表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺に出来るのはコレくらいだ  作者: 雨白 滝春
2/69

第二話 俺はここまで来た2

 高校受験は少し無理をして、平均より少し高めの所を受けた。


 教師も不安そうだったが、今までの俺の努力を目の当たりにしていては、難しいから無難な高校に下げろとは、とても言い出せなかったのだろう。


 授業というモノも、あんまり真剣に、全力で受けられると、返って進行させづらくなるモノの様で、元々薄っぺらかった俺の友人関係と同じように、教師たちも俺から遠のく様になって行ったが、悪感情が芽生えたという事ではなかったらしく、心の内では応援してくれていたようだ。


 俺はどうも、人の心が分からない男ではあるようだが、クラスの連中の態度が冷え込んだ分、教師からの受けが悪化していない事は、感じ取れていた。


 迎えた高校受験当日。朝から何もかも絶好調で、人生最高のコンディションで、試験を迎える事となった。


 今にして思えば、テンション上がり過ぎて、ハイになってるコトを自覚できなくなっていただけだろう。


 そのせいでなのか何でなのか知らんが、試験中から合格発表までの記憶は、今ではほとんど残っていない。


 合格したと知った時にも、完全燃焼から少しも回復出来ておらず、呆けた顔で、薄らボンヤリしていたと、これは曖昧な記憶が残っている。


 そのまま無気力人となって卒業式を終え、流されるままに高校入学の準備を果たし、燃え尽きた灰の中から、チロチロと埋み火が燃えぶり返したのが、入学式の頃だったか。


 高校最初の授業を受けた時には、俺は完全に復活していた。


 俺の通うことになった高校は、確かに平均値よりは少し高めの学校なんだが、つまり本当に少し高いだけでしかなく、本格的な進学校って程ではない。


 自由な校風という以外、謳い文句の無い特徴に乏しい学校だが、それでも、個性も特色も無くても、それでもここは俺が努力して入った、誇るべき高校だ。


 まあ、そんな風に思っているのは、三学年通じても俺だけだろうな。入学初日に見た同級生の顔つきは、いずれも屈託なく気楽そうだ。


「小僧、お前さんには、学校なんざ行かんでも、自然の中で生きて行ける、個性的な人生を歩ませてやろうと考えていたんだがな」


 と、これは、苦み走った顔なのに、まるで屈託の見当たらない表情をした、父方の祖父の弁だ。


「俺は将来、野生の猿になりたいつもりは無いんだけど」


 ずいぶん勝手な言われようだったんで、これくらい言い返しても悪かないだろ。


「学生なんざ、檻で飼われてる猿みてえなモンだろ」


 何だと! さすがにカッチーンときたが、思い返して我慢する。


 この祖父は己の青春時代を戦争に費やし、学校教育が受けられず、戦後も三十年くらい苦労を重ね、やっと落ち着いて祖母と家庭を持った時には、四十代半ばを過ぎていたという、経歴の持ち主だ。


 高校に通って勉強できる、恵まれた環境の俺が、言い返せる言葉は無い。


「お祖父さん、この子をいじめてはいけませんよ」


 父方の祖母だ。この人は連れ合いの父方の祖父も、アカの他人の母方の祖父も、同じくお祖父さんと呼ぶ。


「勉強したっていいじゃない。人間だもの」


 相〇君のファンだったりもする。

 って祖母さん、俺の勉強、応援してくれるのかよ。


「たまには私とも、遊んでくださいよ」


 ああ、うん、すげえ嬉しいっスよ、祖母さん。


「ちっ、色気づきやがって」


 いや、それはねえよ、祖父さん。しかし勉強する俺に味方してくれる人が、初めて出来た事は大いに励みになった。


 そう。高校入学はゴールじゃない。まだこの先に、大学受験がある。俺はここでの三年間も、勉強一本に懸けるつもりだ。

時代が現代とは若干ズレてます。主人公の苦悩はもうしばらく続きます。

今日、もう一話投稿します。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ