一話 創造神、遊びの準備を始めようとする①
神、それは信仰の対象、崇拝、畏怖されるもの。人々は神にどんな形を求めているのだろうか? 神という存在を盲目的に認識する者、神を別の何かに置いて崇める者、人それぞれだと思う。だが、神という存在をその目で見たことはないのではないか。
どれ程に願っても決して動かぬ全知全能の絶対者を。
神話の時代。
人の国を滅亡させ、精霊の森を焼き払い、大陸を落とした男がいた。
人の国を創り、様々なものを作成してき、大地を手にした女がいた。
その二人の姿はひどく似ていた。
その後も、歴史に残る大いなる出来事が度々起こるが、共通していることは世界のシステムについて多くを知っていることだった。
そして、神は自分達で作ったこの世界をいたく気に入っており、時折、遊びに来ては希少なものな手に入れ、帰って行く。
無論、それに気付くものはいない。
・・・
我は暇だった。
仕事は我が生み出した子たちに、ほとんど任せている。
世界の秩序はしっかりと維持できている。神としての役割は、ちゃんと出来ていると自負している。
だが、暇ではあった。生物を創造したものの、生物が生きていく世界を見ていくことが退屈であった。神は食事を必要としないが、食べることを趣味にしている神や武闘を愉しむ神もいる。俺の趣味は、あらゆるものを収集すること。希少な金属や生物、魔術、技術など。
そこで我は考えた。
『見るだけが仕事ではなく、実際に生物と交流することも仕事ではないのだろうか。』と。
仕事は我の子供たちに任せているから我が下界へ降りても大丈夫であろう。
そのために準備を開始し始めた時、我の目の前に遊びに来た【遊戯の神 ロキ】と世界の状態を報告に来た【生命の神 アイズ】が転移で現れた。
「創造神、何をしているのですか?」
ピンク髪の女性 アイズが笑いながら言った。
「え、いや、ちょっと、その目、怖いんだけど。お、落ち着こうよ。な、お前からも言ってくれよ、ロキ」
アイズが我を白い目で見てくる。
金髪のチャラそうな男のロキは言う。
「いやぁ、おれっちは関係ないっスよーだ。あ、ちょっ、俺っちの後ろに隠れないでほしいっス!」
「で、創造神は何をしようとしていたのですか?
下界に行く気ならこの仕事を終わらせてからにしてくださいね」
「あ、ばれてたのか」
「はぁ、また下界に遊びに行くんスかー。これで何回目っスかー」
「とにかく、遊ぶなら仕事を終わらせてからにしてください! 創造神様、あなたという神は神聖たるものの象徴なのであり、私たちの頂点なのですから――」
アイズの説教は長くなる。こういう時は、言い訳をしないことが正解だ。余計に長くなる。
「はい」
隠し事はなかなかできないものだ。
・・・
「やっと終わったかー。長かった」
「お、ついに終わったスねー」
「ああ、じゃあ早速我の身体を作るとするかな」
「まだやってないと思って暇な神をよんできたっス」
「えっ」
あれ? なんか大事になってきてないか。
「じゃあ、身体作っちゃおーっス」
「では、自分から。
まず姿ですが、創造神が旅をされるとのことでしたので男性型の強面が良いと思います」
と、眼鏡をかけた真面目な利発そうな男神の【魔の神 タナトス】が言った。
「いやいや、それじゃかわいくないの! 絶対かわいい系の男の娘なの!」
「アリファールよ。そなたの趣味を持ち出すでない」
そう【武の神 ミロク】が【風の神 アリファール】に戒める。
「じゃあ、中性的な男で我慢するの」
「うむ。それならいいだろう。お主、それでよいか」
「まぁ、いいけど」
はぁー、なんか決まっちゃった。
「あら、私はどんな姿でも好きですよ」
【生命神 アイズ】が俺の身体に寄り添う。
こうして、アリファールのせいで俺の身体は黒髪ロングに黒の瞳、黒に統一された少年の身体になってしまった。神々に創られた華奢な身体は精緻に整った相貌は中性的。
だが、女々しさや頼りなさなどは微塵も感じさせない。中身はまだ無いのに凛とした覇気と相対する人を跪かせるような気配を併せ持つ。
許可はしたのは外見には注視していなかった俺なので、せめて長い髪を邪魔にならぬよう一つにまとめる。
「次はステータスを決めるっス」