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閑話 学生、試合に挑む①

「それでは試合、はじめっ‼︎」

 その中でルウが選んだ行動は私が予想した通りにとても単純でした。


「いっくぞぉぉぉぉ! いきなりの身体強化。そしてー、属性付与ー!! 名付けてフレイムダッシュー。オリャー!」


 ルウが叫ぶと、彼女の身体の全身に炎が溢れる。弓を使わずに剣で戦っています。それは相手をなめすぎなんじゃ。


「オリャー!!」

 予選で見せたように突き出された剣が相手選手たちの装備を紙切れの様に破壊しながら突進していく様は、すごかったです。


「へっへーん、どんなも……ん? わわわ!?」

 突進攻撃で突き抜けたルウの先にあったのは、試合舞台の縁だった。あの子はどこか抜けていて心配になる。

 このままだと調子に乗ったルウが場外で失格という格好のつかない結果になる。


「なんの!!」

 ルウは声をあげ、なんとか場外を免れました。


 ルウが無駄に突進してたとえ反撃を食らっても無傷でいられるのは、シオンが教えてくれた魔力鎧というスキルのおかげですね。


 シオンは本当にいろんなことを知っていまる。しかも、それを惜しげもなく私たちに教えてくれている。未知のスキルとその習得方法を国の機関にでも情報を渡せば、相当なお金や地位が貰えるというのに。

 私は魔術を使うから戦士のことは詳しくないんですけど、一緒に説明を聞いていたルウがちょっと人前でしちゃいけない表情になっていたのが印象的で面白かったのを覚えてるわ。


「な、なんだあの炎は。あいつの身体から出てるぞ。……ありゃ魔術なのか?」


「あんな魔術見たこともないぞ!?」

 試合舞台の選手だけでなく、周囲で偵察していた選手たちや観覧しているお客もルウの姿に驚きの声を上げてる。

 そうよね、普通はこういう反応しちゃうわ。それこそが普通の反応よ。


「へへっ、ビビってますね!」

 皆の反応にルウはご満悦。また調子に乗って危なっかしくならなきゃいいけど。


「へっ、雑魚が偉ぶるんじゃねえぞ! 偉いのは、お前の親だけだからな!」

 ルウ、私たちも前はそれに似た雑魚だったんですから、あんまり調子に乗らない方がいいと思いますよ。たとえそれがずっと胸の内に溜めていたのことでも。


 ほら、上には上が居るって私たちは思い知っているんですから。

 そして、審判の試合終了のルウの勝利宣言が鳴り響いたのでした。


「……まったくに何やってるのよ、あなたは」


「いやー、アルマちゃん。ついノリで。楽しくなっちゃって」



 ・・・



 次の試合に呼ばれたのは、私とルーファス殿下だったわ。

 まぁ、トーナメントだから勝ち上がっていくとこうなることは、分かっていたわ。


 だからなのか、トーナメント表が発表されたときにルーファス殿下に「もし、いや、シオンさんに教えてもらったんだ君も僕も勝ち上がってぶつかることになるでしょう。だから、その時は全力で来てくださいね。僕はお金や王家の力ではなく、自分の力のみであなたに挑みますのでいいハンデでしょう」、なんて言われっちゃったし。


 あんなこと言われたらいくら王子といえどもムカつきますよ。いいでしょう、私は私の持つ魔道具や力であなたを倒して見せましょう。ハンデなんて私に与えたことを後悔させてやろうじゃないの。


 審判の合図とともに、ルーファス殿下……゛ルーファスが動き出した。

「◆◆◆ ◆…。【風魔術 大暴風雨(ハリケーン)】。くらえ!」


 けれどあらかじめそれを察していたルーファスは、身体強化で自身の肉体を強化すると跳躍で回避。

 私の魔術を走りながら時々跳躍しながら詠唱して魔術を放ってくる。


「なんて身の軽さ!? 魔術使いじゃなかったのか!?」


「あの魔術は何だ!? 水魔術か? それとも風魔術なのか!?」


「あの女の子が三つの魔術を使っている気がしますわ! 最近の学園はどうなっていますの!?」


 予想外の身軽さで避けているルーファスの姿に観客たちが驚いている。

 きっとこの試合も魔道具か何かで守っての撃ちあいだとでも思っていたのでしょう。


 それも今の私たちの中では古い。避けられる攻撃をわざわざ受けるなんて馬鹿なことはしない。どうしてもという時にこそ魔道具を使って反撃だったりするべきだ。


 私は【スキル 省略詠唱】で水と風の複合魔術を使い、ルーファスの風魔術を地魔術で防いでは、魔術を放つ。魔力放出のスキルも相まっていつもより早く少しの威力上昇で使うことができた。


「このぉぉ!」

 私の攻撃はルーファスには当たっていなかった。というより、放つ時にはすでに先回りされて回避されてる気がする。

 これもたぶんシオンから教わったスキルに違いない。


「なら、私だって。はぁあぁ!!」

 私は周囲に魔力に放ち、【スキル 魔術妨害】を使う。


「ふふふ、それを使うことも分かっていたよ。僕には【付与魔術 疑似魔眼】があるからね。まぁ、今までは【魔眼】だと思ってたんだけど」

 私の行動を読み、それを確信した何かしらの付与魔術を使ったらしきルーファスの声が聞こえた。


「馬鹿な!!」

 声を荒らげたのは、まさかの先王陛下だった。

 地面に光点が置かれている。そこから点と点が繋がっていき、魔術陣が現れる。


 煌々と光るそれは、まさしく火魔術の真っ赤な光だ。

「こ、これって、上級魔術の【火魔術 星気の太陽(アストラルサン)】……。そんな……」


「成功してよかったよ。君の前じゃ上級魔術の詠唱なんて隙をくれなさそうだし、上級魔術に【スキル 省略詠唱】は使えない。だから、こうして舞台に描かせてもらったよ。これもシオンさんに教えてもらったことなんだけどね。心配しないでね、このやり方だったら威力は抑えられちゃうらしいから身代わり人形だけで済むよ」


 アルマはシオンに教わったことを自分で成長させていったが、ルーファスはさらにシオンに知識を教わった。多くの知識をつけてそれを自分ができることだけを選び出し、この試合に当てはめていった。


 そうして、アルマ対ルーファスの試合はルーファスの勝利で決着した。


 結果はルーファスの特殊な上級魔術の発動で決着したが、アルマも観客の目にとまった。

 普通、多くの者が一人につき一属性で、たまに二属性を持つ者がいる。学園の教師でも属性ごとにそれぞれ担当がいる。

 しかし、今回試合でアルマが使ったのは、地・水・風の三属性だ。注目を浴びるのも無理はない。



 ・・・



「勝者、ルーファス・シルファリオン!」

 俺の前に行われていた試合が終わった。

 今回の試合は本来のトーナメントで予選を上がったやつがそのまま隣のブロックのやつと対決することになっていた。だが、それが急遽変更になり、対戦相手が組まれた。


 シオンは何とも思ってそうもなかったが、アドニス王兄殿下の派閥の奴らが時間稼ぎでもしたんだろう。何かまた姑息な手を用意しているのか。


 勝者はルーファス。ついさっきそう宣言された。

 シオンに教わる前のあいつの実力は知っているが、あいつはアルマに勝てるほどの力を持っていなかった。それがこうしてここまで上がってきた。


 一方のアルマも相当な実力の持ち主だ。アルマの初戦の相手は俺たちよりも学年が上、これもアドニス王兄殿下派閥が仕組んだことだ。なんでも卒業後は王国の魔術師団に内定しようとしている気鋭らしい。

 その気鋭は舞台でアルマに一発も魔術を使わせてもらえず、ボコボコにされ半泣きなんだけどな。


 きっと試合前になんかを言われて気に障ったんだろう。

 試合が始まって初撃から圧倒的な速さで詠唱を組んで、詠唱させる暇を与えようとしなかった。仕舞いには、拘束の魔術で動きを封じてから四肢を攻撃し、彼の大事そうに装備していた杖を奪い、目の前で破壊。

 彼を守っていた障壁の魔道具や魔術を開始から少しの間で失わせる。体の自由を奪われた彼の瞳に映るのは、近づいてくる女の足。怖かっただろうな。


 恐る恐る顔を上げれば、そこには嗤うアルマの姿が……、とこんな感じになっていた。

 男の方はさっさと降参すればいいものを何かを喚くだけで降参をしていない様子。

 あんなのでも一応は先輩であり、魔術師団に内定が決まりそうなのだというのだから笑える。


 再起不能かもしれないが、身代わり人形はまだ完全に壊されてはいない。男も敗北宣言をしたわけでもない。

 だが、明らかにアルマの勝ちは目に見えている。なのに、審判は宣言をしない。いや、できないのかもな。

 これ以上やっても結果は変わらない。彼の心にさらに傷が大きく抉りこまれるだけだ。


 そして、彼の口から洩れる詠唱。

 アルマのとどめをささない様子を見て、彼女がお優しいお嬢様だとでも勘違いしたのかな。それ以外に思惑があろうと、愚かでしかないな。

 アルマの杖から男の目の前に水魔術と地魔術が放たれた。あらかじめ詠唱しておいていつでも放てるようにしていたのか。

 でもって、身代わり人形を崩壊させるだけの魔術。あれはやべーな。


 アルマは敗者に目もくれず、舞台を後にした。


「さすがだな」

 俺は帰ってきたアルマにひと声かける。


「ありがとね。オーランド、あんたも頑張りなさいよ。せっかくシオンに鍛えてもらったんだから」


「ああ、わかってるぅっての。選抜戦の後に合コンに参加しようとしてんだ。ここで結果出せば、俺も……」


「相変わらずねぇ」


「あ、呼ばれた。じゃ、俺も勝ってくるか」

 せっかくシオンに鍛えてもらったんだ期待には答えないとな。それに前々からお前が気にくわなかったんだよ、シャナーク。








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