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七十八話 創造神、再び相対する

 それはこの場に散らかった死体処理。勇者が死体を目にするよりも速く空間魔術で消す。【空間魔術 格納庫】や【固有スキル 宝物殿】に入れたら、後々彼らの所属を調べることも可能だが、興味も無いので消す。襲ってきたら、蹴散らせばいいだけのことよ。

 ふはははは、とか笑っておけばOK?


「私の勇者をあの程度だと思わないでちょうだい!」


「メイリーン。俺たちの、だ」

 剣士の女性に咎められて言い直す。


「そうね」


「あの程度って剣を振り上げて向かってきただけだろう。あれで測れるのは、圧倒的に開きがあることくらいだろう」


「確かに僕たちは一度お前に負けたさ。そのことに言い訳はしない。でも、僕はまだ全部を出し切れていないんだ」


「それを含めての負けじゃないのか?」


「ええ。でも、僕は事情があって使えない力がまだあるんです。もちろん、これが言い訳であることもわかっています。でも、このまま彼女たちをお前のような人に囚われさせていたくない!」

 矛盾発生。言い訳してんじゃん。

 でも、分かっちゃう。言い訳じゃないんだよねぇ。ただ説明とか弁明をしているだけなのに、「言い訳は良いから」とか言う奴いるんだよ。いや、これは説明だから、まず俺の話を聞けってんだよ。ぶっ殺すぞ。おっとつい恨み言が。


「だから、僕と勝負しろ」

 彼に何の得があるのだろうか。越後屋の従業員たちはそのまま働きたいと言っている。それに公にできない力を使っての私闘にしても、公の場で公開されなければ大衆の評価は変わらないと思う。


「ここではいずれ人が来る。それは勇者も本意ではないだろう」


「どうしてそう言い切れる」


「いや、だって善良な一般市民に勇者が複数で囲い込んで襲い掛かったなんて言われたくないだろう?」


「それじゃない! そもそも僕は襲うなんて卑劣なことはしない。なんで人が来ると言い切れるんだ! そうやって僕たちを騙して逃げるつもりなんだろ!」

 気配察知もできない。それがわからないから弱いのだろう。決定的に戦闘を間違えている。敵を認識できてこそ戦いになる。遠くの気配も見破れずに狙撃で脳天を打ち抜かれることだってある。

 それは戦闘にすらなっていない。

 俺は行くことを許可されている迷宮でやることになった。それなりに障害物もあるから楽しい。

 たまに魔道具の材料を仕入れに来るから道はわかる。それを越後屋に回したり。


「好きなだけ準備して構わないぞ。存分に隠していた力とやらを使ってくれ」

 好きなようにしてくれ、ボコボコにして二度と公道を歩けないようにしてやる。あっれ、俺なんだが悪役っぽい。


「それでは僭越ながら俺が開始の合図を」

 この時代に来てから勝負事だといつも審判が付いてくる気がする。公平性を一応は作っておくためかな? 審判なんて合って無いようなものだろ。


「はじめ!」

 勇者は俺の剣を構えながら俺の手元を見て探りを始める。


「……スキル発動。プラス、◆◆ ◆ ◆◆【火魔術 燃え盛るブレイズソウル】」

 スキルを複数使った兆候が見られる。最後に長々と口を開いていたのは、詠唱だろう。

 直後、彼の剣は炎に包まれて身体には前と同じように光の鎧で覆われている。

 逆にこちらは武装を自分の身体から出た剣のみ。


「◆…◆ ◆」

 知らない詠唱だ。彼が自分で魔術を作れるとは思えない。コマンドが必要なタイプのスキルか。


「【固有スキル 疾風迅雷】発動!」

 名前と動きから敏捷上昇系スキルと断定。ただ固有スキルだ。警戒は十分に必要。


「これでも僕にそんな余裕な態度でいられますか」


「始めよう」


「うぉぉぉ」

 反省会とかしなかったのかな。真っ向から向かってくる。速度は前よりも速いが。

 剣を三本ほど散らばせて投擲。

 投擲は事前に躱された。なるほど、それも向かってくる前に使ったスキルか。予想はつく。


「なら」

 投げる前に剣には魔力操作で魔力の糸を絡ませていた。シオンの魔力が糸を伝い、剣に。投げた剣も基は魔力の塊。その塊にそれ以上の魔力を流し暴発。結果、外れて地面に刺さった剣は爆発。

 この戦い方は魔物に通用はしない。魔物では、爆発した魔力を吸収してしまうため効果が見込まれない。


 しかし、ヒューマンや他の人種はそうもいかない。周囲から魔力吸収は出来る。普段からそうして魔力を回復させているのだから。それでも量が大きすぎるために爆発の威力を受けてしまう。


「ぐあっ」

 爆発の物理ダメージを背中に喰らい、勇者は前に倒れる。


「ちゃんと足元注意だぞ、勇者よ」


「うるさい。正々堂々と勝負しろ!」


「では、さっさとかかってこい」

 立ち上がり、突き・横払いと剣を振る。ただ俺には当たらない。

 俺は安易に近づいたりはしない。固有スキルを警戒する。剣の間合いから外れて離れた場所から投擲。


 くそ、何故僕の攻撃は当たらないんだ!

 さぞ不思議に思っているだろうな、勇者よ。

 スキルを使わずとも計算能力で相手の行動を把握。そこから導き出される行動パターンから攻撃時間まで織り込んだ未来への予測での俺の投擲と回避行動は俺を避けて通り、俺の剣がお前を追尾して襲うようだろう。


 彼は俺の爆撃を気にして投擲を警戒しながら俺を中心とした円形に走って避ける。

 しかし、俺の放った剣(形は暗器に近いかな)がまるで自分を追ってくるように回転しながら飛んでくるのだから。彼が固有スキルを使っているように見えるのだが、目で追える。振りだけでまだ使っていないのか、それとも固有スキルのレベルが低くい所為なのか。


 どちらにせよ、その速度なら予測できる。固有スキルを本気で使うようなら別の手を考えれば良い。

 そして、彼の放つ魔術は俺をすり抜けるようにして通り過ぎていく。


「そろそろ君のスキルの種明かしをしていこうか」


「はぁぁ!!」

 ようやく彼は投擲剣を止めた。

 自身の剣を地面に刺して纏わせた炎を周囲に拡散。爆発させて勢いを削って落とす。魔力を多く使ったご様子でお疲れ気味だ。


「魔術スキルは【火魔術 燃え盛る心】【神聖魔術 簡易聖鎧ホーリーアーマー】」


「何!」


「それから【特殊スキル 予知】も使っていたよね。君の回避性能はこれに支えられている。固有スキルも確かに速いが、レベルが低くてちょっとした距離を離したままを保てば接近されない」

 予知は数秒先の未来がわかるというもの。故にその数秒間に対処を行わなければならないということ。


 それが無理なら、先に見てしまった敗北が後から迫ってくる。

 相手に手の内を看破されて、ダメ出しまで受ける。彼の負けは必至。それを認めてくれるといいのだが、何分人の言葉は通用しないらしい。


「スグル!? どうしちゃったの!?」


「スグルお兄ちゃん!」

 控えていた彼のお供の二人が彼の名を叫ぶ。


「あんなに力を付けたじゃない。あんなに頑張ったじゃない。なのに、なんで!?」


「メイリーン、受け入れろ。ただあいつがスグルを上回っただけだ」


「だって、だって……」

 彼がどれほどの修練をしてきたのかは知らない。だが、界渡りをして初めて剣を使ったのだろう。それからの日々、毎日剣に費やしてもそれ以上に剣の腕を磨いてきた者は絶対にいる。才能で埋められる穴もあったのかもしれない。しかし、才能と多少の努力だけで武術は語れない。


「所詮はラッキーで身の丈に合わない能力を欲した凡人ってところか」


「僕は凡人じゃない! 選ばれた人間なんだ! だから、神から力を授かった」


「いいや、凡人さ。この時代で頭少し抜きんでたぐらいで満足するただの人。それでは何かを成すことは出来ない」


「確かにあなたが強いことは認めるわ。でもね、この程度で私たちの選んだ男が諦めると思ったら大間違いだから」

 素人目には良い接戦にでも見えていたのだろうが、実際には俺が最後まで読み切っていたのでそこまで名勝負になっていない。


「もう再戦を受けるつもりはない。それでも来るというなら、今度は確実に殺す」

 勇者とその仲間たちはシオンに恐怖を感じ、距離を取った。


「俺はもうちょっと面白くなるかと思っていたんだ。勇者だしな。でも、すまなかったな。お前たちは弱すぎて俺が強かった」


「何よ! その言い方は!」


「負けたからだよ。敗者はただ強者に恭順するのみだ。お遊びのチャンバラごっこで無いなら」

 これはどの世界だろうが、変わらない。結局は力が人と人の関係を作る。暴力でも経済力でも権力でも。


「……」


「二日後に越後屋へ来い。俺の無実を証明する。それでお前が俺に固執する理由も無くなる」

 一日で頭を冷やして冷静になることを願う。


「しかし、面白くはあったぞ。すでに一度負けて、それでも勝負を仕掛けてお情けで勝負を受けてもらい、その上でまだ騒ぎ立てて恥をさらす。。どこまで厚顔無恥なのだろうか。これだから人というのは。……あぁ、勘違いするなよ。俺は人を嫌ってはいない。むしろ、観察している程だ。それでこそ人なのだ。だからこそ、人は馬鹿馬鹿しく愉快な道化だ」











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