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金木犀の香り~その4~
幼馴染が残した妻の身を案じて、一緒に住もうと提案したが…。
かっちゃんの奥様は床に伏していた。
無理をしたのだと思った。
女一人で赤子を育てるのは難しいのだ。
社会は不安定で、食料も不足している。
「もう一度、俺の所へ来ませんか?」
「お気持ちは大変嬉しいのですが…」
「かっちゃんのお父さんの…」
「いいえ! 違います。
…あっ、それだけではありません。
まささんのご家族のお気持ち…
奥様のお気持ちをお考えになりましたか?」
「……妻の…気持ち…ですか?」
「はい。そうです。
いくら幼馴染の妻だと言っても私は女です。
夫が一人の女を連れて帰ったら、どんな気持ちか…
分かりませんか?」
「でも、仲良くなったと言っていましたし…」
「仲良くなっても…です。」
「…そうなんですか…。」
「はい。それが女心ですよ。
……ただ、お願いがあります。
もし、私が死んだら、この子を育てる人は居なくなります。
私の身体が今よりも悪くなった時に…
どうか、この子のことをお願いします。」
「そんな日が来ないことの方がいい!
……でも、もし、万が一
そんな日が来たら、必ず俺が、俺たち夫婦が
育てますから…!」
そう話した半年後にかっちゃんの奥様から電報を貰った。
具合が悪いと…
「アツコ、ヨクナイ
スグニ コイ」




