閑話 創造神、ワイバーンを売る
「さて、金を手っ取り早く稼ぐには、――やっぱりワイバーンだな」
俺はワイバーンの生息地を街の人たちやギルドで聞きだし、ワイバーンが多く潜んでいるという近くの山に向かう。
ワイバーンは昔からよく狩っていたものだ。竜種の中では最弱なので簡単に倒すことができる。それでも、竜種なのでそれなりに高く売れる。
尻尾からは強力な毒を取ることも、内臓や身体の中にある竜玉珀で貴重な万能の毒消し回復薬の材料になる。肉は微妙だが、皮は頑丈なのでよく防具に用いられる。鱗からとれる竜鱗粉は色々な武器の強化にも使える。
竜に無駄な部位なし、だな。
金を稼ぐとなったらワイバーンが一番効率的だ。
俺はデュランダルを【スキル 宝物殿】から取り出し、ワイバーンの棲み処を目指し、山の周りの森に入る。
「さてさてさーて、ワイバーンを探すついでに俺の力の実験でもしようかねー」
【スキル 魔力感知】を動物の条件で起動させ、周囲を視ながら進む。いちいち条件指定しないといけないのは面倒だな。今度は、新しいスキルでも創るか。
「色々いるなぁ」
感知した魔力は、人だったり魔物だったり。次に使うのは、【スキル 鑑定】。
ホーンラビット、ブレードウルフ、スライム、トロール、山賊。
魔物だけでなく山賊もいる。
まずは遠距離攻撃の能力実験だ。一番遠くにいた山賊に狙いをつけ、デュランダルを地面に刺し、弓を取り出す。
ステータス
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名前 ミストルテイン
武具階級 神話級
HP +10000
MP +10000
力 +10000
器用 +10000
敏捷 +10000
[付与スキル] 【弓術LV.10】【樹木魔術LV.9】【召喚魔術LV.9】【光学迷彩LV.10】
【立体機動LV.10】【無音移動LV.10】【悪意感知LV.8】
【超集中LV.9】【狙撃LV.10】
[固有スキル] 【標的爆散LV.10】
[称号] 【神樹の聖弓】
[加護] 【創造神の加護】
[材料] 世界樹の枝、世界樹の樹液、神鋼緋緋色金
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これ以下の弓もあるのだが、弓術の付与ができるのがこれしかないのだ。自分で【スキル 弓術】を増やしてもいいのだが、スキルをいちいち増やし過ぎるのもどうかと思ったのだ。
最もスキルに頼らずとも射貫くことはできる。その他にもスキルにないことだってできる。だが、万が一にでも失敗してしまったら、なんか恥ずかしい。
ステータスは何も絶対というわけではない。弓兵だって剣を使うことはできる。ただし、スキルにないことをしてもあまり意味をなさないというだけのことで効果的でない。
「よっと」
召喚魔術で出した普通の矢を番え木の上から一人の山賊を狙いつける。
その山賊が立ち上がろうとした瞬間、弓から矢が放たれた。
―――ドォゴォォォォォォォォォォォォォン!!!
≪レベルアップしました…≫
被害が大きかったために俺のレベルも上がる。
「威力が……高過ぎだったか。使った弓が拙かったな?」
山賊たちはまとめて無残な肉片へと姿を変えたのだった。
使用した武器の性能が強力すぎたのだ。
「まぁ、山賊だしいいだろ、別に」
実験に使う武器ではなかったな。面白半分で作った弓だが、これほどまでに凶悪な物を創っていたとは思わなかった。
山賊を捕らえるくらいに思ってたのに、その対象が消滅しては意味が無い。
もう弓はいいや。今度からは自分で弓のスキルを取って調節しよう。
今の轟音で小動物系の魔物が逃げてしまった。でもまだ実験動物は残っている。
「次は、魔術にしよう」
立っていた木の枝に座り、まだ逃げ出していない鈍感な魔物のトロールに狙いをつける。
「誰もいないし、無詠唱でいいだろ」
俺は中級魔術の【氷魔術 氷の檻】でトロールを凍らせ、別の魔術でとどめをさそうとするが、トロールが氷の檻に抵抗する気配がない。
いくらCランクの魔物のトロールでも中級魔術はだいたいのものが耐えることができる。しかし、トロールは氷の中で凍死していた。
「ふむ、俺の魔術が強すぎたということか。だが、弓よりは魔術の方が手加減ができる感じだ。衆目では、魔術を使うとしよう。じゃあ、あとは近距離攻撃の確認だけだな」
俺はデュランダルを引き抜き、ワイバーンを探しに行く。
・・・
ソレは空から飛来した。
緑色の鱗に覆われた、長い首を持つ空の魔物。
二本の足に鋭い爪を持ち、口の中には鋭利な牙が生えそろっている。
全長3m程度であり、ブレスの類を使うことはないが尻尾の先に毒針を持ち、強力な麻痺毒を持っている。
強さとしては、絶望的に強いわけでもないが、一般的には強力な魔物に分類されることは確かで、頭上からの攻撃に慣れていない冒険者たちは簡単に餌食にされるだろう。
「お、来たな、ワイバ―ン!」
俺はワイバーンを執拗に追い駆け、巣のあるところに誘導させるために幾度もちょっかいを繰り返す。
流石に空からの魔物が相手では、慣れない身体で対処するには苦労があり、何度も失敗していた。実験から魔術で攻めるが、やり過ぎると簡単にその一匹を仕留めてしまうので巣の場所まで着くことができない。
仲間を呼んでくれてもいいと思うのだが。
「むぅ、どうしたものか?」
俺は途端に思い出した。過去に高ステータスにまでレベルアップしちゃって手加減に困ったときに落ちていた石が投げまくったことを。
スキルを取れば、さらに手加減が難しくなるのでステータス任せにただ石を投げつける。
「グギャッ」
頭に石が当たったワイバーンが苦しそうな声を上げて地面に落ちていくが、死んではいない。
気絶して落ちたワイバーンの下へ行き、腹と顔を起き上がるまで殴り続ける。
「起きろ、死ね、仲間の所に俺を連れて行ってから死ね」
延々、殴っているとワイバーンが起きて俺に嚙みつこうとする。
それをまた顔を殴って止め、逃がす。
ワイバーンは俺の思惑通りに巣へと戻ってくれた。
「いるねぇ、いるよ、いるよ」
俺は早速巣に潜り、風魔術で巻きあがる風がワイバーンたちの飛行を乱す。
そして、デュランダルでワイバーンの羽を無残に斬っていく。
「クハハハハハハ」
≪レベルアップしました…≫
俺がデュランダルを一閃したその瞬間、ワイバーンが苦痛の悲鳴をあげ、首と胴体が離ればなれとなった。
血を撒き散らし、墜落していくワイバーン。
「あぁ、もう終わりか。数がいればそれなりに愉しいな」
ワイバーンの素材を回収しながらつぶやく。
全部倒したわけではない。多少は残して生態系が崩れないようにする。中にはまだ卵のなかにいるワイバーンもいるようなので、親は残していくことにした。生きている奴の中で羽を斬ってしまったやつは神聖魔術で回復させる。
「こんなものでいいだろ、これで十分金は稼げる」
そうして俺はワイバーンの素材をギルドへと持ち帰った。
・・・
「おう、坊主も買取か?」
「ああ、大量だったんだ」
俺の前に並んでいたのは、ゴリラのような風貌の大男と数人の美女だった。これが彼のパーティーなのだろう。
「じゃ、これを頼む」
ゴリラの大男は、大きな一匹の魔物を買取台に乗せる。
「すげぇ、さすがライオスさんだぜ」
「これってなんて魔物だっけ?」
女性の冒険者は、魔物の多くの鱗や肉片を見て、首をかしげる。
「知らねーのか、これ超有名だぞ。この魔物はな、……ワイバーンだ!!」
男の冒険者が魔物の名前を叫び、周りの冒険者たちも叫びあい、ゴリラを讃える。
お、ゴリラの大男もワイバーンを狩ったのか。やっぱりいつでもワイバーンは小遣い稼ぎにもってこいの魔物だ。
「これでライオスも竜殺しだ!」
「スゲェなぁ。さすがはAランクだぜ」
Aランク冒険者ゴリラ――ライオスは、銀色に輝きものすごい装飾がされた鎧を身に纏ってい、鼻高々とキメポーズを決めている。
竜殺しにワイバーンを入れてどうする。ワイバーン程度で竜殺しが名乗れるものなのか?
「すみません、買取お願いします」
「分かりました。ではこちらの鑑定台に素材を置いて戴けますか?」
「「「「おおっーーー!!」」」」
と、突然横の方から歓声が聞こえてくる。
「なんだ?」
見ればゴリラ――ライオスが腕を天に上げて何かを宣言していた。
「皆、このワイバーンを倒して俺たちは竜殺しとなったわけだが、俺たちが目標はSランクの魔物――幻獣ヒポグリフの討伐だ!」
ワイバーンは確かに竜種には入るだろう。しかし、竜というにはお粗末で出来損ないだ。
竜種より上位になれば龍種。これを討伐してこその一人前の龍殺しだろう。ワイバーンなんて半人前。
龍種ともなれば異常なまでに精神力が高いために自身の身体をも飲み込み、進化していく。こうして出来た真の龍種は精神生命体となり、肉体を捨て、物質で身体を構成するようになった。そのお陰で不滅の存在となった龍種もいる。
つまり、龍種とはエネルギーの塊だ。存在そのものが災害に等しい。
物理攻撃・魔力攻撃共に効きづらくなっている。
ヒポグリフ、確か大型の身体の前半身が鷲、後半身が馬の魔物で、時には自分よりも強い魔物と闘おうとする荒くれ者だ。しかし、ヒポグリフは決してSランクなどではないし、強さは同じAランクのワイバーンよりも大幅に強い。
「だから皆安心してくれ! 数日中には俺たちがヒポグリフの脅威から王都を守るぞ!」
ヒポが自分から襲うことなんて稀だ。人種の勝手な思い込みだろうな。
「いいぞ、サリアちゃん!」
大きな帽子を被り、杖を持つ魔術師のサリア。
「頑張ってください、クリスさん」
銀色の鎧を纏った細剣使いのクリス。
「期待してるぞ、竜殺し!」
皆、ゴリラの宣言に大興奮だ。ゴリラの仲間の人は、クリスとサリアというのか。
「解体の分の金は出すので、解体お願いします」
シオンは騒ぎを一通り見て自分のワイバーンを換金する。
「わかりました……!?」
「鑑定台には乗りきらないので、床に置きますね」
俺はさっき倒したワイバーンを並べていく。
「お、おい。あれもワイバーンじゃねぇか?」
「ライオスたちが倒した分じゃねぇのか?」
何故か周囲の冒険者さん達がこちらを見てざわついている。
「へぇ、俺達以外にもワイバーンを狩れるパーティがいるのか。この国の冒険者もなかなかやるじゃないか」
さっきまで向こうに居たゴリラがこちらにやって来た。
いやいや、ワイバーン程度なら誰だって狩れるだろ? こっち来んな。
「ぼ、坊主が倒したのか? しかも、ソロで?」
「ええ、翼を斬ってから首を刎ねました」
シオンは顔を寄せてくるゴリラに簡単に説明する。
「へぇ、羽を狙うなんてなかなか難しいことをしてるんだな。魔術使いがいないと無理だろ?」
ライオスを始めとして冒険者たちが疑問に包まれる。
「そんなことできんのか?」
「お前、魔術使えたよな、同じことができるか?」
「無理に決まってんだろ!」
ライオスの疑問に俺は淡々と答える。
「俺はどっちも使えるんで」
「………気に入った。今日は一緒に飲もうじゃねーか」
その後、暑苦しく喋りこんできた。払いはすべてライオス持ちだったから悪い人ではないのだろう。
解体されたワイバーンの素材は全て売ることはできなかった。
「ドラゴンを買取できるほどの予算がありませんからね。本当に残念ですが」ということらしい。
竜の血は上級体力回復薬の材料になる位の代物で、一種の万能薬のようなものなのだと。他の薬剤に混ぜますと、その効果を数段上げてくれたりし、ワイバーンの血で作った丸薬は滋養強壮に優れ、一粒飲めば一年間病気知らずだという話を聞かされた。
この理由で血液だけで一瓶で金貨50枚の価値があるのだ。それが解体で50瓶分ぎっしり目の前のテーブルに敷き詰められている。
さらに血液より強力なのが肝。血液と同じ効能だが、上位互換のようなもの。一つ金貨100枚の値が付いた。
竜は全身が素材として価値があるため、牙や目玉、鱗に皮。捨てるところが無い。
「私がドラゴンの素材を懐へ入れるのを心配しているのですか? それなら心配無用ですよ。そんなことをしたら、冒険者ギルドの信用を失墜させるだけでなく、私自身も奴隷落ちなんてことになりかねませんからね」
気にしてはいなかったが、一部のみ買い取ってもらえる結果になった。




