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五十九話 創造神、見つけちゃう

「我々教職員とAランク冒険者以外はここでこの拠点の防衛に当たる。そして、Aランク冒険者の方々にはこの先に進んでもらう。これからは私もついていけないので指揮はライオス殿にお任せする。それとシオンくん、君は向こうのライオス殿の方に向かってもらう」


 え? 俺が?


「疑問に思うのも無理はない。君はまだ学生だからな。だが、君は確実に我々教職員よりも実力が上だろうと考えている。あの化け物を仕留められたんだ、奥の魔物との戦闘も我々より役に立つはずだ。教員としては不甲斐ないがね。それとライオス殿たちがいなくなったら魔術要員と回復要員が減ってしまう。リン殿、サリア殿はここで拠点防衛を手伝ってもらいたいのだが」


 ぬぅ、見せすぎたのか? でも、摩耶たちもいるし、危機に瀕することなんてそうそう無いだろう。

……フラグじゃないぞ。


 エチゴヤからリンが、悠久の英傑からサリアが、ここに残るらしい。こっちの魔術要員は俺とゼノビアが行うようだ。


「では、出発する」

 と、ライオスが第二の拠点で言ってからかなり森の深部まで進んでいた。その間、何もない。


 木々が折られているということも無く、豊かな森が続くのみ。むしろ気が減ってきている気がする。

 さらに進み、あったのは、森にぽっかりとクレーターのような穴が開いている。

 その部分は、木々も草も何もなく、そのど真ん中に何かがいる。


「ん? あれは何でござろうか? 骨? 不死の物の怪か?」

 中心の黒い影にテスタロッサは首を傾げる。


 その言葉にライオスたちも目を細めて中心を見る。

「よく見えないな。黒いってのはわかるんだが」


「そうね。さすがはエルフ、目もいいのね」


「わ、私だってちゃんと見れていますわ」

 俺もこの場に違和感を感じている。この場には、濃密な魔力が漂っていた形跡がある。そして、この魔力の波長、知っている。


 そもそも魔力には熱などはないが、波長がある。魔力を供給したときに温かいと感じるのは、波長がたまたま合っていた場合に限る。波長が合った方が効率がいいので俺は供給する時に相手の魔力の波長に合わせている。


 ここにある魔力、これ……三人の魔力の波長があった。そして、その人物は、もういない。

 それは、ネーヴァ・エインリオ・スヴァルトの三人だった。あいつら、後始末くらいはしてから帰れよ。


 では、あの中心にいるのは?

 調べたが、普通の魔物だった。別に特異性があるということでもなく、ただの魔物だった。


「あれ、やばいな」

 と、ライオスが。


「危険よ、危険。早く逃げましょう。あれは私たちの手に負える魔物じゃない。ねぇ、あなたたちエチゴヤはあれをどう思う?」

 と、クリスが。


「無理」

 と、ウルが。


「ええ、そうですわね。あの魔物、こっちには気づいてはいないのでしょうけど、奇襲をかけて最大の一撃を全員で打ち込んでも勝てないでしょうね」

 と、ゼノビアが。


「メネアさんはどうかな? もしかしたら、倒せるんじゃない?」

 と、摩耶が。


「如何にメネア殿と言えどもあの物の怪は……」

 と、テスタロッサが。

 俺以外の全員一致で撤退が速攻で決まった。


 吼えるモーションに入った。

「ぐっ」

 あーあ、みんなにスタンの状態が追加された。


「なんだ、この攻撃は!?」

「身体が……動かない!」

え、知らない? 咆哮のスキルのはずなんだけど。


 ただ全員が木の陰に張り付くように身を潜めて気配を消すことに必死になっていた。すぐに逃げ足すことが出来ず、恐怖で動けなくなっている。


 皆の話で危険とされている目の前でじっとしている魔物の名は、朽ちた竜である骸骨竜(スカルドラゴン)。この時代では、Sランクに位置している魔物。教会が忌み嫌うアンデッドの魔物。


 骸骨竜の能力は、基本的に噛みつきと体当たり、咆哮での威圧、魔術攻撃に竜特有のブレス。

 魔術の属性は、闇魔術。使う魔術は、周囲を負のエネルギーで吹き飛ばす【闇魔術 負の暴発(ネガティブバースト)】。


 竜並みの負の力を自分に集めて回復する【闇魔術 屍竜再生】。これは自分に悪に傾いている場合は回復・強化になるが、善の場合は自分にダメージが入ることになる。


 それとアンデッドの兵団を呼び出す大変めんどくさい【闇魔術 死兵軍団(アンデッドレギオン)】の三つの上位魔術と中位・下位の全てを使う。

 個体差はあるだろうが、だいたいそんなところだ。


「一回、撤退しよう。ギルドに行って冒険者を集結させよう。可能なら、国軍にも出てもらって」

 骸骨竜の発生は、おそらく俺が授業でネーヴァを呼んだ日にエインリオとスヴァルトが可愛がられているネーヴァを笑い、ちょっとした指導が入った。その指導をここで行ったのだろう。

 その余波が今も残り、ネーヴァたちの巻き添えを食らった魔物が残った魔力を吸収し、アンデッド化している。


 ここは蛇系の魔物が多く生息していた。

 そして、あまりの魔力量の多さに蛇から竜に進化したのだろう。

 よって、ここにアンデッドの竜が発生した。

 進化にも色々ある。レベルを上げて進化するのか。又は、魔力を膨大に吸収し、その魔力量に耐えて身体を自ら破壊するのか、進化に繋げるのかという賭けもある。

 あの骸骨竜は賭けに勝ったということだ。


 やっべ、直接的に俺に原因があるわけじゃないが、間接的には俺にも原因の一端がある。結局、変わんねぇ。俺の所為じゃん。


 罪悪感が心に存在しながらも黙っておく。うぅ、俺の所為じゃないよ、俺の所為じゃない。ちょっとは俺の所為かもだけど。

 俺は頭を抱えた。


「動く気配もなさそうだし、すぐに引こう。拠点に戻って情報を伝えよう」

 森の中に戻り、骸骨竜が聞こえていないにも関わらず静かに茂みをかき分けて拠点に帰る。

 それほどに相手が強く、バレないように見るだけで体力を持っていかれたようだ。俺は普通に歩いて戻っていたら、クリスさんに怒られた。


「ふぅー、心臓がまだバクバクしてんぜ。怖かったな、あれ。ははは」

 ライオスにも俺にも称号欄に竜殺しがあって竜への特攻が付くわけだが、あのレベルの竜までは攻撃力が届かないようだ。

 俺もあれにはドキドキしてるよ。俺の配下が関わっているんだから。


「怖いなんてものじゃないわ。あれは死そのものよ。何百年に一度の災害になるかもしれない」

 ライオスは笑って気を逸らしながらも汗がひどく吹き出している。


「違う。あの魔物は今までの魔物と格が根底から違う」

 摩耶たちも怯んでいる。


「同意。死の気配」


「そうですわね、ウルやクリスさんの言う通りですわ。それにこの森の逃げ出す理由は間違いなくあの魔物ですわね」


「シオンは何ともないのか?」


「ええ、俺は別に」

 俺はそれどころじゃないんだよ。どう隠蔽したものか。


「もしかして、なんとか出来る?」


「クリスさん、確かに俺はあの騒動で化け物を一人で倒すことが出来ました。しかし、あの化け物とこの化け物、存在そのものが違うことはご自分ですでに明言しているではないですか。そう判断した魔物に俺のような子供が倒せると?」


「まぁ、そうなのですけど……」

 とはいえ、俺の関係者が起こしてしまったことだ、ケジメは付けなくてはならない。しかし、俺が発見したのはライオスたちと一緒にいるこの時だ。今更秘密裏に消すことはできない。

 しかも、危険性も見られ、すぐに報告しに行くと言う。それを止めることはできないだろう。だからといって、率先して俺が単独で撃破してしまうことは異常過ぎる出来事だろうな。


 どうする。

 前に俺が起こしたあの騒ぎならまだ治まっていないはず。

 なら、ここにも落とすか。だが、偶然と言い切るにも無理があるのはわかる。しかし、骸骨竜を国防軍と冒険者でどうにかできるとは思えない。


 どうにか天災ということで勘違いしてほしいな。


【付与魔術 魔攻上昇】からの【空間魔術 流星群】。

 こそっとシオンは魔術を使う。


 シオンは【固有スキル マップ探査】で骸骨竜の詳細を確認しながら拠点への帰路につく。

 流星群という名前だが、使用時に隕石の個数は設定できる。今回は一個で。【スキル 限定】も解除。加護の能力も使う。攻撃力を上げていく。

 加護まで使う必要が無いが、念のために。


 誰にも気づかれていない。と、空を割って隕石は姿を現す。目撃者すべては立ち留まり、隕石をただ眺める。


 轟音とともに空を切り裂き、その質量と圧倒的な速度で大地を打ちつける様を。不可避の速度で迫る光の塊――猛烈な熱気を保持する岩石の衝撃波が自分に近づく様を。視界が光に包まれていく中、ライオスたちは走馬燈を見ていた。


「【空間魔術 空間固定】」

 シオンは、目の前の空間を定着させて爆風や土砂の影響を受けないようにする。シオンたちを取り囲むように空間がそれぞれ固定され、ここは不可視の防壁によって守られる。

 衝撃波は拠点にまでは届いていないようだ。


 あれ? なんで俺がこんなにも気を使わないといけないんだ? 

 なんでわざわざ色んなことを隠しているんだ? そうだよ、俺、別に悪い事をしたということもないんだから、隠蔽しなくても。


≪レベルアップしました……≫

             ≪……レベルアップしました≫


 確か、理由は、この時代の貴族とかに俺が異常な力を持っていることに気づかれると、魔女裁判のようなことや俺を手に入れようとする面倒が付きまとうから。

 でも、今更じゃね。所々ですでに狙われてんじゃん。だが、それは相手の勝手な恨みごとの逆切れでの事だ。

 思考中の合間にレベルが上がる報告が何度も上がるが無視し続ける。成長系スキルがあることで遂にはレベル100の大台へ。


 まだ俺を手中に居れようとする勢力は、無いはずだ。というよりも、俺、そろそろ下界に降りた今回のテーマを決めないとな。最初は、旧友に会いに来たという目的だった。だが、こっちでもあまり面白いことがない。こっちで強者を探す理由の中に収集癖が含まれている。だから、希少な物は手に入れたい。


 さっさと貴族になって回避しよ。爵位授与式は俺に合わせて長期休日期間の間にしてくれるようだし。いやぁ、気を使ってもらってるなぁ。


「さっきの今でなんなんだよ、今日は? 厄日か?」


「今の岩、知っています!」


「シオンくん? あの空から降ってきた岩のことを知っているのね。教えて」


「噂程度ですが、前にも同じようなことがあったそうで各地の商会の本店があの天災にあって被害を受けてるようです。民間人の被害はなく、魔族の仕業、神の怒りなどが街で広がっていました」

 ……口笛って咄嗟には吹けないものだと学んだぞ。


「天災か。魔族には、こんなこと出来ないだろうし、やるならもっと被害の出そうなところを選ぶはず。今の骸骨竜のだってそのままにしておけば、こっちの被害が増えて国の力は弱まる。やる理由もないか。なら、天災・偶然ってことだな。神の怒りってのは、一番ねぇな。神様はこんなことに首を突っ込んでこないだろうからな」

 よし、天災になった。


「そんなことよりあの骸骨竜はどうなったの!?」


「そうだな、あの空からの岩が落ちた場所はあの骸骨竜のいたところだ。確認しに行こう。それでも、油断するなよ、警戒して行くぞ」

 そのあと、ライオスたちと骸骨竜の存在を見に行き、今後のことは冒険者ギルドと国に報告して任せようという案を出した。それに乗る俺。ちょっと大きくなっちゃったけどセーフ。セーフだよな?


「じゃ、戻るか」

 第二の拠点に戻り、ある程度骸骨竜のことなどを省いて要所をさらさらっと話す。そして、第二の拠点を撤収して最初の拠点に戻る。最初の拠点は、隕石を見たこと以外に変わったことは無く、大移動から散った少数の魔物を狩って訓練が無事に終わったらしい。


 なんか一生懸命に進化して竜にまでなったのに一撃で粉砕してすまん。

 きっとかなりの苦労をしたんだろう。進化のために痛みにも耐えたのだろう。すまん。でも、骨は拾うからな。ってこれは意味が違うか。でも本当に骨を回収したわけだし、間違っちゃいないか。


 あの骸骨竜もこの今の世界ではかなり希少な存在なのだろうが、俺にとっては見飽きたものだ。俺の持つ武具の一つである幻想の書ラーグリフは俺の趣味の結晶のような物だ。様々なものを集め記録していったものがあの武具になったわけだ。












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