何しに来たの
3.
「で?なに」
「‥‥‥随分、偉そうだな」
無表情に言葉少なく男に向き直るレナータに男の口角がひくりと引きつる
これが普通なんだけど
「ここがどこだか分かっているのか?」
「どこ」
質問に質問で返す、思ったより進まない会話の状況に男は額をおさえる
「魔界の、王城だ」
「そう」
「‥‥‥‥」
そうと特に驚きもなく返したレナータに男は二の句が継げない
何しに来たんだろう、この人
「陛下、聖女さん。とりあえず、座ってお話しませんか?」
「あ、あぁ‥‥」
「わかった」
ふわりと優しそうに微笑んで静まり返った空気のフォローをするラーラ
いつの間にか用意された紅茶が並んだローテーブルを手で示す
このメイドさん、やるな~
よくわかんないけど
「どうぞ
こちら、ロータナル産の紅茶になります。ストレートでお召し上がりくださいませ」
「いただきます」
「‥‥‥‥」
表情少なく、いただきますと断ってから置かれた紅茶を飲むレナータ
しかめっ面の無言で紅茶を飲む男
空気は限りなく重く、にこにこと笑いながら、傍に控えているラーラが殊更、異質に見える
「ん。美味しい」
「ありがとうございます
こちらの紅茶は魔界のロータナルと言う地で栽培している茶葉を使っているんですよ。」
「へぇ。いい茶葉だね。私これ、好き」
「お気に召したようでなによりです」
にこにことではないが、柔らかい雰囲気で話す女性二人に男は渋い顔
「もういいだろう。本題に入らせてくれ」
「どうぞ?」
「‥‥‥‥」
「陛下」
「分かっている‥」
勝手にすればいいのに
そんな表情のレナータに気付いたのだろうか
また頬が引きつりそうになる男をラーラがたしなる。この男、そろそろ慣れた方が良いのではないか
「初めに訊いておくが、お前は聖女で合ってるな?」
「‥‥違うと言ったら?」
男は無理やりに真剣な顔つきに戻したような締まらない顔をしているが、空気だけなら至極真面目で、重い
「魔界の辺境の地に捨てる」
「へー」
「で、どうなんだ?」
気付けば男だけではなく、ラーラも真面目な顔をしてこちらを見守っている