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椿園にて

サムナーの誕生パーティーから三か月が経ち、体重は現在48㎏になり、体重の落ちるペースは少し緩やかになってきている。


最近のダイエットでは、体力が付いてきたのと、体重の減少が緩やかになってきたので庭を一時間早歩きから一時間ジョギングへと進化しました。


また、筋トレは今までの物に加え、新しく『バービージャンプ』というものを加えて行っている。

この『バービージャンプ』、全身を鍛えることができる優れた筋トレで、一回20秒でやっているが、それだけで心臓がバクバクする。私の場合、食べても食べても太らない不思議体質ではなく、食べた分だけお肉になるという身体なので、体型を維持&絞るには筋肉をつけて基礎代謝をアップさせないといけないので、毎日きちんと続けている。







さて、今日は家の庭にある椿園で椿の実の収穫と、新しい苗木の植え込み作業を行います。


これには訳があり、遡ること半年ほど前、髪の保湿剤『洗い流さないトリートメント』を探して街に降りたところ、アイプチと同じくなかったのだ。


この世界はいろいろ発展しているのになぜ、『アイプチ』や『洗い流さないトリートメント』が無いのだろう。かゆいところに手が届かない感じだ。


そこで、私は昔の人は椿油を髪に塗っていたという事を思い出し、椿油を購入して屋敷に帰り、髪に少量塗ってみたところツヤツヤになったのでお母様にも勧めたら

「これ、いいわね」

とお墨付きを頂いたので、一ヶ月くらいは購入をして使っていたが、ある日お母様から呼び出され、


「椿油を塗ると凄く髪のツヤが出ていいのだけれど、この先もずっと買っていくとなると少し高いのよ。・・・・・言っている意味、わかるわね?」


そう言われ私はすぐに敬礼をし


「イエッサー。マイマム。」


と言って椿の木と油を搾る時に使われる圧搾機を買いに街に走り、庭師のトムソンさんに手伝ってもらい、椿園を作りました。









そんなことがあり、今日が初めての収穫となる。

日焼け対策もばっちりしている。

服装は白い長そでの上にオーバーオールを着て、頭にはつばの広い帽子をかぶっている。

農家のおばちゃんスタイルだ。

熟している実の方が油がたくさん摂れるので、熟した実の見分け方をトムソンさんに教わりながら収穫をしていく。


そうして取れた実は一キロほどだった。この実は1週間ほど乾燥させた後、圧搾機で絞ると油がとれるらしいので、日当たりのいい場所に並べて置いておく。


収穫が終わったら今度は椿の木を植える作業に入る。

まだまだ木の数が少ないので少しずつ増やしていっている最中だ。


庭に木を植えるための穴を掘っていると、アレク王子がやってきた。


「こんにちは。ソフィ。今日は何をしているんですか?」


私は穴を掘っていた手を止め、アレク王子の方へ振り返ると


「ごきげんよう。アレク王子。今は庭に椿の木を植えているんですの。」


「椿?なぜ、あなたが植えているのです?庭師にやらせればいいのでは?」


「私がやると言い出したことなのでこうして手伝いをしているんです。」


「そうなのですか。それにしても何故、椿なのですか?」


王子が不思議そうに首を傾げてそういうのでこれまでの事を簡単に説明した。

すると王子は何故か肩を震わせて口元を手で押さえている。


「わたくし、そんな面白いことを言いました?」


「普通、そういうことを言われたら安く買えるようにするとか椿油以外の物を探したりすると思うのですが、それを・・・フッ、作るとは・・・いや、本当あなたは見ていて飽きないですね。クスクスクス」


そういう王子に私は

「その手がありましたね!・・・・でも、もう作ってしまいましたし油がとれるようになれば買うより安くなるのでこのまま頑張ります。」


そういって作業を再開させる私をしばらく見つめていた王子は


「僕も手伝いましょう。」

王子はそういって腕まくりをしてスコップ片手に私の作業を真似して穴を掘っている。


「アレク王子にそんなことをやらせるわけにはいきませんのであちらでお茶でもしてきてくださいな。作業が終わり次第ご挨拶に伺いますわ。」


「気にしないでください。一度こういうことをやってみたかっただけですので。」


「そうですか?それならお願いします。手伝って頂けるなら今日は諦めていたジョギングが出来そうで嬉しいです。」


私がそう答えると、王子は作業を続けながらいきなり質問をしてきた


「今更ですが、どうしてダイエットをしようと思ったのですか?」


「アレク王子、もしかして知りませんでしたの?わたくしの婚約破棄の事について。」


社交界の話を王位継承権争いをしている王子が知らないはずがないのにそんな質問をしてくるので少し驚いてしまった。


「いえ、婚約破棄されたということは知っていましたが・・・婚約破棄とダイエットが何か関係があるのですか?」


なるほど、婚約破棄されたとなれば普通のご令嬢は落ち込んで床に臥せるか、婚約破棄した相手より条件のいい婚約者を見つけてくるだろう。

普通のご令嬢に当てはめると不思議な行動かもしれない。


今の私は前世の性格がソフィの性格に混ざってしまっているため、綺麗になって見返すという行動に出ているが、

本来のソフィなら一ヶ月はショックで引きこもった挙句、お菓子のやけ食いをし、さらなるデブへとレベルアップを果たした後、カルロスに近づく女性に意地悪をして回るという顔も性格もブスな正真正銘のデブスへと進化していたことだろう。

実際ゲームに出てきたソフィはその状態で出てきたし。


王子が今、私がフラれた理由を知らなくても調べればすぐに分かってしまうため、正直に言うことにした。


「・・・婚約破棄の理由は私がブスすぎるから、ですわ。馬鹿にされたままでは悔しいのでカルロスが悔しがるくらいにいい女になって見返して差し上げようと思いましてダイエットをしていますの」


「そんな理由でしたか。・・・よろしければ僕が協力しましょうか?」


「協力、ですか?」


「えぇ、僕と婚約しましょう。」


さらっととんでもないことを言う王子に私はスコップを地面に刺した状態のまま固まり、数秒間言葉を理解するのに時間がかかってしまった。

王子の言った言葉を理解した私はスコップを突き刺したまま王子の方を向き


「い、いきなりなにを言っているんですか!?婚約だなんてそんな軽々しくするものではありませんよ!?」


と、動揺する私とは反対に王子は作業を続けながら涼しい顔をして


「実は前々から考えてはいたのです。貴方との婚約は王位継承権を争っている僕にとっても都合がいい。なんせバード家と1・2を争うマクリーン家が僕の味方になるのですから。一気に有利になります。」


その言葉に私は冷静さを取り戻した。

前世のように好きだからなんて理由でこの世界は婚約をしない。

ほとんどは利益関係があるから婚約をするのだ。ということを思い出した。

一瞬ドキドキしたのが馬鹿みたいだ。


「王子。婚約のお話はとても光栄です。ですが、お断りさせてください。」


そういうと王子は断られるとは思っていなかったのか、驚いた顔でこちらを見た。


「なぜです?この話はあなたにとってもいい話でしょう?」


「えぇ、確かにアレク王子と婚約すればカルロスを見返すことも出来ますし、王家に嫁ぐのですから我が家にとっても良いことなのかもしれません。」


私の言葉にますますわからないと首を傾げる王子。


「ならば何故断るというのです。」


心底不思議そうにする王子を見て私は少し俯いて


「これは私の我がままですが・・・・・私は二度目の婚約破棄は嫌なのです。」


「・・・・なぜ、僕が婚約破棄をする前提なのです?そのまま婚約破棄をせず、結婚することも大いにあり得るでしょう?」


王子は少し不快そうな顔をしている。

王子が言う通りここが乙女ゲームの世界ではなかったらその可能性も十分にあっただろう。

だが、ここは乙女ゲームの世界で、アレク王子はメイン攻略キャラ。

私とここで婚約をしてもヒロインと恋に落ちて私が二度目の婚約破棄される可能性が高いのだ。


王子にここは乙女ゲームの世界であなたには運命の相手が現れますよ。

なんて言えるはずもないので、私の気持ちだけ言う。


「そう、ですね。私がただ怖がっているだけなのです。どうか、お許しくださいませんか?」


「・・・・・そこまで言われてしまっては引き下がるしかなくなるじゃないですか。」


王子は私の顔を見て深く息をつくと、私の土だらけの手を持ち上げ


「では、気が変わって僕と婚約する気になったらすぐに言ってくださいね。」


そういって手の甲に口づけをした。


私はそれを見てすぐにポケットから白いハンカチを取り出し、王子の口を拭きながら


「アレク王子、土が口に付いてしまっています。早く口を洗ってきて下さい!口の中に土が入ると何回口の中をゆすいでもジャリっとして気持ち悪いんですから。」


王子は私に口を拭かれながら固まっていたが、


「プッ、アハハハハハ。まさか、口に土が付いた方を気にするとか・・・・クククク。普通・・・いえ、あなたに普通は通じませんね。本当にあなたは面白い。」


笑いながら王子は私からハンカチを受け取り、口をゆすぎに屋敷の方へ歩いて行ってしまった。


私はその後姿を見送りながら作業に戻り、口をゆすぎ終わって戻ってきた王子がまた手伝いをしてくれたので予定より早く作業が終わり、ジョギングをすることができました。


後日、この作業をする際王子に手伝わせたことがバレ、お母様にこっぴどく叱られました。



★現在のデータ★

名前 ソフィ・マクリーン(15)

身長 154㎝

体重 48㎏

現在の評価:今度から王子が手伝いをしてくれると言ってもきちんとお断りすること。あと、手の日焼けも気にすること。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


~アレク視点~



帰りの馬車の中で今日の事を思い出し、思わず笑ってしまう。


本当にソフィ・マクリーンとは変わったご令嬢だ。

豆のカスでお菓子を作っていたかと思えば今度は椿油の生成と来た。


正直見ていて飽きない。


この前も本を片手に庭で何かやっていると思えば小川に罠を仕掛けて漁をしていたらしい。

まぁ、取れたのはマクリーン家の池で飼っている金魚ばかりで夫人にそのことがバレ、怒られていたが。


思い出して少し笑っていると目の前に座っている執事のダンが


「王子。楽しそうですね。何か良いことでもありましたか?」


「いや、少し思い出し笑いをしていただけだ。」


「そうですか。王子が楽しそうで私めは嬉しゅうございます。」


ダンとの会話を終え、外を見ると椿の花が見えた。

ふと、婚約を断られた時の事を思い出す。

あの時、胸がモヤッとしたがこの気持ちが何なのか答えを出してしまうと、今の関係を壊してしまいそうな気がしたのでこのことを深く考えるのはやめた。




ーこの感情の名はまだ知らなくていい。





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