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七十九話 創造神、強力な助っ人(業務的に)

「うわぁ、やだなぁ」

 思わず声が漏れてしまう。

 俺の目の前には、机に乗った大量の書類。

 なんだかんだで研究対抗戦も大きな事件が起きることも無く、それから数日を過ごした。


「主様、ここの書類は今日までにお願いします」

 溜まったな、祭り中に。


「メネアよ、お前も仕事なのだろう」


「はい。祭りが終わっても仕事は後からついてきますから。後始末を」


「考えたのだ。メネアももうエルの手助けをあまり必要としていないだろう」


「それは……まぁ……」

 言いにくそうなメネアが身体をビクッとさせた。おそらくはメネアが何かを言っているのだろう。


「そこでだ。黙示録エルにも身体を用意することとした」

 また俺の思い付きだけの行動だよ。


「それはそれは」


「エルはなんて言ってる?」


「……エル様から『言わないで』と言われているので私からはなんとも」


「そうか。で、身体について要望はあるか?」


「通訳も大変ですので、エル様はお返しします。これでいいですか?」

 メネアから俺に黙示録が渡り、メネアは別の仕事で部屋を出る。


『私からの要望はまず人であることです』


「その前提はなんだ?」


『マスターは作り始めると時々ふざけて路線を変更してしまうことがありますからこの要望は入れておかなければならないのです』

 否定はしない。


「では、俺は魔術でゴーレムを作っていくから形の造形はエルに任せる」

 前の一言が無ければ、腕を六本にしようとしていた自分が居る。


『はい』

 出来ていくのはエチゴヤを守護している騎士たちよりも人と見間違うような精工なゴーレムだった。


『こんなところですかね。私の理想としましては』


「これ胸大きすぎないか?」


『そ、それは別にいいじゃないですか。それともマスターは大きい女性がお嫌いですか?』


「いや、そうではなくてこれだと罠とかに気づきにくそうだし、走りづらくないか」


『それは問題ありませんので、これで、この身体でお願いします』

 エルに急かされ、今度は土ではなく、龍種の牙・フェンリルの毛・アダマンタイト鋼。金属は地魔術で純度を凝縮と不純物を取り除いて高めた物に。魔力供給機関は後々付ける。エルがどういったステータスにするのか決めてから。


 そんなこんなで出来たのが、紅いドレスを引き立てる豪奢な金髪、そしてエメラルドのように深い碧眼。二十代前半を思わせる成熟したボディーラインは、豊満で官能的ですらあった。


 これがエルの理想か。

 眼に何の能力も持たせていないのはいいのか。せっかく魔眼にも出来ただろうに。

 まぁ、身体には龍種の牙とオリハルコンを使ったから耐久力は高い。

 もっと手から武器が飛び出したり出来たら面白いのに。


『これですよ、これ。まさしく私の思い描いた通りの身体。ありがとうございます、マスター』

 喜んでいるならいいか。


「じゃあ、その美人さんにいきなり悪いんだけど、この範囲の書類をお願いするよ」


「いいですよ、今の私は最高潮なんですから」

 エルのステータスは斧士寄り。レベルはまだ1。仕事が終わったら、レベル上げにメネアと行くそうだ。装備は神話級の武器聖斧ミョルニルという両刃の斧を渡す。斧の二刀流が良いそうでもう一つはミョルニルレプリカを。レプリカはオリジナルよりは劣るものの二段階下がった英雄級。当然そこらの魔物には負けない。


 能力も劣化してオリジナルと比べると投擲必中が確率になって、全粉砕が武器破壊に格下げ。その他も下がっている。変わりないのが、投げた本人の手元に返ってくる能力くらいだ。

 しかし、これならレベル1でもステータス値が上昇して一撃食らっても中々死ぬことがないだろう。オリジナルは全ステータス+10000だからな。


 書類は一人の加入で速く片付いた。

 なので、俺も見学に行く。

 まずはギルドで手ごろな魔物の出現を確認する。

 ザワザワと喧騒が広がっていく。


 越後屋で紙に埋もれていたシオンが、冒険者ギルドに姿を現した。

 Sランクに昇格。その一因があのライオスよりも多くのワイバーンを倒してきたことであるのは周知の事実であった。

 それを機に、ライオスに気に入られてすでにトップパーティの一躍になりつつある越後屋の幹部以上にいる彼がが注目を集めるのは当然のことであった。

要因は他にもあるわけだが。


「シオンさん」


「あなたは確かエレナさんだったか」


「はい。ネーヴァさんとエインリオさんにはお世話になりました」

 逆じゃないのか。


「依頼書の中で強力な魔物はいるか?」


「はい、います! 魔物の大移動はあの森のすべての魔物が集まったのではありませんでした。しかし、奥から強力な魔物が出てくるようになって困っていたんです」

 名前はトレント。俺が馬車の材料にしたタイラントトレントの下位互換の魔物だ。


「それじゃあ、今日は探索でよろしいんですね?」

 探索以外に何があるかと疑問に思ったが、普通の学生は素材集めなどをしているようで。


「……それで、あのぅ」

 恐る恐るエレナはシオンに尋ねた。


「そちらの女性に登録はお済ではありませんよね?」


「そうだな。彼女の登録も頼みたい」


「シオンさんもそういうお年頃ですものね」

 彼女の言いたいことは分かった。こうしてエルがこの姿で俺の近くにいるだけで否定が難しい。

 不慣れな感覚にエルは無表情なままに、シオンの頭に胸を置いて抱きついた。


「ああ、やっぱり!」


「何がやっぱりなんだ!」


「シオンさん、探索が終わったら食事でもいかがでしょうか? やはり貴方のように将来有望な探索者でもまだ早すぎます」

 出るまで長くなりそう。誰か救援をー!


「シオン、ギルド室まで来ーい!!」

 救援の声には聞こえないが、脱出の声が来た。


「俺は呼ばれたようなので」

 そそくさとこの場を去る。


「シオン、勇者様御一行が国際問題にするという意見を取りやめた」


「よかったですね。娘さんは元気にやっていますよ」


「それはいい。エチゴヤはうまくやっているらしいしな。ただアリアに手を出したらただじゃおかねぇからな」


「それじゃ、俺はここで――」


「まぁ、待て。王都で開かれる式典のことだ」

 国王が直接伝えるわけにはいかないからこう回ってきたか。


「同時にSランクの昇格式もやることは知っているな。その昇格式では現Sランク冒険者一人と対決してもらう」


「その式典はいつですか。そろそろ学園が長期休暇期間を迎えようとしているが」

 式典は研究対抗戦が終わってからの冬期休暇期間内にやるという話だった。


「移動のこともあるだろうからな、二週間後だ」

 これだけあれば、オーランドたちに精霊を付けて訓練させることは可能だ。あとはオーランドたちに了承を得るだけ。

 それより、今はエルのチェックとレベリング。


「ふっ!」

 エルの斧が風切り音を立て前衛のゴブリンを文字通りに潰す。後衛の弓持ちゴブリンへの障害物が無くなったところでレプリカを投擲、叩き込んだ。陰に隠れていたゴブリン二体の身体がオリジナルによって一緒くたになって周りの木にぶち当たり、身体を砕かれながら吹き飛ばされていく。


 ゴブリンのぶつかった木の中にトレントが擬態していたようでトレントも襲い掛かってきた。

 戻ってきたレプリカをキャッチしたエルが、トレントの逆側から迫ってきていたキラーアントもまとめて砕いた。斧を食らった蟻は頭部をごっそりと喪失して動きを停止した。トレントは折れた状態で地面に転がっていた。


「だいたいこんな感じですかね。中々良い感触でした」

 エルが言うのは、潰した時のことではなく、戦闘のスムーズさ。潰した時のことだったら怖い。

 一応狙いはトレントだったのだが、森に入って入り口から離れたところで試しに適当な魔物を一体相手にして居たら、次第に見境なく粉砕していった。


「気分は?」


「大丈夫です。この身体はマスターのように完全な生物としての身体ではありませんから」

 目が合うとエルは微笑んだ。何となくだが、穏やかな雰囲気がある。

 問題は無さそうだ。なら次は、ギルドに行って戦利品の換金をしてこようか。












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