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誕生パーティーにて

16歳の誕生日の数日前

私の体重は43㎏となり、無事にダイエットに成功しました。

嬉しくなり、アビーの目の前でクルクル回りながら


「やったわ!アビー。ダイエットに成功したわ!どう?一年前と比べてスッキリしたでしょう?」


そういうとアビーは手をパチパチ叩きながら


「えぇ、お嬢様一年前と比べて色々とスッキリいたしました。色々と。」


私はその言葉にうなずきながら


「そうよね、そうよね。顔も輪郭が分かるし、二の腕や、足もスッキリしたし、お腹も平らになったわ!」


「胸も平らになりましたが」


アビーがそんな胸をえぐるような事を言うので私は胸の前で腕を交差させ、


「やめて、アビー。そこは触れてはいけないわ!そんなことを言われると無い胸がえぐれて凹んでしまうからそれ以上は触れてはダメよ!」


そういうとアビーは頭を一度下げた後、メジャーを持ちながら近づいてきて

「失礼しました。では、お誕生日パーティーに着るドレスの採寸を始めさせていただきます。まずは胸が……」


「声に出さずに静かに紙に書いていって!」



そんなやりとりがあった翌日、

新たな悩みが浮上した。


ズバリ、顔だ。


正直、心のどこかでは痩せれば絶世の美女になる…まではいかなくてもそこそこの美女にはなれるだろうと甘いことを考えていた。

ダイエットに成功した時は痩せられたことが嬉しすぎてそのことまで頭が回らなかったし、誕生日まで時間が無くて準備に追われてしまった為、じっくりと鏡に向き合う時間が無かった。


誕生日パーティーの準備も終わってようやく鏡と向き合ってみたらそこには

印象が薄いモブ顔の自分が映っていた。


この世に神はいないのか。

まさか悪役令嬢が痩せたらモブ顔になるなんて思いもしなかった。

すっぴんでは当たり線のみ書かれたモブと何ら変わらないくらい顔が薄い。

ソフィーはデブだけが唯一のアイデンティティーだったのだ。


デブを取ったら存在感が皆無になるなんて聞いてない。

制作会社のソフィーに対する扱いがひどすぎる。


……いや、待てよ。存在感が薄い顔。前世が平たい顔族だった私にはなじみのある顔だ。

これなら前世で研究した化粧術が生かせるかもしれない。


それにうっすい顔なのに華があって人を惹きつける人もいた。

諦めてはいけない。


今の顔で良いところと言えば……厚みのある唇だろうか?


これは上手くいかせれば色気の漂う綺麗なおねぇさんになれるかもしれない。


そうと決まれば前面に押し出していこう!

まずは、他は普通にメイクした後に、赤の口紅を塗って椿油を薄く塗る。


唇が異様に目立っていう気がするが前世ではこんなのが流行ってた気がする。

アビーに見せにいこう!

「アビー!」


廊下を洗濯物を抱えながら歩いていたアビーを呼び止める。

振り返ったアビーは私の顔を見て目を一瞬大きく見開いた。


きっと色気が溢れ出ている私にドキッとしたのね!

どんなふうに褒めてもらえるのかとワクワクしながらアビーの言葉を待っていると


「……お嬢様。私以外の方にそのお顔を見せられましたか?」

「アビーが初めてよ!どうかしら!」

「他の方に見せてなくて良かったです」


そう言いながらアビーはハンカチ片手にこちらに近づいてきた。

そして、私の前でピタリと止まると


「他の方が見たら卒倒しますので口紅は今ここでふき取らせていただきます」

「ぶっ」


そう言ってごしごしとハンカチで口元を拭われ、綺麗にふき取られてしまった。


「……そんなにひどかったかしら?」

「はい。最初見た時は化け物かと思いました」

「それは……怖いわね。やっぱり色がいけないかしら」

「そうですね。真っ赤なお色でしたので唇が浮かび上がって見えたのかと。もう少し淡いお色の方がお嬢様には合うのではないでしょうか」

「そうね、そうしてみるわ。それに、よく考えれば薄い唇の方が流行っていたわね」

「ご婦人方の間では薄い唇の方が流行ってはおりますが、厚い唇も男性からは一定の人気があるかと……。その人に合ったものが一番ではないかと思います」

「一定の人気ねぇ。分かったわ。少し部屋に籠るから何かあったら呼んでくれる?」

「かしこまりました。」

「じゃあ、よろしくね!」


ソフィーはそう言って小走りで部屋へと戻っていった。


「普段から化粧の研究をしているお嬢様でもあのような失敗もなさるのですね」


そう呟いたアビーは今日、洗濯の仕方を間違えて縮んでしまったセーターを見ながら「よしっ」と気合を入れると、セーターの持ち主である執事長に謝りに行ったのだった。



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