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二十九話 創造神、魔物狩りをする③

「あとちょっとね」


「うぅー、やっと出れるー」

 二人は迷宮の出口が見えたことでホッと安心する。初めての迷宮で緊張していたのだろう。


 他の生徒はどうしているのだろう?


「お帰りなさい。だいぶ遅かったわね、早速素材の方を確認させてもらおうかな」


「遅かったのですか?」


「ええ、他の子は一階層目でゴブリンとウルフを相手にしてウルフを狩れずに疲れて早めに出てきちゃったわ。まぁ、最初だし予想していたことだけどね」


「な、なんでですか?」


「え?」


「なんで一階層目でそんなに疲れているんですか? だって、私たちはもっと進めたのに」

 アルマはフレイヤの言うことに疑問を抱く。


「あ、あれ?」


「え? なんだこれ?」

 ルウとアルマ、オーランド、それにルーファスも急にその場に座り込んでしまった。


 意味が分からずに立ち上がろうとするも、足に力が入らず、腕は軽く震えていた。


「よくあることよ、他の子もあなたたちと同じようになってるわ、あなたたち程ではないけどね。初めてなのに長時間も迷宮に潜っていたら、緊張に加えて無駄な力も入ってそれなりに疲労が出るわよ」

 この時間で戦闘時の緊張と体力作りを補っているのか。


「え? なんで? 別に疲れなんて感じてなかったのに?」


「それは感じていたのではなく、認識していなかっただけだろうな。最初と比べて最後の方は動きも鈍っていたからな。ほれ、お前たちと仲間の奴が他にもいるぞ」


 俺はアルマの疑問に答え、周りを見るように言う。


 俺の言葉に迷宮前の広場へ視線を向けると、そこには、地面に座り込んだまま動こうとはしない者、地面で寝転がっている者の姿が見受けられる。


 フレイヤにマジックバックを渡し、中の10以上のウルフの皮、ゴブリンの死骸、多くの魔石を見せる。


「――――ッ! な、なんなんですか、これはーー!?」


 フレイヤが大きな声で俺が今も出している素材を見ながら叫ぶ。


「ウ、ウルフの素材がこんなに……。しかも、ゴブリンの死骸もなんでこんなに多いの!? 魔石も多すぎるでしょ!? こ、これはいったいなんですかっ!!」


「え、えっと、みんなで狩ってきたものなんですが? まぁ、大半がシオンのおかげでな」

 オーランドがフレイヤの圧に押され、俺をフレイヤに差し出す。


「なんだ、なんかあったのか?」


「また、シオン君が何かを起こしたそうよ!!」


「早く記録しなさい!! ファンクラブ本部に報告よ」


 周りで疲れて寝転がっていたりした生徒たちが俺たちの会話を聞き、騒ぎ出す。


 シャナークくんも倒れながらも歯ぎしりをしてこちらを睨んでいた。彼には召喚魔術でウルフの上位種であるフォレストウルフを出していたから、多少は頑張れるかと思ったのだが、作戦もなしに迷宮の中をただ突っ走り返り討ちに会ってそのまま何の成果もなしに戻ってきたようだ。


「まぁ、長時間中にいて、自分の足で帰ってこれたんだからあなたたちは誇ってもいいんじゃないかな」


 自分たちがどれ程疲れているのかも分からない状態を褒めるのは、俺はどうかと思うが。


「それにしても、あなたは気づいていたんだから、途中で引き返せるかと思ったんだけど――」


「わかってはいたが、いっそのこと色々と経験させた方がいいと思ったのでな。学ぶこともあったしな」


「長時間潜って誰よりもひどい状態になっていないのは、あなたがこの子たちを調節しながら進んだかしら?」


「さてな」


 俺は苦し紛れに言い訳を言って面倒を回避する。こういうところで肯定すると、面倒が来ると学んだのだ。


「ところで、今日の授業は終わりになるのか?」


「ええ。迷宮の実習は基本戻ってくるのが、バラバラだし、あとは自由にしていいわよ」


 そんなことをフレイヤと話していると、アルマが決意を固めたような目で見てくる。


「あなたに色々と教えてほしいんだけど」


 翌日、俺が仕方なく生徒会の部屋にやって来ると、アルマがそんな言葉を言う。


「ふむ、面倒だ」


「は? いや、なんで断るのよ!?」


「ただでさえこんな面倒な仕事をさせられているんだ。断るだろ」


「いいではないか、そのくらい」


 アルマの頼みごとに生徒会長のリリスが入ってくる。


「それに聞いたぞ。アルマたちに何やら新たな魔術を教えたようだな。私も知りたいものだ」


「………いいでしょう。ただし、条件があります」


「ほぅ、なんだね?」


「ここの教科書の魔術の教え方には、いくつか改善点があるように思う。その点に関して、いくつか相談をさせてもらいたいんです」


 一番の問題は、この指導方法には魔力操作のやり方を教える項目が入っていないという点だ。

 恐らく、詠唱だけすれば自動で魔力を制御してくれる魔法を教えていたせいで、魔力を制御するという発想があまりないのだろう。


 それが世界の停滞につながる一つの原因かもしれない。


「受け入れよう。学園長からも君には生徒たちを強化するように言われているようだしな」


 即答だった。


 学園長で俺は思い出す。学園に入るときに学園長室で親善試合のために生徒の強化を頼まれていたことを。


「ああ、親善大会のことか」


「ええ、負け続けていることから君に強化を頼んだということよ」


「え? あの、会長? 学園長が彼に頼みごとをしたんですか? しかも、私と同じ生徒で?」


「あれ? 知らない? 訓練場を破壊したことで筆記試験の方が隠れちゃったのね」


「筆記試験?」


「彼は未解決問題を解いちゃっているわ。内容は魔剣の作り方だそうよ。今、学会の方は魔剣製作の臨床実験で大忙しだそうよ」


「ええぇー!」


「まぁ、そんなわけで私にも教えてね、シオンくん」


「リリス会長!!」

話に割り込んできたのは、俺に負けた少年アリオット先輩だ。


「正直、難しいと思います。僕たちが習ってきた魔術は、しっかりと裏付けされてきたものですし、今のところ強大な魔術を使える魔術使いはシオンしかいませんし、今のところ魔術使いが使う魔術としては今のままが適切だというのが、僕の見解です」


 まあ、そうだよな。今まで教えてきた、しかも剣術と並んで実技科目の主軸となっていた魔術の授業をいきなり潰せなどと言われても困るはずだ。


「で、アルマ。教えるなら訓練場に行くぞ。会長、その話はまた今度で」

めんどくさくなってきた俺は、そこで話を区切る。


「あっ、待ちなさいよ。私だって準備があるんだから」


 訓練場というのは、利用者に応じてある程度の区分けがされているのである。

 これは少し考えてみれば分かることだろう。


 魔術科の生徒と武術科の生徒が同じ場所で訓練していたら、どうなるかということは。

 武術系同士であればともかく、魔術科がそこに混ざっていては危険すぎるのだ。


 そういったわけで、魔術科の生徒は隔離されるようにして一つの訓練場を使うよう言われており、ここがそうなのだということであった。ちなみに、俺が破壊したのも魔術の訓練場。


「さて、と…」


 まず耳に届いたのは轟音。

 誰かが魔術を試し撃ったのか、視界の端で爆発が起こったのが見え、だがその場に居る誰もがその者に注目する。


「あれってルウかしら?」


 視線を向ければ、そこに居たのはアルマの言う通りルウであった。


「あれ? シオンくん? 珍しいね……ここには来ないかと思ってたよ」


「アルマからの頼み事でな。だから別に来たかったというわけでもないのだが……そっちは何をしていたんだ。すごい音をしていたぞ」


「アルマちゃんがねぇ。で、そうね、研究と練習……主に練習だけど。シオンくんに教えてもらった身体強化魔術をね。だけど、今の一回で魔力がほどんどなくなっちゃったよ」


 そう言ってちらりと視線を後方に向けたので、シオンもそちらへと視線を移す。

 そこにあったのはひびの入った石の壁だった。


「アルマちゃんの頼み事って?」


「魔術の指南だそうだ」


「練習とかをしているのは知っていたけど……てっきり一人でやっているものかと思いきや、そうじゃなかったんだね」


「ルウは私のことをどんな風に見てるわけ……!? それにちゃんと友達ぐらいいるわよ……!」


 そんなこんなでアルマの魔術練習が始まった。








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