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幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
炎上編

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画面の裏での悪だくみ

 その後俺は、再度泣き崩れた夕をリビングに送り、美納葉をロープで縛り上げた。縛ると言ってもアニメみたいにぐるぐる巻きにしている訳では無い。これは捕縄術と呼ばれるもので江戸時代に盛んに使用された由緒正しい武術だ。因みに時代劇でよく見る「お縄につけ!」のお縄は実はこれだったりする。最近では緊縛を嗜むマイノリティな人もいるが、まぁ多様性だから仕方ないよね。

 最後に猿轡を噛ませると、テーブルの横に転がす。

 真剣な話し合いをしている横で縄で縛られ、転がされる少女。非常ににカオスな構図だが本人達は実に真面目である。

 その訳は単純。そうでもしないと話し合いが一向に進まないからだ。

「さて、話を始めよう」

「な、ナチュラルに縛ったね・・・・・?」

「ツッコミする気力はあるんだ」

「ん〜!んが〜!」

「うるさいぞ美納葉」

 全く持って緊張感が無いが、深刻な話ならこっちの方が気楽だ。その証拠に夕の涙は止まり、すっかりいつもの調子を取り戻していた。

 少しの間が流れ、ポヤポヤした空気が多少緩和された頃。夕は目尻に溜まっていた水滴を拭い、真剣な顔をした。

「ちょっと大変な事が起こったの」

「「大変な事?(ん〜ん〜んんん?)」」

 そう切り出すと夕はぽつりぽつりと話し始める。

「結論から言えば、炎上した」

 成程。端的かつ単純だ。だが、そうとは限らない。発端がどうであれ、その後どのように燃えたかによって対応を変える必要がある。炎上とは非常に面倒なのだ。

 夕は続ける。

「きっかけはとあるリーク系のVtuberみたい。勿論私は何もしていないんだけどさ、その人が私が不正をしてトワイライトに入ったって言ってたんだ。それでガチ恋の人と叩きたい人が騒いだ感じかな」

「うわ・・・・・面倒なパターンじゃん・・・・・」

 愉快犯だけならまだいいのだ。けれど、ガチ恋が絡むと大変面倒臭い事になる。というのも、彼らはスーパーチャット——つまり投げ銭機能の羽振りがいいのだ。このスーパーチャットはVtuberの貴重な収入源の一つだ。それを失うとかなりの痛手になる。

「それに、」

「ん?」

「ここからが重要なんだけど」

 重要?ガチ恋勢を敵に回した事より?

「さっき言ってたリーク系の人なんだけどさ、影縫 ミナトって名前なんだけど・・・・・」

 そこまで話すと、夕は何かが込み上げてきたのか再度泣き出してしまった。

「ちょっ!?大丈夫か?きついなら今話さなくてもいいから!な?」

「・・・・・ううん。私が言わなきゃいけないから・・・・・」

 夕は深呼吸をして、口を開いた。

「その、影縫って人がトワイライトに受かってた人なの・・・・・。ほら、前に言ったでしょ?病気でデビュー出来なかったあの・・・・・」

 それを聞いて俺は顔がかぁっと熱くなった。多分、怒りだろう。

 だってそうだろう?こんなのただのやっかみだ。そりゃあ、影縫とやらには色々混じった複雑な感情があるんだろうが、こっちはそんなの与り知らぬところだ。

「多分だけどその人は私が配信してる事が我慢出来なかったんだと思う。だって、ほんとは自分がいる場所に他の人がいるんだよ?私だったら耐えられないと思う」

 夕は気丈にも笑おうとしたが、それは歪な形に終わってしまう。

「私、Vtuberの資格、無いのかな?」

 再度波が来たのか、夕は顔を覆い、嗚咽を漏らし始める。

 俺は椅子から立ち上がると部屋を出ようと、ノブを握りしめた。

 そんな時。

 さっきまで縛られていた筈の美納葉が俺の腕を掴んだ。少し静かだと思ったら抜け縄をしてたようだ。

「何するつもりだい?相棒?」

「何って?」

「とぼけんなよ?こちとらお見通しぞ?」

「ちっ」

 大当たりだ。俺は怒りに任せて何かをしようとしていた。目的も何も決めずにだ。

「ま、いいや!ちょうど私から話があったんだちょっと部屋いこーぜ!」

 美納葉はぽん、と俺の肩を叩き、部屋を出て行った。

「策があるんだ」

と一言残して。

       ◆◇◆◇◆

 そして週末。

     <配信が始まりました>

「ご機嫌いかが皆々様!延暦寺 小町です!」

「どうも、歌枠のほぼ全部を準備させられて寝不足な本能寺 我炎です」


『お疲れ様本能寺』

『お疲れー』

『働け延暦寺』

『もう一人の幼馴染が大変だけどそんなノリで大丈夫か?』


「はい。歌枠の相場が分からないのでとりあえず二百曲程許可を貰いました。勤勉な本能寺に拍手を下さい」

「わーぱちぱち」

「適当だなぁオイ!」


『二百曲!?』

『耐久でもする気かよ!?』

『やっぱ、本能寺も壊れてたかぁ』

『相場は大体三十分に五曲ぐらいやで』

『この枠何時間枠だよ!?』


「無駄骨だったね!」

「はっ倒すぞ。兎に角、一曲目だ。ぶちかませ延暦寺ィ!!」

「おう!一曲目"津○海峡・冬景色"!」

 演歌特有の音が鳴り、美納葉が歌い出す。


『いや何でだよw』

『チョイスwwwww』

『まじかよ』

『でも意外と歌は上手いぞ!?』

『予想外過ぎる』

『暴走はすると思いました』


「きもちー!じゃあ次本能寺の番だよ!」

「了解!流石にアニソンとかも欲しいだろ?二曲目!"銀○鉄道999"」

 ちょっとレトロな音色が入る。


『だからチョイスが古いんだよw』

『な ん で こ う な る の ?』

『歌は普通にうまいかなぁ』

ソハル『私の子供達すごいでしょ!』

『ソハルさんだ!』

『ソハルママもよう見とる』

『ドヤってるソハルママ可愛い』


「マッマ!マッマ!」

「あれ?幼児退行した?」

「オレ タチ ニンゲン クウ」

「あー人外かぁ・・・・・じゃあ配信業はおしまいだね!」

「ご無体な!」

「お、戻った。じゃあ三曲目。延暦寺!"脱法○ック"!ゴー!」

「ハーブの方はキメるなよ!」

 さっきのとは打って変わって、軽快なギターが踊り出した。


『ジ○リに怒られるぞw』

『脱法ハーブ』

『草』

『草』

『おお、ノリノリだ』

『常時テンション高な延暦寺向きだな!』


「四曲目!"Be The ●ne"!」

「ネットで発見されたVtuberが生き抜いた、"黎明期"から数年。彼らは企業・個人・リークの三つに別れ、混沌を極めていた・・・・・!」

「そのナレーションは色々アウトだろ!?」

 日曜日の朝お馴染みの某ライダーな奴の曲が始まる。


『特撮好きのワイ、大歓喜』

『ナレーションw』

『草』

『ナレーション完コピしとるwwwww』

『草』

『惨劇が黎明期に変わっとるw』

『↑ある意味あってる』

『↑そこは"大引退"ダロォ!?』

『wwwwwwwwww』


 その後、七曲程歌った頃に枠の終了時間になった。

「いや〜!楽しかったね!」

「やってみたら案外やりやすかった」

「じゃあ毎日やろうぜ!」

「断固拒否する」

「え〜、なんで〜」

「準備が大変なんだ。お願いだからそこの所考えてくれよ・・・・・」

「ぶーぶー」

「もうこいつチャーシューにしようかな?」

「なぜチャーシュー!?」

「だって、ぶーぶー言ってるし」

「そこはウィンナーだろうが!」

「何でそうなった!?加工法の問題なのか!?」

「一回は腸の中入りたい」

「うーん思考回路が狂人のそれ」


『もう終わりか』

『案外二人とも歌上手いのな?』

『↑それな普通に驚いた』

『毎日は可哀想すぎる』

『wwwww』

『いや毎秒やれ』

『↑鬼畜じゃねーか』

『チ ャ ー シ ュ ー』

『悲報 延暦寺、調理される』

『ウ ィ ン ナ ー』

『悲報? 延暦寺、調理される』

『草』

『wwwwwwwwww』

『やっぱり延暦寺やべー奴だわw』

『草』

『この二人と言ったらやっぱりこの掛け合いだよなぁ!』

『歌ってる時はかっこよかったのに・・・・・』

『↑諦めな』


「ハイハイ!リスナーさん!おしゃべりは終わり!告知があるから!」

「私の歌を聞けー!」

「ハイハイ、もう終わったから静かにしましょうねー。」

「ぶー」

「では告知!急遽、来週の配信はお休みする事になった!まぁ、家の用事ってやつだ!すまないが、再来週まで待っててくれ!」

「そんじゃ!またのー!」

    <配信が終わりました>

 配信が終わるや否や、俺たちはヘッドホンとマイクを外し、パソコンを落とす。

 美納葉はくー、と伸びをして、配信で凝った身体をほぐす。配信業って同じ体制でいることが多いから身体がそこそこ凝るんだよな。

「よし!作戦開始だ!」

「分かった!やってやろうぜ!」

「おっ!千隼が私の悪ノリに付き合ってくれるの久しぶりだな!」

「これは悪ノリではねーだろ・・・・・」

 今から行うのは、例のリーク系Vtuberへのちょっとした悪戯だ。意趣返しと言ってもいい。

 少し前の怒りに任せた"復讐"とは違う。あくまでもちょっとした遊び心から来た"悪戯"だ。

 因みにだが、この事を夕に話したら「なにそれ面白そう!」と目を輝かせていた。この幼馴染も結構悪戯好きなのだ。・・・・・こいつ立ち直り早くない?因みに「泣いたらスッキリした!」だそうだ。ふざけんな。俺の怒りを返せ。

「あ、そうだ美納葉!お前の作戦は面白いんだけど、流石に雑だから俺からも手を回しておくよ」

「へー!どんなの?」

「そうだなぁ・・・・・今は秘密で」

「何でだ!」

「いやお前絶対バラすじゃん」

「確かに」

「な?だから実行日の数日前に明かすのが丁度良い」

「そーゆーことなら!」

 美納葉が頷く。

 俺は正直ワクワクしていた。ちょっと昔に戻ったみたいで。

 美納葉は明るい足音を立てながら、階段を降りて行く。

 俺はスマホを取り出し、とある人に通話をかける。

「もしもし?すみません急に」

「いやいや全然!でも何かな?私に電話するなんて初めてだよね」

「そうですね。少しやりたい事があるので協力をお願いしたくて・・・・・だめでしょうか?」

「いいよいいよ!協力ぐらい!提出間際の仕事もないしね」

 彼女は売れっ子でとても凄い人だ。そんな人が力を貸してくれる。絶対に成功させないとな。

「ありがとうございます!"ソハル"先生」

 刻々と時は迫る。

最後まで読んでいただき、感謝です!

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