四話 創造神、冒険者ギルドに入る②
〈 〉これが偽装の時で、( )これが隠蔽の時です。
ギルドの受付の職員オリガに言われたようにシオンは石板に触れる。
ステータス
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[名前] シオン
[年齢] 15
[Lebel] 14
[種族] ヒューマン
[職業] 剣士
[HP] 4401
[MP] 1061
[力] 3904
[器用] 1065
[敏捷] 2023
[スキル] 【剣術LV.2】【解体LV.2】【索敵LV.2】【風魔術LV.1】
[固有スキル] なし
[耐性] なし
[称号] 【剣士】
[加護] なし
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スキルで隠されたシオンのステータスが表示された。
「ありがとうございます。では、次に実技試験を受けていただきます。ちょっと待っていてくださいね、試験官を呼んできますので」
「おい、このクソ小僧の試験は俺様がやってやるよ。いいよなぁ、小僧」
うげぇ、こいつ、俺のこと完全に敵意を抱いているな。肩を思いっきり掴んでくるし。
「こっちだ、ついてこい」
おっさんがギルドの闘技場に先導する。
「やっぱり、いきなりあいつに絡まれてんじゃん」
「お、新人の洗礼かー、久々に見るな」
「どうする見に行くか?」
「あの小僧がザッツ相手にどれだけ耐えられるか賭けようぜ」
「俺、2分で小僧が気を失うに銅貨4枚」
「じゃあ、俺は30秒以内にザッツの野郎があいつを殺しちゃうに銅貨5枚」
「大穴で、5分は耐えるだ」
「そんなことしてないで、あのかっこいい人を助けてやんなよ」
「無理、無理、相手はBランク冒険者の狂犬 ザッツだぜ。ありゃあ、止まんねーよ」
見物人の数が多い気がする。そんなにもやることがないか。仕事しろ、仕事。
「ちょっと、大丈夫なの?ここは逃げた方がいいんじゃ」
ジータが心配して近づいてきた。
「ん? シオン、魔術使えるのに職業が剣士?」
「ああ、ちょっと秘密にしててもらえるかな」
笑いながら言うと、キリハが照れたように顔をそむけた。
「まぁ、そこまで強そうな人じゃないし、大丈夫でしょ」
「え?!だって、あの人は、狂犬って言われている――――」
「でも、シオンはオーガを一瞬で倒しちゃってるし――――」
何やらジータがぶつぶつ独り言を言っているが気にしないことにした。
「ついたぞ、ここだ」
「では、これからBランク冒険者ザッツとシオンの試験を開始する! 双方、準備はいいな」
俺の試験をするはずだった試験官がニヤニヤと汚い笑みを浮かべながら開始の合図をする。
「俺様はいいぜ」
「ああ」
≪マスター、こいつら、マスターに向かって無礼です、身の程を教え、半殺しにして、信者にさせましょう≫
≪嫌だよ、こんな奴らを信者にするなんて。こんなので喜ぶのは【破壊の神 ロイ】くらいでしょ。アイツ破壊神だから信者つきにくいし、適当なやつだから≫
ザッツは魔力の宿った剣を抜いた。シオンも帯剣していた剣を抜いた。
「お! いいねぇ、その剣、俺様が勝ったらもらっといてやるよ」
「はぁー、お前程度の奴がBランク冒険者で、おまけにこの剣の正体さえも分からんとは。
つくづく実感したよ、この世界の質は停滞している。お前ではこの刀に釣り合うだけの格がないらしい」
シオンの剣は刀身が漆黒になっていて、闇夜のように深く暗い。
しかし、魔力を流すと、七色に輝き、刀の特性を引き出すものであった。
「そして、こんなことを普段からしているのだな。お前らには仕置きが必要のようだ。生きていることを後悔しながら落ちてゆけ!!」
シオンはため息まじりに愚痴り、理解した。
冒険者としての質だけでなく、人としての質も落ちていることに。
シオンのつぶやきは誰にも聞こえていなかった。
「小僧、そんなに余裕かましてていいのか?」
「それでは、はじめぇー」
「死なないように手加減はする。だから、死ぬなよ、死にたくなる思いをさせるんだから」
シオンは刀を使わず、魔術を使った。
ザッツはシオンを痛めつけるためにまず、剣で足を狙い、足を折る。ように見えた。
シオンは幻魔術によってザッツの感覚をずらしていた。周りはザッツは全く違う方向に剣を振って、何が起こっているのかがわからなかった。ただ、シオンという子供が何かをしたということを、理解しようとしていた。
だが分からない。シオンが何を起こしているかが分からない。なぜなら、この世界には、もう幻魔術がないのだから。だから、把握することもできない。理解もできない。
シオンは見物に来ている野次馬を鑑定し、重要人物がいないかを確認する。
そして、【固有スキル 創造】によって全属性魔術のレベルを8まであげる。
次に、ジータやキリハ、一人の重要人物に【光魔術 白銀の神壁】【幻魔術 枷杭】【付与魔術 ハイプロテクション】をかける。
光魔術は防御に、幻魔術は移動阻害に、付与魔術はもしもの時に、と思い、それぞれ気づかれないようにかける。
移動阻害は、ちょこまかと動かれて防御魔術の効果範囲外に出てもらうと困るからだ。
今度は、シオンは野次馬たちを【空間魔術 天衣無縫】を使って引き寄せる。
続けて、ザッツや野次馬たちが効果範囲内に入った瞬間に呪い、強制沈黙、麻痺、恐怖、精神毒、盲目の効果を含んだ魔術【幻魔術 闇黒郷】を発動させた。
ザッツたちは沈黙により声を出すことも許されず、麻痺で逃げることもできずに毒と呪いに蝕まれ、目で状況を理解することすらできない。
シオンはそんな彼らに直径40cmほどの球体の風魔術で外傷を与えない攻撃を繰り返す。
これを、近くで見ているジータたちや遠巻きに見ている人たちには、シオンがただ風魔術を使い、
ザッツたちが自ら当たりに行くという不思議な光景を目にしていた。
それは阿鼻叫喚の状態であった。誰もが早く殺してくれと言っているのだから。
最終的にはザッツらがシオンに負けを乞うように地べたに土下座をしていた。
試験が終わり、試験官が恐怖で震えながら合格を言い渡した。
シオンがジータたちにどんな顔でいればいいのか悩んでいると、
「ありがとー、スッキリしたよ」
「ん、面白かった」
ジータとキリハがそんな言葉をかけてくれた。
三人で受付に戻り、オリガさんと目を合わせるとオリガさんが驚いたり、安心したような表情になった。
「大丈夫でした? 痛いところはありませんか?―――――」
オリガさんがまくし立てて喋る。
「はい!無事、試験を終わらせてきましたよ」
「―――! 無事、試験に合格できたのはよかったのですが、シオンさん、あなた、ステータスを隠蔽してますね!!」
「あぁ、やっぱりバレますよねぇ」
初っ端から風魔術とか使ってなかったな。深く偽装用ステータス考えてなかったから見落としていたよ。
「当然です。相手がBランク冒険者だったのですから」
シオンは、仕方なく、もう一度、石板に触れる。
ステータス
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[名前] シオン
[年齢] 15
[レベル] 14
[種族] ヒューマン
[職業] 魔術師 剣士 (神)
[HP] 7000(∞)
[MP] 5000(∞)
[力] 5000(∞)
[器用] 5000(∞)
[敏捷] 5000(∞)
[スキル] 【剣術LV.1】【体術LV.1】【回避LV.1】【威圧LV.1】【鑑定LV.3】
【隠密LV.1】【魔力感知LV.1】【縮地LV.1】【隠蔽LV.2〈LV.10〉】
【偽装LV.2】【無詠唱LV.1】【思考加速LV.1】
【空間魔術LV.1】【風魔術LV.1】(全属性魔術LV.8)
[固有スキル] なし(創造LV.10)(成長促進LV.10)(黙示録LV.10)
(ステータス異常成長LV.10)(再生LV.10)(宝物殿LV.10)
[耐性] なし (痛覚無効LV.5)(即死耐性LV.5)(雷耐性LV.5)(火耐性LV.5)
(水耐性LV.5)(地耐性LV.5)(風耐性LV.5)(氷耐性LV.5)
(闇耐性LV.5)(神聖耐性LV.5)(精神耐性LV.5)
(状態異常無効LV.5)(魔術耐性LV.5)(物理耐性LV.5)
(恐怖耐性LV.5)
[称号] 【剣士】【魔術使い】【Fランク冒険者】(創造神)
(武術を極めし者)(魔術を極めし者)
[加護] なし(創造神アイゼンファルドの加護)(龍神カリオスの加護)
(魔神タナトスの加護)(炎神ヴァジェの加護)
(水神クリストの加護)(雷神メルの加護)
(風神アリファールの加護)(大地神アドの加護)
(時空神クロケルの加護)(幻神イグヴァの加護)
(武神ミロクの加護)(邪神ケイムの加護)
(生命神アイズの加護)(遊戯神ロキの加護)
(破壊神ロイの加護)(賢神イヴの加護)(技能神メクアの加護)
(商業神ムクの加護)(転生神プロスの加護)
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ふぅー、すっごい隠蔽したなぁ。これで問題ないだろう。
ステータス異常成長は、本当に異常だな。いきなり∞になったぞ。
このスキル、本来は迷彩からの進化したスキルなんだが、俺は創造でそのあたりをスキップした。
相手の認識から隠したいものを外すという効果がある。
つまり、俺自身にこのスキルを使えば、姿を認識されなくなることもできる。
「シオンさん、職業二つ持ちですか?!」
オリガさんが、大声で叫んだ。守秘義務はないのだろうか?
「すみません、大声で。でも、職業二つ持ちってだけで珍しいもので」
いくら珍しくとも声に出さないのがプロという者だよ、君。
オーガの討伐にかかる時間
Bランク冒険者 単独の場合 15分以内、パーティーの場合 5分以内 に倒せる
Cランク冒険者 単独の場合 20分以上かけて負ける、パーティーの場合 20分以内にギリギリ倒せる
Dランク冒険者 単独の場合 絶対に無理、パーティーの場合 30分以上かけて負ける
シオンの狩ったオーガはボスクラスでランクBに上がっていました。
格 オーガ>>ザッツ