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人魚姫に恋した王子

『異世界で、人魚姫とか魔王の娘とか呼ばれていますが、わたしは魔族の家族が大好きなのでこれからも家族とプリンを食べて暮らします。~ルゥと幸せの島~』30話『第1部魔族編オレ様王子とマンドラゴラ(4)』でルゥがイルカを見る為にお出かけした時、王子達に人魚だと思われていたお話です。

「アンジェリカ……ごめんなさいね? これからも王子を支えてあげてね?」


 飛び散った血が王妃様の顔についている。

 キレイだ……

 怖いくらいに、キレイだ……

 感情の無い笑顔……

 怒りも喜びも何も感じられない。

 この人に逆らったらダメだ。

 本能がそう言っている。

 絶対服従……か。

 王子も、王妃様のこの狂気に怯えているんだね……

 逆らえないよ。

 本当に怖い……

 息ができないくらいだ……


 この時以来、王子は一年近く大人しくしていた。

 あの日までは……

 そう、人魚を見たと騒ぎ出したあの日……


 気晴らしに船旅に誘われたわたしは、王妃様と王子とお付きの人達とかなり遠くの海まで来ていた。

 

「母上! イルカです! ほら、あそこ!」


 王子が嬉しそうにイルカを指差している。


「そうね。かわいいわね。少し疲れたわ。アンジェリカと仲良くね? 少し休んでくるわ」


 王妃様がいなくなると、王子がため息をつく。


 王子もご機嫌取りが大変だね。

 あれ以来王妃様の機嫌が悪いのは誰が見ても明らかだ。


「アンジェリカ……わたしは今でもお前がキライだ」


「……今でもエミリアを?」


「しー! 母上に聞かれたら大変だ! 元々エミリアは遊びだったんだ。子ができたから仕方なく……キレイだったから側に置くにはいいかなって……」


 うわあ……

 最低……


「わたしは……母上が怖いんだ。前にも父上の寵愛を受けた側室を拐って命を奪ったらしい」


 聞きたくなかった……

 怖すぎる……


「アンジェリカ……わたしはこれからもずっとお前がキライだ。でも母上には逆らえないから、仕方なくお前と婚約し続けるよ。それで、そのうち婚姻……え?」


 え?

 何?

 王子の視線の先を見ると、見た事の無いくらいキレイな女の子が海から顔を出している。

 銀の髪に、青い瞳。片耳の青いイヤリングがキラキラ輝いている。


「あれは……人魚……? 人魚姫?」


 王子が呟く。


 確かに、こんな海の真ん中に人が泳いでいるなんて考えられない……

 本当に人魚?

 人魚の姫……?

 隣には魔族みたいな生き物がいる。

 あの女の子も魔族なの?

 イルカを見て瞳を輝かせている姿は息を飲むほど美しい。


「アンジェリカ……終わりだ。何があろうと母上を説得する。この婚約はリコリス王国に帰ったら破棄する」


 バカ王子……

 人魚に一目惚れしたんだ。

 王妃様が人魚狩りを始めないといいけど……

 人間と人魚は結ばれない。

 例え神が許したとしても王妃様が許すはずがない。


 王子の言葉通り、わたし達の婚約は破棄された。

 勉学に励む為に一旦そうするだけだと王子がウソをついたらしい。

 全然勉強をしていないけど大丈夫なの?

 人魚の事は王妃様には秘密にしているようだった。

 王妃様に知られたらエミリアみたいになる事はわかりきっているから。

 でも、王子の事だから人魚が危機に陥ってもお前のせいだってまた逃げるんだろうね。

 何も知らずに巻き込まれている人魚がかわいそうだ……


 それから、わたしは王子に会う事は無くなった。

 世間からは王子に婚約破棄された哀れな令嬢だと後ろ指をさされたけれど、王妃様の暴走を知る家族にはこれで良かったと喜ばれた。

 わたしの婚約破棄を知った他の公爵家は自分の娘を婚約者にされるのではないかと生きた心地がしなかったらしい。

 贅沢三昧の王族に対する、平民や家の無い者達の怒りを押さえつけるのも限界を迎えているようだった。

 国中が王と王妃の悪行を知っているという事かな……?

 それに、最近出回っている字の無い絵本……

 魔族と暮らす人間の女の子のお話だけど、噂によると過去に王妃様に命を奪われた側室が産んだ王女が主人公らしい。

 一体誰が何の為に無料で絵本を配っているのか……


 何かが動き出している。

 皆がそう思い始めた頃、王子の誕生の宴が開かれる事になった。

 そこに現れたんだ。

 銀の髪に青い瞳、青いイヤリングを片耳につけた美しい王子が……

 そう、あの絵本の女の子の兄で、今は亡き側室の産んだ王子。

 本来ならば宴の会場には入れないはずの王子は、リコリス王国の虐げられてきた人々の協力で簡単に城内に侵入できたようだった。

 

 似ているな……

 あの人魚に……

 気のせいかな?

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