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閑話 創造神の眷族、ギルドに登録する

受付員のエレナの案内にネーヴァたちとデボットたちが後をついてくる。


「お! 久々に見るな。俺たちも見に行こうぜ!」


さらにギルドでたむろっていた冒険者たちもデボットの余興を見るためついていく。

ギルドのホールから奥の扉を抜けるとそこは、数十メートルの円型の訓練場となっており、観覧席が周りを囲んでいるようになっている。この街は冒険者を中心とした街ということもあり、闘技場みたいな扱いになっているみたいだ。


野次馬の冒険者たちは酒を片手に観覧席に移動している。


「よし! あの嬢ちゃんたちがいつ降参するか賭けようぜ!」


「ははは、賭けになんねぇだろ、それ」


「そうだぞ、相手がCランクのデボットだからな」


デボットの後ろにいる冒険者たちはニタニタと笑いながら野次馬とついてくる。


彼らは面白がっているようですね。あの男がいなければ何も成すことのできない虎の威を借りる狐の集団ですか。

一つが腐れば、他も腐ってしまう、非常に残念ですが排除した方が世界のためですね。多少でも考えられる頭があれば何かしらに利用することができるのに。


「それじゃ、あなたたちが勝ったら、わたしは冒険者を諦めてここを立ち去る。あなたたちが負けたら、あなたたちが冒険者を辞めて立ち去るってことでいいの?」


「女だからって舐めたことを、貴様に負けたら辞めてやるよ! ついでに俺の女にさせてやる! なぁ、おまえたち!」


「おお!」

デボットの宣言に回りの冒険者も興奮する。


「――下劣ですね」


「エレナさん、今の話聞いたよね。じゃあ、もうやっちゃっていいってことだよね」


「はい、ですが、謝ったほうが……。デボットさん、性格は問題はありますが、Cランクであることは間違いありませんから」

これで受付員の言質は取りました。忘れたとは言わせません。


「では、最後の忠告です。本当にやるのですね?」


「そうだね。これでこの人たちいなくなっちゃうんだし、警告は必要だよね。優しいなぁ、ネーヴァさん」


「ええ、弱いのに冒険者をしているなんて冒険者の質を落とすものだから。早めに辞めてもらわないといけないでしょう」


「貴様ぁ。生きてここから出られると思うなよ!」


「最近の若者はキレやすく、すぐに突っかかってくるので困りもの、と言っていたシオンの気持ちもよくわかります。それに弱いやつほど吼えるってよく言うけど本当なのですね。殺そうとするということは、殺されることも覚悟されているのですね。わかりました。あなたの覚悟に報いようとしましょう」


「おい、早く始めろ!」

デボットが剣を構える。


「ねぇ、こっち二人なんだけどどうすんの?」


「ああ、片方は俺の仲間が相手してやるよ」


「ふーん。ネーヴァさん、どっちがいい、そのお仲間さんとこいつと」


「どちらでも。結果はわかりきっていることですから」


「私もどっちでもいいんだよね、どうしよう」

エインリオと私は相手の選択に困ってしまった。同じ結果の相手を選べと言われたら混乱してしまうものね。


「わかりました。私があの男を担当します。エインリオはあっちを」


「はーい」

決定したところでエインリオは観客席の方へ、私はデボットの正面に。


「あっ……」


シオンから今の人種は脆弱のため武器の階級を下げるように言われていましたが、私が持っているのは数本の槍。そのほとんどがシオンが真剣だったりふざけたりして創った槍。まぁ、私もそのときはつい楽しくなってシオンに釣られてしまいましたから、非は私にもあるのですけど。


どうしましょうか、慎重に選ばなければ危険なことになってしまいますし。殺してしまっては違反になり、ギルドカードも作れない、シオンがいないから蘇生もできない。


「どうした、早く武器を構えろ」

私は氷魔術で空気中の水分から氷の槍っぽいものを作り、デボットの前に立つ。


「ふん! 何の魔術かは、知らんがそんな貧相な槍で戦うのか」


「ここまで階級を下げればあなたが判別のできない死体になることもないと思いましたので」


「殺してやる」


「言っておきますが、殺しはダメですからね。それじゃ、始めてください」

なっ! 排除はダメなのですか! ならば、躾に変更しましょう。


デボットが走り出し、大剣を振りかざす。


私は向かってくるデボットの剣をかわしたり槍で受けてあげたりしたのだが、私を傷つけられるだけの力を持っていなかったので適当に【スキル 反撃】で打ち飛ばす。これは武器がなければ使えないスキルだ。今回は武器の格下げのおかげでデボットは生死の淵にいるが死んではいない。


転んだところに収束し貫通力を上げた【水魔術 水弾】で急所ではない足や腕、腹を狙って打ち抜く。


「あぁぁぁぁ」

デボットが強烈な痛みに叫ぶが、私は攻撃を止めない。


水弾で開けた穴から氷魔術で血液を凍らせてみたり、風魔術で無数の傷をつけてみたりと躾を進める。


「さて、終わりね」

デボットが気絶し、面白みがなくなったことでネーヴァの攻撃は止んだ。


「ふざけんなよ!」

観客席の方にいた彼の仲間と思われる男がエインリオのところへ戻ろうとする私に剣を振りかざそうとする。


「あぁぁぁぁ」

彼の仲間の男が急に叫び、剣を落として倒れ伏すが、意識はまだあるようだ。


彼の背中には矢が一本刺さっていた。だが、一本の矢だけで与える痛みではないはずですね。おそらくは、エインリオの【固有スキル 共鳴】を使用してデボットの痛みを彼にも同じ痛みを与えたのでしょう。


「エレナさん、今の勝負は私の勝ちでしょう」


「ふざけるな! まだ、勝負はついていない」

観客席にいる冒険者たちはデボットたちに何が起こったのか理解できず、まだ食い下がる。

エレナさんを見るがどうしたらよいかわからず、迷っている様子。

ちゃんと審判をしてほしいのですけど。


「もぅー、わかったよ。勝負だけじゃなく、あなたたちの命も終わらせるね。次はただの痛みだけじゃなくて絶望とかを味わわせてからだね。いいよね、ネーヴァさん」


「それは彼らが選んだことですから仕方ありませんね」

そう言うと、男の顔が引きつる。


実力の差がわかっているのだろう。攻撃はかわされ、スピードも私の方が速く、力も強い。魔術であれだけやっていることからいつでもデボットを殺せたことは明白なのだから。


「そんなに私が怖いですか? なら、これでどうでしょう。さらに今なら魔術も使用しませんよ。これくらい手加減してあげればあなたたちもほんの少しの光でも拝めるかもしれませんよ?」


「馬鹿にするな!」


「馬鹿になどしてませんよ。ただの塵に何も思うことなどないでしょう?」

塵の猛突進。塵がナイフを構えて向かってくるが、私はナイフの持つ手を弾き、蹴りで足を壊してから動けなくしてひたすらに塵の腹、顔をより速く殴り続ける。


男が動かなくなったのを見てから離れる。男は動かない。白目を剥いて気絶をしている。


「もう気絶してしまいましたね。では、次は誰にしますか?」


見学している冒険者に向かって尋ねる。

誰も来ない。


「いないようね。じゃあ、エレナさん、登録お願いしますね。それと、ここにいる冒険者の方は実力がどうも足りないようなので除名をお願いします」

エレナさんも冒険者の方も黙る。


「だって、皆さんが皆さん自身でそう言ったのですよ。そうしたいとおっしゃっていたのです。これは彼らの問題仕方ないでしょう。本物の冒険者の方なら私たちに当然勝てるはずですもの」


「俺は言ってないぞ」

沈黙の中、観客席の一人の冒険者が言った。


「俺も言っていない」


「言ったのはデボットだろ!」


「そうだな。そうだ、そうだ」


デボラネを切って、自分の身を守るつもりらしい。


「では、私たちがあなたたちにテストをしてあげましょう。デボットさんに賛同していたのです。思想がデボットさんと同じということですよね。そちらが来ないなら私の方から行きますから、皆さんは私より強いということなので私も精一杯皆さんを殺そうと覚悟して挑みたいと思います」

私がそう言い始めたことで観客席の冒険者たちはくたびれてるデボットとその仲間の男を置いて闘技場から走って逃げていく。


「おい、おまえたちなにをやっておる!」

大声を出して厳つい男が、闘技場に入ってきた。


「おい、エレナ。どういうことか説明しろ!」


「えっと、これはその…」

エレナが厳つい男の質問にたじろぐ。


「お前! 何をしたんだっ!? その前にお前誰だ?」


「いきなり失礼な方ですね。あなたこそ誰ですか? 私はただ冒険者登録しに来ただけなんですよ。そしてそこで倒れている男や逃げて行った情けない冒険者たちは、私に模擬戦を挑んできた人たちです」

ネーヴァはその厳つい大男に対しても、まったく引かずに話しかける。


「俺はここの代表であるアレス・ミルダだ。お前たち、何しでかしたかわかってるんだろうな?」


「登録するためにわざわざギルドに来ただけなのに、数人で集まって模擬戦をしようとして殺害を企むする始末。だから相手をしてあげただけですよ。そして、逆に殺そうとしてみたまでですよ。あなたこそギルドマスターとして何やってるのですか?」


「うるさいっ! こんなことして、どうなるかわかっているのか! この街の冒険者が、俺の一声でお前たちのことを狙うぞ!」


「ほぅ、私たちの命を狙う? それをギルドマスターとして言っていいのですかな? それにこの惨状を見て、まだ歯向かおうとするとは……」

その一言でネーヴァは、殺気と威圧をアレスに向けて放つ。


普通とは別次元の殺気をあびたギルドマスターのアレスでさえも、膝をついて震えている。


「ネーヴァさん、私、矢を一本飛ばしただけなんだけど。消化不良だよー」


そういってエインリオは怯えるアレスをするどく見る。標的を発見したようだ。

エインリオに見つめられるアレスは、さらに怯えることになる。


「おま……あ、あなた様はいったい誰なんですか……」

アレスが震えながらも名を聞き出そうとした時、一つの声と三つの影が通路から現れる。


「あ! ネーヴァさん、もう来ていたんですね」

その声の正体は、笑顔で走ってくるマヤだった。


「落ち着きを持ちなさいな、マヤ」


「そう。冷静大事」


「いいじゃん、このくらい。ねぇ、エインリオ様」

ゼノビアとウルに反対されたマヤはエインリオに同意を求める。


「うんうん。冷静は大事だよねー。わかったかな、マヤちゃんよ。ふふん」


「あー。ずるいですよ、それ」

マヤとエインリオの楽しそうな会話にぶしつけな声が入る。


「マヤ、そいつの知り合いなのか?」

突然のマヤたちの訪問に希望の光を見出す。


「ええ、そうですわ。まぁ、知り合いというか、なんというか。でも知り合いですわね」

ゼノビアが口ごもりながらも関係を言う。


「では、私たちはこれで。あぁ、報復とか来られても困りますからね、判別のできない死体の処分。じゃ、エレナさん、登録お願いしますね」

ネーヴァは殺気を引っ込めて、震えるギルドマスターの横を通り過ぎていった。


「な、なんなんだ。あのバケモノはいったい……」

アレスはそう呟くことしかできなかった。


闘技場を抜けて、ホールを通ると誰もが皆、道を譲り、ネーヴァたちのことを、畏怖の目で見つめた。

観覧席で見ていた冒険者たちは、ホールの隅で震えていた。


闘技場から戻ってきたので早速、ギルドカードを作ってもらう。


「それでは登録しますので、名前と職業を記入してください」


治療の手配を済ましてきたエレナが受付をやってくれる。

顔には疲労感が出ている。

汚い冒険者の世話をするのもたいへんですね。私も大変でしたが、シオンもこれを乗り越えたなら私もしなくてはならなかった。


「はい、これを」

私は自分とエインリオの分をエレナに渡す。


「では、この水晶の上に手を置いてください」

検問にあったのと同じ物だ。


これで魔力を確認しているらしいけど、これを調べてどうするんでしょう?

私がそんなことを考えている間もエレナは水晶を操作していく。


「では、次はギルドランクの説明をしますね。ランクはFから始まり、F、E、D、C、B、A、Sと上がっていきます。ランクが上がるのは依頼の成功数、失敗数を考慮します。失敗が多い場合は上がることはありませんので、依頼を受けるときは自分の力に合った依頼を受けてください。あと、同ランクの依頼を受け続けた場合も上がることはありません」


「どういうこと?」


「依頼は一つ上のランクまで受けることができます。ですので、現在FランクのネーヴァさんがFランクの依頼を何百回と受けてもランクは上がることはありません」


「つまり、一つ上のランクをこなして、成功するとランクが上がるわけね」


「ランクごとに異なりますが、目安としてワンランク上の依頼を十回以上になります。そこの辺はギルドが判断します」


「あと最後に、このカードはそれぞれネーヴァさん、エインリオさんでしか使うことはできません。紛失すると再発行に手数料を頂きますのでご注意を」

出来上がったカードを渡される。


「依頼はあちらのボードに貼り出されています。自分が受けたい依頼がありましたら依頼書を受付まで持ってきてください」


「ありがとう、エレナさん」


「ネーヴァさんたちってチケット買った?」


「ん、チケット? 何それ?」

マヤの言っているチケットに首をかしげて反応する。


「あなたは食べ物に夢中で私の話を聞いていなかったのですか!?」


「えへへ。そんな怒んないでよ」


「まだ買ってないんだよね。私、買っておきましたからどうぞ」


「おお、気が利くー」


「まったく、エインリオ、あなたというのは。すみませんね、マヤ」


「大会は明日からですし、シオン様に挨拶しに行きますか?」


「そうだねー、いい案だよ」

こうしてエインリオたちはゼノビアたちと共にシオンのいる学園の前夜祭会場に向かう。
















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