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二十三話 創造神、また面倒事

「遅い!」


俺が王城の訓練場に着くなりに怒声を浴びせる王子兄(おうじあに)


「しかし、特に時間指定もなかったんだからいいだろう」


「うるさい、貴様はただ我らの方が立場が上なのだから従っていればいいのだ。それなのに、貴様は、この俺を待たせやがって。貴様は朝早くから待っていろと言うことなのにそんなこともわからんとは」


「アドニス様、それはこんなクズに言ってもわかりますまい。なんせ低能な冒険者をやっているのですから」

王子兄の取り巻きも追従して嗤う。


あー、もう、面倒くせーな、こんな茶番さっさと終わらせてしまおう。


「いいから、やろうよ」

シオンはアドニスに呆れながら闘いの催促をする。


「何たる口の利き方か。聖騎士ルクルットよ、そこの低俗の輩を殺してしまえ」


「わかりました、アドニス様。てことで、お前には俺たちに歯向かったからな、この殿下から頂いた魔剣アカツキでいたぶりながら殺してやるよ」


「うん、そういうのいいから」

シオンが二つの装備を宝物殿から出す。

「ラーグリフ、デュランダル」

アドニスはこれには何も言わなかった。事前に俺の情報を集めていたようだ。


「ふっ」

聖騎士ルクルットが魔剣に炎を纏わせ、上段で振りかぶりながら突っ込んでくる。


魔剣には魔術が付与されているようで、火属性を帯びている。さらに、ルクルットの移動速度が上がる。自身を加速する魔術も付与されているらしい。その二つの効果を持っている。

魔剣としては基本中の基本のありふれた剣だ。

俺は左手に装備したデュランダルで受け流す。

ルクルットは受け流された剣を自分の体の前に持っていき、突きを繰り出す。


「我が呼ぶは、アイギス、プリドゥエン、スヴェル」

シオンはそれを右手に持っている本――幻想の書ラーグリフから盾を多めに3枚召喚し、ルクルットの剣を受け止める。


これには、アドニスたちも驚いている。

こんな武具を見たことがないだろう。王城の宝物庫にも無い物をこの黒衣の少年が持っていることがそもそもおかしいみたいな反応してる。

アドニスらが、驚嘆するのも無理はない。これはそれほどに恐ろしいものだ。


ラーグリフに記されているのは、過去に俺が見た武具、魔術、スキル、武技。そのすべて9割程度で再現してしまう能力を持ち、あらゆる知識が詰められている本なのだ。

この呼び出した盾にはそれぞれ能力があり、衝撃吸収・魔術無効・略奪・自動修復・衝撃反転・接触石化などのスキルをそれぞれ持っている。

衝撃吸収は盾としては当然のスキルで、自動修復や衝撃反転はだいぶいい能力だ。やばい能力なのが残りの略奪や魔術無効、接触石化だ。


まずは、略奪。

相手の体力、魔力を奪い、ステータスを一時的に下げ、持ち主の許可があれば50%の確率でスキルを奪うことができる。今回は相手側がかわいそうなので、奪うことはしない。


次に、魔術無効はその言葉の通りに魔術を一切通さない効果を持つ。


最後に、接触石化は触れた場所が石化するという能力だ。素手でこの盾を攻撃すれば、その手が石化することになり、剣で攻撃すれば、剣が石化する。


シオンはルクルットの動きが止まったところにデュランダルの腹でこいつの横っ腹を殴る。


流石にこいつを腹から掻っ捌くと、前に殺してしまったグラーフの二の舞になってしまうので、殴るだけにした。

シオンは少し反省をしたのだった。


「ぐぬぬぅー」

地面を転がったルクルットが俺を睨め付ける。


ルクルットは身体を起こし、もう一度シオンに仕掛ける。


またもルクルットは剣で突きをする。


シオンは浮いている3枚の盾をルクルットと自分の間に割り込ませ、剣を再び止めようとする。

ルクルットは盾が目の前に来たことを理解して魔剣の能力である加速を使い、シオンの剣のない右側に移動する。


そして、突きを放つが、ラーグリフから出た4枚目の盾に阻まれる。


「こういうのも面白いと思うぞ。バルムンク、フラガラッハ」

さらに、ラーグリフから出てきた二本の剣が宙に浮き、ルクルットに迫る。

その武器が持つ本来の効果は使わない。

使った場合、オーバーキルになる。俺は平気だが、その他の周りにまで影響を与える効果だってある。


ルクルットは上から斬りかかる浮遊している剣を魔剣で受け止める。だが、受け止められた剣は背中に移動し、ルクルットの背中を刺す。


もう一方の剣はルクルットの目の前で唐竹、袈裟、逆袈裟、右薙、左薙、右切上、左切上、逆風と何度も斬りかかる。


そして、段々とルクルットには、幾つもの切傷がつき、ボロボロの状態でやっと立てているのが現状だ。たまに、突進してくるもんだからデュランダルで腹をぶっ刺したりしていた。


最終的には、二本の剣が、ルクルットの首元と鎧の上から心臓を刺そうとするところで止まり、ルクルットも膝を地面につき、顔を空に向けて絶望を浮かべている。


デュランダルをそんなに使うことがなかったな。


デュランダルから『こんなことなら俺を使うんじゃない』という意思がシオンに伝わる。

長い年月闘い続けて、それでも壊れることのなかった剣は、持ち主の魔力に反応して少しずつ成長していき、やがて自らの意思を生み出して不滅の剣となったのが、このデュランダルなのだ。

他の能力もあるが、まぁ、ただ壊れない剣だ。


≪やはりこのような輩にわざわざ武装することが間違っているのです、マスター≫


≪ああ、そうだな、俺も学んだよ。いくら面倒だからと言ってクズ虫に武器を使うのがいけないんだ。今度からは小石を投げて瀕死にすればいいな≫


≪ええ、それでやっとクズ虫にも体面が立つでしょう≫


エルとの心話を終わらせ、地面に臥せっているルクルットを見る。

「もうこれでいいでしょ」


今回は普通に終わらせることができたと、シオンは完全に思っているのだが、常人は聖騎士の一撃を簡単に受け流すことなどできないし、武具を召喚する本という摩訶不思議な物を持てるはずがない。それに武具を浮かせて攻撃することが普通であることは絶対にないのだ。


「ありえん、炎の魔剣アカツキを持ったルクルット殿が負けるのか」


「落ち着いてください、殿下。きっとあの者がルクルット殿に何か卑怯なことをしたのでしょう。そうでなければ、あの者が勝つことはあり得ないのですから」

王子兄とお付きの人が話し合い、落ち着きを取り戻していく。


「そ、そうだな。お前、何をしたのだ!! そうやってお爺様にも何かしたのだろう!」


「うぇー、まだ続くのか」


「皆の者、この不届きな罪人を捕まえろ、死刑だ」

うわ、しれっと罪人にされちった。しかも、いきなり死刑かよ! 


「やめんかっ!!」


突如、イスタールの怒声が訓練場に響き渡る。


その威圧の入ったイスタールの怒りが王子兄に向けられる。


「これはなんだ! アドニス!」


「こ、これは、ですね、王族に対して、不義を働いたものを、粛清しようと――」


王子兄はイスタールに震えながらに答える。王子の味方の者は、王子兄と一緒にイスタールの前に跪いていき、何も言うことなく頭を垂れていた。


「もういい、わかった。お前がそこまで阿呆だとは、思わなかったぞ。お前の言い分も分からなくはないから許可したのに、儂はこのようなことを許した覚えはないぞ!! お前は、この少年がルーファスの護衛を務まるのかという疑問だったはずだ。なのに今はこの少年を死刑にしようとしているではないか!!」

イスタールは呆れながら言う。


「アドニス、お前はしばらく謹慎とする。いいな、少しは反省をしろ!」

自分の孫が過ちを起こしたことで、イスタールも家族としては悲しいのだな。


「はい」


「なぁ、イスタールよ、こいつらはどうするんだ?」

俺は王子兄の前でも変わらずイスタールに聖騎士と王子兄に付いている貴族子息を指さし、話しかける。


「大丈夫です。聖騎士はこの騒ぎで階級が下がるでしょうし、貴族子息にはそれぞれの家の当主から追って沙汰があるでしょうから」



・・・



ギルドではシオンの行いによる余波があった。


「この依頼の報告に来ました」

カルタナは受付で盗賊と盗賊のギルドカードを差し出す。


「はい、確かに。ん? こ、これって、まさか、あの『毒牙』ですか?!」


多くのギルドカードの中から一つのカードに目を向けた職人が声を上げる。


「マジかよ、あの毒牙のオルスを倒したのか」

「でもよ、あいつら、Cランク以下の奴らだろ、それで倒せるか?」

「カルタナはいたらしいぞ」

「それでもBランクは一人だろ」


職員が依頼に参加人数を確かめるが、一人不足している。

「あの、一人いないようですが? その一人はどちらに?」


「シオンだ。王都に着いたらすぐ用事があるとかでどっかに行っちまったんだよ」


「なるほど、シオンさんですか」


職員は何かを察した様子だった。

この王都のギルド職員でシオンを知らないものはいなかった。

冒険者になってから数日でワイバーンを何頭も狩ってくる者など忘れられない。

ギルド職員の中でもシオンのファンクラブに属する者が出てきている。


「なんだよ、シオンがいたのか」


「ああ、あいつならそれくらい普通か」


「流石シオン様」

周りの冒険者もシオンの名を聞き、納得する。

そのことにジータとキリハは、自分のことのように胸を張る。


「ん? シオンが何なんだ?」

キース少年たちは職員に質問する。


「あれ、知らないんですか? シオンさんはオーガを倒し、困ったBランク冒険者を矯正してワイバーンを単独で複数体倒しているんですよ」


「えー! ワイバーンを狩ったー! それってシオンはAランク冒険者ってこと?」


「いや、それを複数でしょ、だから、えっとー?」


「じゃあ、Aランク以上なの?」

あまりの驚きにキース少年たちはわからなくなっていった。

キースたちが職員と話していると、カルタナは奥からギルドマスターの部屋に呼ばれる。


「一体なんでしょうか。わざわざギルドマスターであるマルスさんの呼び出しとは……」


「いやいや、そんなに緊張しなくていい。まぁ、座ってくれ。聞きたいのはな――シオンの事だ。一緒に護衛依頼してどうだった?」














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