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二十五話 創造神、注目されるが絡まれず

 寝坊からの邂逅、俺はオーランドと共に遂に学園へと到着した。


 学園の門の警備の者たちには事情を話し、生徒手帳も見せ無事学園内に入ることに成功した。

 俺の顔を見て驚かれたことは腑に落ちない。

 これは入学するときの試験が原因なのだろう。


「よし、じゃあどっちが先に行くか決めようぜ」


「は?」

 オーランドが教室の前に行くなり変なことを言う。


「いやいや、正面切って遅刻した奴が教室に入るってなんか嫌だろ。シオン、お前平気そうだしシオンから入ってくれよ」


「じゃあ、行くぞ」


「決断早すぎんだろ、俺が準備出来てねーわ」


 教室前、扉の取っ手に手に掛ける。

「失礼する」



 ・・・



 私は、アルマ・ジラスト。ジラスト家の次女である。


 私はアヴァントヘルム学園で今年、唯一入学日当日に生徒会から声がかかり、書記を任せられるほどに優秀だ。


 昨年などはそれほど才能のある人がいなかったらしく生徒会のメンバーは、一学年は生徒会におらず、二学年以上で回していたようです。


 だから、一学年の時から生徒会に選ばれることは大変優秀である証拠なんです。


 そして、選ばれた私は入学前から天才魔術使いとして有名で、当然Sクラスに入ることが出来ました。


 しかし、私は最近、不安になることが多くなりました。その原因こそがSクラスに編入?してきた同い年で長い黒髪をポニーテールのようにしている黒眼の綺麗な少年、シオンです!!


 彼は入学の試験で訓練場を破壊したという大それた事をしています。


 これだけで彼がなんらかの強大な実力があるということです。その強大な力に私の優秀さがかすむのです。


 おまけにこの学園の三学年で二番目に優秀な副会長のアリオット先輩を倒しちゃうし、さらには、会長に気に入られて生徒会に入っちゃうし。


 ですが、召喚魔術の授業で低級の魔物であるスライムを召喚したときは、心の中でものすごく喜びました。


 彼にもダメなところがあった。

 そう確信した。ここから私の方がすごいことを思い知らせることができる。そう思ったのです。


 しかし、その希望ははかなく散りました。


 元宮廷魔術師でもあるフレイヤ先生が言うには、彼の呼び出したスライムはグラトニースライムという種類だったそうです。私はその魔物についてあまり知りませんでしたが、フレイヤ先生は顔を青くしていました。


 あの小さくて丸く可愛らしいスライムがそんなに恐れられる存在なのでしょうか? クラスのみんなもスライムのことをかわいいと言っています。しかし、彼の後ろで待機している二人の給仕が肩を震わせて笑っているのが分かります。


 何か面白いことがあったのでしょうか? というよりも、彼は貴族なのでしょうか?

 給仕を控えさせていることから彼が貴族である可能性を導きました。


 しかし、私たち貴族の子供というのは、幼い時からパーティーなどがあり、大抵の顔や名前はお互いに知っています。なのに、彼の名前や顔は私は見たことも聞いたこともない。訓練場を破壊するほどの彼だったら幼少期から有名になっているはずです。


 そんなことを考えていると、白衣を着た女性フレイヤ先生が壇上にあがる。

 言わずもがな、この人がSクラスの担任を務める教師だ。教職員側が彼のことを気にしてこの学園で優秀なフレイヤ先生に教師を変えたのだろう。


「ええーっと、新しく担任を務めることになったフレイヤ・カルエナンだ。魔術属性は風と土、あと水です。この学年では召喚術を担当していたが、ある理由から担任をすることになった。よろしく」


「「「………」」」


「いや、これで私の自己紹介は終わりましたよ」


 あまりに簡単な紹介、本人は気怠そうで、私たちの無言の視線にも応えないみたい。

 それでも三属性を使えるということでスカウトされたので、ここで働いているらしい。


「じゃあ、出席の確認とるぞー」

 クラスは20人、別に名前を呼ばれなくとも見ればわかる人数だ。


 その上で空いている席が二つ。一番後ろに座っている私の前の席が空いていた。

 初日から数日で遅刻なんてどんな勇気してんだか。

 それも二人。Sクラスに選ばれることは相応の実力がということ。なのに……。


「居ないのは、あいつか」


「そういえば、教室が騒がしくなんていなかったものな」と、先生は独り言のようにつぶやく。

 私は周りを見渡す。


 そして、分かったことは彼がいないことだった。


「学園始まって以来の逸材の人だよね。訓練場を破壊したっていう、しかもたった1人で」


「流石に破壊する人はそうそういないもんね」


「ええ、更に容姿も端麗だから、ファンクラブのために私もお会いするのを楽しみにしていたんですけど……」


「遅刻とは、とんだ問題児ですね」


 周りも私同様に彼がいないことに気づいているようだ。


「失礼する」

 扉が強く開け放たれる。


 廊下より歩んできたのは1人の男? 少女といっても差し支えない中性的な顔造り、ただ制服はスカートでなくズボンなので男で間違いない、と思う。


 面持ちは威風堂々、黒い長髪と瞳、衣服の間から覗えるその肌色は雪のよう。

 同じ人間とは思えないくらい、完璧といっても過言ではない人物がそこに居た。


「遅いですよ、シオン」


「すまんな、フレイヤよ」


 カッコいいとか美しいの次元を超えている。芸術的なまでの容姿様相。

 備えた眼光も鋭く、とてつもなくクールな性格をしてそうだ。

 私もそれなりに容姿には自信があったのだが、これを目の前にすればどんな者も自信を失うだろう。


「やっぱりおかしいよね、ね、だって、あんなに綺麗な子が男の子のはずないよ!!」


「ま、まぁ、そうね」

 私は隣りの席にいる幼なじみのルウのあまりの圧にアルマに渋りながらも肯定する。

 周りは黄色い歓声も上げる。ただただ彼を見つめて。


 実は何処かの王子と言われても信じるレベル。本当に王族の関係者なんじゃないのかな? ルーファス殿下と知り合いのようだし。


「それでシオン、遅刻の理由は?」


「………寝坊、です」


『『『『か、可愛い!』』』』


 おそらくこのクラスの全女子が思ったことだろう。はぁはぁと息をしてる子もいる。

 ルウにさんざん聞かされた、いわゆるギャップ萌えというものなのかもしれない。

 私はそれを初めて体験した。

 訓練場を破壊するほどの強大な力を持った個人が、遅刻の理由はまさかの寝坊。何か事件に巻き込まれたとかでなく。嘘なんかついているように思えないし。


「……寝坊って、ホントか?」

 よほど先生も意外だったのか、言いよどむ。


「まぁ、本当ですね。残念ながら」


「んー、まあいいや。とりあえず席につきなさい」


「はい」


 先生にうながされ彼は私の前の席に座る。


 そして、彼の隣には空いていた席がいつの間にか男子学生が座っていた。彼の騒ぎに紛れてこっそりと入ってきたようだ。



 ・・・



「じゃあ、授業を始めます」

 フレイヤの声で授業が行われる。


 語学、歴史、戦術、魔術学などだ。

 周りを見ても流石は優秀なクラス、殆どが教師の言葉と板書に全神経を集中している様子。


 退屈。その一言に尽きた。


 俺は目の前で行われることに退屈の念を抱いていた。

 停滞する価値観、鎮火する関心好奇心、学園とはこんなものかと。


 現在は魔術学の座学、教師が言うことは正しいことばかり、面白さの欠片もないお堅いものであり、低レベルなものばかり。

 他の生徒たちは一生懸命フレイヤの説明についていこうとしている。この程度のことは別に筆記するほどではないはずなのに。


「フレイヤ」


「どうしました、シオン?」


「その魔術式、一部間違っているぞ」


「む。どこですか? 特に間違いは見当たらないのですが?」

 俺の指摘を受けてフレイヤは魔術陣を式に直した誤りを見つけようとしたが、発見できなかった。


「いや、間違いというのは、術式の欠陥という意味だ」


「まさか。ありえませんね。この術式は何百年もこの形で伝わっているのです。その中で欠陥を見つけたというようなことはありません」


「あるぞ」

 俺は黒板に書かれた魔術式を何か所か書き換えた。


「こんなものかな」


 フレイヤは信じられないといった表情で魔術式を見つめている。

「そんな……でも、確かに、これなら……魔力効率が二割良くなって……魔術威力も二割上がってる」


 教室からどよめきが漏れる。

「……あいつ……何者だよ」


「今まで学者が見つけられなかった魔術の欠陥を見つけるなんて……」


「世紀の大発見だよな、これ」

 これぐらいのことで驚かれても……。なんとも低レベルな話だ。


「良く見つけられましたね。まだこの学年では、魔術研究の基礎だって触れていないのに……」


 ただわかったこともある。

 最初に創造したときには全ての属性を使えるようにしていたのだが、今の現世はそれぞれの個体に得意属性というものがあるということ。

 そこからただ適性が高いものを使用することに慣れ過ぎて他の属性の修練を怠る傾向になり、それが時と共に進んでいき、段々と個人個人の属性のみに限定されていき、その他の魔術を使えなくなってしまったというわけだ。

 だから、多数の属性を実践レベルで扱うことのできることは、一種の才能とされているようだ。


 それにしても、この前の授業だって、

「知っての通り、ポーションの歴史はまだ浅い。誕生は五百年ほど前で、劣化が止まらない回復系神聖魔法に代わるものをって理念のもと、開発した薬品を原型として――」

 だったりと歴史も改竄されていてポーションの作り方や品質も下がりっぱなし。誤った技術が伝わり、伝染している。

 俺が授業中に作ったポーションの方がスキルをわざわざ創らないようにしたのに、やっていたら自分で勝手に会得した【スキル 錬成】で教師を上回ってまた騒ぎなっちゃったしさ。


「そろそろ時間か。今日の魔術学はここまでとしよう」

 時計を確認、少し早かったがここで授業は終了らしい。


 周りも気を抜き始め、教師も退出し緩い空気が訪れる。


「はあ、初っ端からハードすぎるぜ、これは」


「そうか?」


「そうかって、シオンは全部わかってんのかよ?」


「一応は」


「マジでか!?」

 と、オーランドと会話をしていると、後ろから声がかかる。

 いたのは、俺の後ろの席にいた一人の女子学生だった。隣には俺のことを睨んでいる少女付きで。


「あの、シオンくん」


「なんだ?」


「さっきの授業でわからわい所があったんだけど、教えてくれないかな?」


「かまわんぞ」


「ありがとう。それで教科書のこの部分なんだけど」


「この魔術の第一工程の改編、か」


「うん。一回構築して、それからの変形が出来なくて」


「なるほど」


 すると、向こうは気を使ってなんだろうが、教科書と共にその身体、顔も俺の方へ近づけてくる。

 そして、周りもチラチラと視線を向けてくる。


「君、名前は何と言ったか?」


「ああ、そうでね、私はルウ・リリアントだよ。ルウって呼んでね」


「俺はシオンだ」

 今まで会ってきた貴族の中でまともな者に出会えた。


「うん、うん。知ってるよ、有名だもん」

 ルウは腕を組み、首を縦に振る。


「そうか? まぁ、いいや。この工程の役割として————」


「じゃあこの式は要らないってこと?」


「ああ。必要ない」

 俺は魔術式を見て、きっぱりと言う。


 賢者時代を思い出すな。

 あれは、俺が世界を創ったはいいが、魔術などは魔神にまかせていた。そこで、俺は暇つぶしを兼ねて下界で魔術を学んだ。神界では、【生命神 アイズ】に「創造神様はこんなことをしなくてもいいんです」とか言われて止められてしまうからだ。


「でも先生は……」


「申し訳ないが、あの授業はハッキリ言ってレベルが低い。これが実戦的かつ完璧な構築だ」


 そのまま、ルウに魔術式のことを教える。

「で、コレとコレをくっ付ける」


「うんうん」


「それで出来た陣にさっきの式を加えると――」


「ホントだ! ちゃんと答えと一緒になってる!」


「ならシオンさん、ここから第二工程への循環が悪く非効率なのではなくて?」 

 ルウに続いて貴族の少女も入り込む。


「えっと、あなたは?」


(わたくし)はエンリ・ルーセントです。兄がお世話になりました。私のこともエンリと呼んでくださいな、シオンさん。それで私も興味深いので混ぜてくださいな。それでどう発展させるのです?」

 一瞬だけ兄――アリオットの敵討ちかと思ったが、妹の方はキッチリとしているようだ。


「そうだな、これは――」


 そして、教えているうちに色々な者が周囲にいた。人族だけでなく、数は少ないが獣人族もこのSクラスにいる。

 しかし、このクラス――というよりはこの学園でも獣人はあまり好意を抱かれてはいないらしい。これは王都でもライドウと共に歩いているときにも見られた傾向だ。獣人への差別が存在していることの証拠だ。

 またイスタールに問い詰めなくては、な。今の国王は獣人国に言っているとイスタールは言っていたが、現国王はまともなのだろうか。



 ・・・



 ルウとエンリに一通り教え終わった俺はオーランドと一緒にいたが――。


「なぁ、オーランドよ」


「あぁ、なんだよ、シオンさんよぉ?」


「なんでそんなに怒ってんだよ。でさ、遅刻しただけでこんなにも注目されるものなのか?」


「うるせぇ、早速女子と仲良くなってんじゃねーよ!!」

 うるさいのはどっちだ、絶対にお前の方であろう。


 俺たちはSクラスに入ったあたりから授業中もずっと見られていた。


 ルウも俺は有名だと言っていた。俺は変だと思われているのか。それとも、一緒にいるオーランドが変なのか?


「そうだなー、この注目のされ具合はな。――単純にシオンが目立っているだけだ」


「な、なんだと!」


「なんでそこで驚くんだよ、分かってたんじゃないのか?」


「いや、全然。ずっとお前が何か仕出かしたのかと思ってた」


「ははは、お前の方が仕出かしてんじゃねえか」










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