二十一話 創造神、盗賊討伐する①
事前にギルド側が調べていた盗賊のねぐらに俺たちは向かっている。
「退屈だぜ。こうも暇だとなんか出てこないかなー」
「何言ってんの? 危険はない方がいいでしょ」
「でもよー」
難癖付けきた少年とその仲間の一人の少女が話す。
「俺たちの実力ってやつを見せてやんねーとさ。でかい顔されたくねぇーかんな」
「……」
少年は大きな声で言いながら俺を見る。
「気にしないでください、シオンさん」
「シオンはすごい」
キリハとジータが声をかける。
「ええ、気にしていませんよ。ところで、キリハとジータはなんでこの依頼を?」
「私たち、Dランクの冒険者になってね、この依頼を無事完遂することができたらCランク冒険者になれるんだ」
「ランクアップする」
「おう、こいつらは頑張ってるからな」
「ありがと、カルタナ」
「なんでなんだ?」
「ん? 何がだ?」
「さっきの少年だ」
カルタナがシオンのつぶやきに気づく。
「君みたいな子供が自分たちよりもランクが上ってことが気に食わないんだろうさ。それに子供がランクアップするのはだいたいが寄生みたいなもんだ。例えば、貴族の坊ちゃんとかな」
「ふむ」
「まぁ、共に戦えばわかると思うが、こうも平和だとなぁ」
「む」
「どうしたんですか、シオンさん?」
「いや、何でもない」
そう言い、シオンはジータたちから少し離れた茂みに行く。
「さて、次は何にしようかな」
シオンは常に【スキル 気配察知】を使い、オークとゴブリンの集団を発見しては魔術で殺していた。
それをカルタナもジータたち、少年らも気づいていない。
「さっきから魔術を放つだけで終わってるからなぁ」
≪では、あの舐めた態度の愚か者どもに集団を引き付けましょう≫
≪ええー、嫌だよー、後で恨まれそうだしさ。でも、それもいいな≫
≪というのは冗談で。マスターが使いがっていたあのスキルを使ってみては?≫
≪ああ、【固有スキル 形態変化:刃身】ね。そうしよっか≫
シオンはエルの冗談に聞こえない会話を終わらせ、スキルを使う。
形態変化:刃身は身体から刃物を出すだけの能力だ。
シオンは手のひらからナイフを生み出し、オークの集団に飛ばす。
ナイフに刺された一匹のオークを見て、他のオークがナイフの飛んできた方向に走り、俺たちの所に向かってくる。
「カルタナさん、正面からオークの集団が近づいてきます」
「なにっ!」
カルタナさんが俺の報告に驚いたその時、木々の間からオークの集団が姿を見せた。
「オークか!?」
「まずい、数が多すぎる!」
「40はいるぞ…」
オークはランクDの魔物だが、それが40匹となると、ジータとキリハ、少年らでDランク冒険者が6人とBランクのカルタナでも対処ができない。
「BURURUOOOOOOOOOO!」
木々の奥から吠えながら出てきたのは、オークの上位種であるオークメイジ、オークソルジャーだった。
オークメイジとオークソルジャーの雄たけびで他のオークたちの勢いが増した。
「マジかよ、上位種かよ!! クソッ!」
「上位種はある程度判断力がある。これは、戦力差が明白だな。撤退を優先するぞ」
カルタナがそう判断した。
「そ、それじゃあ…」
「殿をする奴は死ぬよな」
「イヤァー!」
「お、落ち着いて、アンナ」
少年のパーティーのアンナと呼ばれた少女が泣き始め、それを別の少女が震えながら声をかける。
「おい、寄生野郎。てめぇは逃げ足くらいは速いよな」
まだ俺をそう呼ぶのか。特に戦闘があったわけではないから仕方ないけどさ。
「おまえに頼みがある。もしやばくなったらそいつらを連れて逃げてくれ」
「ほぅ」
意外だ、自らの命を犠牲にするとは。
「俺らは同じ村の出身でな、子供の頃から冒険者になって大成するのが夢だったんだ。俺が死んでもこいつらの命だけはなんとか―」
「キース! 仲間を置いて逃げるなんてできるわけないでしょ!」
「そうだよ、俺たちはお前と冒険者になったんだ。お前が生きてなきゃ意味がねぇんだよ!」
「ごめん」
「よっしゃー、行くぞー!!」
ふむ、このような結果になるとは思わなかった。
しかし、たかがオークごときにこの状態ではなんというか。
じゃあ、俺もスキルを試したいし、さっさと片づけるかな。
シオンは【固有スキル 形態変化:刃身】を発動させる。腕から刀を二本取り出す。
「ははっ、出てきた」
みんなはオークに目をやり、こちらに気づいていない。
「気を引き締めろ!」
カルタナの声が響き渡り、8人対40体の戦いが始まった。
この後に盗賊もあるんだから彼らには楽をしてもらおうかな。
シオンはオークメイジの前に縮地を使い、近づき、首を刎ねる。
続いて、オークソルジャーの腹を掻っ捌く。
この攻撃で上位種を始末し、残りはオークのみとなった。すべてを狩ったら彼らのためにもならないと思い、3匹を残して他を殺した。
その戦闘を呆然とカルタナたちが見ていた。
そして、その状態から復活し、指示を出す。
「シオンばかりに倒させるな。私たちも行くぞ」
3匹のオークをカルタナ、ジータとキリハ、キース少年のパーティーで倒す。
「俺たち、生き残ったんだなー」
「ああ、そうだな」
カルタナとキース少年が話しながらこちらに来る。
「シオン、よくやったな! ところで、お前のその剣はどこから出したんだ? それにあの戦い方は?」
「シオン! ありがとう。お前のおかげで仲間が死なずに済んだ」
「カルタナさん、このオークの死骸はどうします?」
ジータがオークの死骸を指さしながら言う。
「これだけの素材を捨てるのはもったいないが、これから盗賊の盗伐だ。これは捨てるしかないだろう」
「じゃあ、せめて討伐証明のための部分を取っていこう」
「素材は俺が持とう」
俺は【スキル 宝物殿】でオークを丸ごと収納する。
「「「え?!」」」
「シオンならこれくらい当然」
「確かにシオンさんなら」
俺の行動にジータとキリハの二人ともが麻痺していた。
「なんですか、今のは!」
「オークが消えた?」
「シオン、オークをどこへやったのだ?」
「ちゃんとあるよ、ほら」
シオンは不安そうにするカルタナにオークを見せる。
「ぬわっ、オークが出てきた」
「ははっ、すげぇな」
オークを再度仕舞い、盗賊討伐へ進む。
「今なら盗賊も恐れずに足らずだな」
「調子に乗らないでね、キース」
そして、盗賊のねぐらの周辺に到着し、身を隠しながら近づく。
盗賊は洞窟のなかに住み着き、拠点としているようだ。その入口の近くに見張りが二人立っている。
「さて、ここからが依頼の討伐だ。作戦を決めよう。まず、キリハとリックは魔術と弓で見張りを仕留めてくれ」
リックはキース少年のパーティーで後衛を務める少年だ。
「わかった」「わかりました」
「続いて、斥候であるアンナには盗賊の配置について見てきてほしい」
「わかりました」
「アンナが戻り次第、残りの私たちで倒しに行く。入り口をアンナたちは見張っていてくれ」
「あの、もし、人質がいたらどうするんですか?」
質問したのはキース少年のパーティーの4人目、エリスだった。
「それも含めてアンナ、調べてくれないか?」
「わかりりました」
「よし、じゃ、行くぞ」
それぞれが三方の配置につき、キリハが詠唱を唱え、リックが矢を構える。
「◆ ◆◆…」
「よし、作戦開始だ」
「【風魔術 風の矢】」
俺、カルタナ、ジータ、キース、エリスの5名が二方向から魔術と矢で見張りを仕留めたことを確認する。
「来た」
「よし、いくぞ」
カルタナの静かな声に頷く。
「じゃ、私が見てくる」
アンナが洞窟にそういって入る。
「私たちは入り口を占拠する。キリハとリックはその場で待機だ」
十分後、洞窟からアンナが出てきた。
「どうだ?」
「先で通路が二つに分かれてる。一方は牢屋で、もう一方の方に奴らがいた。けっこう騒いでいたからちょっとの音は気にしなくいいと思う」
「牢屋には誰かいたか?」
「少女が三人と女性が一人いました。盗賊は奥の部屋に30人近く、牢屋には3人ほどいました」
「よし、では、先に牢屋に行き、捕虜の救出と牢屋の方の盗賊を始末する」
俺たちは入り口にキース少年のパーティーを残して洞窟の中に進む。
「いるな。キリハ、魔術で先制攻撃してくれ。そのあと、混乱したところに私たちが仕掛けに行くぞ」
カルタナが作戦を言い、俺たちはその意見に賛成する。
「◆◆ ◆◆……」
キリハが魔術の詠唱を始める。
「ジータ、キリハを守ってやれ」
「わかってる」
「【風魔術 風刃】」
キリハが詠唱を終わらせ、中級魔術の風刃を放った。
「ぐわっ」
盗賊が胴に魔術をくらい、苦しみ死んでいく声が聞こえた。
「敵しゅ――」
敵が来たことを叫ぼうとする盗賊の一人を刀で切り殺す。
「こっちも片づけた。シオン、今の剣技すごかったな」
「ありがとう」
ふむ、この程度のことで褒められるのか。
「ふふん、私の上級風魔術は強い」
言葉に違和感はあったが、敵の一人を倒したキリハが無い胸をそらして誇らしげにしていた。
「大丈夫かい?」
カルタナが牢屋から少女たちを開放し、言葉をかける。
「あ、ありがと…うござい…ます」
「あれ? あんた、この前会った――シオンじゃない!?」
捕まっていた三人の少女の内の一人が俺を指さし言ってくる。
そして、俺も彼女らのことを思い出す。
俺の試験の帰りに裏道で人さらいに絡まれていたイニシアとアリアだった。




