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DESPEDIA  作者: 黒葉
7/9

DESPEDIA-7

 帝都は、異貌に厳しい。

 ちょうど自分の家に戻って、一息ついたところで、騒ぎ声が聞こえた。

 窓からのぞくと、腕が片方無い人が、群集に襲われていた。

 やれやれ。あの程度、放っておけばいいのに。

 私はふらりと家を出て、騒ぎの現場に向かう。こう煩くては、落ち着くことすらできない。

 私が人垣に近づくと、ざざっと割れる。私は少し、有名人だ。

 私はかつ、かつ、と煉瓦を鳴らして襲われていた人へと向かう。

 その様子を、群集は声を漏らさず見守っている。

 「た、助けてくださって、ありがと……」

 ぐさり。

 「だれか、処分をお願いね」

 ここは帝都。異貌には厳しい。







 結局、帝都にいたのは一月たらずで、私はまた故郷に戻ってきていた。

 姉さんが完治したのかどうかが、気になって気になって仕方がなかった。

 戻ってすぐ、旅装も解かずに私は姉さんの元に向かった。

「あああああああ!」

 姉さんの部屋がある階に着くと、荒々しい叫び声が聞こえた。

 その声は姉さんの病室から聞こえる。完治したので、別の人が入ったのだろうか。

 私はのろのろと部屋に向かった。しかし、そこで見たのは、私の期待を大きくいいほうに裏切った。

「姉さん」

 叫びを上げていたのは姉さんだった。顔を覆う包帯は、右目がかろうじて出ているくらい。

 私は、顔が笑みを作るのを止められなかった。

 すごく、増えてる。死の印。左側なんて、肩まで迫る勢いじゃない。

 ああ、本当に。

 戻って来てよかった。

 姉さんは、前に私が笑みとともに見ていた、壊れていた時期と同じ行動をしていた。

 もっとも、鏡を見て、叫ぶ。が追加されていたけれども。

 姉さん。

 もう、綺麗じゃないね。

 長くて、艶のあった髪も、ぐしゃぐしゃ。真っ白だった腕も、荒れ果てて、幾筋もの赤い自傷の後が残ってしまっている。

 醜く、哀れ。

 今の姉さん。

 初めからこんな姉さんなら、大好きだったのに。

 でも。

 綺麗な姉さんがこうなったから、大好きなのかも。

 私は、姉さんの叫びに隠れて、思いっきり笑った。


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