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十一話 創造神、学園に入る①

 シオンは案内の人につられて魔術能力測定の会場に向かった。

 会場は訓練場になっており、一列に的となる人形みたいなものが並んでいた。


「どれくらいの加減でやればいいのですか?」

 思わずシオンは試験官に尋ねてみた。


「ここの訓練場は結界を張ってあるから大丈夫よ。問題ないから全力でやりなさい」


「では!」


「◆◆  【火魔術 火の矢(ファイアアロー)】」

 シオンは念のため三割程度の魔力をこめ、わざわざ詠唱までして下級の魔術を使う。

 さらには、面倒を避けるため詠唱もする。


 派手な方がもし不出来な魔術でも合格にはなるだろうと思って64の豪炎を作り出し、一つの的にむかって放つ。


 的に当たった瞬間に、的はそのまま何もなかったように消え去った。そしてそれでも勢いは止まらず、外壁に当たった。


 ドガガァァァァァァァァァン!!!


 熱風で結界で守られた外壁は崩れ去り、庭園にあった大木を灰にし、あたりが焼け野原になっていた。


「「……」」


 試験官と見学に来ていた学園長が呆然とした空気に応えるものはなく、そこにはただ、ポッカリとした穴が空いていた。

 その先には当然のように、先ほどとは違った風景が見えた。屋内であったはずの訓練場は外壁が破壊され、太陽の光が差し込んでいる。


 的があった場所は焼き尽くされてマグマのようにドロドロになって熱気を発していた。


「結界があるっていうからこの程度なら平気だと思ったのに……」

 シオンはため息まじりに言う。


 固まっていた試験官がやっと動き出した。


「……こ、これ、君がやったの? 何を唱えたの?」


「えっと、【火魔術 火の矢(ファイアアロー)】ですが」

 試験官の質問に対しシオンが答えた。


「そ、そんな……初級でこんな威力なんて……。ありえない……」

 試験官はまだ放心状態だったようだ。


「それより外壁の外側に人がいなかったか確認しないと!」

 そう言って、試験官が外に走っていってしまった。


「君、レベルはいくつだ?」

 グランバルトはこの魔術の威力からしてシオンを特別な訓練を受けたレベル50以上の者と考えていた。


「ええっと、レベルは14ですね」


「なにっ?! 普通の学生レベルではないかっ! なにか特別なことはしていないのか?」


「いえ、別に何もないですけど」

 深入りされても困る。


「そ、そうか」

 その後も何らかの強化をしていないかなどと喰らいついてきた。


 やはりこれでも破壊できてしまうのか、それも学園都市の先生方の結界さえ。

 だいぶ手加減したつもりなんだけど。


「次は武術の試験だ。君は魔術師かもしれないが、一応受けてもらうよ」

 魔法能力試験でこの会場を使えなくしてしまったので、試験官に連れられて第二訓練場へ向かって行った。


「それでは剣技試験を始める。試験官は冒険者ギルドから応援にきてもらっている。試験官はAランクの冒険者だから安心して全力で掛かるように」


「坊主が相手か、俺はAランク冒険者のジークだ。よろしくな」


「ええ、よろしくお願いします。Dランク冒険者のシオンです」


「おー、坊主も冒険者だったのか。でも、手加減はしないぞー」


「はい、無用です」

 そういって武術試験が始まった。


 木劍を持ち、ジークに向かって構える。

 二割程度の力で一気に向かって行った。それでもあまりの速さにジークが驚く。


「身体強化まで使えるのか」

 ジークはシオンが魔術で補助していると的外れなことを言う。だが、彼は身体強化のことは流石に知っている様子。


 シオンが振った剣を受け止める。

「このくらいならさすがに受け止められるか」

 ジークは戦闘狂らしく、笑顔で身体強化魔術を使い、剣を振ってくる。


 シオンはジークに打ち込まれる度に剣で防御していたのだが、面倒になってきていた。

 反撃しようと思えば、できる。それもいとも容易く。しかし、この人にもメンツというものがあるだろう。悩む。


「おぅ、どうした! 反撃してきてもいいんだぞ」


 本人がこう言ってるわけだから、いいか。でも、一応剣を狙っておこう。

 シオンは少し力をこめて剣を上で振るう。ジークは、もう片方の手で刀身を持ってガードするも、地面に亀裂が入り、防御したうえで膝をついた。


「そこまで」

 シオンの力量に呆然としていた試験官が終了の合図がでた。


「ふー、やるなぁ、シオン今度一緒に依頼うけようぜ」

 ジークは笑顔で握手してくる。


「機会があればね」

 シオンは適当にそう答えた。


「君の試験はこれで終わりだ。もう帰って構わない。結果は後日連絡させてもらう」

 シオンは無事に試験を全て終わって、学園を後にする。


 魔法試験と実力試験を見ていた試験官と学園長のおかげですごい噂になっていることも知らずに。

 シオンは早めに試験が終わり、暇を持て余していた。


「あー、どうしよう」

 することもないので都市内を散策することにした。

 魔道具屋に鍛冶屋、カフェ、屋台、色々あったが興味を引くようなものはなかった。争い事も滅多にない。平和な都市だ。しかし、魔道具が街中に少ない。魔術技術もまた衰退しているということなのだろう。


 退屈しのぎになるものを探しフラフラしていると裏通りっぽいところに入る。

 なにか面白いものはないものか。


「ちょっ! 止めて下さい!」

「アンタたち! いい加減にしなさいよ!」

 ぢうやら少し行った先の路地から発せられているらしい。


「おぉ、怖い、怖い。そんな怒んなよぉ俺らと一緒に来いって言ってるだけじゃぁん」


「そうそう、俺らと遊ぶと楽しいぜぇ、ついでに気持ちいいかもなぁ」


「ギャハハ! 違いねぇ!」

 へぇ、本当にこんなことがあるんだな。ありきたりだな。

 辺りを行き交う人は目を逸らして素通りしていく。まぁ絡んでる男たちの見た目は筋骨粒々で革製の鎧を身に付けてる。

 一般人では歯向かう事も躊躇われる相手だからしょうがないんだろうな。

 これで遊べばいいだろ。


「あー、そこのおじさん方、お暇ですか? もしよかったら少々暇を潰せるかもしませんよ?」


「あ、あの! 助けてください!」

 絡まれてる二人の女の子の内金髪のセミロングの髪をした子がそう叫ぶ。

 助けるつもりではなかったが、構わんか。


「うっせぇぞ、ガキ! 何か用か!」


「おぅおぅ、格好良いねぇ、正義の味方気取り?」


「ハッ! 俺らの仕事を邪魔すんじゃねーよ。ガキの出番じゃねえんだよ!」

 うるせぇなぁ、三人で威張り散らして大声で喋ってんじゃねえよ。

 こいつらはおそらく誘拐犯だろう。なら、気絶くらいなら街中でも大丈夫だろう。


「よく吠えるじゃないか。獣としては立派だぞ。それでさ、俺と遊んでよ。ちょうど暇してたんだから」


「こっちはガキ程度にかまってる暇はないんだよ」

 ナンパ男の殴り掛かってきた右拳を避けながら腹に掌底を一発くらわせたら男が動かなくなっていた。

 人を害そうとしたんだ何か罰を与えねば。地面に埋めるのは、都市に悪い。殺すのは、死臭でここらの人に悪い。縛るのみでいいか。


「そう言うなよ。俺の暇つぶしだってしてくれたっていいじゃないか」

 残り二人が背中の剣を抜き、振りかぶってきた。


 それも避けて、顔を殴ったらまた一発で動かなくなった。

「もう終わりか。つまらないな、こんなの相手じゃ」


 男たちを倒した後、女の子を見ると唖然とした様子でこちらを見ていた。

「大丈夫? 怪我とかしてない?」


「え、あ! だ、大丈夫です! あの、貴方こそ大丈夫ですか! 剣を抜かれてましたけど……」


「あぁ、大丈夫。でも、面白くなかった。フェイクを入れたりとか変則的に剣を速さを変えてきたりとかしてない。全くもって遅すぎる」


「え……結構鋭かったと思ったんですけど……」

 もう一人の子が呟く。こっちは黒色の長い髪をした子だった。


「そう? まぁ、そんなことよりここを離れよっか」


 女の子には相当恐い体験だったんだろう、小さく震えているし気持ちもまだ落ち着かない様子だったので近くにあったカフェに入り、気を落ち着かせる事にした。


「改めてお礼を言うね。危ない所を助けてくれてありがとうございました」


「あ、ありがとうございました」


「いや、構わないよ。そんなに強い相手じゃ無かったし」

 そう言うと茶髪の子が悔しそうに呟く。


「魔術さえ使えてたら、あんな奴簡単にやっつけられたのに」


「駄目だよイニシア、街中で攻撃魔術は使っちゃダメなんだよ?」


「分かってるわよアリア。だからあんな奴に何も出来なくて悔しいんじゃないの!」

 ふむ、街中では魔術は禁止であったのか。使うよう場面があったか?


「あ、ごめんなさい。自己紹介もしないで。私はイニシア・ジラスト、こっちはアリアよ」


「あ……アリア・ミルダ……です」


「ご丁寧にどうも。俺はシオンと言う。ところで、ジラスド様は魔術を使うようだけど、アヴァントヘルム学園の生徒なのか?」

 ここでは彼女の方が上の位を持っている。シオンは一応のためイニシアの家名に『様』をつけた。


「イニシアでいいって。それに今年入ったばかりだよ、魔術科にね。あなたは?」


「俺か? 俺はさっき編入試験を受けてきたところ」


「ええっと、どちらに…なんですか?」


「ん? どちらとは?」


「えっ? だって試験を受けたってことは魔術科か武術科、生産科ってことでしょ」


「あの冒険者の人たちと格闘できるということは武術科ですか?」


「あー、俺はまだ選んでないから考えとく」

 そうか、そういうものがあることを忘れていたよ。


「絶対今考えることじゃないよね」

 会話が行き詰まりまたイニシアに質問された。


「そういえば、シオンってどこの初等学園に通ってたの? 同い年の割には見た事無いけど」


「へ、あー、最近この街にきたんだ。だから、初等部とかよくわからん」


「へぇ、そうなんだ。どこから?」


「まぁ、田舎かな」

 なんか大分落ち着いてきたみたいだし、これ以上一緒に居てもすることないし、ここで別れる事にした。


「ちょっと! 私たちの分は払うわよ!」


「いいよ、俺が連れてきたんだから。それに俺の暇つぶしの相手にもなってくれたし」

 そう言って会計を済ませ店を出た。


 はぁ、なんか災害でも起こんないかなぁ。あの程度の輩じゃがっかりだよ。


「あいつ、どの授業を選択するんだろう? きっとどこの先生も欲しがるよね」


「かっこよかったなぁ」


「おやおや、一目惚れってやつですかい、お嬢さん」


 シオンの知らないところで色々な話が飛び交う。


 シオンは裏道に入り、どれも見ていないところで【空間魔術 転移】を使用し、王都の家に帰還する。

 後で確認してみたところ、まだ一学年には学科別にはならないらしい。なるのは、二学年からだそうで。













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― 新着の感想 ―
[一言] 変えなくてもいいと思いますよ。 ほとんどの作者だって他作品をパクってますもん。 多少パクったところでその物語が全て似てしまうって訳じゃありませんしね(^^) これは、これで見てて面白かったの…
[気になる点] 『孫ってる』が代名詞の某小説に似たような展開が……アッ!?こっちが本家か…w
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