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三十七話 創造神、ギルドに暇つぶし②

 学園都市に戻ると、真っ先にギルドへ向かう。依頼完了の報告と、討伐証明品の提出を済ませるためだ。

 エレナさんが俺たちの顔を見て、笑顔になる。


「ご無事でなによりです」


「ゴブリンをいっぱい倒したよ、エレナ」

 エインリオはそう言って、討伐証明品である魔石とジェネラルの死体を提出する。徐々に積み上がっていく魔石に、エレナさんは驚いている。


「多いですね……。え? いや本当に多いですね」

 魔石はさらに積み上がっていく。


 100個積み上げるころには、エレナはしばらく固まった。

 質のあまりよくない魔石だが、これだけ集まれば大したものだ。魔石の山が出来つつある。

 そして、我を取り戻すと、後方に向かって叫ぶ。


「手の空いている職員は手伝ってください」


「どうしました?」

 追加の職員がやってくる。


 そして、大量の魔石をみて、唖然とする。

「これは?」


 追加の職員に尋ねられて、エインリオがどや顔で答える。

「ゴブリン討伐依頼にいったのですが、想定以上に大きな群れでした」


「これは、ゴブリンライダーにゴブリンメイジ。こっちはまさか、ゴブリンジェネラルですか?」

 台に置かれた大量の魔石と上位個体の死骸を見て追加の職員が息をのむ。


「あのー、もしかしてですけど竜って倒したことありますか?」

 別の所から出てきた職員が俺に質問する。


「まぁ、竜くらいならありますけど」


「竜くらいって!? でも、あるんですね。名前を伺っても?」


「シオンだ。今はCランクの冒険者をしている」


「やっぱり。それを含めてお話がありますのでこちらに来てください」


「これどうすんの?」

 職員がどこかの部屋に移動を進めるが、俺はゴブリンの報酬を気にして受付から動かない。


「それは話が終わり次第お渡しいたしますので大丈夫です。以前の盗賊討伐の依頼の報酬のことも聞いておりますのでここでお渡しします」


「そうか。じゃあ、行こうかな。ネーヴァたちはどうする?」


「私は家に戻ろうと思います。この分ならシオンが危険な目に遭うこともないと確信したので」


「んー。私もちょっと用事が」


「どうした? 何か焦っているように見えるな、エインリオ。やらかしたか?」

 魔石を置いて百を超えたあたりから居ても立っても居られない感じがしていた。


「実はですね、私の隠していた仕事がバレちゃって天界の方に返らないといけなくなっちゃいましたよー。どうしよー、ものすごく怒られるよ」


「仕事をしなさい。以上」


「うぅ、反論できない。助けてよー、ネーヴァさーん」

 俺の叱りを受けて素直に天界へ戻ることを決めるエインリオ。それを手伝いに行くというネーヴァ。


「某たちはメネア殿のもとへ行きます故主殿とともに」


「ん。一緒」

 ウルとテスタロッサは俺についてくるようだ。


「そうだね。しばらくはこっちにいるし、観光は明日にしよっと」


「カンコウとはなんですの、マヤ?」


「えー? 観光っていうのは、いろんな場所を見て回ることかな?」


「それは旅なのでは?」

 摩耶とゼノビアもついてくるということなのだろう。


「何をしている! 代表をお待たせしておるのだぞ!」


 俺が付いてこない事に気がついた職員が、怒って走ってきた。すごく息が切れているようだ。

 どうやら、かなり遠くまで歩いていたらしい。

 ていうか、誰が待っているとか知らないし。代表? トップってことか? じゃあ、ギルドマスターのことだな。

 すぐに戻ってきたと思ったら、ギルド長と会って話をしたいと言われた。ギルドマスターに会う必要があるのかわからない。


「もしかして、俺はギルドマスターに興味を持たれるようなことをしましたか?」


「ええ、まぁ、あなたの噂話を聞く限り興味を持たない者などいまいと思いますけどね」


「噂話ですか。いい噂だといいんですけどね。ところで、武器は持ったままでいいのか?」


「武器を預けても魔法を使われては意味がありませんからね。そして、代表本人は強いですし、一応警護する人もいます」


「なるほど」

 職員は俺の返答に答えにくそうに顔をしかめている。悪いことはしていないはずなんだが?

 職員は扉をノックして入室の許可を求める。


「入れ」

 中から厳つい声で返事をする代表さん。


「こちらです。では、私はここまでですので」


 扉を開けると、2人の人間がいた。1人はソファに座っており、服はスーツだった。もう1人は後ろで待機していた。おそらく、座っている男がギルドマスターで後ろに立っている男は護衛の人だろう。


「よく来てくれた、シオン。座ってくれ」


 座っていた代表さんが自分の椅子から立ち上がりながら俺に着席を促す。

 ソファーが二つ、間に机が一つ。対面する形で座る。


「それで俺に用件があるということだが、なんだ?」


「……はじめましてだな。俺はこのアヴァントヘルム学園都市支部まとめているアレス・ミルダだ」


 この人がネーヴァから聞いたギルドカードの作成を邪魔しようとした人か。あの時にネーヴァたちが強烈な威圧をしちゃったらしいから代表さんはネーヴァたちに苦手意識が芽生えてここに呼ばなかった――呼びたくなかったわけで、それで矛先を俺の方に向けたという訳か。


「シオンです。Cランク冒険者をしています」


「ああ、知ってる。ついでに言うと、受付でギルドカードの更新をすればランクが上がるようになっている」


「そうですか」


「は? それだけか?」


「はぁー? それだけですが? 特に感想もありませんし」


「ランクが上がるんだぞ。喜ばないのか」


「別に」


「そ、そうか。まぁいい、本題に入る前に聞いておきたい」

 何か言いたいことがあるようだが、本当に俺はここで何もしていない。代表さんの用件が考えつかない。


「何故これまでに俺に面会を求めなかった? 普通に考えるならば、ギルドに所属して大きな功績を上げ、別のギルドに来た際はギルドの代表に挨拶するのが当然だと思うが?」


 確かギルドの禁則事項にはそんなこと書いていなかった。つまりは別のルール――冒険者同士の暗黙了解のようなものだということ。

 なら、わかるわけねーだろ。何そのルール、わざわざ挨拶しないといけないの、関係も何もない人に。暗黙のルールが誰にでも通用すると思うなよ!


「今年から学園に入学したもんで忙しかったので挨拶が遅れていましたね。それほどに重要な案件が発生したのでしょうか?」


「そういう問題ではない! しかしだ、お前は俺の娘を救ってくれたようだから、それは見逃すとしよう」


「どうも」

 人命救助と挨拶を同列に扱っては欲しくないものだ。なにが「見逃してやろう」だよ。


「で、シオン。お前にはいくつかの疑惑が商人や他の冒険者から寄せられている」


「疑惑ですか?」


「そうだ。普通、こういう祭事の時はこうした問い合わせは減るはずなんだがね」


「そうですか」


「……ああ。なのに、この件に帝国や聖法国も注目して国レベルになっている。それ以外にも商人たちがお前についての情報を集め、調査をしている。中には危うい意見もある」


「危うい意見ですか?」

 穏やかじゃないな。帝国も聖法国もうっとうしいからなー。結局何のせいで問題になっているんだ?


「シオン、それにその仲間たちは魔族の協力、もしくは魔族、または邪教徒の集まりである【楽園の使徒】の者ではないか、とな。つまりはお前たちがヒューマン全てを裏切りながら利益を貪っているという意見だ」

 うわぁ、的を大きく外してる考えだな、それ。


「何が原因でそうなっているんですか?」


「魔道具だ。それが今回の件の引き金のようだ」

 魔道具? いったい何のことだ?


「魔道具って何もことですか?」

 考えても分からないから代表さんに聞く。


「ふっ。とぼけるか。だが、その演技もしなくていい。大概の者には知られているぞ」

 不敵に笑う代表さん。答えは教えてくれないらしい。


「それいつ使ったものですか?」


「だから、もうその演技はいい。だったら、無理にでも引き出すぞ。お前が毒牙のオルスが率いる盗賊を捕らえたときに使用していた強力なゴーレムを生み出す魔道具だよ」


「ああ、それなら確かに持っていますが、何の問題があるんですか?」


「ようやく認めたか。お前と一緒に盗賊討伐を受けていたパーティがいただろ。そいつらから聞いた商人がお前に目をつけてな。その商人がさらに別の商人に伝わっていき、最終的にはこのような問題になっていた。お前が竜殺しであることもそれを後押しした原因だろう」


「竜殺しなら俺以外にもいたでしょう」


「ああ、いたぞ。ただそっちはAランクパーティでワイバーン一匹。お前は一人でワイバーンを数匹もだぞ。人々の記憶に前者が薄れて後者のお前が濃くなるのは明白だ」


 それもそうか。ライオスたちには悪いことをしてしまったな。しかし、ワイバーンごときで竜殺しとして召し上げられるとは。称号に竜殺しは一応ついてはいるが、それでも下級だからそこまで騒ぎ立てられるほどのことじゃない。


「でも、俺はギルドカードの種族はヒューマンとなってるし、規定に違反したという訳でもないでしょ」


「それでも騒ぎ立てるやつらがいるのだ。そこで我々はお前のことを調査した」


「そんな調査が行われていたとは知りませんでした」


「看過できぬ意見が寄せられている以上、ギルドも動かなければならん。疑惑の内容を鑑みたうえで、内定という形を取らせてもらった。お前への苦情が増えてきたのは最近だが、前々から不穏な情報がもたらされている」


「言ってくれたら、俺の方で協力できたかもしれなかったのに」

 俺はそこまで恨まれるような行動をとっていない。相手は商人だという。なら、俺はまったく関係がないはずだが。だとすれば、俺からの金の搾取とかかな?

「で、何かわかりましたか?」


「いいや、何一つ分かることがなかった。あるとすればギルドにあるワイバーンの討伐と毒牙のオルスを倒したという情報だけだな。他は学園に通ってるとか、すぐにでもわかるような基本的なことしかな」


「そうですか。俺の嫌疑を晴らすにはどうすればいいでしょうか?」


「早く済ませたいなら、やはり金だろうな」


「いくらですか?」


「まぁ、金貨100枚をすべての商会に渡せないいんじゃないか。期間は知らんがな。もしくは、その魔道具を渡すとか」


「その強請はいつまで続くのでしょうか」


「人聞きの悪い言い方だな。俺はただ提案したに過ぎないんだぜ」


「……では、そのすべての商会を教えてください」


「なんだ、払いに行くのか」


「それでは失礼した」

 俺は商会名の書かれた紙を受け取り、アレスを無視して代表室を出ると、扉の近くには案内してくれた職員がいた。


「すみませんね。代表は最近、色々と立て込んでたり、娘さんが誘拐されたりとかでやさぐれてて……。今はやさぐれていますが、少し前までは商人たちに怒ってばかりだったんですよ。それにあれでも代表はあなたのことを心配しているんですよ」

 あれをそれで済ませるのはどうかと。


 受付に戻り、盗賊討伐の報酬を受け取り、ギルドカードの更新をする。

 更新されたギルドカードは、Bランクに上がっていた。


 ギルドを後にしてメネアとイスタールたちが待つ別荘に向かう。エインリオとネーヴァは天界へ、暫しの別れだ。

 ネーヴァは、スヴァルトやエインリオよりも強く、天界の熾天使たちにも認められているため天界でもデバフを受けないようになっている。
















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