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七話 創造神、証明する

 王城の庭でイスタールたちを待っている間、椅子に座り、ルーファスが色々と質問をしてきた。


「あの、その刀、見せてくれません? ほへぇ、どうして七色に光るの?」


「ほぅ、お前には見えたのか」

 シオンは少し怪訝な顔をする。


 シオンの持つ刀、神刀天羽々斬は、確かに七色に輝く。ギルドで喧嘩を吹っかけてきた相手の弱さに呆れすぎて怒りがこみ上げてしまって、つい、魔力を放出してしまった。

 その一瞬、刀に魔力をこめて輝かせてしまった。


「うん! 僕はね、つい最近父上に習った方法で【魔眼】を使ってたんだ。せっかくの冒険者同士の試合、この眼で見たら何か違うのかな、と思ってね」


「疑似魔眼は普通、王族に関するものにしか知りえない情報だからな」


「疑似魔眼? で、なんで光るの? やっぱり、秘密?」

 ん? 何かこの会話には、齟齬を感じるなー?


「いや、隠しているという訳でもない。ただ聞かれることがないだけだ。それで、刀が光るのは何故かというのはな、この刀、神鋼緋緋色金で出来ているからだよ」


「ひひいろかね?」


「まぁ、なんかそこそこすごい金属とでもいえばいいだろ」


「へぇー、なんかそこそこすごい金属なんだね」

 ルーファスと会話をしていると、イスタールたちがやってきた。


「お待たせしてすみませんな。わしが側近たちに『初代様が来ているから軽く相手してもらえ』といったのじゃが。信じてもらえなくてなぁ。」


「まぁ、そりゃそうだわな。で、この人たちは?」


「おおそうじゃった、一人は古参の者でな、先代の話し相手によく付き合わされていたそうじゃ。残りの二人は、なんとなくじゃそうだ」


「あなたが神を名乗る愉快な方ですね。私は王より賜った十一聖典が一人、【魔術師 ランドルフ・ジラスト】です」

 杖をついているシルクハットを被っている紳士的なこのお爺さん、信じてないよなー。

 シオンは、お爺さんの言動からそう感じた。

 初見で信じる方がおかしいというものだ。


「私は【女帝 マリオン・オシリス】である。私の幻魔術で主を試してやろうではないか。わははははー」

 派手目な赤のドレスを着た女、マリオンは歴代最高の幻魔術師で、女帝の称号を手にいれていた。


「………」

「彼は、キール・ガラハッド。称号は【隠者】です」

 この暗殺者のかわりにランドルフが紹介をする。


≪エル、創造で全属性魔術を10まで上げて、異世界を出してくれ≫


≪わかりました、マスター。どの世界にします?≫


≪森と平野でいいだろ≫


≪了解です≫

 エルを介して、異界に繋げてみんなで入る。


「なぁ、ランドルフ殿。主は空間魔術を使えるであるか?」

「いいえ、使えませんよ。アリシア殿はどうですか?」

「私はLV.3ですけど使えますよ~。でも、出来るのは地図作成(マッピング)にアイテムボックス、転移くらいですよ~。異界なんて、さすがアシュ~」



 ・・・



「さて、アリシアよ、お前だけでは俺と試合をするのはつらいだろう。なので、イスタールの側近たちもお前の方につけるぞ。俺の方もどんどん召喚していくからな」


「いつも通りだね~。前は私たち勇者パーティ全員対アシュだったもんねぇ~」

 周りを見ると、勇者パーティの関係性に全員が驚いていた。

 勇者の仲間に魔術師がいるのは、当然のことだが、それでも後衛職の魔術師が勇者に勝てるとは思わない。ましてや、勇者側が複数で挑むなど。


「あなたは、勇者よりも強いのですか? それもアリシア殿のパーティは優秀な部類のパーティでしたが」


「だから、一応は神だと言っただろう。前衛職も後衛職も全てできる」


「確かに~、アシュは~、神様みたいに強かったよね~」


「そんなことはいい。始めるぞ。先手は譲ってやる」

 そんなことを言っていると、側近たちとアリシアに一斉に攻撃された。

 アリシアの告げたことによって早く自分たちがどれ程その存在に近づけるのかを試したかったのだろう。


「◆◆ ◆ ◆◆◆…」

「◆ ◆◆ ◆ ◆◆…」


 ランドルフは、【雷魔術 雷撃の雨(サンダーヘリックス)】で幾千の雷を落とす。

 マリオンは、【幻魔術 恐慌(テラー)】と【幻魔術 盲目(ブラインド)】で視覚を奪い、恐怖で動きを止める。

 キールは、【スキル 隠密】【スキル 瞬動】【スキル 虚撃】で背後から短剣で首を狙う。

 アリシアは、【スキル 無詠唱】【氷魔術 氷結の棺(フリーズコフィン)】でマリオンに合わせてシオンの動きを抑える。


「先手は譲ったが、いきなり全員でぶっ放して来るか」


 しかし、シオンはそれでも顔色を変えずに対処する。

 ところで、この世界では幻魔術は一般的でない様子。つまり、【女帝】のマリオンが使う魔術は、民にとって謎。どこまでのレベルを使うことが可能かは不明ということ。でも、彼女が詠唱をしていることであまりレベルが高くないことはわかるぞ。あまり注意しなくとも良さそうだ。


 シオンが発動するのは、【雷魔術 流星走駆(ミーティア)】。

 流星の名を冠するミーティア。瞬く間に事象と成って、顕現する――白き雷。

 激しく迸る稲妻の音。

 その姿は一瞬の内に白い雷を纏ったようになる。

 そんなシオンが一歩を踏む。

 身体にまとった白雷の残光を残して、その場から消え去った。

 自身の動きを光速にし、アリシアたちの間をすり抜ける。異界の地に一つの流星が駆ける。

 ランドルフの雷をかわし、マリオンの幻魔術を抵抗(レジスト)する。

 アリシアの魔術は相手を拘束する氷の魔術、光速で動いているシオンに狙いが定まらない。

 いきなり視界から消えたシオンにランドルフたちは転移魔術を使ったのだと錯覚した。そして、軌跡を描くシオンの動きに疑問を思うよりも早く光速による音が響く。


 アリシアが【空間魔術 転移】でシオンに追いついてくるが、

「アリシア! 戦闘では接近できる距離なら転移はなるべく使うなと言ったのを忘れたのか。人の反応速度では、転移後にミーティアの動きでやられていただろ!」

 流星走駆の加速によりまた離される。


「うぅー、でも当てらんないんだもん~」


「カウンターでもすればいいだろ」


 あらかたランドルフたちの攻撃をよけ続けたところで、シオンは【召喚魔術 眷族召喚】をした。

 召還した眷族は、武の最終地点である仙人ヘイムダルだった時代の仲間だった剣聖シリウス、魔女ナハト、弓聖アインツだ。

 俺が四対一で戦ってもいいのだが、まだ手加減の具合が定まっていない。過剰攻撃になってしまう恐れがある。


「おお、久々に召喚してくれたなぁ、ヘイムダル」


「です。ヘイムくんですぅー。クンクン、むはぁー」


「まったく、やめなさいといつも言ってるでしょ。で、今回は何ですかー?」


「ああ、試合だ。そして、シリウス、ナハト、かつての名を呼ぶな! 名前から俺の過去がバレる。あの時代でもだいぶやらかしてきたのだ」


 シリウスは、竜人族で剣については知能が高くなる剣バカ。

 俺の匂いを嗅いでくる魔女、ナハトは魔術しか興味のない女。

 呆れている弓使いの女、アインツはめんどくさがりだ。


 よくこのメンツで竜種などを狩っていたり、戦争で暴れまくっては、「死にたくなければ、このクランについていけばいい」と言われたりしていたものだと思い出し笑いが出る。今では全員が一応が神だ。


「三人で戦ってみてどんな感じか聞かせろ」


「はいよー」「代わりにヘイムくんの何か頂戴」「はぁー、早く帰りたい」


 三者三様の反応をする。そして、シオンから受け取った聖剣グラム、焔杖イグナイトスタッフ、海嵐弓アルヴァンドを装備する。


「何かしてくるのである」

 マリオンがアリシアたちに注意を促す。


 シリウスは、キールを狙っていった。聖剣グラムは魔力を込めるごとに重さと切れ味を増していく剣、キールの短剣が受け止められるはずもなく、あっけなく斬られる。まぁ、相手が剣聖と呼ばれる男なのだから仕方ないことだ。

 すかさず、シオンが【神聖魔術 蘇生(リヴァイブ)】を使い、生者に戻し、キールが唖然とする。


 俺は生き返らせる。死ぬことは別に恥でもなんでもない。ただ弱いのだから。

 蘇生を受けることも悪いことではない。

 しかし、死ぬという行為は意味のあるものでなければならない。仲間が死に、悲しむのではなく死に貶めた攻撃を理解したりでも、喰われて他者の物に変換されるでも。

彼らが何かをすることも無く死んだことで抗うことを忘れず、国王の側近についたことで止めてしまった歩みをこれからも進ませてほしい。

 グラーフにはこれを望めまい。だが、獣に『待て』を覚えさせるのも生物の飼い主たる創造神()の役目。


 ナハトは、アリシアと戦い、戦いの後の褒美しか考えていなかった。

 アリシアが【風魔術 暴嵐(テンペストサイクロン)】【雷魔術 雷連弾】を放つ。

 しかし、ナハトの【空間魔術 全てを飲み込む門(アブソープゲート)】で虚空の穴に魔術が吸い込まれる。

【空間魔術 魔弾の射手】でよってアリシアとの死角からの攻撃を可能にし、【火魔術 星気の太陽(アストラルサン)】の魔術によって、死亡。

 それも即座にシオンが【神聖魔術 蘇生(リヴァイブ)】で生者に戻す。


「あーあ、死んじゃったか~。アシュの蘇生、久々だなぁ~」

 アリシアは勇者パーティの頃からこの訓練をしていたから慣れているのだろう。


 アインツは、マリオンを相手にする。マリオンが幻魔術を放とうとするたびにアインツが、弓につがえた【火魔術 火の矢(ファイアアロー)】【氷魔術 氷の矢(アイスアロー)】などの矢系の魔術で詠唱の邪魔をし、魔術を使わせない。

 マリオンが魔力切れを起こしたところで攻撃をやめた。最初から魔力切れを狙っていたようだ。


「ふむ、弱い?」


「まぁ、お前らに比べると弱いが、この世界では強い方なんだが」

 アインツの疑問をシオンが答える。


 ランドルフは、周囲を凍てつかせるブレスを速度上昇魔術で避け、辺りを溶岩地帯に変える炎のブレスを【風魔術 飛翔(フライ)】でなんとかかわし、その溶岩を利用して土魔術で飛んでいるハエ―――ランドルフを追い詰めていく。

 その繰り返しでランドルフはすでに満身創痍であった。



 ・・・



「これでわかったか、眷族召喚、これが神である証明だ!」


「確かにこれだけ強い者が眷族ならあなたは神なのかもしれない」


 ランドルフが認めてくれようとするが、俺の言葉をわかってくれない。ただすごい魔術師だと思われている気がする。


 なので、神の領域っぽいもの何かを放とうと思い至った。

 しかし、神らしいものが思いつかない。


 よって、我の子を呼ぶことにした。神を呼べば神と認めるだろうからな。暇であろう神【時空の神 クロケル】を呼ぶ。

 あれ? なんで俺はこんなに自分のことを認めさせようといるんだ? でも、ここまで来たらなんか認めさせたいかな。


「よばれて、とびでて、ぼくさんじょう」

 ピースをしながら登場したクロケルによって話をしていた全員が静まった。


 なんでシリウスやナハト、アインツまでもが黙り、跪いている?

 俺には普段そんなことならないのに? 別にそうして欲しいということじゃないよ。












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