五十八話 創造神、前哨戦かな
「これは!?」
それは目の前の木々を埋め尽くさんばかりの茶色い魔物の群れだった。
「うわっ、すごい数だな」
四本足で歩く蜥蜴とも蛇とも言える様な姿の魔物が走ってきていた。
「気を付けろ! ジャイアントスネークだ! Dランクの魔物だが、常に大群で襲ってくる魔物だ! その場合は一段階上がる!」
「クソ、多い。Aランクが参加する依頼だって聞いたからヤバい奴の相手は任せられると思って受けたんだがな!」
強敵一体よりも大変なのは、まずまずの敵が多数か。
「ほら、ボヤいてる暇なんてねぇぞ!」
ライオスの声に皆が集中を始め、ジャイアントスネークが姿を現す。
「ファイヤボール!」
「ウインドアロー!」
「アイスボール!」
即座に魔術使いたちが攻撃魔術で迎撃を始める。
ジャイアントスネークはとにかく数が多く、それこそ狙わなくてもどれかに当たる程だった。
けれどジャイアントスネークは次から次へと暗闇の中から現れ、減る気配がない。
「この野郎が!」
皆が武器を振り上げ、接近してきたジャイアントスネークに攻撃を加える。
速さに自信のある人や短剣の様な取り回しの良い武器を持つ人は上手く立ちまわっているけれど、大剣や斧を武器にする人はジャイアントスネークの体の柔軟性とすばやさの所為で傷は負わせているものの中々とどめを刺せないでいた。
「ぐぁっ!?」
「クソッ、離れろ!」
「痛てぇ! 噛みつくんじゃねぇ!」
ジャイアントスネークに噛まれる者も出てきてはいるが、あの魔物には毒などのデバフは無いからただの痛覚のみだ。
後ろでバフを付与していた俺は急いで群がっているジャイアントスネークを切り裂き、襲われていた人を救出する。
Aランクの冒険者であるライオスなどは問題ないが、あまり実力のない職員やランクが低い冒険者は少しばかり傷を負う。
「す、すまねぇ」
俺と一緒で後ろで神聖魔術で回復要員としているリンの下に運ぶ。
「回復します、治癒!」
幸い小さい奴だったおかげでダメージ自体は少なかったのか、治療はすぐに終わる。毒とかの状態異常もないことだし。
しかしまずいな。この数を一気になんとかしたいけれど、ここまで乱戦になったら下手な魔術は味方を傷つけてしまう。
ここはひとつ眠りの魔術辺りで敵味方問わずに眠らせた方が良いかな?
だが、俺の使える属性ではない。
くそっ、この世界の人それぞれには、属性があるという情報が恨めしい。過去は全部使えることが普通で、全部使えなければ強者では無い、というのが一般常識だったのに。
俺が今使える魔術は、地と火、空間か。ピンチの主人公ならここでとんでもない力が目覚めるとか、だが……。いや、いけるか!?
俺、すべてのスキルを利用できるし、そんなに簡単にスキルを獲得してたら、怪しまれるか? それとも、面倒が付いてくるのか? どうする、地味な魔術でも創るか? スキルレベルの上昇はどうだ? ちょっとくらい上がったとしても隠していたか、力に目覚めたとしか思われないだろう。でも、どこまで上げる? LV.10は論外だな、7……6くらいにしておくか。
俺の集めたこの世界のスキルレベルの情報では、Lv.1……一般、Lv.3……一人前、Lv.5……熟練者、
Lv.7……達人や王宮に召し上げられるレベル・歴史の中で世界最高、Lv.8……未知、Lv.10……神話や御伽噺。
とこんな感じだった。
8以上はこの世ではあり得ない存在のようだ。その魔術スキルレベル7の者でもレベル7の階位すべての魔術が使えるわけではない。これはどのスキルレベルでも言えることなのだが、ただ魔力をその魔術に必要な分を補填し、陣を覚え、制御出来さえしたなら、その階位まで使えるということ。
俺は王宮というよりイスタールと関係があるので何とかなるだろう。問題は、どのスキルを上げるのか。ま、隠蔽してるだけで真実はLV.10だから、いざ危険になれば助けられる。
一般スキルで個人の強化よりは、魔術スキルを上げて範囲魔術を使えるようになった方がいい。魔術スキルは確定。属性は……森で火はいけない。とすると、地か空間か。空間の方が便利だし、地は却下ということで。
「じゃあ、はい。【空間魔術 破重弾】【空間魔術 空中機雷】」
小規模の重力の塊をジャイアントスネークに飛ばし、身体の一部を消し去り、冒険者と重なって射線が通らない奴はジャイアントスネークの頭上に指定した座標を中心に空間を収縮して一気に膨張させ、それによって起きた振動波で対象を内部から破砕する。
ジャイアントスネークは痛みに悲鳴を上げながら地面に倒れる。
「皆落ち着け! ジャイアントスネークは一体ずつなら恐れる様な相手じゃない! 魔術使いはジャイアントスネークの動きを阻害するような魔術を使ってくれ!」
俺の魔術で一息つけることを利用して冷静になり、まともな職員が落ち着いて指示を飛ばす。
「よし、ならこれだ【水魔術 水牢】」
「戦士組は突出するなよ! 仲間同士で背中を守りながら戦え! Aランクの【悠久の英傑】殿、【エチゴヤ】殿は、個々に行動してもらって構わない。暴れてやれ!」
このまま個別に戦っていてはじり貧と判断したまともな職員は固まって対処するように指揮する。おかげで少しずつだけど、確実に数を減らしていった。
「へぇ、ゴリ――ライオスの戦闘は初めて見たけど、やるもんだな」
前線で戦いながらまともな職員の指揮を受けながらも細かい指示はライオスがやっていたライオスを見て思う。
俺はずっと単独での行動が多かったから、大勢の仲間と一緒に戦うなんてあまり得意じゃないんだよね。組んでも俺の攻撃に巻き込んじゃうし。
「ええ、そうですね。さすがは竜殺しのライオスですね。噂では、どこかの国に仕えていた騎士や将軍だったなんて言われているんですよ」
と、一通り治療し終わったリンが声をかけて来る。
「ふぅん」
「あの人は、人の輪に入ることが得意なそうで、気が付けば皆に気に入られて集団の中心人物になってるみたいですよ。それに実力もあるのでパーティを組んでいない冒険者の方々もライオスさんを信用して指示に従う人が多いそうです。これは私が教会にいた時に集めた情報ですよ。色々と話題が多い人だったので」
「リンは教会を信じていなかったのか?」
「? 何故そう思うのですか?」
「信じているのであれば、他人の情報なんて集めようとはしないはずだ。いざとなった時の相手を調べていたんじゃないかと思ってな」
「そうですね。人は他人なんてどうでもいいと思っていますもの。でも、私がそれに属すると?」
「ああ。神聖魔術で治療している時やあのお付きの神官を止めた時に、なんとなくそんな感じがした。治療は、仕事だからしっかりやる。神官を止めたのは、自分のイメージアップと自分の存在をアピールすること。悪人がいれば、それを止めるのは善人と見られるだろう。ついでにその神官に自分を聖女と言わせて自分の存在を知らせる。と、そういう見解だ」
「大方その通りですね。私は教会を信用なんてしていません。いきなり村から『あなたは聖女です』と言われて連れ出す組織を信用なんてできないのは、当たり前だと思うのですが。それで、教会を信用しないと言った私は殺されるのですか?」
「いいや。むしろ、信用に値する。俺も教会は嫌いだからな」
その先にいる聖法国だが。
「その理由は?」
「いつか話すよ」
「なんか私だけ暴露した気がするんですが」
「それは俺がお前の感情を狙いを読み解いた結果、お前が勝手に話しただけだ」
「じゃあ、私も勝手にシオンさんの感情を暴かせてもらいますよ」
「構わん。好きにするといい。ついでに越後屋商会の利益になるように行動してくれてもいい」
「いいですよ。ここは教会より良さそうな所ですし。村に支援とかしてくれません?」
「考えておこう」
などと、話している間にジャイアントスネークは全て倒されていた。




