入学編 1
異世界転移の部分がありますが、舞台は現実世界の日本です。
あたらしい世界で葛藤し、青春するキャラたちを応援してくださると嬉しいです。
「私立 幻実館高校専門学校 三科の入学をここに許可します。
入学の意思があれば、同封の用紙に入学動機を記入した上、返信してください。」
中学三年の冬、受験生として机に向かって勉強している、真琴 創の手元に届いた手紙は聞いたこともない学校からの入学許可の知らせだった。
「なにこれ。」
早速、手紙の同封されていた学校案内を手に取り、読んでみた。私立 幻実館高校専門学校は特殊な力を持つ生徒を養成する学校だ。その力とは、現実ではありえない都市伝説のようなものだ。ゴースト、妖怪、魔法、超能力、並行世界そして、異世界。創が入学許可された三科は異世界関連の力を持った者が対象のようだ。
「異世界?怪しすぎるよ。」
ピンポーン
玄関の呼び鈴が鳴ったが、創は自分に関係ないと無視していた。しかし、母親が驚いた表情で創の部屋にのりこんできた。
「創!早くリビングに来なさい!」
創は嫌々、部屋から出てリビングに入った。リビングの椅子には大学生のような若い男が座っていた。
「すみません。お待たせしました。これが息子の創です。」
その若い男は、立ち上がりにこやかに挨拶をした。
「いえ、いえ、お母様。初めまして、創。僕は、私立 幻実館高校専門学校 三科の教師、洞 髄斗。今日はいきなり失礼してすみません、お母様。」
「いえ。そんな!息子のためですもの。」
母親は若くてイケメンな洞という男にたじたじになっていた。3人は椅子に座り、洞はある資料を取り出し、机においた。
「早速ですが、僕がここに来たのは、ぜひ創に幻実館に入学して欲しいからっっす。我が校はある力を持つ学生を集めて、他の世界について研究し、日本やこの現実を守る人材を育てるための教育機関っす。その中でも、僕のいる三科は異世界に関するものっす。創、君には異世界転移の経験はあるかい?」
「いや、な、ないです。」
「じゃあ、異世界の存在は信じるかい?」
「あったら、いいなとは思いますけど。信じるとかは・・・」
その会話を母親は不思議そうな顔で見ていた。
「まあ、こんな非現実的な会話では、話が進まないんで、実際に体験してもらいましょう!」
「え!?」
創と母親は口を揃えて、反応した。
「創。僕の手を握って。お母様は創の手を。」
創と母親は戸惑いながらも、相手の手を握った。すると、洞は指をパチンと鳴らした。
そこには、草原が広がっていた。明らかに日本ではない光景だ。
「こ、ここは!」
母親はくるくる回りながら、あたりをみまわした。
「ここは僕の異世界っす。まあ、僕専用の精神と時の部屋みたいな感じっすね。生まれてすぐに血液検査をしましたよね。その検査は健康診断がメインなんすけど、特殊な力を持つ細胞の検査も兼ねてるらしんすよ。僕みたいな異世界転移の力は血液内のAW細胞が関係してるんよ。それが君にもあるんだよ、創。」
洞は髪をなびかせ、ニコッと笑い、創に手を差し出した。
「君もその力で君にしかできないことをしないかい?」
「はい!!」
創は人生で初めて即答した。勢いで返事したが、母親の反応を恐る恐るみた。それを隣で見ていた心配そうな表情だった母親は驚いたが、創の肩に手を置き、満面の笑みで言った。
「行きなさい。こんなハキハキ話すあんたは初めて見たわ。それに、あんたにしかできないことがあるんでしょう?あんたが誇らしいよ。」
涙が流れるのを堪えながら、母親は言った。その二人を夕陽が照らした。
その光景をひっそりと笑顔で見つめる洞は、創の肩に触れ、指をパチンと鳴らした。
するとそこはリビングだった。
「入学に積極的で僕は嬉しいっす。入学の意思があるのなら、届いた手紙と一緒に入ってる用紙に入学の志望動機を書いて送ってください。そのうち、入学証書と入学式の案内とかが送られてくるんで、よろしくおねがいします。じゃあ、僕はここで。お邪魔しました。」
「いえ、こちらこそ、わざわざ来てくださって。ありがとうございました。」
創ももじもじしながら、小さく礼をした。
「創。また、入学式で会おうな。お母様もありがとうございました。では。」
洞は礼をして、帰っていった。
始めたばかりなので、至らないところが多いと思いますが、これからよろしくお願いします。
毎週日曜日に投稿予定です。