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夫婦の体温  作者: yukko
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家と女子(おなご)~其の伍~

幸助が隣町に囲っている妾のことを家族に話しました。

「あの日も雨だった。」と思いながら庭を見ていたら、ヨシが産んだ明子が「おかあさん。」と甘えて花絵の膝の上に座ってきました。

明子は「ご本読んで。」と本を渡して目を輝かせています。

 

「明子ちゃん、もう膝に座る年ではありませんよ。読んであげますからね。前に座って…。」

「…前に座ったら、こうたろうに おかあさんのひざ とられる…。」

「明子ちゃん、素敵な優しいお姉さんでしょう。」

「…。」


可愛い口を尖らせたまま花絵の膝から降りて前に座った明子に花絵は優しく…。


「流石はお姉ちゃんね。」

「さぁ、読みますよ。」


褒められて明子は嬉しそうに頬を緩めていました。

雪絵が産んだ長男の幸太郎は2歳になっていました。

幸太郎は空いた花絵の膝に大急ぎで座りました。


「ぼくも…。」



花絵の膝を姉と弟が取り合うのが日常でした。

二人とも母は花絵だけだと思っています。

産んでくれたヨシはすでに鬼籍に入っており、明子の記憶にはなかったのです。

雪絵は幸助の言うとおりに幸太郎に近づくことさえしなかったのです。


「母親が二人いたら子どもは困るからな。

 どっちの話を聞いたら良いのかと…。

 花絵が育てるから、母親は花絵だけだと…。

 何もかも花絵がするから、雪絵は何も考えないこと。

 分かったな。」


幸太郎を身籠って直ぐに幸助が雪絵に言ったのです。



子ども二人に読み聞かせていると幸助が入ってきました。


「お母さんに本を読んでもらっているのか…。

 いいなぁ…。

 お父さんも入れてもらおうかな。」


幸助も一緒になって聞いています。


部屋を出る時に幸助が一言残して行きました。


「今日の夕食が終わった後に話があるから…。」と…。



幸助が隣町に妾を囲っていることは弟からの手紙で花絵は知っていました。

弟は雪絵に同じ手紙を出さなかったようです。

花絵にだけ伝えたのには弟なりの判断があったと花絵は思いました。

幸助の話は「隣町の女子のこと⁈」と花絵は思いました。



夕食の後、子どもたちは花絵の部屋で女中がみるために子どもたちを連れて行きました。


「話というのは女子のことで…。

 隣町に建てた家に今住まわせている女子で、僕が身請けした。

 今、身籠っている。

 春に産まれるから…。

 生まれてきたら花絵に育ててもらう。」


花絵は「…やはり…。」と思いました。


「雪絵ちゃん…。

 知らなかったのね…。」


花絵の目に映った雪絵の顔は色がなくなり呆然自失のようでした。

雪絵の3度目の出産も春です。

同い年の兄弟が生まれるのです。


「二人とも男子おのこだったら良いなぁ。」

「安心できますわねぇ。」

「今度は元気な子を産んでほしいと思ってます。」


幸助は両親と和やかに話しています。


『どんな方なのか…。

 どういう経緯で旦那様の所へ…。

 身請けってどこから?』


「旦那様、その方はどこにいらっしゃったのですか?

 どこから身請けされたのですか?」

「それも話そうと思ってた。

 僕が初めて会ったのは何度か行った料亭。

 芸者だったのを僕が身請けしたんだよ。

 豆千代という名で出てた。」

「…そうですか。

 …その方の本当のお名前は?」

「本当の名は、たき。」

「たきさん…。

 生まれたお子さんを私に委ねていただく前に一度お目にかかることは…。」

「おう。そうしてやってくれ。

 日は決めるから…。」


花絵は雪絵の心を思いつつも己の為すべきことを考え、行うことが一番大切なことなのだと思っていました。


「…たきさん…。」という雪絵の小さな声に気づく者は一人として居ませんでした。

 

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