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二十二話 創造神、盗賊討伐する②

「おや、ここで何をしてるんですか?」


「こいつらに捕まったのよ! それで学園都市からここまで連れてこられたのよ。こいつら、この前のやつの仲間らしくてさ、私たちを追ってきて身代金を要求しようとしてたのよ!」

 イニシアがすでに死んでいる盗賊を指さしてシオンに答える。

 ここはアヴァントヘルム学園都市とシルファリオン王国の中間地点に近いところで、学園からは半日程度でここまで連れてこられたそうだ。


「なんだ、シオンは学園の生徒さんだったのか。敬語とかつけた方がいいか?」


「やめてくれよ、カルタナさん。それに学園の生徒だからってなんで敬語にしなくちゃいけないんだ?」


「あー、学園に行っているのって貴族のボンボンが多いからよ、そうしないとうるせぇんだよなぁ」

 カルタナの面倒そうな声にジータたちも納得する。


「そうですよ、魔物を倒さないといけないときに『俺を守れ!』とか言って余計に時間がかかったりしたよねぇ」

「そう、面倒」


「ジータたちはもう警護の依頼を受けたんだな」


「まぁ、魔物を倒すから近隣の森に連れてけ! っていう内容だから簡単そうだったんですけど、依頼主がですね」

 そういってジータは疲れた表情をする。経験があるということだな。大変そうに。


「あの、すみません、私たちも助けていただけるのですね」

 アリアとイニシアと一緒に捕まっていた法衣を着た少女が口を開く。


「ああ、はい。では、この少年と一緒に洞窟の出口まで行ってくれ」

 俺はこの少女とお付きらしき人を鑑定する。

 鑑定結果は両方とも神官だった。ただ少女の方は聖女の称号を持っている。


「何してんの?」

 俺はまた言ってしまった。仕方ないじゃん、こんなところに聖女がいるなんて思わないしさ。


「え?」


 俺はカルタナたちに聞かれないように離れたところで聖女に話しかけようとするが、お付きの人に阻まれる。

 突然話しかけられたことにびっくりした聖女はお付き神官によって俺から離れるようにする。

「ああ、いや、えーっと、法衣を着ているってことは神官だよな、こんなところでなんで捕まったんだ?」


「なんですか、貴方は!?」


「リナ、大丈夫だから。それで盗賊に捕まった訳だったわね。そうね、たぶんだけど、馬車が貴族の乗るようなものだったからじゃないかしら。捕まえた後は私が「リン様!!」わかってるわよ。えー、私は特別な地位にいるのね。それで、盗賊たちは私のことを知らなかったから、貴族だと思って馬車を襲ったんじゃないかしら」

 お付きの神官―リナはリンが聖女であることは隠したいご様子。それもリンの方も自分の価値を知っているらしい。

 場所によっては使徒や神の代行者と呼ばれる存在。


「特別な地位にいるなら護衛がいるだろう。それに神官なら傷ついた護衛を治癒して盗賊くらいはなんとか出来そうなものだけどな」


「それが護衛たちは、馬車と馬で並走していたんですが、突如馬と護衛たちが倒れていったのよ。それで成すすべなく私たちは捕まっちゃったの。その後は、彼女たちと同じようにこの腕輪をはめられたのよ。そしたら、魔術が使えなくなってしまったの」


「わかった。あとで外してやる」


「おーい、シオン、入り口まで送ってやれ」

 俺たちにカルタナが呼びかける。


「ああ」

 面倒この上ないが、頼まれれば仕方ない。


「この二人は知り合いのようだしな、歳が近ければ話しやすいだろ」

 そういう配慮ね。


「◆ ◆ ◆ ◆◆…。

 せめて魔術はかけておく」

 シオンは詠唱をし、攻撃力アップと敏捷アップの魔術をかける。


「剣士かと思ったが、そんなことも出来んのか、すごいな」


「あったかい」

 キリハには俺の付与魔術が暖かく感じたのだろう。


「そんなことより盗賊を早く倒しちまおう」


「じゃあ、俺は一旦送り届ける」

 シオンはイニシアとアリアを連れていく。


「あんた、冒険者もしてたの?」


「まぁ。やってる」


「なにその反応? うーん、魔術師を目指してるしついでに経験としてやってみようかな。六賢者様たちも冒険者の頃があったらしいしね」

 六賢者、懐かしい称号だ。あいつはまだ塔に引き籠っているのかな。


「でも、イニシアちゃん、危ないんじゃ、ないの?」

 アリアは冒険者家業に躊躇している。


「アリア。君はいつもイニシアに守られてばかりなのか?」

 この場で思った疑問がシオンの口から飛び出る。

 シオンの言葉で二人が立ち止まる。


「そんなことないんじゃない? 私だって学園のダンジョンでは助けてもらったことあるし。なに? 私たちじゃ冒険者できないっていうの?」

 態度が威圧めに変わり、イニシアがシオンの顔を覗く。


「いや、そういうことではない。もし、戦力が足りなければどこかとパーティーを組めばいいだけだからな」


「そうよね、強くなって盗賊共をとッ捕まえてやるんだから!」

 俺が言っているのは、冒険者などではない。そんなのは好きにしてくれ。

 依存。

 アリアはイニシアに頼り過ぎている気があると客観的にもわかる。つまらん。それは俺の望むものではない。


「なら、今回も魔術を使えばよかったではないか?」


「それが襲われてすぐに腕にこんなものをつけられてからうまく使えないようになっちゃったのよ」

 聖女であるリンからの情報と同じ物だった。


 イニシアとアリアが自分たちの腕を見せる。そこには、シオンのよく知っている昔から使われている行動制限の腕輪があった。

 これは劣化していてスキルの使用不能にする物だったが、奴隷商でゼノビアたちに使われている物が行動制限の腕輪だった。

 今ではシオンが【神聖魔術 ディスペル】で外せているから自由に行動できるが、本来外すことは非常に難しい。

 外すことができるのは精々上級の神聖魔術が使える神官くらいだろう。しかし、この時代ではまず上級の術が使える者自体が珍しい、さらにそんな者はだいたいが膨大な金を要求するのは必然であった。


 神官が金を要求してくるのはいつの時代でも同じようだが、上級の使い手が減った今は金をせびる者が増えたようだ。


 そして、これは通常、盗賊などが持てるはずのない物だった。おそらくは誰かが流したのか、盗賊が違法な商人から奪った物だろう。


「それは俺が外しておこう。今は脱出が優先だ」

 それにしてもやはりいつの時代も魔術師の多くは軟弱だ。こんなもので縛られた途端に何もできなくなる。


 俺は四人の腕輪を外し、その記憶を操作し、盗賊の持っていた魔道具で外したことにした。彼女らは学園の生徒に神殿の者だ。この魔術が高レベルのものだと知られればその情報は拡散される。そうなれば、神殿のバカどもに目をつけられることになる。

 ウルたちは、俺たちから離れるつもりはないと事前に言われていたのでそんなことをしなくてよかったのだった。


 シオンたちは洞窟が出ると、二人の盗賊と剣を交わしているキースたちがいた。といっても、心配はいらず、ちょうど二人の盗賊を倒したところだった。


「おお、シオン、いいところに。俺たちだけでこいつらを倒したぞ。それになんか補助してくれたんだろ。いつもより身体が動きやすかった。ありがとな、マジで助かるぜ」


「そうか、囚われていた者をここに預ける」


「シオンはどうすんだ?」


「カルタナたちが奥へ進んだから俺はその後を追う」

 シオンが再び洞窟へ入ろうとすると、後ろから声がかかる。


「待って!」


「なんだ、イニシア? 『連れてけ』というのは無しだぞ」


「大丈夫、それくらいは弁えてるわ。それより、あいつら、魔物にも私たちにしてたような腕輪を首につけてたから気を付けて」


「ああ、わかった」


 魔物に首輪をつけるなら、テイマーとしては三流だな。しかし、そろそろこの依頼も早く終わらせたくなってきたな。よし、さっさと駆逐しよう。憂鬱だよ、まったく、この後も面倒があるんだから。


 洞窟の中に再び入り、誰にも見られていないことを確認してシオンは立ち止まり、【地魔術 クリエイトゴーレム】を使用する。

 魔術で出来たゴーレムは、石狼が4匹、石猿が5匹、石蠍が4匹で計13匹が全てレベル50という物だった。


 対して、盗賊の残りは20人ほどでレベルは10~20であった。

 蹂躙の始まりである。

 石狼が一番速く奥の部屋にたどり着き、盗賊どもをかみ殺していく。

 その様子にたちまち逃げてきた盗賊がゆっくり歩いてきた俺の近くにいる石猿、石蠍たちによってあっけなく殺されていく。


「ぐべっ」「ぎゃっ」「ごふっ」

 そして、一方的に盗賊が死んでいく様を見ているカルタナも動揺する。


「大丈夫ですよ、こいつらは俺が持っていた魔道具から呼んだものなので」


「君にはよく驚かされるな。しかし、そんな魔道具は聞いたことがないな? ゴーレムを召喚できる魔道具とは」


「これは俺の師が作って持たせてくれた物なんです。一度しか使えませんが」

 そういってシオンは使えない魔道具を見せる。

 もちろんこれも嘘である。適当に使えない魔道具を宝物殿から取り出し、それっぽく偽装したものなのだ。もう面倒な嫌なんだ。


 しかし、シオンは忘れていた。今の世界は、衰退していることに。自分のやったことがこの人たちからしてどんなに非常識なものかを。


「いいのか? そんな大事な物を使ってしまって?」


「皆さんが無事ならいいですよ」

 これ、何の魔道具だったかな? 確か、衝撃を与えると周囲50kmを焦土と化すような大規模爆破が起きるって感じの効果じゃなかったかな?


「ん、ありがと。魔術今度教えてね」

 キリハは礼をいいながら俺に魔術の話をする。


「そうか、ありがとう。私たちもピンチだったから助かったよ。地形的にそこで構えていればキリハもいるし、私とジータで壁になってなんとかできると思っていたんだが、向こうにも魔術使いがいたから危なかったんだ」


 そんな会話しながら盗賊の死体からギルドカードを取っていると、カルタナが大声をあげる。


「お、おい、これを見てみろ! こいつ、毒牙のオルスだぞ!」


「ほ、本当ですか?」


「ん、オルス!」


 それぞれ驚いたところで、落ち着く。


「こんな大物がいたとは、ますます危なかったな」



 ・・・



「よし、王都に戻るぞ」


 俺たちは乗ってきた馬車に無力化した生き残った盗賊と死んだ盗賊のギルドカードを持って王都へと帰還する。


「これでこの依頼も終わりだなー」


「そうやって油断しないでね、またオークが襲ってくるかもしれないんだから」


「大丈夫だって、もう俺たちに恐れるものなんてないぜ」


「まったく」


 キース少年のパーティーやそれを聞いていたカルタナたちは笑う。


 しかし、俺は考え事をしていた。


 それは―――この後の面倒事についてだった。


「シオン、この後一緒に飲もうぜ」


「まだ昼をちょっとすぎたくらいでしょ、飲むのは夜にしなさいよ。それに飲むって言ったって私たちはまだお酒飲めないんだしさ」


「いいじゃねーか、別に」


 キースの言い分に加わるリックの男二人が俺を誘う。


「すまん、少し用事があってな」


「そっかー、じゃあ、また今度飲もうぜ。礼を込めておごってやるからよ」


「今度は魔術教えて」


 別れの最後には、キリハから魔術の教えを催促される。


 王都に着くと、俺はカルタナたちに盗賊討伐のギルドへの報告とオーク40体を入れたシオンが作った即席のマジックバッグをカルタナたちにまかせて一人王城へ向かう。













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