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私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。  作者: もりのたぬき
【1部】第四章.旅立ちの準備
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閑話4:見限る者(後)

私は貴族街にある屋敷へ戻ると、談話室に妻と子供たちを呼び集めた。


「今朝の宰相からの命令書の件だが、我がガイドーン家は国へのポーション販売から完全に手を引くことにした!」


私がそういうと、家族たちはいっせいに明るい顔になった。


「やっとやめられたのね!!」

「これでちゃんと買ってくれる所に沢山回せるね!!」

「これで何の憂いも無く嫁入りできるわ!!」

手を打って喜ぶのは妻のマーガレットと長女のジェシカに次女のミリアだ。

きゃあきゃあと淑女らしからなぬ喜びようだ。


「やっとかー、長かったね。これで我が領地の財政がもっと安定しますよ」

「本当に、お義父さん達が丹精したポーションが適正価格で売れるなんて嬉しいですわ」

「たまたま王都に来ているときに、こんな朗報を聞けるとは!!」

そう言ったのは領地の管理を任せている長男のレオンとその妻のビオラだった。


皆、大喜びである。

元々、安く買い叩かれても王命で売らざるを得なかったものを、向こうから切ってくれたのだから大勝利だ。


ボルシェイク候からの嫌がらせは、むしろ重い枷を外してくれてありがとう!状態なのだ。


「という事で、城に勤めている私とピーター、他の調合士達は今月中に城の部屋を明け渡さなければならん」

「父上、冒険者ギルドの方にも連絡をしなければならないのでは?」

そう言ったのは、次男であるピーターだった。


「そうだな、本来なら商品を渡すのはまだ先だったか。それに、商品の受け取りをわざわざ城で行う必要が無くなった事も伝えねばならんな」


「では、調合士達に明日からポーション作成のペースを早めるよう伝えてきます。父上はギルドへの連絡をお願いしますね」


なぜ冒険者ギルドへのポーションの受け渡しを王城で行っていたのかと言えば、作ったポーションの総量と、国へ卸す量と他へ卸す量を官僚の前で現品を見せながら報告しなければならないからだった。


これも、今の国王になってから追加された条件の一つだった。


しかもガイドーン家と直接取引をしている冒険者ギルドは、この王都にあるギルドでは無くザラックにあるギルドだ。


そのため、毎回ザラックから冒険者ギルドの人間が数日をかけて受け取りにくる。

多分これはガイドーン家と冒険者ギルドに対する嫌がらせと、国の権威を見せつける為にやらせているだけだろう。


非常に幼稚な嫌がらせだ。


今月が終わるまであと2週間もある。

今から知らせを飛ばしても十分間に合うだろう。


こうして、ガイドーン家の面々は領地へ帰る準備を始めた。


準備を始めて1週間後、妻と息子夫婦、娘たちは執事たちと共に先に領地へ帰した。

今この館に居るのは、数人の侍従たちと城勤めの私とピーターだけである。


この屋敷は完全に無人にする。


ザラックの冒険者ギルドとは無事に連絡が取れ、今日息子が城を辞する際にポーションを受け渡す事で決まっていた。


「ではピーター荷物の受け渡しは頼んだよ。私は簡単な手続きを済ませるだけだから、先に屋敷へ戻って馬車の準備をしておくよ」


「わかりました父上」

「では城に向かおうか」


こうして親子での最後の登城をしたのだ。

しかしこの時の私は、息子が予想外の人物を連れてくる事など知る由も無かったのである。


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