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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
影縫編

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168/173

試合開始ーッ!

 ムカツク無茶振りに憤りを覚えつつ、俺は美納葉との対戦を準備する。

 対戦と言っても、事前に視聴者の多数決で決定したコマンドの通りにアバターを動かすだけで大したことはない。

 問題は先程、突然に提示された追加条件の方である。


「何だよ声当てって……」

「技名叫べってことじゃない?」

「視聴者に設定された俺の技、『鍵開け』なんだけど」

「草」

「ネタになるかと思ってコマンド作った俺がバカみたいじゃん」


『本能寺の技がネタ枠過ぎるのが悪い』

『なにゆえネタ技作ったし』

『自分から玩具になりに行くの草』

『技の内容は想像できるけど戦闘能力が全く想像できないの笑う』

『他のメンバー「薬剤投下」とかなのに……』

『↑誰かわかりやす過ぎる』

『コマンドが「シェフの気まぐれ」しかないやつもいるぞ』

『↑やりたい放題じゃねーか』


 ……シェフの気まぐれとは?

 まぁいいや。とりあえずだ。

 基本的にゲームのアバターの持つ技は四つで、事前に俺達が考えて、そして実演した動きをトレースして作られている。

 そして、俺がアバターに作ったコマンドは『鍵開け』『護身用の木刀』『エアガン』『工業用鋼線』だった。

 完全にネタ枠である。

 他のメンツがちゃんとしたコマンドを作るなら、折角だしふざけてやろうと考えての采配だ。今冷静に感えたらライバーズの面々がちゃんとしたコマンドを作るはずはないのだけど、あの時の俺はとち狂っていた。

 因みに技の能力とかは知らない。全部職員さんにお任せなので、ほぼ初見である。


「どうしよう今から技撮り直したいんだけど」

「(変更はでき)ないです☆」

「クソが」


 美納葉が視聴者投票で決まったコマンドを確認しながら、ゲームを起動すると、一昔前の横スクロール格闘ゲームのようなBGMが鳴り始める。

 そのピコピコサウンドに似つかわしくない美麗な3Dアバターが動き出すと、『試合開始』の大文字が画面中央にデデンと表示された。変にクオリティが高くてちょっと腹立つなこれ。

 ゲームの流れは、一つの試合に六回だけ技を使い、どちらが先にKOするかというシンプルなもの。そして、六回の枠をそれぞれ四つのコマンドの中から視聴者が投票し、好きにカスタマイズをすることができる、という仕組みだ。

 まぁ兎も角だ、こうして後半部の第一試合の火蓋が切られたのであった。


        ◆◇◆◇◆


「『鍵開け』!」

「『エア斬』!」

「『鍵開け』ッ!!!」

「『真空肉弾砲』」

「……お前のだけなんか技おかしくない!?」

「本能寺のネタ枠だけには言われたくないよ!」

「みんなネタ枠みたいなもんじゃん!?」


『迫真の鍵開けで笑う』

『wwwww』

『視聴者に技の選択肢を「鍵開け」を固定されてるからひたすらピッキングする面白映像になってら』

『業者だw』

『延暦寺はちゃんとした技なのに……』

『↑ちゃんとした……?』

『↑少なくとも旭ちゃんが言ってた「私達のできる動き」にしてはファンタジーすぎるムーヴなんですがそれは……』


 ゲームのアバターが攻撃を放つと同時に技名を叫ぶ。

 恥ずかしすぎて死にたい。

 しかもネタ枠だから視聴者に笑われまくっている。


 俺が視聴者によって確定された技『鍵開け』はどうやらヒーラー技だったらしい。封じられた扉を開けることでなんかこう、変なオーラが出てきて回復するとかいう謎仕様である。


 対して美納葉が選ばれたのは『エア斬』と『真空肉弾砲』とかいう厨二がつけたようなネーミングの技だ。

 前者は手刀を高速で振るい、起きたソニックブームを斬撃とする技で、後者は勢いよく突き出した拳の風圧を遠くまで飛ばす技である。

 ……完全に格ゲー世界の住民だ。


 かぐやま先輩の言うように、この後半戦は俺たちの動きをトレースする以上、あまりにもファンタジーな攻撃はできない仕組みになっている。

 多少の味付けはするにしても、そこまでふざけた挙動はできない。

 しかし、美納葉の場合は違う。こいつは本当に人外じみた挙動ができるから、技の一つ一つがファンタジーなのだ。

 そんな風に思っている間に俺のアバターの体力が無くなって宙を舞った。


「あっ!」

「よっしゃ私の勝ちィ!」


『勝負あり!』

『まぁ当然の帰結ではあるw』

『回復技だけで攻撃技に勝てるわけもなく……』

『↑しかも回復技だから苦しみが長続きするの酷い』

『面白かったぜぇぇぇ!お前らの三文芝居ぃぃ!』

『↑真ゲスみたいなこと言ってる……』


 美納葉が隣でガッツポーズを決める。

 一回戦目は延暦寺 小町の勝利で幕を閉じた。


        ◆◇◆◇◆


 それから企画は続いていき、勝ち上がっていったのは……。

 影縫 ミナトとの対戦に勝利した神凪 ハマ。鞘形 トウとの対戦に勝利したバレンタイン=シルフィ。シード枠の一期生二人。そして延暦寺 小町となった。


『うんまぁ、知ってた』

『正直、元の動きトレースなら運動神経高めの奴が勝ち抜けるわけで……』

『↑運動神経よりは姑息戦法で勝ち抜いてる希ガス』

『↑ハマちゃんは「シェフの気まぐれ」で自由戦術、バレンタインは「薬物」だから』


 俺はコメント欄を見ながら、脳内で皆の戦いをおさらいしていく。

 まず影縫くんと夕であるが、これは夕がせこかった。「シェフの気まぐれ」という何でもありなコマンドを設定してきて、勝手に暴れ回るのである。まさに鬼畜で無法である。

 次に鞘形先輩とバレンタイン先輩だ。これは単純に鞘形先輩のアバターの個性が弱かった。技が包丁の切り方しかないのは普通に戦術として弱すぎる。対してバレンタイン先輩はもう殺意の結晶体だ。基本劇物投げるだけだけど、ちょっと触れるだけで状態異常、である。とんだ生物兵器だ。そのうちタイラン○作りそう。

 延暦寺……美納葉は置いておくとして、問題はシード枠の二人である。

 視聴者に紛れて二人の技とか見に行ったけど、何あれ?

 片方は植物の異能力者だし、片方はほぼ武闘家。スタッフの人達はうちの一期生を何だと思ってるんだろうか。まぁ概ね俺達と認識は変わらないだろうけど。


「またカオスな試合が始まりそうだなぁ」


 遠い目をしながらそう言うのは鞘形先輩。

 今現在、俺達敗北者の男子組は撮影部屋の隅で三角座りをしている。

 俺は深々と頷いて鞘形先輩に同意を示した。


「それな」

「何でうちの女性陣には狂キャラが多いの?あ、因みに『きょう』の漢字は狂ってる方ね」

「知らないし知りたくないわ〜」

「因みに山田先輩は俺達側に分類する?それとも女性(狂キャラ)陣?」

「「女性陣」」


 ここで言う「俺達側」とはさっき影縫くんが言った「狂キャラ」と比べて一般的な人間であることを指す。

 身体能力だったり、謎の精神力だったりだ。

 結果は全会一致。

 そして俺達は心から大きく頷き合い、腕を組み、同じ人間であることに喜びあうのだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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