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はるにれ亭に戻ると、カウンターにいたリカルドさんに声をかけ部屋へ戻った。
とりあえず、購入してきた物を全て整理しなければ。
購入した物を、身に着ける物に関してはクリーンの魔法をかけてからアイテムボックスへ放り込んでいく。
「買ってきた荷物に関してはこれでオッケーだね」
『そうですね。あとは食料を買っておいた方がよいのではないでしょうか?』
「うん。王都に長居する気は無いからね…お昼食べがてら旅の道具も買いに行こう。あとさ、冒険者ギルドに行って、冒険者登録をしようと思うんだけど、どう思う?」
お金を稼ぐ手段として、やはり冒険者になるのが一番手っ取り早いと思っている。
絶対安全空間を持っているから、定住先を探す必要も無いし、色々な街を歩くなら冒険者か商人が一番違和感が無いだろう。
『そうですね…お金を稼ぐ為にも冒険者登録自体は賛成ですが、この街で登録する事はオススメしません』
「それは何故?」
『冒険者の登録証を手に入れれば国を問わず色々な街に入ることができますが、最初に登録した街が本拠地として設定されてしまいます』
「それが悪いと?」
『はい。グラム国内にある冒険者ギルドの本部はこの王都にあるんです。その為グラム国側から最近登録した冒険者の情報を見せろと言われてしまうと、この街のギルドは拒否できません』
「冒険者ギルドの方が立場は上なんじゃないの?」
『もちろん上です。が、国内に支部を置く条件の一つに、情報開示請求に対する拒否権の放棄があったりします』
「うへ…」
『ただ、この条件には抜け道がありまして、これに従わなければいけないのはその国において本部機能を有した支部だけなんです。同じ国内でもそれ以外の支部は情報開示請求を受けても拒否できちゃうんです』
「なるほど。ていうかザルじゃないかい?その条件」
『貨幣で首根っこ押さえつけられてる国が、そこまで強気な条件を冒険者ギルドに突きつけられませんよ』
「そ、そうか…やっぱり冒険者ギルド怖いな」
『ですので、この街以外の冒険者ギルドでの登録をお勧めします』
「わかった。王都での登録は諦める。お勧めの街はある?」
『ザラックという国境の街ですね。隣国も安定している良い国ですし』
「国境…隣国で登録する事はできないの?」
『国境を超えるには身分証明書が必要になります。一番手早く簡単に作れる身分証明書が、冒険者のランク徽章になります』
「それ以外の身分証明書の場合はどうやって取得するの?」
『国境の街の領主に申請します。金額は5000ミルス程度ですが、出身や、家族構成などを書かなければいけませんのでマスターは無理です。それこそ書類申請は看破のスキルでチェックされます。申請から発行まで1週間かかりますし』
「なるほど…この国を出るためには冒険者登録しか無いって事か…」
『脛に傷を持っていると大変ですね』
「悪人扱いしないで欲しいかなぁー?」
とりあえず、行先は決まった。
「ここからザラックまではどのくらいかかるの?」
『駅馬車で7日くらいですね』
「駅馬車って、いわゆる乗合馬車みたいな感じ?」
『はい。乗合馬車の長距離版みたいなものです。料金は少し高いですが、朝夕の食事付きで護衛もついています』
「ほほぅ…いいじゃんいいじゃん!!」
『ただ、休憩時間以外は夜間も走り続けるので、振動が辛くて途中で降りるお客さんも居たりします』
「え、もしかして座ったまま寝るの?」
『いえ、座席をしまって雑魚寝する感じですね』
「なるほど…」
『ちなみに徒歩ですと、マスターの体力から考えて一か月はかかります』
「それはもう、駅馬車使うしかないでしょ!!」
駅馬車の事をナビに詳しく聞くと、乗合馬車や駅馬車も前に召喚された人が考えた物らしい。
乗合馬車は街中を決められたルートで走るものと、近隣の街とを行き来するものがある、路線バスのような感じ。
駅馬車という物は長距離の街と街を結ぶ定期馬車で、所々にある【駅】で馬を替え、馬の休憩や給水時間を無くした画期的なシステムで運用されているんだって。
王都からザラックまでの道のりは、平原のど真ん中をひたすら走るだけなのでそこまで危険ではないけれど、野盗や魔獣が出ないわけでは無いので護衛がつくんだって。
この護衛も、馬車の運営会社が冒険者ギルドに依頼を出して雇っているので、護衛する冒険者のランクと人数で馬車の料金が変動するそうだ。
冒険者のランクの事も気にはなったが、とりあえずは王都を出る準備が先だね。
こうして私は、やっとこさ王都から出立する準備を始めたのだった。




