表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/151

閑話 ある夜のひと時

 ……三人程度かな。

 仕事でだいぶ遅くなり、暗い夜道を歩いていると私は後を付けて来る存在に気付いた。


 こんな時間にバラバラの人が一定の距離を空けて。それも一定の速度で私と同じ方向。

 ついてくる三人を一つの塊として考えると、連携が取れている。後ろへの逃げ道は誰かを倒さなければ無さそうだ。

 しかし、一人一人が離れている。まとめて倒すことは出来ない。一人を倒せば、すぐにもう二人が駆けつけてくる。前はガラガラに見えるけど、どこかで待ち伏せかな?

 祭りが近い。人が多くなれば、悪人もまた増えるということでしょう。

 もう一人増えましたね。こいつは屋根伝いに接近中。


 次の曲がり角を右に折れ、急いで次の角へ駆け込み、身体を塀に張り付かせて身を隠す。

 飛び込んだ直後に声が聞こえてくる。

「バレたのか?」

「そんな素振りは見えなかったが」

「……そっち角だ!」


「おっと来た来た」

 男の一人が叫ぶと、荒い足音が近づいてきた。


 タイミングを図って一気に距離を詰める。

 暗闇で見えにくいというのもあって易々と懐に入り込めた。

 腹に一撃を決めて倒れる男の身体を正面から受け止めて仲間二人にバレないように潜んでいた角に戻る。


「おい! どうした! 見つけたのか!」

「何かあったのか?」

「あいつの反応が無いんだ」


 ……周囲には追手以外には誰もいない。人目の多い通りは向こう側。となると……あっちに行こう。

 追手を一人ずつ狩っていくことを決めた越後屋の従業員は闇に紛れる。



 ・・・



「おい、女は!?」

「ずっと逃げっぱなしだ。今はどこかに隠れた。この近くにはいるはずだが……」

「追われてるのには絶対に気づいてるだろうな」

「そうじゃなきゃとっくに捕まえてるだろ。こんな所に逃げ込みやがって……」

「くそっ! めんどくせぇ」


 スラムに近いこの一角は、綺麗とは言いがたい惨状だ。道には障害物が置かれていたり、道路に日よけらしき布が張られている所も多く見られる。

 ここでも夜闇の中、遮蔽物が多いこともあって、あちらはこちらの位置を掴み損ねている。待ち伏せをしていた仲間も合流したようだし、そろそろ……


 私は空に向かって矢を三発、男たちに直接向けて三発放つ。空に向けて放ったやは軌道を描いて男たちに当たる。


「上からだ。上から矢が降ってくる」

 六本が見事に六人に当たり、私はまた別の場所へ移動する。

 矢が降ってきたことで騒ぎになった

 弓をマジックバッグに仕舞う。


「うっ……」

「くそっ、毒矢かよ……」


 ふふふー。毒への耐性は私たちのように付けていませんね。

 エチゴヤでは毒や麻痺の状態異常への体制を付けるための訓練も行われています。


 エチゴヤでは最も高価なものを展示しています。回復薬(ポーション)なら全状態異常回復薬。

 しかし、その裏、つまり従業員側ではもっと高価で取り扱いに細心の注意を払わなければならない最上級の毒薬があります。薬物訓練の時に例として見ることがあるのですが闇ギルド員たちのあの蒼白とした顔は面白かったです。この毒薬は犯罪組織や軍事組織なら金貨100000枚をかけてでも手を出す逸品です。

 注意書きには『一滴100殺。この一瓶で君も国落としさ。レッツ滅殺』と書かれていました。

 ただ私としましてはどうしても変えて欲しいことがあります。それは容器です。酒瓶はちょっと。ラベルも竜殺しって。そうなのかもしれませんけど。

 段々と従業員は慣れてしまい、中では麻痺薬が意外と美味しいと感じていて調味料として使う人もいます。味覚が麻痺していますね。


 先行していた男は障害物に潜伏している私に気づかずに矢に当たった男を見ながら足を後ろへ下がらせていく。

 その先は私の刃。背中ががら空き。

 素早く動き、他の仲間にも気づかれないように後ろから剣で刺す。


 次に移る。

 障害物に隠れている時に詠唱を済ませていた魔術を使う。


 次は仲間から少し離れている男に触れて電気を流す。

 越後屋に来るまでは気づかなかったけど私は雷の魔術属性が使えることが判明した。魔術が使えず家を追い出されて泣いていた時の私はもういない。

 でも、今の私の雷魔術は少ししか出せない。


 そこでシオン様に教えてもらった。

「対生物であるなら、そこまで強い電力はいらないぞ」

 諜報部に配属を望んで自分の戦闘スタイルに思い悩んでいた時にシオン様と偶然出会いました。よく出掛けられていて滅多に越後屋では姿を見ることはありませんが、これは私にとって幸運でした。


「雷魔術に適性が? でも、出力がそんなに強くなくて意味がない、と」


「はい。それでもう諦めて開発の方に回ろうと考えていました」


「それは勿体ないな。人がどれくらいの電流で死ぬかわかるか?」


「えっとデンリュウって何です?」


「おっとそこからか」

 そこからシオン様との長く厳しい勉強の日々が始まったのです。


 もう物理や科学、生物に関して隙はありません。

 私のこの五ミリアンペアの電流で人なんて痙攣させてやりますよ。なんなら、十ミリアンペアで筋肉の収縮で硬直させて身体の支配力を奪ってやりますよ。


「じゃあ、ここで問題だ。心室細動を起こして死に至るのは何ミリアンペアからだ?」


「ふっ、五十を超えると、ですね。ちなみに一秒以内に遮断すれば心室細動や死亡する恐れはありません。……でしたよね!?」


「ああ、正解だ」

 あぁ、思い出す。あの辛く険しい道。あの正解した時の終わった感。

 まぁ、ともかく人体にはほんの少しの電気でも効果があるということ。


「がっ……あ、ああああぁぁっ!!」

 私が触った男は絶叫した。私の着けている薄い手袋は雷属性の強化の効果を付与させてある魔道具。


「おい、何があった!」

 身体中の痛覚を一斉に刺激して耐え難い痛みを全身に走らせるのだ。手を放せば身体を支えきれず地面に倒れていた。

 確実に一人を潰すためだ。声をあげられても仕方ない。


【スキル 潜伏】を姿勢を低く走りながら使い、中央のリーダー格の男を狙う。発見はされているかもだけど、このスキルで見えにくくはなっている。

 勢いをそのままにスライディングで近づき、剣で足を斬る。

 苦痛に身をかがませた瞬間、私は立ち上がって背中を斬りつける。


 早くも反応した敵が剣を振りかぶる。

 私は身体を捻り、手の甲を下にして剣で防ぐ。ついでに言うと、私の剣は連接剣。蛇腹剣とも言われている。シオン様から使い方を習いました。この剣は珍しいので先生が中々見つからずに苦労していたところです。

 剣と連接剣がぶつかったことで後々から来た連接剣の刃先がカーブして敵の身体に刺さる。


「貴様はなんなんだ!」


「あなたには関係のないこと。それを知ってあなたはここからどう挽回する?」

 純粋な疑問をぶつけて剣を突き刺し、次へ向かう。


「私は生きる。居場所をくれたメネア様、生きるために必要なことを教えてくれるシオン様、一緒に働いて共に分かち合う仲間たちに恩を返すため、私は生きる」

 一人でその後も立ち回っていたら、敵が全員倒れ伏していた。


「お疲れ様です」


「警備隊の皆さんですか。夜分遅くにどうも」


「剣戟音と叫び声が聞こえるとの通報を受けてまいりました。エチゴヤさんはすごいですね」


「何がです?」


「いやぁ、こいつらはCランク相当でこの人数ですよ。それをたった一人で。流石です」


「そうでしたか。Cランクというのは、あんまり大したこと無いのですね」


「それが言えるのはエチゴヤさんの所だけですよ。ところで、今日はあなただけですか?」


「ええ。ですから、一人でやったと」


「それは良かった」


「良かったとは?」


「エチゴヤ商会の従業員殿たちはあなたのようにこういう輩を積極的に打ちのめす人もいるのですが、時に周囲に少しばかり被害を出してしまう方もいらっしゃるので」

 うちにはエチゴヤに敵意を向ける敵には過剰に反応する人が多い。私もその一人だと言われているのは最近になって気づいた。好き故の行動ですね。


 また別の日。

 人々が眠りについた真夜中。男たちの悲鳴と怒声が響いていた。

「逃げろ! 俺たちじゃ敵わねぇ!」

「ガキがっ、ぎゃあああ!!」

「ぐがっ!?」


 声の元である男たちはエチゴヤの従業員を襲いに来た襲撃犯であり、今まさに従業員の反撃によって瞬く間に制圧されている最中。

 勝てないと悟った襲撃者のリーダーがまだ倒されていない三人の男に指示を出したものの退く前にそれぞれ腕と足の骨を折られ、意識を奪われてしまう。


「ま、待ってくれ、降参だ! 俺らはもうお前らに手は出さねぇ!」


「ははは。私は命乞いを聞かないことにしてるんでな。エチゴヤに手を出そうとしたこと後悔させてやる」


「そん……かはっ……」

 見逃して欲しいと頼み込んだ男の目には止まらぬ速さで接近した従業員は男の顔を殴り、気絶させた。


「これで一件落着、と」

 従業員は周囲を見渡し、既に気絶するか手足を折られて呻き続ける総勢十三人の男たちを眺める。


「久々にきたなぁ……」

 そう呟いた数秒後に、遠くから四人の男たちが駆け寄ってくる。

 警備隊だ。


「何事だ! と思えば今日はあなたですか。こいつらが今日の獲物ですね?」


「おう。いつも通り、よろしく」


「ああ。大きな怪我の無い者から縛り上げろ!」


「あの! 大きなけがが無い者が見当たりません」


「いるだろう、ここに」


「腕と顎が潰れているのですが……」


「そのうち慣れる。この人ならこの位が軽傷の内だ」


「えぇー」


「しかし、この惨状。必要に駆られての事だとは分かっているが、恐ろしいな」

 警備隊の人が襲撃者を担ぎながら話す。


「……襲ってくる人がいなくなれば、私もこんな事をしなくても済むんだがな」

 襲撃者が来てくれることに喜びを感じている私がいる。メネア様に訓練で鍛えられた力を試してみたいと考えてしまう。


 襲撃者に使ったこの麻痺薬、もうちょっと強力なのを開発部に頼んでみよう。

 それとこの試供品の魔道具、威力が有り過ぎて襲撃者の一部が焼け爛れてしまったいた。

 この魔道具は危険封印指定だな。


 というか、この魔道具に関してはどこまで強力なものになるか遊んでいた気がする。前にもこんなことがあった。その時もこういう奴らが相手だったから良かったけど。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ