庭園にて
8.
「ほへー‥‥」
青い空を見上げ、感嘆の息を吐く
あの男、“陛下”とやらが窓から入ってきたときに思ったが、この城は他の土地よりずいぶん高い場所にあるみたいだ
詳しく説明すると断崖絶壁の半分ほどに住居が覆うように張り付いたうえで、徐々に平地を建物に占められ頂上に尖閣を建てているような、言うなれば、御伽噺の中の挿絵で見るような魔王城
その空は見上げるほどに高く、驚くほど開放的で、“自由”を感じさせる
「‥‥‥」
しばらくぽけーッと空を眺めていると、生け垣の中からごそごそと音が鳴る
「おい、馬鹿見つかるぞ!」
「大丈夫だよ、兄ちゃん」
「セージョに見つかったら殺されるんだぞ!」
「?」
「あなたたち、そこで何をしているのですか?」
呆れたような、少し怒ったような声を出してラーラがすっかり見つけられている声の主を呼ぶ
「やべっ」
「見つかってたか―」
「なに呑気にしてんだよ!」
警戒心とバレたというような複雑な表情で隠れていた子供二人は出てきた
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
注意をしていた勝気そうな男の子の方がレナータを鋭くにらみ、呑気に会話をしていた方がボケッとレナータを見つめる
レナータはそれを踏まえ何もせず、三人、仲良く見つめあった
すると警戒心を少し解いたのか二人は恐る恐るレナータに近づいてくる
「お前、セージョか?」
「人間なの?」
「‥‥‥」
二人の男の子は唐突に質問をかぶせて訊いてくる
それにレナータはうーんと軽く首をひねった考え、正直に答える
接し方がよくわからないので敬語で
「私は人間ですよ」
「やっぱり!」
「聖女かと聞かれたら、違うと言いますけどね」
「‥‥どういうことだ?」
温和そうな子がレナータの答えにぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ね、勝気そうな子はいぶかし気に続きを促す
「ただ、聖女と呼ばれているかと聞かれたら、そうです」
「やっぱり!!」
「ですが、聖女と言う呼び名はあちらの世界で勝手に私が呼ばれているだけなのです」
「??」
頓珍漢な顔をする子に優しく微笑みかけ、続ける
「つまり、私は聖女ではありません
だれも信じてくれないのですけどね‥‥」
「‥‥‥本当か?」
「えぇ、本当です」
幼い顔つきながらも真剣な顔をしてこちらを見る少年にふふと微笑ましく思う気持ちが芽生える
子供はあまり好きじゃないけど、かわいい‥‥
あ、よく見たらこの子も真っ黒な髪だ。もう一人の子は柔らかそうなミルクティー色ね
こっちのほうでも色んな髪色があるのかな
「‥‥‥」
「あなたは信じてくれませんか?」