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◆◆◆ギルバート・15歳・凍期間近





「あぁ~あ、大丈夫かね、あいつは・・・・」



思わずつぶやいた俺の独り言は、教室内の喧騒にかき消される。

2年に上がってすぐの自習という名の放置処置に、早くも教室内・・いや、低学年棟内全体がお気楽お祭りムードになる。


所詮は初等部、まだまだお遊び半分の実技ぐらいしか経験していないバカばっかりだから、遭難した先輩を明日のわが身と捉えるような殊勝な奴はいない。

これがダンジョンも経験した上の学年ともなれば、また受け止め方も違うのだろう。


経験値って大事だよな~。


そんなお祭り騒ぎに嫌気がさした真面目グループが、静かな場所を求めて移動する。

その紺ブレザー集団に追随して金の少女が一人。

ちっちぇえ背を覆い腰まで伸びるのは光を集めて作ったような天然の巻き毛。

そのボリュームと長さと輝きで、体内で製造出来る魔力量がずば抜けているってことを証明している光属性特化型。

俺なんざ、どんなに頑張っても襟足ちょいぐらいまでしか伸びねーもんな。

ヒューマン種ならそれで普通。

メーメーみたいに、ほっときゃどこまでも伸びるなんてのは本来あり得ない。

あの人でさえ最大が腰下だったはず。

魔力のない者は薄い茶色か薄い灰色の髪や瞳になるから、田舎じゃあの髪は目立ちまくっていた。

この学院だと青や緑や赤に混じって金もいるから、黒程は目立たない。

ただ、あの品質!

たいして手入れもしてないっていうのになんであんなにキラキラなんだ?

光の精霊でも髪の中で飼っているのか?

それをわっさわっさと揺らしながら、どこで何をするつもりなんだか、いそいそと出ていくその姿に見惚れる野郎もちらほらいて、まったく、人気のないとこには行ってくれるなよ、と、思う。


そこのケット・シー、舌なめずりして、あいつを見てんじゃね~よ!

テメェが手を出していい女じゃねーんだよ、それは!

繁殖期でもねーのに盛るな!。



メーメーもさ、バカじゃねーの?

自分の容姿と属性をもっと自覚して、警戒しろよ。してくれよ。

お前みたいな小さいのが、一人でフラフラしてたら、空き教室に連れ込まれて一発で孕まされるぞ?

脆弱なヒューマン種のメスは、他種族からは孕み腹って呼ばれているの、知っているだろうに、あのバカは。

・・・・まさか・・・・バカだから知らないとか?

今度問い質さねばと思いつつガン見で警戒していたら、猫妖精は別のメスに目移りしていた。他にも後をつけるように教室を出るようなバカは今のところなし。よしよし。


メーメーの行先は、たぶん寮で同室のあの子のところだろう・・・。


冷静沈着・黒い策士な彼女のことだ、ちゃんとバカが一人にならないよう一緒に居て、俺が教えた裏技の実用方法をバカに代わって考えてくれることだろう。


それでも、あいつが一人でフラフラと移動すれば、なんとなく不安になる。


昔から、あいつが勝手に動きまわると碌なことにはならなかった。

この不安感は刷り込みみたいな予定調和。

実際。メーメーのバカは目立つ外見をしているにも関わらず、本人がまるで無自覚で無頓着、だからこその危機感は極薄と、危ない要素しかない。

なまじド田舎の森で鍛えているだけに、妙な自信もありやがるし、もっと、こう、警戒心を育てなかった家族に問題があると思う。

その家族に依頼されて俺はメーメーの害虫駆除係り。


でもさ、一言言っていいか?


なんで、魔法学院なんよ?

学ぶ学舎間違ってねぇか?

メーメーは、誰がどう見たって教団本部に保護してもらう奴だろう?

あれも含めてあの家族は頭がおかしいって思う。


壊滅級の音痴で、子犬みたいなでっかい目が残念極まりない無属性の薄紫でもさ。

光属性特化型の、大量魔力生産者。

教団がほっておくわけがない、逸材だと思うんだけどなぁ・・・。


エルバインは、女王が治める王国だから女は他国に比べれば尊重されている。

が、そもそも、その役割は結婚して子を増やすことに尽きるといってもいい。

そしてヒューマン種の女は、脆弱な分を補うように子を孕みやすい特性を持つ。

大型の獣人同士や魔力量の多いエルフ同士では強すぎる力が反発しあうのか、なかなか子孫を残せないのに対して、魔力を持って生まれたヒューマン種の女はその持って生まれた属性者ならば獣人やエルフ、はてはドワーフや有羽人・鬼人、リザード系の子さえ産める奇異なる存在だ。

同じく戦闘能力が低い小型獣人のうさぎ族やネズミ族と同等に孕ませやすい種で、7割方強い方の子が出来る。

あと、年中繁殖期だしな。

他種族のオスにしてみればお得感いっぱいなわけよ。

弱すぎてすぐ死ぬのが懸念材料ぐらいか?

そしてその孕むって能力の最たるものが光属性のヒューマン種の女。

女神アシュレーが豊穣と繁栄の神だからか、より多くの種族の子供を成すことが可能と言われている。

魔獣はそもそも繁殖方法が特殊だから孕まされた史実はないが、光属性以外の亜種もちろんのこと、神族クラスもがんばれば孕ませることが可能かのしれないな?ってレベル。

そんな希少種の光属性ヒューマン種のなかでもさらにレアなのが姫巫女と呼ばれている存在。



―――――その存在は清浄。

―――――その歌声は尊き調べ。

―――――邪を鎮め豊穣と繁栄の祝福をもたらす者。

―――――金の姿に蒼き目を持つ歌姫。

―――――光の女神アシュレーの化身ともいうべき。光の姫巫女。



ヒューマン種の光属性の女の子にのみ現れるという姫巫女。

数十年周期で具現して、その聖なる歌声でもって大地を浄化し潤し平穏を与える。



教団が血眼で探している至高の存在。



だから、光属性の少女は乳幼児から地方の教会で審査され、素質のある子供は10歳前後で親元から離され、王都の教団本部で巫女見習いとして5年間みっちりと教育を受ける権利がある。義務じゃない権利。

なんせ、女神アシュレーが降嫁して出来た王家だから、王族といえども女神の眷属だ。

政教一致のこの国では、たとえ出自がわからない平民出身であったとしても、光の姫巫女候補の少女の前には王も跪く。

正式な姫巫女ともなれば、叶わぬ願いはないとまで言われる至高の存在。


そんな生粋の姫巫女は、建国500年間で数人しか出現していないから、だいたいの少女は巫女見習いで終わる。

どう頑張っても姫巫女候補が最高で、それでさえもがレア中のレアケース。


この国では光属性の女の子は大事な大事な存在なんだ。


光属性の女の子が生まれたら一族郎党こぞって祝うぐらい貴重な出来事で、巫女見習いに選ばれ本部に呼ばれただけでも名誉なことになる。

見習いの途中で能力に限界がきて辞めさせられても嫁入り先には困らない。

貴族出自なら上位層が娶り、平民ならば名家が養女にと熱望する。

それというのも、その性質が母親から娘へと母系で受け継がれる場合が多いから。


そりゃ、次代の姫巫女が生まれる可能性を多く含むなら、途中リタイア組のポンコツでも嫁に欲するだろ~よ。


うちもさ、しがない貧乏辺境伯だったのに、一番上の姉貴が突発性の光属性で生まれて見事に本部行きとなった。

たった2年ぽっち修行しただけでお祓い箱の、くそザコ魔力だったくせに今じゃ王都在住の子爵婦人様だ。

おかげで母親が野心を持ってしまってさ。

二番目の姉貴は光属性じゃない風属性の魔力持ちだってのに、子爵の力で社交界デビューさせてもらって、なまじ姉妹に本部見習いの巫女もどきがいるもんだからってことで、いい縁談がわんさか来てやがる。

・・・・・だからってなぁ~、暖期のくそ忙しい繁忙期が王都の社交シーズンだからってさぁ、人手が惜しい親の命令で、昔から俺は姉貴の従者にさせられてきた。


こないだの長期休暇も全部姉貴共によって潰されてしまった。


子供の頃なんてさ、貧乏辺境伯がさ、体裁だけは良く見せようとして、男の俺が侍女の恰好で、姉貴にコルセットを着せてんだぜ?

さすがに湯あみは手伝わなかったけど、お付きの侍女役なんざ黒歴史以外なにものでもない。

成長して背丈が伸びてからは従者扱いになった。

従者だぜ?実の弟なのに・・・・。

でさ、さらに恐怖なのが、生まれたばっかの妹がいるんだが、どうやら微力ながら魔力がありそうでさ、茶色だった髪がなんとな~くだけど、色が薄くなってきてやがんのよ。

金髪になれって念じている母親の野心が衰えないかぎり今のところ俺には休暇はない。

教団本部もそこんとこは熟知しているから10歳ごろから行われる修行では、歌謡や舞と共に、勉学ではなく貴婦人としての素養をみっちり学ばせる。


経済や政治なんか知らなくてもいい代わりに社交界デビューできるようにってダンスまで学ばせ、貴族子女の婚期が15歳からなのに合わせるかのように本部見習いが終わるシステムになっている。

能力限界でお払い箱にしても、いい嫁ぎ先は保証しますよって、くそみたいなアピールしやがって、どこが聖職者だってんだ。少女斡旋じゃね?


・・・・でもな、この国では嫁入り先は重要なんだよ。

貴族階級にとってそれは死活問題だし、いいとこに嫁に行ければ確実に寿命は延びる。

ド辺境で、豪雪に押しつぶされ、魔獣に怯え、飢えに苦しむことはない。

そんな世の中なんだ。

自分の子が光属性で生まれたら、どこの親でも光の姫巫女に!って教団に寄進する。

あ、言い方がまずかったか、教団本部でより長く修養できますように、この世界の平和と我が家の繁栄を願って託す。

他人の子でさえも盗んで、「わが子です」って教団に差し出す奴がいるぐらいだ。


なんで、メーメーはバリバリの光属性なのに魔法学院なんだ?


ここなんて、婚期丸被りの14歳から20歳在学期間だし、野郎は多いし、メーメーのやつなんて攻撃魔法がてんで無理の祝祭系入学枠なんだぜ?

魔法使い?

無理じゃね?

万が一、万が一の確率で、無事に卒業出来たとしても行き遅れは必須。

就職先もないヒューマン種の女の魔法使いだぜ?

光属性だぜ?特化だぜ?

冒険者になったとたん獣人やリザード族に攫われて囲われて孕まされるって~の!!


そんなこともわかんないなんて・・・・・・



「アホウだろ・・・・・」

「ん?なんか言ったか?」

「いんやぁ~、独り言。ちょっと出てくるわぁ~」



思わず漏れたつぶやきに前の席の奴が振り返る。

それにはゆるく首を振り、教室を出る。


バカメーメーの自主性を尊重したらしいけど、家族ならビシっと諦めさせるのが愛情だと思うんだが、どうにもあの家族はメーメーに弱い。

と、いうか普通の神経じゃない。


あのちまっこいのは、色気はまるっきり無いのに華奢な体と幼い顔立ちで庇護欲を掻きたてる雰囲気を持っている。

ハイスペック家族の容姿を見慣れているからか、本人にその自覚は薄いが、メーメー自身もかなり上玉の容姿だ。

ただ、なんというかロリ・・・・。

もっとこうメリハリのある肢体が俺は好みだけど、世の中、ロリ需要も高い。

低身長からの潤む目で見上げるプレイで、堕ちるオスも居るには居る。

男なら誰しもが持つ心の奥底に眠る嗜虐性くすぐられて手を出そうものなら、光属性特化型の恐ろしい洗礼にあう。

あいつが無自覚無節制無制限に垂れ流す駄々洩れの浄化作用で、ほとんどの邪な澱は霧散・駆逐される。

大概の男子ならばあいつに欲望を抱いた自分を地に叩きつけたくなるくらい恥たくなる。


その範囲わずか30センチ!


抱き着こうとしたとたんに、霧散させられる邪な願望と、襲い来る羞恥心。

普通の男子学生ならそれで撃沈だ。もう二度と手出ししようとは思わない。

ヤバいのが上級生。

力が強ければ強いだけ、身分が高ければ高いだけ、抱えるストレスはハンパない。

それが霧散するんだからな。

郷里で、名だたる冒険者がアイツの全幅の癒しにハマって溺れるのを見て来た。

種族も年齢も経験も身分さえも隔てることなく、あまねく平等に癒されて許されてみろ、抜け出せなくなる。

抱え込んで独占したくなるってもんよ。

そういう輩・・・いるんだよ。実際。

昔も今も。


あと繁殖期の獣人どもも注意な。

なんせ奴らに理性はないからな。

まあメーメーからフェロモン出てないから、ノーマークで済んでるけどさ。


忘れちゃならない特殊性癖者も厄介だ。

なんというか、こうマニアにはたまらんものを持ってやがる女なんだよ。

嗜虐性とか、監禁癖とか、パーツ愛好者とか、やべぇヤツな。

あのクソ田舎在住の時でさえ、人さらいに何度も遭遇してた奴を、なんで学院に送り出すかね?

正気か?あのクソ家族。


俺個人の意見としてはさ。

どんなに音痴でも、教団に庇護してもらった方が、あいつのタメになると思うんだけどな?ちょっと本部で見習い修業するだけでいいことに嫁に行けるし、なによりその身を守ってもらえる。

ぜひ本部で歌の修業を行うようにという教団からの要請だって何度もあったのに、あの親は鼻で笑って取り合わなかった。

まあ、色々あったからな。

メーメーのヤツも生粋の教団嫌いだし。


でもさ、その身体は、本当に守ってもらえるんだ。

歴代姫巫女も候補もみんな処女。

女になったらその身の神聖が失われるそうで、巫女見習いの称号さえ剥奪される。

巫女じゃなくなるらしい。

女神を崇める神官なら処女かどうかなんて、すぐわかるらしいから、ヤッたら即アウト。

和姦でも男は処罰され、強姦だった場合は一族全員男子は処罰対象の重罪人となる。

それぐらい異性との接触に教団は目を光らせている。

教団本部でも身近に寄れるのは修業して得を積んだ高齢巫女か去勢した神官だけという徹底ぶり。


嫁入り前に経験済なんて乱れたことにはならない。

実に安心サポート体制。

学院じゃ、そうはいかない。

俺にだけメーメーの害虫駆除と密偵みたいな仕事を押し付けといて、あの家族。

なにが本人の自主性に任せるだよ、まったく。

テメェで、ちゃんと見張っとけよ!・・・って言いたいとこだが、学生か職員でなきゃ滞在できないここに潜入するのは、王宮よりも困難だしな。

悩みどころだろうな。


だからってさ~~~~~~。

心配じゃないのかね?あの家族は。



「ねぇ、ギル坊、頼むよ。君にしかこの役は任せられないんだ」



俺が尊敬してやまないあの人は、膨大なデータからどう言えば俺が頷くか知っているクソ野郎。偏執的なまでのシスコンで、その残念な本性をメーメーには見せない周到ぶり。

はっきり言えば策士だ、黒策士だ。


だからって俺に丸投げすんなよ~~~!!!!

はやく回収でも撤去でも、教団丸投げでもいいからしてくれよ!


心の中で悪態をつきながらも、もくもくと歩いて、気付いたら回廊まで来ていた。



回廊の中庭で、くつろぐ生徒たち。

雪雲が空を埋め尽くす凍期がくるまでに、すこしでも日の光に当たろうとしているんだろうが、あきらかに男子の方が多い。


入学当初から男子の方が圧倒的に多い学院で、婚期丸かぶりや実技試験の厳しさもあり、学年が上がるごとに女子の数は減る。

中等部で激減、高等部に進むのは獣人メス等の亜種族ほとんど。


もともと、この国は女子に勉学を薦めていない。

女性の一番大事な仕事は子孫繁栄だからだ。

平民出身の女子なら初等部2年間だけ在籍して薬師資格がとれたらいいという親が圧倒的に多い。中等部にすすんだとしても、危険なダンジョンに潜入するクエスト前に自主退学をさせるし、そもそも貴族ならば上位層貴族子息に顔合わせ的意味で、平民ならば侍女斡旋の場として活用だから、目的が達成された途端中退となる。

はっきりいえば、ヒューマン種メスにとって学院は出会いの場だ。

魔法使いや魔法騎士になるのは、圧倒的に男だし、オスだ。


最強の女魔法使いは吟遊詩人が唄にして広めても、実際はより多くの子供を作れる女が重要視される。そういうもんなんだ、世の中なんて。


光属性の娘を生む確率が高くて、さらには本人まで珍獣のレアロリをほっておくか?

庇護欲掻き立てる幼児体型童顔って繁殖欲望からは外れるけど、一部マニアには受けるんだぜ?どこから嗅ぎつけてきやがんだか、秘術祭には覗きが横行するし、盛華祭で隠れファンを増やしたよ。メーメーの奴は。

バカだからな。手加減しね~もんな。壊滅音痴でもいいってヤツ増やしてど~すんだよ。

ただでさえ女子が少ない、野郎ばっかの学院だぜ、あいつんとこの家族の名前を出しての威嚇、忠告、警告しつつの害虫駆除にも限度があるって~のよ!



なによりさ、この頃は俺のコネつくりに影響するんだよ。

高等部上位貴族のお兄さん方に恨まれたくねーんだよっ。


俺は将来クソ辺境伯を継ぐ生真面目兄貴を手伝う気なんてさらさらない。

妹の従者もこりごりだ。

出来るなら、野心家の母親から今すぐにでも独立したい。

だから卒業後は錬金ギルド商会に就職出来るように、無理なら王宮事務官とか、とにかく日々コネ作りにいそしんでいる。

お貴族さまの寮でも上級生の便利屋みたいなことをして、愛嬌やお愛想を振りまき日々コネクション作りだ。

そんな俺という便利な存在に慣れた上級生は、男女の出会いの場を求めてくる。

一人もんの男は、上級生になればなるほど恋人獲得に必死だ。

アレを欲しがる奴もなかなかしぶとくなった。

隠れファンな。

特にシルバー階級な。

それもアッパークラスな。

子爵の主君筋からなんか、何度、出会いの場を強要されてるか・・・。

張り付き笑顔でいなすにも、限界なんだよ。

しがない辺境伯息子じゃね~~~~、無理があるんだよ。

おかげで、下位シルバー階級のお姉さま方があいつを嫌悪して悪さを働いているが、すまん。こっちは野郎の駆除で手いっぱいだ。自力で何とかしてくれ。


メーメーは早く魔法使いになるなんて夢をあきらめろ!

さっさとあのイカレた過保護の家に帰れ!

嫌なら教団に行けって思う。マジで思う。

思うのに・・・俺もアホウだね。



中等部棟2階へと続く回廊を上りながら、自嘲する。



たしか、4年の上位シルバー先輩がこないだ炎の指輪を買ったって自慢してた。

アレの熱烈隠れファンでもあるあの人なら、騎士道精神を刺激して退学必須の危機的な現状を訴えればきっと快く無償で貸してくれるだろう。下手すりゃ譲渡もあり得る。


このまま見て見ぬふりで、ほっておけば自滅するしかなかった幼なじみなのに。

な~んで、俺は無駄なアドバイスしてやって、こうやって無駄なフォローしに動いてんだろうね?

アホウだろ、自分。



・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

でもさ。

メーメーが傷ついて泣くとこは見たくないんだよ。

本気で頼られたら、つい手を差し伸べてしまうだよ。

あんな風に真摯に願いを言われれば方向性に問題があってもさ、助けてやりたくなる。


・・・・・・・たいがい、俺も甘いよな。

アホウだな、自分。



炎の指輪がゲット出来たら(きっと余裕だろうけど)メーメーには恩着せがましく貸してやって、お礼に、ちょっと本数多めの安眠アイテムを作らせるか?

アイツが作る快眠アイテムは隠れファン心理だけじゃなくて、純粋にその祝福福音効果の高さから結構高値で売れるレアアイテム。

在庫確認の問い合わせはひっきりなしの荷待ちを切望される人気商品。



俺にとっては、あいつの家族からの仕事報酬よりもいい臨時収入になっている。

売っているのはもちろん本人には内緒だ。


今回、地下10階層でミスした先輩方はたぶん悪夢にうなされるだろうから需要は必須。メーメーには課題クリアー貢献したんだからとか何とか言いくるめて、大量に作ってもらってもいいんじゃね?いいよな。いいはずだ。ちょっとぐらい美味しいことにありついてもいいよな?いいよ。いいはずだ。




そうやって、今後の金もうけのことを考えてホクホクしていた俺だけど、次の日に、バカメーメーがやらかしたトラブルを知って、青ざめて、身の危険を感じて・・・・なんであの時、教室を出たあいつの後をすぐ追わなかったのかと、ひたすら後悔することとなる。



やっぱ、メーメーは、勝手に動きまわらせると碌なことになんねぇ~わ!(教訓)





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