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◆◆◆プロローグ◆◆◆

◆◆◆プロローグ◆◆◆



「何者だ?女?」



美しい彫刻。

白銀のエルフのような。

それでいて、服装は学院男子の制服姿で。


彫刻にわざわざ服を着せるその感性ってどうよ?

悪趣味すぎるでしょ・・・・・


そう思っていた。


誰が、どんな目的で、そもそもこんなところに置いたのか。

不思議に思いつつもその際立つ美に見とれてしまった男性像。


それに睨まれて体が硬直する。


澄んだアイスブルーの瞳から冷酷な眼光を放っていても美形は美形。

背中を覆う銀細工のような髪は、たなびいて。

よくよく見れば、ちゃんと血の通った滑らかな肌。

神のみが創ることを許された最高のバランスで配置された、切れ長の目と、スッキリとした鼻梁と、酷薄な笑みを描く唇。



・・・あぁ~あ、眉間に刻まれた深い皺さえなければ完璧な美だったのにな。



なんて、ちょっとだけ残念に思う自分がいる。

あのまま、彫刻のままだったらよかったのに・・・とまで思う。

実際、今の今まで、彫刻だと思っていたんだもん。

ダンジョンの奥になぜ彫刻が?ある?の?

な~んて、のんきに灯りを近づけたわたしの不注意を悔やんでも悔やみきれない。


いや。

たぶん。

きっと。

そもそもここに来たことが間違いだったんだって、後悔している。



『考えなし。思いつきで動くな!バカメーメー!!』



ギルの忠告が脳内にこだまする。

・・・・・・まったくもってその通りです。はい。

後悔先に立たずとは、この状況か?。


現実逃避して反省の海に潜りかけたこっちの脳波を感知したかのように、ギリリと冷酷眼光(もはや殺人光線のレベルです)の威力が上がる。



ひいいいいいい。

本当に怖い。怖いからやめて。



「・・・どうやってここに来た?・・・・・2年の女。」

「・・・・えっと、その、不審者じゃないですよ?5年生の・・・先輩?」

「なぜ疑問形なんだ?」



それはわたしが下級生侵入禁止域に無断で侵入している自覚があるからです。

ってか、本当に生きている学院生なんですね。



って、面と向かって言えるほどの度胸はない。

脳内はおしゃべりなんですが、小心者のチキンでコミュ障なんです~。

なので、いつも人と話す時は、もごもごとした口調になってしまう。



「・・・・・えっと、その。まあ。いろいろ?って、あ、あの、こ、こんな暗いダンジョン、で、何をされているんでしょうか?先輩?」

「・・・・・それは俺の質問だな。」



・・・・・マズイなぁ~~~~~~。


段々と、相手から不穏な空気が漂いだす。

背中をつーーーーーっと冷や汗が流れる。



本当にまずいです、この状況。


許されるならこのまま脱兎のごとく寮に逃げ帰り、部屋の相棒に今日の出来事を嘆きたい。


でも、この人間離れした美しい人ってば、背中を見せた途端に鋭利な刃物でメッタ刺しにしてきそうだし・・・・。


最高警戒レベルの危険人物を前にして、本能が逃げちゃだめだと訴えてくる。

うん、本能は大事。

野生のカンは信じましょう。



先輩の服装は、白ジャケットのブレザー姿。

当学院ではエリートを表す制服で、ネクタイの色は青の5年生。

身分を表す学院バッチはブロンズの平民階級。

見た目通りならばヒューマン種。

エルフ級の美貌ではあるけど、たぶんヒューマンだよね?

・・・あ、ハーフエルフいう線もあるか・・・な?

髪の色と瞳の色から、水属性の魔法使いかと思われます。

溢れ出る魔力が絶対零度の冷気をはらんでいるところから氷系?かな???


通常おいそれとは近寄れない高レベルの魔法使いさま。

それも攻撃魔法系・・・いやだ~~~。

そんな人が、ここに、こんなダンジョンに、なぜいるのか。


お互いに黙ってしばらくの間は腹の探りあい。

相手の出方待ちの状態に焦れたのは先輩の方が早かった。



「・・・・・・・結界を・・・・」



地の底から響くような、低く冷たい声音でぽつりとつぶやかれる。


この音は聞き覚えがあった。

いつもは優しい上の兄が本気の本気で怒った時にのみ出すトーンに、条件反射で背筋が伸びる。



「・・・・越えたからには《本願(ねがい)》があるのだろう?女・・・こんなとこまで追ってきて・・・・・何が望みだ?一応聞いてやるからとっとと話せ」

「はい?」



えっと、意思の疎通ができないんですけど?

怒っているのか?

嫌悪しているのか?

そんな声音はわかりますが、語彙の意味が分かりません。


ただ、ゆらりと立ち上がるその姿と、彼の背中から溢れ出たどす黒い殺意に鳥肌がたつ。



ゾクウウウウウウウウウ・・・・・・



はい。本日2度目の全身鳥肌状態です。



「ひ・・・・・・・・・」



喉の奥から上がりそうになる悲鳴をなんとかこらえる。


く、熊より、ハーピーより、この先輩が怖い。

マジ、ダメだ。

殺生することにためらいのない人だよ!きっと、たぶん。



「こ・・・・・ころ・・・ころ・・・」

「ころ?」

「殺さないで!!!!」



シャーーーーーン、シャンシャンシャン・・・・・。

つい、悪鬼退散を願うようなお祓いをしてしまったけどさ、仕方ないよね?





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