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八十話 創造神、精霊を呼ぶのに覚悟を必要とする

「――ということだ。俺はSランク冒険者になる。どやぁ」


「あんたならいつかは成ると思ってたけどこんなに速かったなんて」


「その前に聞きたいことがあって。精霊を使役してみたくは無いか?」


「したい!」


「シオン、その話はマジなのか!」

 あぁ、オーランドは前に俺の持ってきた話で玉砕を喰らったなんてこともあったか。

 ともかくルーファスやアルマも頷き、精霊を付けることとなった。


「ところで、その昇格式典は私たちも付いていっちゃダメなのかな」


「アルマや私、殿下はそれぞれ親に付いていって大丈夫かもしれないけど、オーランドが……」

 この中で貴族関係者で無いのが、俺とオーランド。で、今回俺が貴族位を得ることとなるためオーランドのみが行けない状態なのだ。


「じゃあ、俺の付き添いでいいんじゃないか?」


「いいの、それ?」


「ならよぉ、俺はシオンの将来の家臣ってことでいいんじゃねぇか。いいよな、シオン」


「俺は構わんが、もう将来を決めてしまっていいのか?」

 Aランク冒険者のライオスには振られてしまったが、オーランドだって選抜大会で勝ち残り、親善大会に参加する選手だ。引く手あまただろう。


「シオンのところが一番自由にしていられそうだしな」


「そうか。役職は従士長ってところか」


「良くわかねぇけど、それで。でよ、精霊の話しようぜ。なんか準備しておくこととかあるのか?」

 将来よりも精霊か。そんなことで大丈夫か。


「自分たちのなりたい職業を決めておくことかな」


「シオンさん、それはどうしてなの?」


「ルーファス、精霊にも相性がある。人に得意とする魔術属性や武器があるように精霊だって変わらない。その相性が悪かったら、精霊を付ける意味が無くなる」

 精霊にだって意思はある。俺がメルクーアに頼んだのは彼らを呼ぶこと。彼らに気に入られるかは、彼ら次第となる。


「ルーファスは風、アルマは水、ルウは火だったよな。オーランドは何だったか? ちゃんと属性を定めて精霊を選ぶんだぞ」


「あれ、知らなかったのか? 俺は地属性だぞ」


「精霊を選べなんてあっさり言ってくれるわね、シオン」

 精霊にも順位がある。大まかに王位・上位・中位・下位と。授業などで聞いた話では、精霊はすでに絶滅寸前で勇者にしか見えない、とされていた。

 こんなことも間違って伝わっているとは。勇者でも適性が全く無い者や見えてはいたのだが精霊から拒否された者だけ。要はそれ以外なら見ようと思ってしっかりと見てみれば見えてくるようになる。


「前に言った越後屋商会で行われている訓練はその後だ」


「シオンさん、もしも自分たちの属性とは合わない精霊に選ばれたりしたらどうすればいいですか?」


「その時はその時だ。心配することは無い。そう自分とその精霊が引き合ったならそれが縁だ。縁が定まり、運命の方向性が決まっていく」


「ん~? それはつまり、どういうことだ?」


「直感に任せろ、ということだ」


「なら、俺は出来るな。普段からそんな感じだ」

 それはどうなのか。


「メルクーア――様の屋敷に着いたな。じゃあ、入るぞ」


「良く来たな、私と話をしてもつまらんだろう。さっそく精霊を宿すとしようか」


「わ、私はメルクーア様と話してみたいことがあります」

 慌て気味で言うアルマ。緊張か。


「では、それは後ほどに。庭に行こう」

 メルクーアは庭の中心で呼びかける。


『我が友よ、来てくれ』

 そういったメルクーアの周りはふわりと白い靄のようなものが浮き上がる。一瞬にして、周囲の空気が凍てついた。


 そして、彼女の隣には白い肌と髪を持つ女性が浮いていた。

「彼女はプロセアピナ。氷属性の精霊です」

 喋りはしないが、礼はするプロセアピナ。彼女は上位精霊だから言葉は話せるはずなのだが、精霊は一様に気分屋だったり認めた者にしか口をきいたりしない。


「プロセアピナ様?」

 彼女はこっちに見ている。この視線の先は俺か。

 すー、と宙を移動して俺を見ながら周る。最後は首を傾げた。


「では、彼女に精霊を呼んでもらいましょう。頼む、プロセアピナ」

 メルクーアの下に戻って精霊を集める。

 次の瞬間から屋敷の庭が光り輝いている。


「じゃあ、各々適当に呼びかけてみてくれ」


「なんて呼びかけるのよ?」


「なんでもいい。『俺と共に来い』でも『助けてもらって良いですか』でも。精霊が興味を持ったら向こうから来てくれる」


「よっしゃ、来い」

 精霊がオーランドの近くに漂い始める。今のところ下位精霊のみ。おっと中位精霊も混ざってきた。

 そんなオーランドを見てルーファスたちも呼びかけ始める。


「シオンは精霊を呼ばないの?」

 え、俺か。大丈夫かな? でも、今はメルクーアから借りた枷と宝物殿から出した鎖を付けている。精霊王にまでバレることは無い……といいのだが。


「えー、じゃぁ、来てくれ」

 シオンの言葉に反応して瞬時にシオンが光るふよふよした物体にもっさりと包まれて見えなくなった。下級・中級がシオンの身体にべったり張り付く。上級は理性でなんとか踏み止まったことで更なる大事は避けられた。

 が、すぐに散り、周囲に漂い、隙あらば契約を結びにかかろうと互いに牽制しつつ、チャンスを窺っている。


 散る原因になったのが来た。

『ぬわーはっはっは、なんだ我らの主君よ! 俺を呼びたいなら素直にそう言えっての。他の奴らも待ち遠しくしてるぞ。そして、この後の俺のことを考えて欲しかったな!』

 あーあ。

 メルクーアが呼んだプロセアピナの時とは対照的に周囲が暑くなり、凍っていた草は灰に。

 メルクーアの屋敷の庭が大変なことに。


『そんなに見つめるでない。照れるではないか』

 この精霊、俺の呆れのジト目を好意的に受け取りやがった。

 来たのは、炎の精霊王一人。

 きっと彼が他を圧し留めてくれていたのだろう。彼は言葉よりも力で物事を解決させるのを好みそうな顔立ちだが、精霊界では苦労性だ。他の個性が強すぎるというのもある。

 助かった。


『これはヘイアス様。斯様な地で御身を拝見できるとは』


『水の王のか。許す、面をあげよ』

 ヘイアスは自分以上の存在しか認めない癖がある。困ったことに。


『そんなことはいいから。もうさっさと帰れよ』


『精霊王に対してその物言い。やはり貴方様は創造神様でおられましたか!』


『つれないではないか、ヘイムよ。もっと親交を深めようではないか』


『お前たち王が来ると下界では周囲に影響が出過ぎるんだよ。とりあえず今は帰れ。ここは庭だ、お前がずっと居ると火災が発生する』

 こいつがいる今だけは学園都市の気温が高くなっている。


『帰る前に一つ、いいものをくれてやろう』

 ヘイアスが言ったのは、ルーファスに向けてだった。


「これは僕に言ってるんですね? シオンさん」


「ああ、そのようだ」

 ヘイアスからルーファスに光が送られる。


「今のは、祝福?」


「おお! 大盤振る舞いだな」


「あの、僕、風魔術の方が得意なんですけど……」


「ヘイアスがわざわざ祝福を与えたということは、火魔術にも合っているということなのだろうよ」

 選抜大会でも【星気なる太陽】使っていたし。


「精霊王なんですよね」


「そうだが?」

 その年でもう認知症か?


「精霊王の祝福なんて大冒険の末に勇者が授かるようなものなんじゃないか、と記憶しているんですが」


「さぁ? 気に入られたんじゃないか?」


「えぇー、そんなあやふやな感じですかー」


「いいじゃないか、もらえるものはもらっておけ」

 疑問はまだあったようだが、何とか事態を飲み込もうと奮闘している。


『絶対また呼んでくれよな』


『はいはい、呼ぶから』

 俺はヘイアスを精霊界に送還し、「ふぅっ」と一息つく。無かったことにしたいなぁ。


「なぁ、シオンよぉ。今のは?」


「はっはっは、あれも精霊なのだよ、オーランドくん。ささっ、自分の精霊を決めたか? もうそろそろお開きとしようか」


「おい、ちょっと待て。俺、まだ決まってないんだよ」

 オーランドに未だ精霊は憑かない。縁がなかったのか?


「オッス! よろしく、オイラはメスト! メストこそがオイラ! というわけで、オーランド、オイラに付いてこい」

 と、挨拶して来た。

 お互いの挨拶を終え、話を聞く。オーランドが慌てたように俺たちを見回している。諦めろ。

 すでに立場が逆になった。


「な、なぁ、シオン。こいつって……」


「そんな精霊でも意外とすごいかもしれんぞ。なんせ会話が出来ている。中位精霊だが、その中でも上位の存在だろうな」

 思っていた精霊のイメージと違い過ぎたのか、オーランドは項垂れる。


「メルクーア様、私の精霊も見てもらってもいいですか?」


「うむ。この精霊も同じく中位精霊だな。話すことは出来そうだが無口なのか?」


『喋らんのか?』

 俺が精霊に問うと、アルマの手のひらに座っているその精霊は頷いた。とことんまで喋りたくない様子。

 結果、全員が中位精霊を使役できるようになった。一人ぐらいは下位精霊かと思った。


「今日はここまでとしよう。鍛錬は明後日からで」


「なんだ、明日からじゃないのか?」


「明日はちょっと用事があって」














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