表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
VOMK編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/160

転換の曲

 影縫の発表が終わると、海の背景が流れていた場面が、二人の司会者が立つ劇場の背景へと移る。

 燕尾服とドレス姿の司会者———アキレス 健と粟国 あなはその画面に並ぶと拍手を鳴らす。


「すっごい発表だった!」

「ですね!何というか••••あの!••••あー駄目だ語彙力が足りない!」

「粟国さん。わかる。わかるぞその気持ち」


『確かに!影縫くんの発表よかった!』

『あいつあんな演奏できたんだ••••』

『↑失礼で草』

『元アナウンサーが語彙力足りないっていうの相当じゃない?』


「とにかく、映像も音声も本当にハイクオリティで凄く良かったですね!」

「だな!因みに補足情報だけど、この発表で使われた映像はイラストレーターのーnoーさんが描いたものを、影縫さんが編集したものらしいよ」

「へぇ〜!」

 アキレス 健が発表についての補足情報を解説すると、粟国 あなは「ぽん」と手を叩いてみせた。


 それからある程度の解説をした(のち)、司会者たちは「そういえば」と話題を転換した。


「さて、次もライバーズさんの発表が続きます。健さん、紹介お願いできますか?」

 粟国が首を傾げそう問いかけると、アキレス 健は親指を持ち上げ「勿論!」とサムズアップし、口を開く。


「次に歌うのは、先程発表をした影縫 ミナトくんと同じ2.5期生の方達です。新進気鋭の狂気で有名な人達で、どんな演奏をしてくれるのが楽しみです!」

「いや、『新進気鋭の狂気』って何なんですか」

 アキレス 健の紹介に対して、粟国のツッコミが突き刺さる。

 彼は頭をかきながら弁明をし始めた。

「いやぁ••••自分にもよく分からない••••。でも俺、この方達を調べてみたんですけど、やっぱりこの表現が適切だと思います」

「ええ••••?次の方ってこの業界でも珍しい男女コンビですよね?そこの所とかピックアップできないんですか?」

 若干困惑した様子で粟国がそう言うと、アキレス 健は「そうだった!?」と思い出したように頭を抱える。

「ほんとだ••••すっかり忘れてた!?」

「何やってんですか健さん!?••••ああもう!ポカする健さんは放っておいて••••っと、そろそろ発表者のお二人の準備ができたようなので、始めてもらいましょうか」

 アキレス 健とやりとりをしつつ、会場の用意が整ったことを確認すると、粟国は話題を切り上げた。

 そして中継に移るためにアキレス 健と目配せをし、声を揃えて口上を述べる。


「「登録ネーム『二人のライバー』の演奏の始まりです!」」


「「いってらっしゃい!」」


        ◆◇◆◇◆


 画面が暗転して、次に映ったのは俺たち。

 最近手にした3D衣装を身にまとい、他のライバーと比べると非常に簡素な白いスタジオの中で立っていた。

 そんな中で隣にいる幼馴染が叫ぶ。


「延暦寺 小町!」


 自身の名前を高らかに宣言した美納葉は「次はお前だ」と目配せをしてくる。

 俺は頷くと、美納葉に続いて叫ぶ。


「本能寺 我炎!」


 そして今度は二人同時に息を吸い、同時にに言う。


「「今から歌うのは、俺(私)達の転換の曲です!」」


 そう。今から歌うのは俺達が人として転換を迎えることのできた、その時に得た曲。

 うたてさんの手によって作られた俺達の曲である。

 俺達はカメラに向き合って、息を吸い込む。


        ◆◇◆◇◆


 ギターを中心とした爽やかなイントロが流れる。

 この曲は「二体の化け物が人と出会い、成長する」、その過程を描いた物語性のある曲である。

 明るい曲調が俺達を取り巻き、周囲を照らす。

 曲調だけなら「夏のように青い」と形容することができる程に青臭い。

 けれどどこか的外れな響きなのは、初期の俺と美納葉を表しているのだろう。

 曲の歌詞もどこか「人と違う化け物」という風な様相を見せている。


 暫くイントロが流れ、歌のパートに入り、俺達は同時に歌い出す。


「「"                 "」」


 曲の一番は俺と美納葉全く同じパートだ。それを真っ直ぐ進むことがこのパートの肝要である。

 未だ曲調は明るくも、どこか抜けていて、首を捻るようなものになっている。

 そのうちに一度目の盛り上がり所となるサビに移った。


「「"                 "!」」


 サビは勿論盛り上がるものであるが、それよりも歌詞の中に散りばめられた「化け物の成長」が確かに描かれている。

 あのバーベキューの日のことを想起されるそのワンシーンを俺達は歌った。

 いや、()()と言うよりは()()だろうか?

 成長に戸惑って、喜んで、涙する。それ以外にも様々なものが含まれた「化け物」の叫びのように思えた。


 一つ目のサビが終わり、曲の二番に入った。


「「"                 "」」


 二番からは最初に感じてような的外れな部分が払拭されていた。

 そして曲中で描かれるのは「成長した化け物の日常」へと移り変わる。

 今までと違う、つまり価値観が転換したことによる不思議な感覚、しかし爽やかなそれに身を任せるそんな様子だ。

 歌い方も最初とは姿を変え、一番では俺と美納葉の二人とも同じパートだけだったものが、二番では所々ハモるようになっていく。


 その内二番のサビに入った。


「「"                 "!」」


 二番のサビを終えるとついにラストのサビだ。

 今まで以上に力が籠る。

 それはやはり、ラスサビがこの曲全体の集大成となる部分だからなのか、詳しいことは分からない。

 けれどどうしてか力が入る。

 そういったものだと思う。


「「"                 "!!」」


 歌いながら、隣の美納葉をチラリと見る。

 美納葉も俺と同じく、いやそれ以上に必死に歌っているようで、額には前髪が張り付き、汗が伝っていた。

 美納葉にとってもこの曲は『転換の曲』なのだろう。そう思うと、俺も尚更力が入った。


 曲も、ラスサビも、あと最後のフレーズだけ。

 俺達はそれぞれぐちゃぐちゃながらも思いを込めて叫んだ。


「「"            "—————ッ!」」


 最後の一言を告げると、曲もフェードアウトしていく。

 これで俺達の発表は終了だ。


 俺が美納葉の方を向くと、美納葉も俺を見ていた。

 俺は滴る汗を手の甲で拭い、美納葉に向けて手を頭上にあげて差し出す。

 美納葉は俺の行動の意図が分かったようで、こっちに手を向けてきた。


 そして『パンッ!』と乾いた音がスタジオで響く。


 それは俺と美納葉がハイタッチをした音だった。


 俺と美納葉は双方顔を綻ばせると、その表情のままカメラに向かって頭を下げた。


「「ありがとうございました!!!!」」


 

 『嬉しい』。


 そう心底思えた。

最後まで読んでいただき、感謝です!

それにしても、やっとここまで来れました••••。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ