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二十六話 創造神、差別を見る

「随分と楽しそうですね。躾でも教えているんですの?」

 女生徒が、高笑いしながら取り巻きを連れて現れた。その近くには、シャナークくんもいる。


 女生徒の側には鑑定でさっと見たら侯爵や伯爵も子息や令嬢を筆頭に貴族の子供たちで、その大部分が勝ち誇った顔をしたりニヤニヤしていた。


 その低能な言葉には返事を返さず、何か言われても面倒なので丁寧に「こんにちわ、イザベラ様。もう消えて結構ですよ」とだけさらりと返すと、イザベラのこめかみがピクリと動いた。


「随分熱心にお喋りされてましたけど、良いんですの? 明日の試験……そのために悪あがきをされなくても?」


「ん……? なにかの鳴き声が聞こえますね。馬か鹿の鳴き声でしょうか? ……おや、イザベラ様の声でしたか!  前から思ってましたけれど、とても美しい声をされていますよね。まるでさえずる可愛い小鳥の様ですな。はっはっは」

 わざとらしく聞こえないフリをしてから、すっとぼけてそう言うと、俺の説明で勉強していたケモ耳っ子たちやルーファスたちがブハッと吹き出した。


「ふう……。これが私たちの国の平民とは。まともに人と会話することも出来ないらしい。これではこの国の行く末が危ぶまれるな」

 コツ、コツと廊下から教室に扉を開ける音と共に、子供ながらに気取った声が聞こえた。


「アスカロン様ぁ!!」

 イザベラがピンク色の悲鳴を上げる。さっきまでの意地悪そうな顔を引っ込め、ニコニコと頬を染めて話に加わった少年の腕に絡みついた。

 その変わり身、すごいな。よくもまぁ、平然とこんなことができるものだ。羞恥心がないのか。


「イザベラ、これはなんの騒ぎだい? ……シオンに酷いことを言われなかったか?」


「はい、大丈夫ですわ……わたくし、こんな者に負けませんもの!」

 おおう……。なんか、二人の世界が完成している。


 酷いことも何も、突っかかってきたのはそっちなんですけどね。

 とんだ茶番に呆れていると、少年がこちらを向いた。


「シオン。獣人と戯れるのは好きにしたらいいが、君には人族としての誇りはないのか? 獣人族なんかと一緒にいるとは。まったく……見ていて見苦しいよ。君もアドニス王兄殿下を見習うといい」 


「……仰っている意味が分かりませんね、アスカロン様」

 ちっ、いつまで敬称はつけなければならないんだ、こんなクソガキに。今の俺も子供なのだが、それは置いといて。

 しかも、あんな馬鹿をトップとしていることがさらに腹立たしい。


「そうか。せっかくの助言も耳を貸さないか……。誰も相手してくれないからといって、そこまで落ちぶれたくは無いものだな」

 そう言ってキラキラオーラを出す少年の黒い発言で、増長したイザベラや取り巻きたちと「やれやれ、かわいそうな奴らだ」という顔をし合っている。


 一方シオンはシオンで、嘘だろ……。一応は貴族の一員でありながら白昼堂々人種差別発言とか、さすがに周りが見えていなさすぎでは……。と、彼らの発現に驚いていた。


 若干ドン引きしていると、後ろのケモ耳っ子たちだけでなく人族の子供たちもざわめき出した。

 しかしここで揉めてはまずい。誰かが暴走し出す前に、俺は話の主導権を握る事にした。


「俺はこの国を愛しおります……。国王も素晴らしいと思います」

 俺が作った当時は、本当にみんな頑張って国として運営出来た時は、喜ばしかった。現国王に関しては、イスタールが次代の国王として選んだのだからきっと性格的にも大丈夫なはずだ。きっと、たぶん。


「へえ、そうかい」


 俺の発現を勘違いした馬鹿子息は、はっ、今更ゴマすりするか? という顔をし、次の瞬間、俺の表情に息を飲んだ。

 別に威圧するつもりは無かったんだがな……。ひょっとしたら無意識に威圧を使っていたのかもしれんな。


「しかし、高貴なる者は、もっと余裕を持つべきです。大した理由もなく、いたずらに他者を貶めるべきではないと進言致します。それがあなた様の為になりましょう」


「っ、なんだと!」

 俺に苦言を呈されていることがわかったらしく、一瞬で怒りに満ちた顔になった。


「生意気を言って申し訳ありません。ですが、今ここで俺を罰したら。そんな前例を作ってしまったら、これから先、王兄殿下に面と向かって意見を言えるものはいなくなってしまうのでは無いでしょうか? 助言や意見を受け付けない統治者を、なんと言うのでしたか……」

 再びすっとぼけて思案する顔をした俺は、ぽんと手を打って、ゆるりと言葉を発した。


「ああ、そうだ。……暴君、と言うのでしたね。いやぁ、思い出せてよかった」

 にこりと微笑んで告げる。少年やイザベラは絶句した。


「あぁいえ、決して王兄殿下がそうだと言っているわけではないのですよ? そんな言葉があったなぁと思っただけですから」


「貴様……っ!」

 それよりもそろそろこんな会話をアドニスの弟であるルーファスがいるのに続けるのはまずいだろ。まぁ、煽る俺も俺か。


 更に釘を刺しておく。

「繰り返しますが、このような沢山の人の前で、不用意な発言は慎んだ方があなた様の為ですよ。それは、この光景を見れば一目瞭然かと存じますがね。でも、俺はあなた方を理解していますよ。そうしなければ、自分を保っていられないほど弱い存在なのでしょう? ああ、可愛そうに。どうかあなた方に生きる価値を与えたまえ」

 そう言って恭しく一歩退き、俺の体で隠れていた後ろの子供たちを見せる。

 すると、少年は少し怯んだ顔をした。


 それも当然だ。獣人族であるケモ耳っ子達は相当嫌悪感をあらわにしているし……しかしそれだけじゃない。


 あまりに考えなしな貴族子息、令嬢の様子に、人族の、俺を頼ってきた子供達も不信感をあらわにした顔をしていたからだ。


「あぁ、よしよし、怖かったね。でも、あいつらは弱いから君たちに嫉妬しているとても哀しい生き物なんだ。彼らに慈悲を与えてあげよう」

 俺はケモ耳をモフモフしながら言う。その獣人も気持ちよさそうにしていた。そして、それを見るケモ耳たちが列をなした。


 この子たちだって貴族の子息だし、この国に住む者たちだ。……上の人間が有能か無能か、本能的に嗅ぎ分ける力は幼いながらに持っているのだ。

 コイツについて行って大丈夫かな、理不尽なことをされないかな。そんな当たり前のことは誰だって考えつくことだ。


「ふ、ふん……! 貴族でもないお前に進言されるようないわれは無い。口を慎め、シオン」


 ため息をつくと、イザベラの横で空気になっていたシャナークが口を開いた。

「このような低能な者どもと会話していると、こちらまで馬鹿になってしまいそうです。行きましょう、アスカロン様」


「おーい、シャナークくーん」


「っ!」

 名前を呼んでやると、シャナークはまさか呼びかけられると思わなかったのか、びくりと体を震わせた。お前には怯えられるような何かをしたはずがないんだが。


「誰が低能なんだ?……少なくともここにいる子供たちはお前に気品、学力、武力、全てにおいて劣るとは思えないのだが」


「なんだと!」


「うちの者に話しかけないで頂けます?! ……それに、武力ですって? 馬鹿にしないでくださる?!」

 イザベラが話に割り込む。学力の方は自信が無いのか武力の方にシフトする。


「では競争しましょうか。確か、そろそろ親善大会に向けての選抜戦がありましね。そこで決着をつけるというのはどうだろうか?」


「良いだろう」


「ア、アスカロン様?!」

 まさか少年がこの話に乗ってくるとは思わなかったのか、イザベラの悲鳴が響く。アドニスのいないところで勝手に決められてゆく。可哀想に。


「心配するな、イザベラ。アドニス様についている我々が負けるなど万に一つもあり得ない。それに私はすでに我が公爵家に伝わる秘術を学んでいる」


 そういって少年とシャナークたちは去っていった。

 俺がミスって訓練場を破壊したにもかかわらずそれでも挑んでくるとは、よほどの自信があるのか、単に馬鹿なのか。後者の方が割合は高そうだが。

 結果、競争することになってしまったが、まぁいい。


 この子たちはしっかりと勉強してきたし、秘術が何なのかは知らんが、遊び呆けていたイザベラ、シャナーク側に負けることもないだろう。


 馬鹿王子の無様な姿が早く見たいもんだ! どうせまだ俺のことを根に持っているだろうから、本気で潰しにかかってくるだろうし。


「ありがとう、シオン」

 教えていた獣人の子が俺に礼を言う。


「ふむ。なぜ『ありがとう』なのだ?」


「あいつらは俺たちが獣人だってことで派閥っていうのか? それに不当な扱いをされたりしてはじき出されたんだ」


「僕は回避の練習とか言って魔術の的にされた」


「俺はそもそもグループに入らせてさえもらえなかったぞ」


 他のケモ耳っ子の意見にグループに一時期は入っていた獣人の子は、「入らなくて正解だぞ。あそこは、――」


 その子の情報によれば、第一グループ、第二グループ、第三グループと分かれ、生徒たちは身分やコネ、納めた会員費によってグループ分けされる。その金がどこに流れているのかは、さすがに知らないようだ。


「でも、あんた大丈夫なの? 相手は公爵家に王兄殿下であるアドニス様もいるのよ」

 同じく俺に教わっていたアルマが不安そうな声で俺の心配をする。


「心配ない。こっちにはルーファスがいる」


「えー、それって僕任せってことー」


「ふふ。まぁ、それ以外にも……」









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