十四話 創造神、学園に入る③
王城に向かう道中、エインリオが俺に何か聞きたそうにもじもじしている。
「何か聞きたいことがあるのならば、聞け」
シオンがうながすとエインリオは言いづらそうに言う。
「そのー、シオン様は今回、何をされるので?今までは勇者やら王様やら色々なってきたじゃないですか」
エインリオの言う通り、俺は下界に降りては何かをしでかしてきた。
あらゆる邪悪を人であろうと魔族であろうと公正に退けた勇者。
国を一から創って周囲の国家に存在を認めさせた賢王。
暗躍者として悪徳の者に恐れられた忍者。
術を極めた賢者。
武を極めた仙人。
普通に国が一つ買えるほどの金を手に入れた商人。
慈悲深き平等に死を与えた魔王。
剣一つでなんでもねじ伏せる剣聖。
数々の聖獣と心を通わせたテイマー。
普通の剣を聖剣級にまで鍛え上げた鍛冶師。
例を挙げればきりがない。
そして、それぞれが現界した時に得たそれぞれの能力を極限まで極め続けた結果の存在だった。
「そうだなぁー、今はもう学生ってことになってるし、今回は冒険者でいいんじゃないか? ふらふらっとできるし」
「私は何でもいいよ。シオン様に何があってもついていくから」
「エインが聞いてきたんじゃないか」
エインというのは、冥界で俺がルシフェルを愛称で呼んでいたことをきっかけにエインリオが自分も愛称が欲しいと言ったことでついた愛称だ。
エインと話していると、王城の門の前にまで到着する。
「そこの者、ここから先は王族家の敷地内である。お許しがなければ通すことはできん!」
王城の門番が大きな声を上げて言う。
「シオン様のゆく道を阻む。つまりは敵ってことだね」
「エイン! その人は職務故のことを口に下に過ぎない。彼に悪気はないよ」
エインリオが門番に殺気を送るがシオンが即座に止める。
「はーい。君もよく耐えたね。あれって君たちヒューマンの君のレベル的にもかなりきつめな威圧だったのにさ」
「俺の仲間がすまないことをした。ところで、王城への許可は中の人に聞いてもらえればきっともらえるはずだから」
門番の人が王城へ聞きに行く。
「いいか、所かまわず誰にでも威圧するんじゃないぞ。わかったか?」
「うん、わかったぁー」
シオンがエインリオに注意づけている間に王城から前回王城を案内してくれた執事が来た。
「今度からは来る前に連絡の一つは入れてください。こちらにもあなた様をもてなす準備をしたいので」
「わかった。それと、あなたは俺が何なのか知っているんですね」
「はい。しかし、知っているものはごく少数であります」
「そうか、随分と信頼されているんだな。まぁ、いい」
「こちらの部屋でお待ちください。ただいま国王さまは会議に出ていらっしゃるので少々お待ちください」
そういい、執事は出ていった。
「エインよ、イスタールが来るまで暇であるからついでにステータスをチェックするぞ」
「はい。おねがいします」
ステータス
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[名前] エインリオ
[年齢] 3217
[Level] 895
[種族] 天使
[職業] 弓士、魔術師、召喚士
[HP] 67509
[MP] 102708
[力] 74407
[器用] 90605
[敏捷] 74403
[スキル] 【隠形LV.8】【弓王術LV.9】【狙撃LV.9】【無調律の恩情LV.9】
【召喚魔術LV.8】【神聖魔術LV.8】【付与魔術LV.9】【地魔術LV.6】
【風魔術LV.7】【空間魔術LV.7】【雷魔術LV.9】【死生点穴LV.9】
【覇気LV.6】【体術LV.8】【超集中LV.10】【思考加速LV.7】
【無詠唱LV.10】【従魔強化LV.6】【虚身LV.6】【追跡LV.4】
【闘極破天LV.7】【消費MP減少LV.6】【MP回復速度上昇LV.6】
【鑑定LV.7】【魔力感知LV.10】【危機感知LV.8】【超速飛行LV.8】
[特殊スキル] 【聖刃LV.8】
[固有スキル] 【共鳴LV.10】
[耐性] 【魔術耐性LV.9】【物理耐性LV.8】【状態異常耐性LV.7】
【精神異常耐性LV.6】
[称号] 【熾天使】【創造神の眷族】【弓聖】【魔導士】
[加護] 【創造神アイゼンファルドの加護】【魔神タナトスの加護】
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相変わらず特殊なスキル持ってんなぁ。
無調律の恩情:空中滞在時に重力軽減+空中行動時に補正。
死生点穴:自身のHPをMPに還元。
闘極破天:攻撃ヒット数に合わせて攻撃力上昇。
【固有スキル 共鳴】は、相手の精神に侵入さえしてしまえば、人であろうと、竜であろうと視ている風景などの情報が流れてくる。そして、相手の身体を操ることが可能となる。
例えば、剣を相手の身体に刺すように操作すると、対象の意識は遅れて自分の身体に剣が刺さっていることを痛みによって気づくことができる。
それでも、共鳴のスキルに対象のスキルや態勢で対抗できなければ、使用者が解除しない限りずっと囚われとなる。
ふむ。ん?! こいつ、タナトスから加護をもらっていたのか?! エインは魔術師型の弓士だったな。それでももっといい魔術師に与えるべきだろ。
タナトスめ、魔術を効率化させ、威力を上げる魔神の加護をエインに与えよって。いや、今の時代では仕方ないのかもしれんな。
「エイン、タナトスから加護を与えられるな」
「そうなのっ?! 気づかなかった。道理でやけに魔術の威力が高かったんだぁ」
・・・
エインリオのステータスを俺が見て話していると、ドアがノックされ、イスタールが入ってきた。
「それで、今日の要件は?」
「明日から学園が始まるので明日に王子に会うのもいいのだがな、最初に学園までついてくる者を紹介しておこうと思ってな」
そういうと、イスタールは王子と王女を連れてくるように執事に言う。
「そうですか、そちらの御方ですね。わしはシルファリオン王国の国王イスタールと申します。初代様がお連れになっているということは、あなたも相当徳が高いのですね」
「うん。私はね、エインリオっていうの。今はシオン様の従者をしているんだけど、なる前は熾天使としての仕事をしていたんだぁ」
「なんと! 熾天使の方でしたか! 疑うわけではありませんが、先代から聞かされていた美徳の熾天使の方々の中では聞かない名前ですね?」
「そうなんだよねー。前のシオン様の旅の時にね、ついていったらね、智天使から熾天使になったんだぁ」
「そうでしたか。大変失礼なことを」
「いいって別に」
エインリオは胸の前で両手を振り、気にしていない風を装う。
そんな話をしていると、執事が王子たちを連れてきた。
「お爺様、シオンさんが来てるってほんと?」
「ああ、こちらに」
イスタールが俺の方を手で指し示す。
ルーファスは俺を見つけるなり、走り飛びついてくる。
王女の方は人見知りなのかイスタールの方へ行き、足元に隠れ、顔だけこちらを見ている。
「今日は何しに来たの?あっ、もしかしてぼくたちの護衛について?」
「いや、今日はこいつの紹介だ。まぁ、もう一人いるからそっちは学園でってことで」
「はじめましてだね。私はエインリオだよ、よろしくね」
エインが挨拶をすると、王女がイスタールの足元から少し出てきた。エインのなつっこい感じで心を開きかけているのだろう。
「よろしくー。僕はルーファスだよ」
「……アリス…です」
「俺はシオンだ。一応護衛ってことになっているが、友達程度だと思ってくれ」
ルーファスが言った護衛の辺りからイスタールは考え込んでいた。
「どうした?」
「いえ、なにか学園に行く前にしてほしいことがあったはずなんですが――――あっ! 思い出しました。聖騎士ですよ!」
「聖騎士? 聖騎士がどうしたんだ?」
「『王子の護衛に冒険者など』と異論を出してきた貴族グループの者たちとの決闘です。いつやります?」
「忘れていた。そんなのどうでもよくない?」
「いえ、禍根は断つべきです。決闘せずにいて、後々なにかあっても知りませんからね」
「わかった、わかった。じゃあ、今からやっちゃおう」
「またシオン様の戦いが見れるんだぁー」
王女のアリスと王子のルーファスと魔術で遊んでいたエインリオが話に入ってきた。
「今からですか?」
「なんだ、ダメか?」
「いえ、その聖騎士たちがどこにいるのかも知りませんし、今回は約束だけして後日でいいじゃないんですか?――しっかりと仕事を終わらせてからゆったりと初代様の戦いを見たいですし」
イスタールの最後の方の言葉が聞こえる人間はいなかった。
「まぁ、別にそれでもいいけど」
シオンはイスタールのことを思い、不服ながらも了承した。
「じゃあ、準備が出来たら呼んでくれ。王都の家に連絡くれればいいから」
「わかりました」
「えー、シオンさんとエインリオさん、もう行っちゃうのー」
ルーファスの言葉に妹のアリスもうなずいている。
「ああ、また明日会おう」
こうして王城を後にして、転移で王都の方の家に戻る。