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六十二話 創造神、使える人材を探す

「畜生! なんなんだよ、あれはっ! ちっ、次の行動は……」

 苛立つフードを被った男がスラム街を人目につかないように走り抜けていき、一つの建物に入っていく。一緒に捕まった他の奴は着いていないようだ。


 薄暗い部屋にはテーブルを囲み五人が座っていた。


 その対面に勢いよくフードを被った男が座った。失敗やその後の屈辱に苛立ってテーブルを叩く。

「おい! 確かお前の情報では、シオンとかいうガキは例の商会に魔道具を借り受けただけの子供だったな。今までの奴の功績はその魔道具の恩恵だと、奴自身に脅威は無く、危ないのは例の商会の方だと!」


「なんだ? 失敗したのか? ははは、ガキ一人を殺すのをミスっちまったのかよ」

 フードの男だって初めは簡単な仕事だと思っていた。相手は子供。闇ギルドに長くいるフードの男も確実に仕留められる自信があった。

 それでも一応のために情報を集めたが、大した情報は無かった。だが、例の商会のお陰という結果を導き出した。

 なのに、――


「うるさい! あんなのを相手にしてられっか、俺は逃げる」


「情けねぇなぁ。ガキ一人にビビり倒してやがる」

 逃げる発言をしたフードの男、急に身体が膨れ上がっていた。


「いやだ、いやだ、うわぁぁぁぁぁぁぁ――――」

 フードの男の身体は破裂し、夥しい雄たけびの後に大量の血がギルド内に吹き荒れる。


「は?」


「うわぁぁぁぁ」

 混乱は伝染した。動揺は隠せない。


「おい、どうした。何の騒ぎだ――なんだこの血は!?」

 闇ギルド、人を殺すのが仕事だ。血には慣れている。今までにこんな死に方は見たことも考えたくもなかったが。


 闇ギルドに次に帰ってきた暗殺者は戻りながら仲間たちに声をかけて人数を増やして着いた。そして、帰ってきて今起こっている同僚の死を見て青ざめていた。


「おい、あんた、何が起こってるんだ。あんたも今死んだやつと同じ依頼を受けてたんだろ!?」

 その後、帰ってきた者たちはギルドのボスに報告した。


「失敗しただとっ!?」

 がしゃあああん! とガラスの割れる音が響く。

 それぐらいなら闇ギルド員だってビビらない。ボスの苛立ちを物にぶつけただけだ。覚悟の上で話した。


 帰ってきていない者は、シオンによって各地の裏社会でフードの男のような死を迎えていた。その場に居合わせた裏の人たちはさぞ驚くことだろう。


「お前ら、あのシオンという奴について教えろ」

 再度計画を練るため、死にたくないために相手の様子を聞くボス。


「彼は俺の試験を放棄しようとしたのでお亡くなりになってしまった。同様に他の場所でも彼と同じようなことが起こっているよ。あぁ、なんと悲しきことか。お悔やみ申し上げる」

 闇ギルド全体にどこからか声が響き渡る。


 その瞬間に全員が戦闘態勢をとった。ボスらは、戦いやすい部屋の外の大広間に移動する。

 短剣を抜いて構える者もいれば、暗器を手の中に潜める者もいる。全員で声の正体を探すが、部外者はいない。


「俺は優しい。仲間意識がないにしてもギルドの同僚を亡くしてしまったそんな君たちにはその同僚のところへ導いてあげよう。これで君たちも悲しむ必要がなくなる」


「どこだっ!? どこに隠れていやがる!」

 ボスも焦りながらも剣を抜く。


 その瞬間、誰も座っていないバーカウンターの椅子に少年が現れた。


「どうやってここに……」

 闇ギルド員たちもこの場所が簡単に割れるとは思っていない。ここに来るまでいくつかの特定の道順を通り抜けて行かないといけないからだ。


「君は闇ギルドに帰還し、烏合の衆を集めた。つまりは、俺の試験に合格できたということだ。いやはや、過半数がお亡くなりになったこの試験に合格するとは、君は優秀のようだ」

 ボスの問いに答えずに拍手で称賛をするシオン。


「ボスっ、あいつです! あいつが今回の依頼の標的、シオンだ」


「君は優秀だから助けてあげるけど、他に優秀な者を知っているのであるなら、紹介してくれないか?」

 闇ギルド員たちは一斉に身構える。次の瞬間、無駄な行為に終わる。


「彼の選別の時なのだ。うるさくしないで大人しく這いずっていてくれないかな。【闇魔術 状態麻痺(パラライズ)】」

 部屋にいる闇ギルド員たちが一人を残して全員麻痺状態になって倒れる。

 麻痺にも種類がある。身体の機能を完全に停止させて死に追いやる麻痺。単なる痺れで身体がうまく使えなくなる麻痺。

 使ったのは、後者。


「あ、……あぁ」

 身体が麻痺してうまく喋れていない。目の前の一気に冷たくなるようなシオンの視線を浴びて誰もがすくみ上った。


「優秀なのは、誰かな?」

 一人立っている男は恐怖で泣きながら数人を選択する。


「ふむ。確かに彼らはこの中でも上位の人物のようだ」

 シオンはそれぞれを鑑定して確認する。どうやら彼は噓をついていないようだ。


「さて、不要となった者をどう処分するか」


「ひっ!」

 処分の言葉に立っている男が声を上げた。


「あ、最後に一つ質問だ。これに正直に答えた者は助けてもいいと俺は思っている。俺を襲おうとした闇ギルド員、彼らを雇ったのは誰?」

【闇魔術 状態麻痺】を解除する。逃げ出そうとした者は体内から爆破。

 その最初の犠牲者を見て同じく逃げ出そうとした者はUターンした。


「…ンプ……商…」


「は? なんて?」


「エンプレサ商会」


「どこ――って、ああ、あそこか。でも、なんで俺なんだよ?」

 あ、気絶した。


 神殿行く前に寄って見た商会がそんな名前だった気がする。俺が入った時はなんか怒鳴ってたから気まずくて気配消してた時だ。


「ありがとう。情報を吐いてくれて。じゃ、さようなら」

 選択した男と選択されたギルド員以外の闇ギルドで伏していたギルド員は全員消えた。選択された人の中には女性もいた。その闇ギルド員たちが消えた先は森で捕まえた時同様にシオンの世界だった。

 闇ギルドには、女性もいるのか。

 そんなどうでもいい事が頭をよぎった。これでここの建物に人がいなくなり、空きが出る。ここもその内有効活用するとしよう。


 これでしばらくは襲われることも無いだろう。しかし、以前サテュロスの騒動の後に人の状況を見た。心が折れてはいなかった。

 なのに、俺の与えた恐怖にはいとも容易く屈する。あそこにいた人物が特殊だったということか?

 それでも一般市民以下の精神など評価に値しないな。

 件の商会は、別でどうにかしようかな。



 ・・・



 処分が終わってまた別の日。私は王城にやってきていた。

 何回か来ているシオンでは来過ぎて問題になるかもしれないが、今日は最近商会を大きくしている越後屋商会のトップとして御呼ばれされたことになっている。

 その実は、駄々をこねる現国王の側近である称号剛毅を持つ男と差しで勝負して欲しいという要望だった。

 なんだかんだで俺もイスタールの願いは叶えている。色々と俺にしてくれたことと相殺している。


「こちらで先王陛下がお待ちです」

 部屋の前まで案内してくれたいつもの執事さんに礼をして部屋に入る。


「越後屋商会代表ヘルメス、ご命令に付き参上いたしました」


「うむ。……初代様、何してらっしゃるので?」

 この姿は一度見せている。その時のことを思い出したのだろう。


「なんとなくしておこうかなと」


「結構ですよ。それよりも今回の召集申し訳ございません。剛毅がどうしてもと駄々をこねまして仕事にも手がつかない状態になっておりまして」


「俺も聞きたいことがあるから構わんよ」


「聞きたいことですか?」


「それは追々話す。まずは剛毅に挨拶させてくれ」


「では、騎士団の演習場へ向かいましょう。剛毅は騎士団の教育もしているのですよ」

 護衛を付けずにイスタールは俺と演習場に移動する。止めた騎士にイスタールは不要と言ってついてくることを拒否した。


「確か騎士団の者とは過去に決闘をしたことがあったな。剛毅の教育の結果か?」


「その節はすみませんでした。あれは剛毅の管轄に入っていないようで、入っている者であるなら相手の力量はしっかりと見極め横暴な態度も取らないように教育しているそうですじゃ。横暴な態度は後々に自分が痛い目を見るを言い聞かせているみたいですよ」


「随分としっかりとした人物のようだが、それでなぜ手をつかない状況になったのだ?」


「側近同士の会話で初代様の話が出まして、その話を聞いた剛毅が呼んでほしかった、なぜその場に自分がいなかったのか、と言い出し始めましてな」


「まぁ、いいんじゃないか。剛毅ってことは戦士だろう。最近私は魔術ばっか使っていてな。イマイチ体術を使えていないのだ。魔術は便利だからつい使ってしまう」


「儂としては初代様のご迷惑じゃなければそれで」


「お前だって闘いを見たいんだろう。だが、お前がそれだけの理由で俺を呼び出すとは考えつかないが?」


「ははは、バレていましたか。側近たちはそれぞれの称号のトップなのですが、自分たちの上を知ったらもっと強くなれるのではないかと思いまして。幸い、側近たちもやる気があったのでお願いしたしたいです」


「でも、私はイスタールは剣の方が好きだと思っていましたが?」


「儂は美しい戦い、綺麗に攻撃・カウンター・回避・連撃をする姿を見たいのですよ」


「そ、そうか」

 熱弁するイスタールに圧倒されてしまった。


「!」

 イスタールの姿に気づいた騎士を始めに跪いていく。


「おや、先王陛下。こんなむさい所に何の御用で?」


「こんな所ではないぞ。王国の守りをしているお前たちの牙を研ぐ場所なのだ、謙遜とはわかっているがそういうものではないな」

 立派に王をしているのだな、我が子孫らは。俺の次に国王を任せたあいつもこんな感じだったな。


「ありがとうございます。ところで、そちらの青年は?」


「ああ、この青年こそがお前の待ち望んでいた相手じゃ」


「なんと! この青年が? あまり筋肉があるように見えませんが? 技量が上手いのでしょうな」


「ヘルメス殿。他三人にも事情を説明したように彼にも教えてもよろしいですかな?」


「はい。先王陛下がそう望まれるのでしたら」

 イスタールの疑問に周りに気を付けながら答える。


「そうか。其方とて大勢の目の前で自らの事情を話されたくないだろう。三人で話すとしよう」

 演習場を囲む形になっている屋根付きの廊下に話に行く。


「俺が聞いた話では10歳前後の少年だったはずです。それに少女らしい少年だとも。少なくともここまで身長があったようには聞こえなかったのですが、これは?」


「この方は今、変装中なのだ。紛れもなくこの方はシオン殿じゃよ。同時に越後屋商会の代表のヘルメス殿でもある」


「そうなのですか?」

 剛毅の称号だからか筋肉で出来たような人だと思ったら意外とスマートな体型だった。


「ん? ああ、イスタールの説明で合ってるよ。これを変装と言ってもいいのかは疑問だがね」


「そのようですね。姿は誤魔化せましょうか、声も顔も身長も違うとなれば如何様にも化けられてしまいますな。それに貴方の能力自体も誤魔化せるようですし」

 へぇ、ちゃんと手の内は確認してるか。当然だな。


「その程度の力であのランドルフを倒したのですか? 不思議です。先王陛下から事情は伺っております。しかし、……」


「いや、あの時はある証明でしたからね。ヘルメスの変装時にはこのくらいの力なんですよ。シオンではあなたと闘いはしませんよ、勝負にもならないでしょうし、今回はただの手合わせですから」


「ほぅ、言ってくれるねぇ。筋力だって俺よりも低い。敏捷性も俺より低い。どう倒してくれるのか楽しみにしています」


「体術は力のみじゃないことを教えてあげましょう」














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