緊張した……。
王都へ行く日がついにやってきた。
いくら非公式とはいえ、王妃様にお会いするのだ。きちんとしなくてはいけない。
色々と準備をするのにこの1週間忙しかった。
手土産はお母様が選んでくれた高級焼き菓子と最近貴族の間で流行しているチョコレートを持っていく事にした。
化粧は自分の中では完璧。ドレスや装飾品は品良く、落ち着いたものを選んだ。なかなか上手に化けられたのではないだろうか?
よし!と気合を入れて馬車に乗へと乗り込む。
お城に到着するとアレク様が出迎えてくれた。
アレク様が差し出してくれた手を取り、馬車を降りる。
「アレク様本日はお招きいただきありがとうございます」
ドレスの裾を持ち上げ、挨拶をする。
「硬い挨拶は良いですよ、誰も見ていませんし、僕と貴方の仲ですから。」
アレクはそう言って輝くような笑顔をソフィに向けるが、すっかり馴れてしまったソフィは普段通りの笑顔で返事をしたのだった。
王宮の中をアレクに案内されて歩くソフィはガチガチに緊張していた。
王宮に来るのは幼い頃、父に連れられてきた以来なのでもう10年も前の事になる。
正直、王宮に来た記憶がない、それに今日はアビーが馬車の中で待機のため落ち着かない。
王宮はどこを見てもキラキラと輝いてる。
父の変な壺コレクションが並ぶ我が家とは雲泥の差だ。
辺りをキョロキョロと見回しているうちに豪華な装飾が施された扉の前についた。
アレクが扉をノックして中へと呼びかける。
「母上。マクリーン家のご令嬢をお連れしました」
「どうぞ」
中からの返事でアレクが扉を開けると、ソフィーに中へ入るようにと促した。
部屋の中へと入ると、ソフィーはドレスの裾を持ち上げ、挨拶をする。
「お会いできて光栄です。王妃様。本日はお招きいただきありがとうございます」
「えぇ、私もお会いできて嬉しいわ。貴方の事はいつも息子から聞いているの。今日は私のお相手をお願いできるかしら?」
「えぇ、もちろんです。王妃様」
ソフィーは今までの練習の成果を惜しみなく発揮して自身の中で最高だと思える笑顔を浮かべた。
「立ち話もあれですから、どうぞお座りになって。簡単だけどお茶を用意したの。」
ソフィーは王妃に促されるまま、席へと着いた。
王妃はアレクへと視線を向けると、アレクは頷いて静かに部屋を出て行ったのだった。
ソフィーはまさか王妃と二人になるとは思っておらず、とりあえず落ち着こうとカップに口を付けると
「それで、ソフィーちゃんってアレクの事、どう思ってるのかしら?」
「!!ゴックン」
いきなりの質問に何とか口の中の紅茶を飲み込んだソフィーは口元を抑えて軽く咳き込む。
「ど、どうとは?」
カップから王妃へと視線を移すと、そこにはまるで子供のように好奇心に目を輝かせた王妃がいた。
「そりゃあ、決まってるじゃない」
ソフィーは王妃の期待するそれに若干の気まずさを顔に滲ませながら言葉を選ぶ。
「アレク様とは良いお友達として接して頂いています」
言葉を選びすぎてこれしか言葉が出てこなかった。
いや、下手な事は言わない方が世の中上手くいくものだと前の人生で学んでいる。
ソフィーはニコリと笑って王妃にそう返すと、王妃は頬に右手を当てながら「あら、そうなの?」と言って紅茶を啜った。
「残念ねぇ、マリーの子ならいいと思ったんだけど……。気が変わったらいつでも言ってね」
「あの、もしかして母の事をご存じなのですか?」
マリーとはソフィーの母の愛称であり、ソフィーはこの愛称を使っているのは父位しか知らないのに、王妃は普通に母の事を愛称で呼んだのだ。
ソフィーの質問に王妃は驚いた顔でカップへと伸ばしていた手を止めた。
「聞いていないの?私と貴方のお母さんとは幼馴染なのよ」
「そうなのですか!?」
「えぇ、昔は二人の子供が女の子と男の子だったらこの子たちを結婚させましょうね。なんて言ったりしてたわ」
と、そこから昔の母の話で盛り上がり、気づけば夜になっていた。
王妃の「今日はもう遅いから泊まっていって」という言葉に甘え今日は泊まらせてもらうことになったのだった。
今回は少し少ないですが、次回は二話連続投稿する予定です。……予定です。