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四十二話 創造神、アピールする③

 さて、今、騎士たちが闘っているところは横取りになるからなー。そうなると、ただトドメをさしただけで終わってしまう。それでは、ダメだ。最初から一人で戦えば、名が広まる。


 剣はどうすっかな。シオンの時にデュランダルは使っているからなー。

 うーん。

 どうしよ。


【鍛冶の神 ヘパイストス】が作った適当な剣でいいかな。

 失敗作でもここでは相当な物で、商品のアピールにも繋がるし。これをどの頻度で売るとしようか?

 月に三本くらいだったらパワーバランスも問題ないだろ。高額にしておけば、一人で全て買う、なんてことも無いでしょ。


 魔術が組み込まれた武具を持っていても商人であれば、不審がる者はいないはず。


「そっちの様子はどうだ?」

 ヘルメスは【空間魔術 遠話】でまだ舞台で戦っているオーランドたちを見守る摩耶につなぐ。この魔術は相手側に空間魔術のスキルがなくとも使うことができる。


「わっ! シオン様かー。いきなり声が聞こえたから驚きましたよ。それでこっちの様子ですね。当分決着は着きそうにないです。オーランドくんが前衛の基点にアルマちゃんを後衛の基点にしているみたいですね。ただあの…何でしょう…異形の姿の何かしらは、けっこう頑丈でして攻め切れていません」


 屋敷に来た頃はもっと驚いていたのに、段々と感覚が麻痺してきたんだな。

 摩耶はアレのことを何て呼ぶか決めていないらしい。俺はアレ、と呼んでいるが、元々がヒューマンで今がその姿なため種族名もよくわからない。


「そうか、だいぶ疲労も溜まってきている頃合いだろう。そろそろ入ってやれ。それと俺はその物体をアレと呼んでいる」


「ええー、可哀想ですよ。せっかくだから何か名付けてあげましょうよ」

 自分が相手よりも強いからこそ言える言葉。摩耶たちは自分たちがアレよりも強いと感じ、屠れると理解している。実際、ステータスはアレよりもかなり強くなっている。


「それは任せる。俺はどうでもいい」


「はーい。考えておきまーす。あ、そろそろ入りますね」

 摩耶が戦闘に入るようなので魔術を切る。

 俺も活躍しますかな。

 ヘルメスは学園から出て、街に向かう。


「む、あそこの戦線が崩れそうだな。横取りになるけど助けに入ったと思えば、いいか」

 家々が崩れ、道には瓦礫が散乱している大通りを走り、無傷のアレ探している。見えるのは、騎士の格好をしている者がアレと闘っている。

 楽しい楽しい市街地戦の始まりだ。あまりにも嬉しくて叫びそうになる。



 ・・・



 阿鼻叫喚の地獄の様な混乱の中にあった。

「クソがっ、鋼鉄の剣が折れやがった」


「ちっ、俺の槍も同じようなもんだぜ」

 王都の警邏中に突然現れた魔物と遭遇した不運な衛兵達が奮戦していた。


「ダメだ、俺たちじゃ敵いっこねーよ」

 部下たちの悲痛な叫びが聞こえる。


「正面から当たるな! 防御を重視しろ! 時間を稼ぎ、援軍を待て!」

 俺は指示が出す。


 近くにある鑑定屋に頼み、あの魔物を鑑定してもらえた。最初は鑑定が失敗に終わると思っていたが、しっかりと鑑定が成功しているらしい。


 あの魔物のレベルは40。王国騎士団長並みの力を持っていることになる。

 俺たちのレベルは10から15で、人数でなんとか耐えてはいるのだが、これだけのレベル差。もうジリ貧だ。


 少しは攻撃を交えてはいる。しかし、俺の剣はことごとくはじき返される

 すると、俺たちとは魔物を挟んで逆の方向から若い青年が歩いて来ていた。


「ここは危ない。早く逃げるんだ」

 俺はこれ以上被害を増やさないよう大声で言うが、青年は反応しない。


「何してんだ、いいから逃げろ!!」


「ああ、すまない。考え事をしていたんだ。ありがとね、そう声をかけるだけでも君はいい人のようだ。これは私の出会ってきた者がひどかったのか?」

 青年はさらに魔物に近づく。彼の手には剣が握られている。彼は俺より若く見える。レベルも俺よりも低いだろう。となると、彼の自信は持っている剣にあるのか。


「じゃ、使わせてもらおうか。【超加速(ハイヘイスト)】!」

 剣が光りだしたのを俺は見ている。魔術の詠唱をしているようには見えなかった。あの青年が持つ剣には魔術が込められている。あの剣は魔剣なのか。


 俺は夢を見ているのか。王城の至宝と呼ばれてもおかしくないような魔剣を携えてあの化け物を圧倒している。あの化け物の身体を切り刻んでいく。


 それは魔剣の力だけでなく、彼も相当な腕前だ。俺のような一般騎士でも分かるような強さ。

 だが、魔物も倒されるのを待つばかりではない。

 青年に向かって体当たりを仕掛けてきた。


「ふふ、いい調子だぞ。化け物、もっと俺のために働け!」

 あの化け物の攻撃をもろともしていない。化け物の攻撃の一切を躱している。


「多少は頑丈か。再生能力は遅め。知能は下がっているみたいだな」

 青年は何かを言っているが、それを聞けるほど俺に興味は無い。おっさんが何か叫んでいても無視するだろう。

 その化け物が両手を組み、ハンマーのように青年に殴りつける。

 俺は青年の最後に目を背けてしまった。


 恐る恐る青年の状況を確認したのだが、そこに青年が倒れている様子はなく、逆にあの化け物が倒れている。あの化け物は、足を失っていた。

 なおも青年はあの化け物を斬り付ける。足の次は、腕、関節、首筋、喉、瞳、と。

 やがて化け物の息絶えたのが分かる。


「さて、君たち。君たちは怪我をしているね。立てないかい?」


「い、いえ。俺は足はやられてはいません」


「お、そっちの君は足を怪我しているじゃないか。そんな君たちにはこれをプレゼントしよう」

 ヘルメスは騎士たちにマジックバッグを渡す。


「え! これはマジックバッグじゃないですか! こんな高価なものをもらう訳には」

 俺の驚きの声に同じくけがで動けない仲間たちも驚きの声をあげたりする。


「大丈夫。私は商人をしているんだ。あ、商会の名前は、越後屋ね。それでこの中に色々と薬があるから君の仲間や怪我をした住人たちに使ってあげて」


「は、はぁ? わかりました。エチゴヤですね」


「そして、武器もあげようじゃないか。じゃ、私は他も助けなきゃだから」

 そう言って青年は去ってゆく。


 青年から武器までいただいてしまった。俺よりも歳は下だろうに、こんなに貰い物をして。しかも、その頂いた武器。青年が使っていたものよりは劣るが、それでも素晴らしいと言える逸品だ。このような物を簡単に渡せてしまうものなのか? 彼のいるエチゴヤ商会には、これらが売られているのか。


 すごいな、生きていれば部下を誘って行ってみたいものだ。



 ・・・



 ここも瓦礫でいっぱいだ。

 こういうような援助もした方がよさそうだ。私は家の屋根の上から街を見渡していた。

 倒壊した家屋のもとで幼い兄妹が、必死に瓦礫を退けている声が下から聞こえくる。


「誰か! 助けてよ! お母ちゃんたちがこの下にいるの!」


「誰も来ねぇよ。助けを呼ぶヒマがあったら瓦礫を一個でも退けるのを手伝え」


「お兄ぃ」

 捨てる神あれば拾う神あり。


 こんな状況では、そんな言葉が合う。助けを呼ぶ少女の兄は神ではないが。

 だが、この瓦礫はヘルメスではどうにもできない。でも、シオンの方なら可能だ。


「【固有スキル 情報改変】」

 私の身体は黒い霧に包まれ、シオンに戻る。手加減をする必要がないので、使っていたステータスを一時的に制限する【スキル 限定】を解除する。


 ヘルメスで何か所も瓦礫の撤去やアレの討伐で回ったので、ここからはシオンのとしての活動しよう。


 まだアレらは多くいる。確かどこかの神話に半人半獣が登場していたな。欲望の塊と表現されていた。あれの名前は、サテュロスだった。以後、アレをサテュロスと呼ぶか。


 俺は家屋の上に降下して、魔術を使う。

「詠唱を偽装する必要もないだろう。【空間魔術 格納庫】」

 瓦礫はアイテムボックスに収納されてゆき、あっという間に家屋の隙間に取り残されていた人達があらわになる。


 怪我をしてる人が多かったので、【神聖魔術 治癒】で纏めて治癒し、【空間魔術 集団転移】でイスタールたちと同じシェルターに運ぶ。


 住民たちは魔術などに関しては、あまり詳しくないらしい。ここでどんな魔術を使おうとも、彼らには俺がただ自分たちを回復してくれる存在としか見ないだろう。


 母親と感動の再会をする兄妹も、手がボロボロになっていたので邪魔にならないように治した。

 感謝の言葉に軽く手を上げて応え、すぐさま次の要救援者の所に向かう。



 ・・・



「ん?」

 複数の悲鳴が聞こえる。

 シオンは屋根を飛び移っていき、悲鳴の出処に到着した。


 ここは大通りだが、比較的建物の損傷はまだひどくない。しかし、大きな悲鳴と建物を破壊する音が響いている。燃え盛る家並みと飛び散る火の粉。都市のいたるところで火の手が上がっており、人々が逃げ惑っている。


 悲鳴の聞こえてくる方向に進んでいると、向かう先から何かの塊が飛来する。

 岩か。暖炉とか外壁とかで使われていたであろう岩の塊だった。

 結構な速さで飛んでくる岩は、俺に当たることなく目の前で俺の身体から出た剣によって砕かれ、道に転がっていく。

 本来なら身体の一部を剣にして攻撃するのが普通なのだ。


 だが、これはヘルメスでも出来ることだ。武器を【固有スキル 武装複製】で武器を増やしてから【スキル 投擲】で迎撃するのと同じことだ。


 それが何度か繰り返され、砕きながらも目的地に到着。


「お、ここにいるのはまだ誰も手を付けていない奴か」

 そこにいたのは、シャナークくんの人型とは異なる形態のタコ型だった。


 子供たちやお姉さんらが瓦礫の隅で身を寄せ合っている。


 泣き叫ぶ者、腰を抜かしてへたり込んでいる者、様々な阿鼻叫喚の様子だ。

 既に死んでいる者もいれば、気絶して倒れている者もいる。その多くが男性だ。無謀にも挑んでいったのだろう。


 俺がタコ型のサテュロスに近づいたことで、タコは標的を建物や人から俺に変更する。

 人型サテュロスには属性に対する耐性が上がっていたが、このタコ型はどういった能力を持っているのかな。


 俺に対象を向けてくれて助かる。住民に攻撃が向かなければ、あの人たちが助かるし、俺のことを広めてくれる。


「助けて!」

 真っ先に俺に気づいたお姉さんが救援の声を上げたのをきっかけに他の住民からも口々に甲高い声で助けを求める。


「俺がこいつを何とかする。あなたたちはその内に避難してください」


「っ! ……学生さん、こいつは相当に強いよ。助けに来てくれたのはうれしいんだけど、大人の助けを呼んできてくれないかい? その娘たちも連れて行ってやって」

 遠目に俺を認識して騎士だと思っていたらしいが、俺の姿を見て学生と認識したようだ。


「大丈夫ですから。ああ、気絶している人もちゃんと運んで上げてくださいね」


「こいつらは本当に危険すぎるんだ! あいつはここにいた冒険者たちが何人もやられているんだ。だから、……」


 あのタコは既に手を付けられていたか。でも、それにしてはあのタコに傷がないような? タコの能力か? それとも、冒険者が傷をつけることなく死亡したのか?


「学生さん! 前、前! もうやつは目の前にいる!」


「おっと!」

 俺はタコの足攻撃を受けるが、防御姿勢を取る。しかし、近くの家まで飛ばされる。

「学生さーーん!!」


上に乗っかる瓦礫をどかして外に出る。

「ああ、問題ない」

 俺が話しかけてきた女性の叫びに返答すると、驚愕の表情を見せる。

 元々魔術や武術でガードし、反撃するなどの応戦をする必要すらなかったのだ。耐性スキルに物を言わせて攻撃だけしてもいい。

 しかし、それじゃあ、つまらない。


「ふ、こんなに近くにいるのに実力も測れなくなったか。元冒険者としての勘も鈍ったかな。……そいつには回復する能力がある。冒険者たちが何度か攻撃しても、その能力で傷が治っちまう。気を付けて」

 そっちだったか。


「情報の提供、ありがとう」


「死ぬんじゃないよ、学生さん」


「俺はシオンという、越後屋商会が避難場所で回復薬を配っている。そこでけが人を治すといい」

 彼女は俺にこの場を任せて、避難の指示を出して動き始める。


「さて、行ったかな。じゃ、タコの性能を調べるとするか」

 まず、リーダー格らしき女性の言葉では再生能力を持つとの事。耐性や再生速度の方はどうなのだろう?


 タコに掌を向ける。

 俺の手から様々な剣が出てくる。ジャマダハル、ソードブレイカー、マインゴーシュ、スティレット、エストック、グラディウス、クレイモア、シャムシール、ショートソード、タルワール、ブロードソード、刀、レイピア、ダガー、蛇腹剣などなど。


 材質は魔力。身体の中で剣の形を構成し、それを魔力放出のように出す。


 そして、それらをタコに射出する。

 タコの身体に刺さり、俺の意思で魔力で出来た剣を消したりもマーキングとしての役割にもできる。

 次第にタコは後ずさり、瓦礫の壁で退路がなくなり、タコの勢いが減っていく。

 それでも連射は続く。タコが辛さを込めた叫びも意味をなさない。どうせ叫ぶなら何かしらの効果をつけたらいいのに。


 やがてタコは動かなくなる。魔力感知でもタコの生命活動の停止を確認。

 再生能力はそこまで高くない。防御力も標準的。剣が弾かれることがなく、すべての剣が刺さった。

 これの素材はいらない。しかし、倒したという証拠で必要にはなるだろうか。


 俺が避難を促した女性たちは少し離れた場所で子供や怪我をしている冒険者たちをまとめている。

「まだ避難していなかったんですか?」


 タコのいた方向から出てきてリーダーさんに声をかけると、俺に多くの視線が向けられる。


「シオン! 無事だったんだね、それであいつは? まさかもう倒したのかい?」

 リーダーさんが俺に駆け寄り、無事を喜んでいる。


「はい。アレは倒しました。しかし、他の個体が近くにいるかもしれませんので、早めに避難した方がいいですよ」

 近くにサテュロスがいないことは【固有スキル マップ探査】で確認済みだが、戦闘の邪魔になるので避難を急かす。


「はぁー、大したもんだねぇ。あの化け物は一人でどうにかできるとは思えなかったんだけどねぇ。しかもこんな短時間で。それで私たちは避難場所を知らないんだけど、遠いのかい?」

 ああ、そういえば避難場所を教えていなかったな。


「学園の地下にあるシェルターなんですけど。そこは魔道具の力を借りようと思います」


「魔道具? そんな魔道具があるの?」


「ええ、越後屋商会から頂いた品で転移が出来ます」


「てんい? てんいっていうのは、何だい?」

 知らないのか!? こんなにも一般住民が魔術知識に乏しいとは。


「簡単に言うと、一瞬で別の場所に移動ができるということです」


「へぇー、そのエチゴヤ商会はすごいのね」


「いやいや、すごいってもんじゃねーぞ。あの商会は本当にすごい」

 リーダーさんと話していると、冒険者の男が会話に加わる。


「そんなにかい?」


「ああ、エチゴヤ商会の回復薬は高品質で安いんだ。それ以外にも疲れを消すような回復薬。それに武器もいい物ばかりだしな」

 冒険者の男を始まりに集まっていた者たちが越後屋商会のいいところを言っていく。

 メネアの采配はいい方向になっているようだ。


「とりあえず、魔道具を使うので集まってください」

 来賓室でやったように集まった住民たちに【空間魔術 集団転移】を行う。











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