表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染Vtuber、暴走するってよ  作者: 日陰浴
VOMK編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/160

影は凪へ、凪は時化へ

昨日、投稿の是非についてのツイートを失念しておりました••••。

本当にすみません••••。

 影縫 ミナト。

 それはVtuberとしての••••いや、俺の名前だ。

 トワイライトプロダクション・ライバーズ。

 色々とあって、俺はここに所属した。そして少し前には考えられなかったVOMKのステージの上にいる。

 たった今立っているステージは、少し前の俺では考えられなかった場所だ。

 ライバーズの面々を見やる。

 俺をここまで連れてきてくれた、千隼くん、美納葉ちゃん、下凪さん、そして、先輩達が揃ってサムズアップしている。

 色んな温かい感情が堪えきれなくて、笑みが溢れた。


 俺はライブを始める。


        ◆◇◆◇◆


 配信画面が司会者のいる場面から切り替わる。

 そこに映っていたのは穏やかな海の底。

 難破船(なんぱせん)の残骸、その木片が沈む砂の上。

 かつて海を渡っていたであろう大型帆船は、魚達の住処になっていて、空から透けて見える光がやけに幻想的だ。


 そんな風景の中、影縫 ミナトは降ってきた。

 ゆらりゆらりと海流に身を任せ、砂の絨毯にぼやんと沈み込んだ。


 その体勢のまま、彼は歌い出す。


「"                 "」


 閑静(かんせい)な歌声が、静謐(せいひつ)な空間に響く。

 すると、曲のメロディが段々とフェードインしていった。

 日常の音に朗らかな船出、そんな風な曲調は影縫ミナトの声と重なり、調和する。

 ステージも画面が移動し、それは海の底に寝そべる影縫の視線へと変化した。

 海の底に仰向けに寝そべり、水面という天蓋を彼は見つめる。

 その先に映るは彼の過去。

 デビューそして初配信から始まり、そこから始まる生活の情景。


「"                 "」


 彼が歌う楽曲、それは彼が過去に作ったものに似ている。

 彼の好きなこと、好きなもの、その全てをふんだんに混ぜこぜたその曲は、今の彼の気持ちを加え、新しく生まれ変わったのだ。

 いや、生まれ変わったという表現は不適だろう。

 どちらかと言えば、再び浮き上がったと言った方が正しい。


「"                 "」


 曲調がふと、変化した。

 重く、激しく変化した。

 歌声も同じで、心なしか、息ができずにもがく、そんなものに聴こえる。


 それと共にステージの空気も変わる。

 穏やかであった水面が荒れ始めたのだ。

 どんな船でも砕けてしまう様な大波が暴れ回り、澱んだ色へと移ろう。

 そこから差し込んでいた光に照らされていた海の底は、電球が寿命を終えるようにぷつりと暗くなった。

 やがて荒波は海の底までも到達し、ぐるぐると対流現象の如くその場をかき回す。


 難破船が巻き上がる。

 住処を失った魚が逃げ惑う。

 そして、


 影縫も砂のカーペットから身を離し、ぐわんぐわんと全身を振り乱した。

 四肢がちぎれそうなほどの波に飲まれる。


 彼は歌う、そんな中で。


「"                 "」


 歌いながら、諦めた様に涙を流す。

 激情という波に身を任せながら、それを続けた。


 まだ、か細いながらも歌う。

 助けを求めるように。


 しばらくの間、それが続いた時だった。


 暴れる波が、ふっ。と動きを止める。


 再び光が差す。

 濃紺の海底が、初めと同じ様に透き通っていく。

 体を引き裂かんばかりの波の中にいた影縫は、緩やかな流れに沿って再び水底へ下っていく。

 足元には巻き上がった難破船。

 彼は微笑み、難破船へと手を伸ばした。


 それに手が触れた時。

 ぴかり!と水色の閃光が水中を満たす。


「"                 "」


 彼は歌う。

 喜びを全面に出して。


 歌声に呼応する様に、難破船がまるで魔法の様にひとりでに動き、その形を取り戻していく。

 水の流れが船の部品を集め、それぞれのある場所へと誘導する。

 彼は組み上がった帆船の帆柱を握ると、船を浮上させた。

 難破船はもはや難破船ではなくなった。

 浮上する最中(さなか)、魚達が彼の髪と頬を撫でる。

 魚達はそのまま水面へ登っていく。


 彼はそれらを笑みを浮かべながら見送ると、船の舵を切った。


「"                 "」


 曲は今、最後の盛り上がり所。

 涼やかでかつ澄んだ音色と共に、彼の声が遠く伸びていく。


 船はとうとう水上へと出る。

 穏やかな月が見えた。

 船がマストを広げ、水面を滑る。


 やがて、月を背に進む一つの帆船の影が映し出され、画面はフェードアウトしていく。



 これは、彼の新しい航海、その船出の一幕である。


        ◆◇◆◇◆


 影縫 ミナトの発表。

 それを遡り、一番手である神凪 ハマの発表。

 その直前。


        ◆◇◆◇◆


 下凪 夕••••いや、神凪 ハマはVtuberだ。


 得意としていることは特になく、ただ、受動的にこの場にいる、それが私だ。

 なんということはない。

 ただ、影縫 ミナトという人物の代わりだっただけである。

 そんな風に自分を落ち着けて、ステージに上がる。

 対面するカメラの奥に、ライバーズの面々(みんな)が見える。

 撮影するステージのある部屋の壁には、配信画面が映っていて、そこではアキレス 健、粟国 あなという名前のVtuberが私達の紹介をしている。

 もう少しでそれも終わり、私が合図をすれば直ぐに私の番になる。

 私はライバーズの一番手。その次に二人の先輩を挟んでから影縫くん、つまり2.5期生への流れになっている。

 ばくんばくんと跳ねる心臓を無理矢理に押し込み、カメラを見つめた。


 大丈夫。私は代わりだから。


 息を吸う。吐く。


 だから私は私らしく。好きなように。


 また息を吸う。吐く。


 緊張を、ほぐす。


 ••••••••。


 これは緊張か?


 私はカメラから目を背け、足元を見る。


 簡素な床を視界に映しつつ、私は頭を回転させる。


 私は違和感に詰まった。

 何か分からないけれど、違和感に詰まった。

 緊張の場は今まであったはずだ。

 人生規模のイベントならば入学、卒業、受験。それより小さい規模ならば、音楽会、校外学習。

 まだ十数年しか生きていなくとも、緊張の場は沢山あったはずだ。

 けれど、この心のひりつきは今まで、感じたことのあるものだったろうか。


 駄目だ。考え出したらキリがない。

 ずっと忙しかったからか、考える暇が無かった。そのために今、一人でステージに立つ今、思考を揺らしているのだろう。

 だからといって、こんなにも大切なタイミングで考え込むか?普通。

 うん。少なくとも今考える事じゃあない。


 顔を上げる。

 カメラを見やる。

 そうしていると、今し方考えていた事がくだらないことに思えてきて、薄れていった。



 いける。


 今なら歌える。


 そう思って、私は「もう大丈夫です!」と声を発し、合図を出す。


 そして、








 カメラのレンズに、私が映った。



 目と目が、合った。

最後まで読んでいただき、感謝です!

そして、再編集版も是非いらしてくださいね!

現在、激唱編の途中まで投稿しております!

再編集版URL(カクヨム)▶︎ https://kakuyomu.jp/works/16818093076416811335

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ