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四十三話 創造神、終結させるために頑張る

「シオン! お前、この非常時にどうして学園に居なかったんだ!」

 副学園長は学生の俺を戦力として扱おうとしていたのだろう。それは教育者としておかしいことだ。


「住民の避難と化け物の退治をしていました。何か悪い事でも?」


「住民だと! あの化け物どもを討ってしまえばいいではないか! それなのにお前は――」

 学園のシェルターに転移して、副学園長が俺を見つけた途端に早口で罵声が飛んでくる。


 延々と的外れなお説教が来るので、摩耶に現在の状況を遠話を繋げて聞き出す。

「ところで、名前決まりましたか?」


「それなんだが、サテュロスにしてみた」


「サテュロス? なんですか、それ」


「お前が俺に名を付けるように言ったから俺は摩耶に合わせてギリシャ神話から取ったんじゃねーか」


「あなたがそれでいいなら、それでいいんじゃない?」

 それって遠回しな否定だよな。そんなに悪いのか。

 ネーミングについてはちょっとあれだったが、情報は聞けたので遠話を切る。ちょうどお説教も終わったみたいだ。


 ここに迎撃のための運営を設置し、魔道具で街に散らばっている各部隊に指示や連絡が飛び交っている。

 そこで俺は何故か副学園長に怒鳴られている。鬱陶しいな。


「俺は衛兵でも騎士でもない。お前の命令を聞く義務も義理もない! わかったら、俺を不快にさせるな」


「なんだと!」


「副学園長殿、我々は彼の要請でヘルメスさんが救援に駆けつけてもらい、こうして無事にシェルターに運んで貰えたのだ。彼を叱るのはそこまでに」


「っ! ランドルフ殿。それに先王陛下!」

 副学園長は振り向き、声の主を見る。


 王の側近で【正義】の称号を博しているカリファは街でサテュロス討伐に赴いているらしい。


「ですが、彼の軽率な行動を見逃せないものでして……」

 ふふ、お前だって来賓室では散々喚いていたではないか。もう先ほどの出来事を忘れているのか。何でこの人が副学園長をやっているのだろう?


「そこは彼の要請という手柄と引き換えという訳にはいきませんかね?」

 ランドルフが副学園長に提案する。


「わかりました。では、シオン、少なくとも一体はあの化け物の討伐を受け持ってもらう。良いな、これで汚名返上して見せよ」


 だから、お前は俺に命令しても意味ないんだって。それにサテュロスを丸々任せるってことか、それを学生に言ったら余計にダメだろ。できるけどさ、それにアピールにはちょうどいい。

 そういって去っていく副学園長。


「一応助かった、イスタール。ランドルフも。ところで聞きたいのだが、あの副学園長はあんな感じだが、他の商人たちが強気に向かってこないのはなんでだ?」


「いえ、礼には及びません。それは初代様がヘルメス様のときに脅しになったからじゃないですかのぅ?

 それにここを守っていてくれているのは、あのメネア殿ですから。反感を買うことが怖いのではないかと。エチゴヤ商会の情報は不透明で、たまに集まる情報は確信が見えてこない。エチゴヤ商会の幹部の方々はかなりの実力者たちがいます。大した情報が見えてこないのに、あれほどのものを見せますからの」


「それでもあの副学園長には効かなかったのか」


「ええ、そうみたいですの。なぜあのような者が副学園長という立場にいられるのでしょうか?」

 イスタールも俺と同じようなことを考えていた。


「それで大丈夫なのですか? あの化け物のことは」


「問題ない。すでに二体倒している」


「おお、手が早いですね」


「じゃ、俺はアレらを倒して来るとしよう。すまないが、彼らのことを頼む」

 俺は住民たちをランドルフに任せ、また街に出る。



 ・・・



「うーん。あれってさぁ回復する能力があるみたいだね。どうかな、ゼノビアちゃん」


「ええ、摩耶。おそらくはその通りでしょう。おまけに魔術も利きづらいみたいね。ウルは、どう?」


「退屈、戦いたい」


「某もウルに賛成です」

 ウルのステータスにあった【称号 先祖返り】で鬼人として戦いへの欲求が少しばかり高まっているようだ。それに同意してしまうテスタロッサ……。


「で、どうしますの? 彼らの面倒を見るように言われていますが」


「それね。さっき、シオン様から連絡があってそろそろ参加してもいいって。もうあの子たちじゃ限界だろうから」


「では、いつも通りとしましょうか」


「そうだね。私とテスタが前衛、ゼノビアが支援と後方からの攻撃、ウルは遊撃だよね」


「ええ、それでは始めましょう」

 前線では生徒たちが壁まで吹き飛ばされたりしているが、シオンの教えた【スキル 魔力鎧】の効果のおかげで死んではいない。


 残っているのは、オーランドにアルマ、ルーファスとルウくらいだった。

 シャナークと彼らとの間に摩耶の地魔術で壁を作る。


「一端、仕切り直しね」


 さらに地魔術でシャナークを覆う。

 その中には、ウルのスキルの分身たちが翻弄し、壁を破壊されないようにする。【スキル 分身】は使った数だけ自身のステータスを分ける。しかし、自身のステータスは変わらない。そして、使用者の魔力が無くなれば、分身は消える。


 今のシャナークであれば、摩耶の作り出した壁を一撃で壊すことができる。


 摩耶たちはシオンから様々な武器を渡されている。

 ウルの持つ武器もその一つ。能力は、分裂と毒の付与。分裂した一つ一つに毒付与の能力がある。

 ウルは三体の自分を作り、壁の中に入れる。


「さて、じゃあここからは私たちがやるからもう安心していいよ」


「えっと、あんたたちは確かシオンと一緒にいた……」

 摩耶はオーランドに声をかける。


「そうだよ。ここには、シオン様から頼まれてきたんだ」


「あいつは、今どこに?」


「どこだろう? でも、あれに似た他のやつと闘っているんじゃないかな」


「それはあいつ一人でか!」


「そうだよ。あの人ならそれぐらいできちゃうし」

 そうか、確かにあいつなら一人でも倒しそうだな。俺たちが数十人で挑んでも退かせることもできなかった相手に。


 他の奴らの俺同様に動きが鈍い。


 理由はわかっている。

 相手にしているのが、ただの魔物じゃなくて俺たちと同じ学生だったから。それがたとえ嫌いだった奴でも元々はヒューマンだ。殺すと思うと、どうしてもやりにくい。


 せめて正気に戻ってくれればと希望を持っていたが、そんなことはなかった。

 かといって俺たちの動きが鈍くなくても、殺しきれるかといえばできない。できることは精々が戦いを長引かせること。あいつは俺たちの攻撃を受けてもびくともしない。傷をつけてもすぐに回復される。


 だが、シオンはそんな相手に勝てるほどの力がある。それも他人を安心されられるほどの強さが。


 ――悔しい。わかってはいる。俺があいつに敵わないことは。でも、あいつから習った技術を身に着けて大会で他の奴らに勝てていた。だから、あいつにも近づけている気がしていた。


 そんなことを思っていると、マヤさんが地魔術で作った壁がシャナークに破壊された。


「じゃ、ここからは私たちに任せてね」

 摩耶は壁の中から這い出てきたシャナークだった化け物を斬りつけて注意を向けさせる。


「よし、こっちにヘイトが来たよ」


「へ、へいと?」


「某が知らぬ言葉が摩耶殿から良く出てきますな。ウルは知っていますか?」


「わかんない」


「気にしなくてもいいから。それより、来てるよ!」

 シャナークくんだった化け物が私たちを敵と認識したことで、オーランドやルーファスたちのまだ立っていられる者が戦闘不能者たちを近くの壁際まで運ぶ。


 今は私がオーランドに渡したエチゴヤ商会の商品の回復薬でも貰っているだろう。

 ゼノビアの【スキル 鑑定】で体力が三割減っていることを教えてくれる。


「まず足狙うよ」


「ん」


「心得た」

 私は前衛組に指示を出す。


 壁の中でのウルの分身の攻撃で少しは毒が回り、動きが悪くなったシャナークの足を狙って私たち前衛組が攻撃する。


 シャナークが腕を振り、前衛組を排除しようとするが、もう三人は攻撃範囲から退避した後だ。一撃離脱に徹する。

 ゼノビアは風魔術を込めて攻撃し、意識を分散させる。シャナークの耐性は火・水・地の三つ、風属性は通用する。そのためシャナークもその攻撃を無視はできない。


 シャナークの背後に回り込んで背中を剣でダメージを与える。王都からここまでくる間にもレベルアップしてスキルもレベルが上がった。私は【固有スキル 無限収納(インベントリ)】から出した様々な武器で攻める。


 相手の大技の時は躱すか、大盾でガードしてタンクの役割もできる。【固有スキル 武芸百般】はレベルに合わせて全ての武器を使うことができる。剣ばかりを使っていたとしても、その剣のスキルと同じレベルで槍も弓も斧も使うことができる。

 そのおかげでもうシャナークのHPを五割ほど削れてしまった。


「見ろ! あの怪物の背中や足が血だらけだ」


「すげぇな。ずっと優勢な状態を保ったまま攻めてる」

 ウルの短剣がシャナークの首に突き刺す。


「――んっ!」

 突き刺したままウルは、短剣をねじって新しく使えるようになった【スキル 魔力刃】を過剰に魔力を流し込んで爆発させる。魔力の爆発によってシャナークの身体を短剣で突き刺したとこから焼く。


 ゼノビアの鑑定で体力がなくなったと伝えられたと同時にシャナークは仰向けに倒れ動かなくなった。


「で、これどうしますの?」


「私のスキルでしまうよ」


「インベントリだったかしら? 便利な物ね」


「うん。これがあると、持ち運びが楽だよ。それでさ、この後はどうしよっか?」


「殲滅」


「でもウル、もうほとんど終わっちゃってると思うよ。時々空にホルスが飛んでいるのを見たから」


「ホルス殿たちであれば、すでに終わっていましょうな。某も手合わせしたことがあるのですが、手も足も出ませんでした」


「じゃあ、メネアさんのいるシェルターに行こうか」



 ・・・



 シオンの【固有スキル マップ探査】で都市全体を探知する。

 それによると、サテュロスは残り三体。近くにいる。


 この都市の騎士たちと冒険者が協力して一体を、摩耶たちが三体のサテュロスを討伐したようだ。

 最初は五十体。その多くがメネアが王都の屋敷から呼んだホルスによって炎で燃やされ、雷で焦がされ、それぞれの方法でハッスルしていた。耐性は所詮耐える力、無効化できるわけではない。


 シェルターを襲おうとしたサテュロスもいたが、メネアによって殴り殺されている。


 そして、騎士たちのところは交戦中の部隊が二つ。そのうち片方が優勢で、もう片方が劣勢だ。優勢の方には、イスタールの側近【正義】のカリファがいる。

【正義】は、防御に特化した者が得ることができる称号だ。きっと盾役になっているんだろう。


 残り三体は、それぞれで市街を暴れて被害を増やしている。


 さて、あと三体。どう活用するか。

 一体は学園でのアピールに使おう。これはヘルメスの方で行うとして、他二体をどうするか。【空間魔術 格納庫】に死骸があるからサテュロスを倒したっていう証拠には、なるだろう。


 それを学園側やギルドに奪われたりするのだろうか?

 でも、あの感じだと奪ってきそうだよなぁ。でも、こっちも何らかの再利用に使おうと考えてるわけだし。ちなみに教員たちは一体たりとも倒すことは出来ていない。


 従う理由は無いが、越後屋商会のアピールのために動こう。

 副学園長が言ったのは、『少なくとも一体は』とのこと。この都市にいるサテュロスの数を正確に把握している者はいない。ならば、一体だけ渡すとしよう。多くをホルスたちが狩っている。問題はないな。


 シオンは考え事をしながら敵意をあらわにして襲ってくる三体のサテュロスを魔術で滅ぼす。


「……あっ! 今、三体いたのか! やっちまった……ま、いいか」

 これでこの騒ぎも収束していくだろう。


 さて、我々はこの都市でどんな存在になっているか。結果が出るのは、そんなに遅い事ではないだろうな。















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[気になる点] マヤのスキルですが、インペントリではなくインベントリではありませんか?goo辞書ですが、検索するとインペントリという言葉は存在しないようですが。 [一言] 誤字脱字がそこそこ見受けられ…
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