第八話 俺はここまで来た8
翌朝には、部の設立許可が下りた旨が、春風亭さんに伝えられる。
昨日の職員会議にて、勉強部の設立申請とそこにラクさんの名が書き連ねられていることに、拍手が掲げられたそうな。誰が見て来たか知らんが、俺も誰からともなく小耳に挿んだ。
そして、今日の放課後には、割り振られた新たな部室に集う三人だった。しかしこんな時期によく空いてる部室あったよな。
「ここやる気のない部が多い分、三年生の卒業と同時に大量のクラブが廃部になるらしいよ。それで新年度になると、また大量のやる気のない部が出来るんだって」
新陳代謝が速い訳だ。春風亭さんが憂い分三割増しになった顔で教えてくれた。
気持ち分かるぜ。俺もこの勉強部、自分たちの卒業後に残していくつもり、無いもんな。
「さすがにこの時期からだと、今年度分の部費は無理みたい」
確かに、さすがにそれは期待してなかったよ。つうか来年からは部費下りることになるかもって。
これはもう、俺だけでも建て前通り勉強に打ち込まねば、申し訳ない。さっそく勉強に取り掛かるとしよう。二人はどうする?
「アタシ、今からアハト・アハト組み立てる」
「私もこれからプロット練るね」
ラクさんもっとマニアックかと思ってたけど、意外とメジャー兵器好きなんだ。春風亭さん、プロットって?
その時、俺は部室のドアの向こうに、誰かが立ちつくしている気配を感じる。俺の気配を察知する能力は、天性の物だ。
と思っていたが、春風亭さんもラクさんもドアの向こうを注視している。これって結構、普通の能力だったか。
で、一体誰が何のために立ちつくしているのかと、思いを巡らす間もなく、覚悟を決意したかのような勢いでドアが開く。
そこに現れたのは、えーっと、誰だろう?
「あの、その、あっと、その、す、すいません。ごめんなさい」
いきなり謝られた。
直感的に思いついたのが、ラクさんによってイジメられているイジメられっ子が、ラクさんによって呼びつけられたのでは、という推測。
春風亭さんも同じ推測にたどり着いたらしい。二人でラクさんを凝視する。
「ちげーよ!」
その言い訳は語るに堕ちたぞ。見ろっ、あんなに怯えているじゃないか。
「私、勉強部に入部したいんです」
「ほら、ただの入部希望者だろ」
まだ怪しいぞ。部員にしてこき使おうってんじゃないのか。
「あぁ、うぅ、矢岳さん、お願いします」
えっ、俺?
「さあ、どういうことだ、矢岳。テメエ」
う~ん。俺のクラスの女子ではないと思うが、どうだったかな。あなたは一体誰なんですか。
「私の名前は、一文字 菊花です」
夜九時にもう一話投稿します。よろしくお願いします。