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六十九話 創造神、要望を受ける

 研究対抗戦の日に近づいてきて前に送った転移門で各支部の代表がこっちに来ることになった。

 喜んでくれただろうか?

 やっぱり直接見た方がいい。転移門っていう今じゃ珍しい物を渡して移動が楽になったし。


「メネアに言われるがままに各地に転移門をとりあえず送ったけど、こんなにいたの?」

 さっそく転移門を使ってこちらに来ていた。今は会議室に集まってもらっている。


「シオン様、そろそろ昼食の時間です。休憩なさってください」

 メネアの声に返事をし、併設されている会議室に向かう。すでに全員そろっていた。


「忙しい中、集まってくれてありがとう」

 シオンは自分の席に座り、会議という名の座談会が始まる。

 ここでついでに顔合わせも兼ねている。集まった代表代理たちはメネアの手腕で越後屋に入った者たちだ。

 だから、知らないのは俺の顔と名前、役職だけ。俺ばっかりが知らない。


「こちらがシオン様です。越後屋のトップです。同じ役職に本日欠席のヘルメス様もございます」

 トップが二人というのも変な話だが、納得された。いいのか、反感とか無いのか?


「今年中にシオン様は国王より男爵位を賜います。これでエチゴヤの商売がもっと上がります」

 おぉ~、と反応が返ってくる。


 特に話すことは無いが、研究対抗戦でどんな物を探すのかという話題で盛り上がった。

 すでに招待状が周り、一緒にカタログが渡されているみたいだ。そういえば、作ってたか。


「シオン様のこの馬車って何ですかね?」

「当日のお楽しみにしておきましょ」

「ヘルメス様はいらっしゃるかしら?」

「あなた、ヘルメス様派だったの?」

 研究の話から今度は女性同士の言い合いになっていった。何この疎外感。


 下界に降りた時に俺は女になったこともある。身体は自分で用意するのだ。女装趣味があるということでは無い。

 神に性別という概念は存在しない。性格的に男寄りか女寄りかは別れる。


 俺は男寄りの性格だから下界に降りる時は男の身体にしたいところなのだが、毎回他の神にバレる。そんでもって女性型にされちゃったりする。俺もいつも男の身体ばかりじゃ、と思って放置している。

 その身体で降りて女性の友が出来たりするんだが、いつも女子会のトークは居づらい。

 もう俺は切りあげていいかな。


「あ、言い忘れていたのことがあった。聞いてくれ」

 俺に注意が向く。


「調べた限り、転移門に関する制限する法はなかった。ただこれに頼り過ぎると物流が死ぬことになる。ひいては、仕事を奪うことにも成り得る。一般公開は控えて欲しい。それと、この転移門は越後屋間での商品の調整にのみ使うこととする。決して運送業に使わないでくれ」


「それは直接的な商売をしてはいけないということですね」


「そうだ。例えば、王都の本店とここを転移門で繋げての人の移動はたしかにかなり便利だが、その間の街や村が困ることになるだろう」


「なるほど」


「その代わりと言えはしないが、転移門を知っている者で私的に使うことは別に良いことにする。手紙ではなく直接俺やヘルメスさん、メネアに聞きたいことがあるかもしれないしな」

 他に通行者の記録を取る、一日の通行料の制限、転移門の管理者、護衛の常駐。

 それらの要求も理解して納得してもらえた。

 俺からしてみれば、たかが転移。彼女たちからしてみれば「失われたはずの技術の粋がここに!」の状態で。


「大変です!」

 大慌てでカタログを抱えた従業員が会議室の扉を開ける。


「どうしましたか?」


「こ、これを見てください」

 持っていたカタログのある一ページを広げる。


「これってうちの回復薬の作り方じゃありませんか!? 確かこれは下級体力回復薬だったような」

 この製造方法、この前売ったやつか。


「これは誰が作ったのです!?」


「貴族のようですね。名前もここに。アスカロン・ルイン、と」


「やはりあの一件を裏から引いていたという貴族はルイン家ですか」


「抗議しましょう」


「しなくていい!」

 騒ぎ立てる各代表を抑える。


「このレシピは俺が売ったのだ。それをどう使おうが知ったことでは無い」


「ですが! あれはエチゴヤ商会の――」


「いいんだ。 あの回復薬はもう要らないと判断した」

 あれは下級体力回復薬ではあるが、回復薬の製造の低迷した今ではあの回復薬には中級並みの回復薬と認識されている。


 そりゃ、研究成果として出したくもなるだろうさ。

 過去の技術の復活を成し遂げたように見えるのだから。

 だが、それを考え無しに公の場に出してしまったらもうレイドス家は悪化の一途をたどることになるだろう。対策としてやりそうなことは、蜥蜴の尻尾切り。取引を行った人物を切り捨てるかな。


「この問題はそれほど問題ではない。気にすることも無い。それより、街の方の出店のカタログを越後屋が作っているという情報を耳にしたんだが?」


「はい。現在鋭意作成中です。それにつきましてシオン様にお願いしたいことがございます」


「大抵のことはしてやれるぞ」

 こういったところで従業員の望みを叶えてやらねば。


「シオン様も屋台を出店してほしいのです」

 俺が寮でエインに出した料理を食べたいので屋台を出してほしいということらしい。


「え?」


「こちらは希望者の署名を集めてまいりました」

 そんなことしていたのか。

 従業員は全員分集めたのか。それにメネアも参加している。イスタールの署名はどうやって取ってきたんだ? 貴族も混じっている。


「よくこんなに集めたな。どうやったんだ?」


「以前シオン様は学園内で従者の方に料理を振る舞ったとか。それに便乗した生徒が食べ、方々に知らせ、その料理を一度でも食べたいという方が出て来ました」

 エインにハンバーグを出した時の話だな。


「それを私たちも食べたいと思い、署名活動をしていたところを貴族の方に見つかり、『協力させてほしい』と言われ、こうして署名されて行きました。ただこのままの理由だと断られる恐れがあるとのご指摘を頂いて表向きは街と学園生徒との交流を目的としました」

 貴族が来たということは、選抜大会の時か。正直だな。


「ですので、どうか大勢の期待がかかっているのです。作ってください、その料理を!」

 圧が凄い。


「了解した。作るから俺の分の申請はそっちでやってくれるか?」


「ありがとうございます!」

 出店か。研究対抗戦どうしよ。


 対抗戦は三日間。初日と二日目のどちらかが俺が出る日。なら、もう片方の日付に出店は出しとけばいいだろう。

 学園都市の祭りは研究対抗戦に合わせた三日間に渡って行われる。

 こういう人が集まる時に祭りにして学生と街との交流を目的とされている。ついでに利益を上げるために。


 そして、ここには王国の軍部も参加してくる。

 学園の一部にテントを張り、新作の杖や剣を先行発売が行われる。そこには大勢の人が来ると予想されており、その対応もしないといけない。

 騎士団の出し物はここで生徒やら訪問者で数十人の列を作っていた。奥にいたのは、黒魔大鷹(ノワールホーク)と隷属の首輪が付けられているグリフォンだった。


 夜闇羽鳥(ナイトバード)か。Cランクまでは騎士団でもテイム可能ということなのだろう。

 夜闇羽鳥の上位種。下位種の夜闇羽鳥は夜目が効く黒い鳥で闇に紛れた偵察などを得意とする。戦闘能力は低めだが、動きが素早く戦闘補助としての撹乱に向いている。

 上位種に進化すると、速度が増して下位種を引き連れるようになる。戦闘になると夜行性で夜目の利く黒魔大鷹の側からはしっかりと敵を認識できるが、敵から認識するのは難しい。その為に空を舞う黒魔大鷹は自分たちのタイミングで攻撃を仕掛けられるが、敵はそれに合わせてカウンターを仕掛けるしか無いので、かなり大きな優位を取れる。


 グリフォン、良く見つけたな。大変だったんだろうな、両方ともに山育ちの魔物だ。それにグリフォンは少々気性が荒い所がある。見つけてからも首輪を付けるまでどれほど時間がかかることやら。


 このブースでは、黒魔大鷹に餌を与えたりグリフォンに騎乗できるという売りをして客の眼を向けさせているようだ。

 あのグリフォンは学園都市の生徒の騎乗実演を任されているだけあって人を乗せるのが上手いらしい。しかし、一つ問題があったのは、グリフォンは元から気位が高くポンポンと素人を乗せるのに難色を示したことだった。

 素人の人からしてみたらグリフォンの顔なんて見分けがつかないかもしれないが、明らかに不機嫌。

 まぁ、自分が出し物の一つにされたら面白くもないわな。俺も越後屋商会でマスコットにされているからなんとなく気持ちはわかる。

 グリフォンの前にいるオーランドが俺に気がつき、こちらに駆けてくる。


「シオン、来てくれて助かったぜ。グリフォンが乗せる客の多さにやる気なくして、動こうとしないんだ。ちょっと話し合ってくれよ」


「話し合うって、俺は魔獣使い(テイマー)じゃないのよ。言葉なんて分からないぞ。お前、俺がなんでもできると思うなよ」

 それでも、とオーランドに先導されて俺はグリフォンに近づいていく。それに気がついたのか、座り込んでいたグリフォンが、慌てて立ち上がる。


 威嚇か、おぅ! いい度胸してんじゃねぇか。暴れたら殺してやろう。

 ほら、暴れろよ。グリフォンの肉をハンバーガーにできる。もう俺には肉塊にしか見えない。

 と思ったらグリフォンが平伏してきた。なんぞや?


 とにかく疲れているのはわかるから支援くらいはさせてもらおう。

【神聖魔術 高治癒(ハイヒール)】【神聖魔術 リジェネイト】【神聖魔術 疲労回復】


「すまないが、お前の力もお祭りを盛り上げる為に貸してくれ。お前が人を乗せ、飛ぶ姿を俺に見せてみろ」

 高治癒と疲労回復によりハイテンションになったグリフォンに適当な言葉を幻魔術に乗せて囁く。グリフォンはレジストできずに翼を広げて悠々しく鳴いて魅せる。


「「「おおおおお」」」

 後ろから歓声が上がって、俺は我に返り振り返る。並んでいた生徒や訪問客の皆が何だかキラキラした目でこちらを見ているではないか。この人たち、怖っ。急にどうした。


 その後、俺をグイグイとグリフォンの前に突き出して一緒に飛ばせようとする。

 仕方ないので俺は列に並ぼうと最後尾へ行くと、なぜか皆がどうぞどうぞと俺を優先しようとし、俺は丁重にお断りする。乗りたくて並んでるんじゃないのか。

 俺の番が回ってきた。

 俺を背中に乗せてグリフォンが駆けだす。そして、空へと舞い上がる。


 正直に言おう。いくらテンションの上がったグリフォンの速度でも俺は遅く感じる。こんなので皆面白いと思っているのか? 俺は違う。なら……

「グリフォンよ、お前は自身の限界というものを見てみたくは無いか?」

 俺の問いに疑問のグリフォン。


「このまま人に繋がれて自身の成長を止めてしまうのは勿体ないのではないか、と言ったのだ」

 少し考えたうえでグリフォンは俺の言葉を理解して、挑戦に心を燃やした。

 グリフォンでどうせ高く飛ぶのであるなら、より天高く登りたいと思うのが神心(かみごころ)というものだ。

 まぁ、あれだ。バイクに乗って性格が変わり、風を感じるみたいな。


 そして、今、風を感じるぅ。

「誰より高く、誰より速く。お前はどこまで行きたい」

 グリフォンの言葉はわからないが、なんとなく感じる。


「限界までか。ならば、俺もその手助けをさせてもらおう。これより俺のアシストによって己の限界以上を知るお前の視界は今までとはまた違った見えることに期待する」

【付与魔術 超加速(ハイヘイスト)】【幻魔術 精神高揚】

 プラスで風魔術から空気抵抗制限の魔術を。

 遥か高くにある雲にまで手が届きそうな距離に――。

 しかし、雲のさらに上に到達することは無く、グリフォンは力尽きて落ちる。

 リジェネイトで体力を回復させながらでも辛かったか。


「よくやったぞ、グリフォンよ。だが、せめて帰りも頼むぞ」

 再びグリフォンに神聖魔術を掛ける。殆ど切らしていた体力を急に最大まで回復させると精神が混乱するのでそこは【幻魔術】も絡めて使う。

 こうして俺のグリフォンとの共同飛翔は終わった。

 終わった後も騒がれた。

 一生懸命に逃げますたわ。警備側であるはずの俺が何故か逃げるという構図。












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