアキェェェェェェェェェッッ!!!!!」
な に あ れ ?
受付の女性が発狂していた。というか、そもそもあれは人間なのだろうか?薩摩藩の猿叫でもここまでヤバくはないぞ?
目も表情もイっちゃってるし・・・・・。口からは涎が垂れている。
・・・・・なにこの事務所怖い。帰りたい。けれど帰ろうとしたらあの化け物とエンカウントするし、だからといって残ったとしても、現実に生きていない非常識とエンカウントする。
前門の虎後門の狼である。
俺は扉を閉じて、椅子を引く。言語能力のない化け物よりは、言語能力のある化け物の方がマシだと考えた為だ。・・・・・というか、言語能力のない化け物は美納葉だけで十分。
兎に角、会議が始まったのである。踊らないといいね。
◆◇◆◇◆
「早速ですが、やってくれましたね。延暦寺さん、本能寺さん?」
「「すみません(んー?)」」
現在、俺達はマネージャーと名乗った人と少女漫画人間と対面している。
マネージャーの人は至って普通の人で、ピシッとスーツを着こなした社会人といった風体だった。
明らかにお怒りの様子。今回は俺達が独断で行った事だから平謝りをするしかない。
「はぁ・・・・・まぁ、それはもういいです。今回は別の話をする為に呼びましたから」
別の話?別の話ってなんだ?と疑問が頭に浮かぶ。
そんな事を考えていると、
「・・・・・ところで、もう一人の方はまだ到着しないのですか?」
と、マネージャーさんは言った。
「もう一人?」
俺が聞き返す。
その時だった。
「な、ななななななっ⁉︎な、何だこの発狂してる人ォ⁉︎」
怯えたような悲鳴が聞こえて来た。
「あ、いらっしゃったみたいですね」
「いらっしゃった⁉︎このタイミングで⁉︎ラノベみたいだな⁉︎」
ご都合主義的だなぁおい。
マネージャーさんは俺のツッコミをスルーし、扉を開いた。
叫び散らかしている受付の女性に怯えた少年がいた。
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