三十五話 創造神、見つかる
「おい、あれってシオンだよな」
シオン同様選考大会を勝ち上がった三人――オーランド、アルマ、ルウ。ルーファスはイスタールと過ごすため不在のようだ。
「ほんとだ。誰かといるね。用事ってあの人たちとのことだったんだ」
「行ってみよーぜ」
群衆をかき分け俺の姿が見えたところへ動き出す。
「おぉぉ」
「うわぁ……」
露わになるその出立にオーランドとルウ、アルマは感嘆する。周りも三人の見る八人を注目している。
白い服と黒い服に身を包む絶世の美女二人とその後ろでメイド服の美少女と話すシオン、そしてさらにその後ろを戦士のような防具を着る四人の美少女と美女がそこにいた。
「めちゃくちゃ美人ばっかじゃねぇか! なんでシオンと。おい、シオンどういう関係なんだよ!?」
「おぉ、オーランドじゃないか、何してるんだ?」
「俺は市場調査だ。ところで、お姉さん方シオンとはどのようなご関係で? シオンと近しい関係ってことですよね! なら是非とも俺とお茶でも――グホッ!?」
市場調査と言い張り、食べ物を食べ歩きしていたオーランド。悪気はないのだろうがエインリオに軽く触ろうとした瞬間、オーランドの身体が消える。
派手な音を立て、屋台総合のゴミ捨て場に飛んで行った。
「お、オーランドくーん!」
隣りにいたルウは目をパチクリとさせ、消えたオーランドを周囲を見渡して探す。
一瞬のことで観衆は唖然とする。吹っ飛んだ少年とそれを起こしたと思われる美女――エインリオを見比べる。
誰の仕業かも、いったい何が起きたのかも理解できていないだろう。
「あ、ごめんね。つい…」
つい、で片づけてる辺りエインリオは平常運転のようだ。
「だからって一発目で吹っ飛ばしますか!?」
オーランドを発見したルウがエインリオにツッコム。そして、アルマはオーランドのもとに行き、回復させる。
「ええっと…」
「私はリリアント伯爵家長女でシオンくんのクラスメイトのルウ・リリアントです」
「私はエインリオだよ、よろしくね。でさ、ルウちゃん、世の中にはやっていいこととやったら悪いことがあるんだよ。つまり、私が正義、あの少年が悪だったということなのですよ」
エインリオがルウに向かって堂々とオーランドをふっ飛ばしたことを正当化する。
「あなたのそれは悪い事でしょ!!」
「でも、ルウ、オーランドがナンパなんかしたからいけないんじゃないかしら?」
「そうそう、それが言いたかったのだよ」
アルマの意見にエインリオが付け足しのように賛成する。
「そうだ、シオン様、私ギルドカード作ったよ。見て見てー」
「なんなのこの人」
急な話の転換にルウが呆れる。
「そういえばアルマ、ギルドに一緒に行く約束をしていたな。今から行くか?」
「いえ、今日はいいわ」
「そうか、俺たちだけで行くとしよう」
「シオン大丈夫なの? この給士の人たちって戦えるの?」
「給士? 以前も言っていたな、誰のことだ?」
「は? いや、だからエインリオという方のことよ」
「エインリオたちは給士ではないぞ。それに十分に戦えるぞ」
ここで俺たちと回復したオーランドと共に祭りに戻っていくアルマたちで別れた。
「某も連れて行ってくだされ。ここで主殿に某の力を見定めて欲しい所存」
「自衛はしてくれれば」
メネアはついてこないようで今日招待されているイスタールの別荘の所へ行き、手伝いをしてくると言ってメネアとも別れた。
・・・
「もう摩耶たちはここで何回か依頼を受けたんだろ。なんでここのギルドの依頼表は肉の調達がこんなにも多いんだ?」
ギルドに入り、シオンが指すのは依頼表いっぱいに貼られた肉の追加の依頼だ。
「そうですね。この時期になると、どうしても屋台などで使う肉類などが少なくなり、それを調達してくれとの依頼が増えるそうですよ。肉なら何でも売れるようですが、代わりにゴブリンとかのはダメだそうです」
「ゴブリンが狩れないんじゃ初心者にはつらい時期かもしれんな」
「いや、ゴブリン以外にもこの都市の近くにある森には弱い肉魔物もいるから大丈夫だと思いますよ」
「そうか。では、逆に強い肉魔物はいるのか?」
「そっちもいますよ。主とかその取り巻きとかになっちゃいますけど。ゼノビアちゃんが鑑定した限りではLV.70くらいで群れていたので私たちは諦めましたけどね」
摩耶が暗い顔で「自分より強いとわかってる敵が近くにいるとあんなに怖くなるってよくわかりました」と弱くつぶやく。
「気になることがある」
俺はギルドに入ってから違和感を感じざるを得ない。
俺たちが扉を開け、中に入ると、一気に視線が集中していた。女性冒険者が少ないのに俺のところに集まっているのをいい気に思わない者がいるためと思っていたのだが、
――俺たちを視認するとギルドにいるほぼ全員が視線を逸らしたのだ。今なおそれは続いている。
中には震えている者もいる。
シオンたちのことを知らない冒険者もいるが、周りに尋ねて顔を青ざめさせる。
俺はまだここでは何もやっていないからおそらくは俺が前夜祭の時に【固有スキル マップ探索】で視た時にエインリオとネーヴァかゼノビアたちがやらかしたのだろう。
そんなことを気にしないエインリオとネーヴァはだいたいのことを知っているゼノビアたちと依頼表に向かい、最初から分からないシオンとテスタは、静まりかえったホールで周りを見渡し首を傾げる。
「摩耶、ここのギルドってこんなに静かなのか、もっと騒がしくないのか……? みんな下を向いてるし……」
「いえ……そんな事はないはず……です……よ」
この状況にはシオンも苦笑しか出来なかった。自分も相当にやらかしていたらこうなっていたかもしれない。
そのまま空いている受付の前へと立つ。
「では、エレナさん。この依頼をお願いします」
ネーヴァが受付嬢に出したのは、ゴブリンの討伐依頼だ。肉の依頼が多いのでそちらにかかりっきりになってしまいゴブリンの掃討が後回しになってしまうらしい。
ただ場所が洞窟というゴブリン側に有利な立地となるため、通常は討伐が困難なのだ。ゴブリンは少しずつ学び、罠の設置や対抗策などを案じてくる。しかも繁殖性が高く、上位個体がいるならより困難となる。
「はい、受領しました。ネーヴァお姉さま、女性だけで行かれるのですか?」
依頼書を受け取った受付嬢が変なことを言う。女性だけでは不安なのはわかるが……まさか、また俺は性別を勘違いされたのか。
「いえ、ちゃんと男手もありますよ。シオン、来てください」
ネーヴァの呼びかけにギルドの依頼表のことを摩耶と話していたシオンは受付に進む。
「なんだ、ネーヴァ?」
呼びかけに反応した俺に周りの冒険者は指さして笑っているのだが、何らかをやらかしたと思われるネーヴァとエインリオが近くにいることでネーヴァの睨む視線に気づいた事情を知る冒険者が口をふさいだりと黙らせる。ネーヴァの視線が外れた後もまだ青い顔をしている。
「シオン、こちらはエレナさん。エレナさん、この方はシオン、私たちの主なの。で、間違えやすいけど性別は男の子よ」
「……」
エレナさんは停止している。ただの受付員のようだ。
「………、はっ、え、えっと、主――つまりは主従関係ってことですか? この…少年が?」
まだ俺の性別が認識できていないらしく言葉に詰まる。
エレナさんの声に聞き耳を立てていた冒険者もざわざわしている。
もう絡みは来ないでくれ。頼む。
依頼が受理され、そのままギルドを出る。すごい緊張感だった。こんな緊張の仕方は今までで初めての方法だ。
「ふぅ、危なかったな」
「え、何がですか?」
俺のつぶやきに摩耶が聞き逃さずに質問してくる。
「何がってあれで絡まれなかったことだよ」
「ああ、絡まれませんでしたね。ギルドで絡まれる、期待していた展開だったんですけどねー」
俺とは逆に残念そうな顔をする摩耶。
「そんな顔をするな。絡まれることは面倒でしかないんだぞ。何の得もない」
「あれ、もう体験したんですか? いいなぁ」
「ただうざったらしいだけだよ」
「えぇ、でも定番ですよ定番」
・・・
「おはようございます、代表」
「挨拶は良い、例の冒険者は居るか?」
この受付はエレナといい、荒くれ者共でたむろする冒険者ギルドには似つかわしくない美人だ。
最近はお姉さまなる人物ができたらしい。
「ええ、丁度良いタイミングです。彼らならつい先ほど来たばかりですよ」
おお、ようやくドラゴンを討伐した冒険者に会えるのか!
俺は一体誰が件の竜殺しかとロビーに視線を送る。
「彼らでしたら丁度依頼に行きましたよ」
「ふざけんなー!! 俺に挨拶くらいはして来いやー。ガキが竜殺しなんて不正や裏金に決まっている」
アレス・ミルダの喧騒がギルド内に響く。
「クソ、本当に除名してやろうか。もし、万が一にでも強い冒険者であればギルドで雇いたいのだが。ところで、そいつは何の依頼を受けたんだ?」
「ええっとですね、ゴブリンの討伐ですね」
「ふっ、ゴブリンか。やはり不正は確定か」




