招待されたクランに加入したら、超有名ソロプレーヤー達に囲まれました
うたた寝していた時に見た夢
続きを見る可能性が低そうなので、短編としてUPしてみました。
「ミナト! とどめ!!」
「OK、芝桜」
ザッシュという効果音とともに、モンスターが動かなくなる。しばらくすると光に包まれたモンスターが消えていく。
何回見ても綺麗だな。
ピロリン。
「やったー! LV5になったよ。」
「おめでとー ミナト」
「乙」
「オメ」
「おめでと」
「おめでとう ございます」
喜ぶ私に、パーティーメンバーから祝福のメッセージが入る。
リーダーの芝桜姫:聖魔導士、狐獣人
前衛のリンリン:剣士、ドワーフ
盾のケンシン:タンク、竜人
後方支援の榊:狩人、エルフ
後方支援の大黒天:釣り師、猫獣人
そして前衛の私、ミナト:剣士、兎獣人
「みんなありがとう、これで漸くクラン申請ができる。」
そう、今私が入っているこのVRの世界では、LV5以上じゃないとクラン参加ができない仕様だ。
リアル従姉妹の芝桜姫から誘われて、始めたVR。テレビゲームやスマホのアプリゲームはやったことあったけど、VRは初めてでキャラデザから芝桜姫にお世話になった。
他のメンバーもリアルでは知らないけど、VRでは気のいいお姉さん、お兄さんたちだ。
嫌な顔ひとつせず、私のレベル上げに付き合ってくれた。
もともと、クランと言ってもかなり自由なようで、時間があったら遊びましょうという程度らしい。
ただ、このVRがクランミッションが多く、クランに参加していたほうがより楽しめるということで、私のレベル上げに付き合ってくれていた。
「招待メール送るから、申請してねぇ~」
「ありがとう、芝桜姫。」
「あ、時間だ。」
「俺も。」
「じゃあ、私も休憩を入れます。」
「みなさん、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。」
「乙」
「またねぇ」
メンバーが次々ログアウトする。
「送ったよ、ミナト。私も来客の時間だから落ちるね。」
「ありがとう、芝桜姫。お疲れ様です。」
ピロリンという音とともに、メール来てますのアイコンが点滅する。
早速、クラン申請のメールを送る。
最近嫌なことが起き、塞いでいた心がウキウキする。
この世界では自分は自由だ!!!
耳をピクピクしながら、風に吹かれているとピロリンと音がした。
「あれ?」てっきりクラン参加了承メールだと思ったけど、システムからのエラーメッセージだった。
なになに、『クランIDが違います。』「まじか!!」
はっきり言って芝桜姫は、リアルではうっかりお姉さんとして有名だ。
「フレンドメールでのクラン招待でどうやったら、ID間違えれるんだか・・・」
ぽちぽちと、『ID違うよメール』を送る。
ピロリン。『すまん』の一言とID。
IDをタップすると、『クラン名:ソルティウエーブ に参加申請しますか? はい/いいえ』表示。
『はい』をタップして参加申請メールを送る。
ピロリン。『申請を受け付けました。仮入会する/本入会する』表示。
選択は『仮入会する』になっていたけど、『本入会する』をタップしメールを送る。
ピロリン。『本入会申請が受理されました。今からクランハウスに移動する/後からクランハウスに移動する』
もちろん『今からクランハウスに移動する』をタップ。
指を放す直前にピロリンと、メール受信したけどクランハウスで確認すればいいかとそのまま移動。
足元から魔法陣が浮かび上がってくる。
首元まできた魔法陣のまぶしさに目をつむっていたら。
パンパンという音とともに「「クラン参加おめでとう!!」」の声。
「ありがとうございます。」と言いながら笑顔で目を開けたら、誰?
猫獣人と犬獣人の双子? 同じデザインで色違いの服を着た二人がクラッカーを手に祝ってくれてた。
いや、本当に誰?
奥に芝桜姫の姿見えてほっとした。
声をかけようとしたら、右奥の扉が開いて狐獣人の男の人が現れた。
「ああ、いらっしゃい。ほら、プレゼント。」
ポイっと投げられたものは小刀だった。
「あ、ありがとうございます?」
お礼を言って受け取ったものの、さっぱり意味が分からない。
小刀を手にオロオロしていたら、さっきの二人が話しかけてきた。
「とりあえず、使用者登録しちゃいなよ。」
「そうそう、防犯対策、防犯対策。」
「使用者登録?防犯対策?」
なんでも武器は『使用者登録』すると、登録者しか使用できず売ることもできないとか、売る場合は現使用者が登録を削除してから売るか、〇〇使用というプレミア込みでコレクション用で売るしかないそうな。
「魔力を小刀に通す感じで。」
「そうそう、満遍なく、満遍なく。」
「こう?」
青い光がキラキラと小刀に吸い込まれていった。
「これでいいのかな?」
「鑑定してみたら?」
「そうそう、使用者が自分の名前になっていたら成功。」
『鑑定』
初心者用の小刀。攻撃力はそんなに高くないが壊れない。鍛冶師:蛍火
・・・はい?
「えー!!!、鍛冶師:蛍火って・・・あの、神鍛冶師の蛍火様!?」
「びっくりした?大成功!!」
「そうそう、大成功!!」
「びっくりしたした。えー!!!!!本人!?」
私はびっくりして、耳をピンとたて、目を大きく見開き、口をあんぐりして固まった。
狐獣人の男の人は、狐面を取り苦笑しながら言った。
「この姿では初めましてかな? 狐獣人の『リュウ兄』です。鍛冶師の時は、蛍火と銘うってます。」
「狐獣人なのに『リュウ』とは、これいかに。」
「そうそう、狐獣人なのに『蛍火』とは、これいかに。」
「あれ?またミトナからクラン参加申請が来たよ。」
「「「え?」」」
突然の芝桜姫からの言葉にみんな一斉に私を見る。
「いえ、送ってませんけど・・・。」と言いながら私は固まった。『ミトナ』?
どれくらい、固まっていただろう。玄関に魔法陣が浮かび上がって。『侍』って感じの男の人が現れるまでは固まっていたと思う。
「おはよー」
「おはよ」
「「「おはようございます。」」」
「・・・。」
侍さんに挨拶を交わす。猫・犬獣人さんたちと被った。
「桜姫、ミトナのクラン申請、仮登録で処理しといて。」
「イヤ、すでに本登録で申請受理したのだが。」
「え? 簡単に脱退できないんだから、ここは仮登録でしょ。」
「イヤ、本人すでにここにいるし。」
なんか嫌な予感がする。芝桜姫の声がいつもより低いし、さっきまでミニ和風の上着にスパッツだったのが十二単になってるし、扇が煙管になってるし。
「「「「あんた、誰?」」」」
「・・・。」
「え? 今日からクランに参加することになりました。ミナトですよろしくお願いします。」
私は元気よく自己紹介して、頭を下げた。いろいろ驚きすぎて自己紹介を忘れていた。
「「「「「・・・。」」」」」
ち、沈黙が痛い・・・。
また、魔法陣が展開した光が目の端に映った。
「あー、焦った。全然違うクランに参加するところだった。」
新たな人の気配に顔を上げると、玄関には兎獣人の男の子がいた。
あれ?ドッペルゲンガー?
顔はもちろん違うけど、着ている服とか雰囲気が双子コーデ?って感じで似てる。
でも、耳は折れてるな。耳折れ兎だな。なんて、現実逃避をしてみる。
とーっても嫌な予感がしてメールを開ける。メールは芝桜姫からで。
「クラン名はSALTY WAVEだからね、間違えないでよ。」となっていた。
ミトナ君の話では、申請しようと『ソルティーウエーヴ』で検索したがヒットしなかったので、英語表記で検索したそうな。
見つけたSALTY WAVEで仮登録し早速クランに向かったら当然いたのは芝桜姫たちで、間違いに気づいて、お侍さんの『豆しば』さんに連絡。正しいクラン名を教えてもらって現在ここにいる。
『塩辛い波』なんてクラン名が他にあるなんて考えもしなかった私もここにいる。
なんのことはない、最初の芝桜姫のメールIDはコピペミスで桁たらず、追加でコピった分を末尾に追加すればよかったのに、なぜかカーソルがIDの中にあったらしく・・・。
運が悪いことに、そのIDがたまたまカタカナの『ソルティーウエーブ』クランだったというのが真相。
ごめんね、芝桜姫。うっかりなのは血筋だったわ。
私が心の中で、芝桜姫に謝っている現在も絶賛!土下座中です。
目の前には、私が使用者の小刀。
もうね、何を謝ったらいいのやら。たぶん蛍火様が『リュウ兄』ということは、思いっきり秘密だと思うし、クランに正式登録しちゃったから、クランメンバーの名前は把握済みだし。
クランを簡単にやめれなくなったのは、試用期間中にクラン荒らしが横行したせいだというのは、芝桜姫から聞いていたけど、何か抜け道はないのかな?
「抜け道?ないことはないけど・・・。」桜姫がつぶやく。
「ミナトは中の人、男?女?」
「女ですけど?」
「じゃあ、俺ミトナよろしく。」
何が『じゃあ』なのでしょう?
「ありっちゃ、ありよねぇ~・・・。私は桜姫。よろしく。そこじゃあ、なんだからこっちへ来て。」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
桜姫に手を取られ、リビングのソファーへ。何が、『あり』なんでしょうか?
「うーん、ミナト面白いからいいかも。」
「そうそう、反応が面白い。」
猫・犬獣人さんたち、何が『いい』の?反応?二人の名前聞いてないし。クランメンバー表でわかるけど。
「うーん、俺は保留で。ミトナまだ成人したてって感じだし。」
豆しばさん「成人したて」だと保留とは?
「俺も保留で。」蛍火様・・・何を保留になさったのですか?
「あれ?ミナト抜け道脱退が何か知らない?」
「ごめん、ミトナ君。VR自体初めてで、色々しならないの。」
「ミトナでいいよ。てかクランルールその1.敬称略!」
「え?そうなの、ごめん。」
「まあ、できるだけでいいけど。」
慌てて謝る私に、笑顔で教えてくれるミトナ君。優しいなぁ。
「今のところ、ペナルティなしの脱退が認められたのが『失恋』のみなんだよねぇ。」
「はい?シツレン?」シツレンって恋を失う?
「そうなのよねぇ、さすがに運営も失恋後も同じクランに居ろとは言えなかったみたいなの。でも、VRだから嘘がつけないのよぉ。」
そうなんですか?桜姫。えーっと、では私がクランメンバーと恋に落ちて失恋しないとダメっていうこと?
ボンっと音がしたような気がする。
みんなの視線が一斉に私に向けられた。
「うわー、真っ赤だ。」
「そうそう、白兎が赤兎になってる。」
「と、とととと、とりあえず保留で。」私ってば何言ってるのぉ!!!