DESPEDIA-7
帝都は、異貌に厳しい。
ちょうど自分の家に戻って、一息ついたところで、騒ぎ声が聞こえた。
窓からのぞくと、腕が片方無い人が、群集に襲われていた。
やれやれ。あの程度、放っておけばいいのに。
私はふらりと家を出て、騒ぎの現場に向かう。こう煩くては、落ち着くことすらできない。
私が人垣に近づくと、ざざっと割れる。私は少し、有名人だ。
私はかつ、かつ、と煉瓦を鳴らして襲われていた人へと向かう。
その様子を、群集は声を漏らさず見守っている。
「た、助けてくださって、ありがと……」
ぐさり。
「だれか、処分をお願いね」
ここは帝都。異貌には厳しい。
結局、帝都にいたのは一月たらずで、私はまた故郷に戻ってきていた。
姉さんが完治したのかどうかが、気になって気になって仕方がなかった。
戻ってすぐ、旅装も解かずに私は姉さんの元に向かった。
「あああああああ!」
姉さんの部屋がある階に着くと、荒々しい叫び声が聞こえた。
その声は姉さんの病室から聞こえる。完治したので、別の人が入ったのだろうか。
私はのろのろと部屋に向かった。しかし、そこで見たのは、私の期待を大きくいいほうに裏切った。
「姉さん」
叫びを上げていたのは姉さんだった。顔を覆う包帯は、右目がかろうじて出ているくらい。
私は、顔が笑みを作るのを止められなかった。
すごく、増えてる。死の印。左側なんて、肩まで迫る勢いじゃない。
ああ、本当に。
戻って来てよかった。
姉さんは、前に私が笑みとともに見ていた、壊れていた時期と同じ行動をしていた。
もっとも、鏡を見て、叫ぶ。が追加されていたけれども。
姉さん。
もう、綺麗じゃないね。
長くて、艶のあった髪も、ぐしゃぐしゃ。真っ白だった腕も、荒れ果てて、幾筋もの赤い自傷の後が残ってしまっている。
醜く、哀れ。
今の姉さん。
初めからこんな姉さんなら、大好きだったのに。
でも。
綺麗な姉さんがこうなったから、大好きなのかも。
私は、姉さんの叫びに隠れて、思いっきり笑った。