第2話:サイバーダークからの刺客出現!守れ!ケータイワールド
「奴らは何の前触れも無く、突然襲って来たププ。」
ここは瞳の部屋。
ベッドの上でププがこの世界に来るまでの経緯を話している所だった。
「そしてサイバーケータイワールドで残ったのはププだけになってしまったププ。」
「酷い・・・」
「『次元の裂け目の扉』に、やっと辿り着いて無我夢中で飛び込んだププ。」
「『次元の裂け目の扉』?」
「サイバーケータイワールドと、この世界を繋いでいる扉だププ。」
「ププって、パケット妖精って言ったっけ?」
「そうだププ。」
「もしかしてメールとかってププ達、パケット妖精が届けてたの?」
「実際は、そうじゃないププ。
ププらは、ケータイワールドの精神体みたいな存在だププ。」
「ん〜・・・
益々、分け分かんなく成って来た・・・
要するにパケット妖精が一人でも残っていればケータイワールドは安泰って訳ね。」
「そう言う事だププ。」
「ププだけは絶対に守らなきゃ・・・」
と、瞳はポツリと呟いた。
「ププ〜?」
「約束する!
ププは、あたしが絶対に守るから!
それからケータイワールドも!」
「ププ〜!」
と、ププを抱きしめる瞳。
そして、しばらく静寂が続いた後、最初に口を開いたのはププだった。
「そうだププ!
大事な事を忘れていたププ!
サイバーケータイワールドを・・・」
と、言いかけた時
瞳は既に眠っていた。
今日は初めてケータイ戦士に変身した日だった。
その疲れが出たのだろう。
スヤスヤと寝息を立てて寝ていた。
それを察してか、ププは瞳を起こすまいと話すのを中断した。
そしてププは「ポン」という音と共にケータイストラップに姿を変え、
『ケータイ戦士の証』のケータイにストラップとして繋がり、そしてププも眠りに就いた。
翌日、目を覚ました瞳はププが居ない事に気付く。
「ププが居ない・・・
あれって夢だったのかなぁ?・・・」
ふと、枕元を見ると『ケータイ戦士の証』がそこにあった。
「夢じゃないんだ・・・」
そして、ストラップのププに気付く瞳。
「ププ・・・
ケータイワールドを逃げ回っていたから疲れて眠ってるのね。」
そう察した瞳は着替えた制服にププを起こさぬ様に、そっとポケットに仕舞った。
遠くから母の声がする。
「瞳ーっ!早くしないと遅刻するわよー!」
そして、いつもの様に通学路を懸命になって走っている瞳。
その後ろから奈美が追い着いてくる。
「おはよー!瞳!」
「おはよー!奈美ちゃん!・・・
って、また今日も!?」
「昨日の小説、また読破しちゃって・・・」
「さすが、奈美ちゃん・・・
でも、あんまし夜更かしすると体に毒だよ?」
「大丈夫!体は鍛えてるから。」
「そう言う問題じゃないと思うんだけど・・・」
またもや、ほぼ同時に校門に着いた二人。
「相変わらず早いな瞳。」
「奈美ちゃんこそ、さすが陸上部だけの事はあるね。」
校庭を歩く途中、奈美が瞳に話しかける。
「瞳、放課後に付き合ってほしい事があるんだけど・・・」
すると瞳は即座に掌を奈美の方に向けた。
「却下!」
「え!?」
「だって奈美ちゃん、またあたしを陸上部に勧誘する気でしょ?」
「ふふ〜ん、残念でした。
部活が終わってからのお楽しみって事にしとこうか?
じゃあね☆」
そう言って自分の教室に向かう奈美。
「ええ〜!?何それ?・・・
って、部活が終わるまで、帰宅部のあたしは何してればいいのよ!?」
しかし奈美は既に、その場には居なかった。
「もう、奈美ちゃんったら強引なんだから〜・・・」
昼休み。
昼食を済ませ、ふと校舎の屋上に足を運ぶ瞳。
すると、屋上にはフェンス越しに校庭を眺めている鈴音が居た。
瞳は鈴音の側に歩み寄り、声をかける。
「鈴音ちゃん。」
「あ、瞳ちゃん。」
「どうしたの?こんな所で・・・」
「うん、ちょっとね・・・」
「何か、悩み事があったら言ってよ?」
「う、うん・・・」
「あたし達、友達でしょ?」
「友達・・・」
そう言って鈴音は寂しそうな表情をする。
「うん、そう!友達。」
「……」
「ねえ、鈴音ちゃん、
言い難い事や伝え難い事があったらケータイで伝えたらどうかな?」
「ケータイ?」
「うん。
ケータイってさ、勇気をくれる魔法のアイテムなんだよ。」
「勇気をくれる魔法のアイテム?・・・」
「うん。
面と向かって言い難い事や伝え難い事があった時、
ケータイだと言えたり、メールで伝えたりする事が出来るじゃない?」
「……」
「だからケータイは勇気をくれる魔法のアイテムだと思うんだ。」
「勇気をくれる魔法のアイテム・・・」
「な〜んてね☆
とあるケータイ小説の受け売りなんだけどね。」
と言いながらエヘヘっといった表情でペロっと舌を出す瞳。
ほのかに笑顔になる鈴音。
「瞳ちゃん・・・
ありがとう。」
そう言って校舎の中へ入って行く鈴音。
屋上に残った瞳はポツリと呟く。
「鈴音ちゃん、ちょっと元気になって良かった。」
「ホントに元気になって良かったププ。」
ポケットからケータイを取り出す瞳。
「ププ!?
起きてたの?」
「起きてたププ。」
「いつから?」
「朝、校門に着いた時からだププ。」
「えーっ!?
あの時から、もう起きてたの!?」
「そうだププ。
あんなに走って揺らされるとイヤでも起きるププ。」
「そっかぁ〜・・・」
「でも、瞳、
奈美も鈴音もイイ友達みたいだププ。」
「うん☆」
ここはサイバーダークワールド。
それは何処に在るのか分からない空間域。
「ケータイ戦士か・・・
厄介な奴が現れたな・・・」
「お困りの様ですな、トルブ様。」
「ダークソルジャー・アリエルか。」
「はい、さようで御座います。」
「まずは、お前を差し向けてみるか。
行け!アリエル!」
「かしこまりました。」
そう言ってアリエルは姿を消す。
「アリエルに任せてよろしいのですか?トルブ様。」
「うむ。
今はケータイ戦士とやらの力量を量らないとな・・・」
「そんなに慎重に成らなくとも、この私が行けば良いだけの事。」
「最強のダークソルジャーよ。
その時が来れば、お前を差し向ける。
それまで待機していろ。」
「承知致しました。」
午後からの授業も終わり、部活の時間へと変わる。
「部活が終わるまで、どうしようかなぁ・・・
奈美ちゃんも強引なんだから・・・
そうだ!
ププ、起きてる?」
「起きてるププ。」
「部活が終わるまで校内を案内しよっか?」
「ガイドよろしくププ♪」
瞳はププに校内の施設を案内して回った。
そして最後に校舎の屋上に行き着いた。
「んで、ここからの眺めが良いんだぁ〜。」
「昼に来た所だププ。」
校舎の屋上から校庭を眺める瞳。
「奈美ちゃん、部活頑張ってるなぁ・・・」
「瞳は部活には入らないププ?」
「うん・・・
どれに入ろうか迷ってる内に二年生に成っちゃったし、
それに将来自分のしたい事が、まだ見つからないし・・・」
「ププ〜?」
「……」
「瞳・・・
!!
奴らが来たププ!!」
「ええ!?」
気が付くと、いつの間にか校舎の屋上の周りにはバリヤが張られていた。
しかも屋上の出入り口にも既にバリヤが張られている。
そしてダークソルジャーが姿を現す。
「パケット妖精を連れていると言う事は
お前がケータイ戦士だな?」
「な、何なの!?」
「ダークソルジャーだププ!」
「ダークソルジャー?」
「トルブの配下の刺客だププ。」
「その通り。
私はダークソルジャーのアリエル。」
「アリエル・・・」
「パケット妖精を渡せと言っても素直に渡しはしまい・・・
ならばケータイ戦士を倒すまで・・・」
「ププは絶対に守る!」
瞳は『ケータイ戦士の証』を高く掲げる。
「サイバーパケットパワー!
コーディアーップ!!」
二つに折り畳まれていたケータイがパカッと開くと
ピンク色の光の渦が現れ、瞳を包み込む。
そして光の渦が納まり、その中からケータイ戦士へと変身を遂げた瞳が姿を現す。
「サイバーケータイ戦士!
セーラーフォーン!!
ケータイワールドを脅かす者は
この私が許さない!」
そしてセーラーフォーンはダークソルジャーと対向する。
「ケータイ戦士が、どれほどの者か見せてもらおう!」
そう言って先に仕掛けたのはアリエルだった。
アリエルの攻撃を受け止めるセーラーフォーン。
セーラーフォーンも負けじと攻撃を仕掛ける。
「中々やるな、セーラーフォーン。」
「あたしは負けない!
ケータイワールドを、そしてププを守る!」
虚を突き、油断した隙にセーラーフォーンは必殺技を繰り出す。
「今だ!
サイバーフォーンパワー!
パケットアターック!!」
セーラーフォーンの必殺技がダークソルジャーにクリーンヒット!
ダークソルジャーは光の粒子と成って砕け散る。
「ダークソルジャーを倒したププ!」
「やったね☆」
と言いながらVサインをするセーラーフォーン。
その様子を遠くから見ていたトルブ。
「やはり、アリエルでは敵わなかったか・・・」
と言うと姿を消す。
そして屋上の周りのバリヤが、いつの間にか消えていた。
変身を解き奈美の所へ向かう瞳。
「奈美ちゃん、まだ居るかな?」
校門の所で奈美が待っている。
「遅ーい!瞳!!」
「ゴメン!奈美ちゃん。」
「どうせケータイ小説を夢中になって読んでたんでしょ?」
「まぁ、そんなとこ・・・
で、付き合ってほしい事って何?」
「付いて来れば分かるよ☆」
「?」
奈美に付いて行く瞳。
そして繁華街の方へと向かう奈美。
「奈美ちゃん、学校の帰りに、こんな所に寄ってたら補導されるよ?」
「硬い事言わないの!
それに瞳って、そんなキャラだっけ?」
「もう、奈美ちゃんったら・・・」
すると奈美はカラオケ店の前で止まる。
「ここよ。」
「カラオケ?」
すると奈美は躊躇することなく中へ入って行く。
「ちょ、ちょっと奈美ちゃん!?」
と言いながら瞳も入って行く。
「いらっしゃーい!」
店員らしき青年がカウンター越しに迎える。
「あ、あの・・・
その、二人…なんですけど、割引…出来ますよね?」
怪訝な表情で、そのやり取りを見守る瞳。
店員の名札を見てみると『川上 章吾』(かわかみ しょうご)と書かれている。
よく見ると中々のイケメンだ。
そして奈美の態度からして瞳は咄嗟に察した。
部屋に案内され二人きりになった瞳と奈美。
「なぁるほどねぇ〜・・・」
「な、何?」
「奈美ちゃん、あの店員が目当てだったんでしょ?」
「ななな何が?」
「どもってるよ奈美ちゃん。
親友のあたしには分かるんだからね。」
「……
やっぱり瞳には分かっちゃったか・・・」
「うん☆」
「でも、この事は・・・」
「うん、分かってる、二人だけの秘密。
でしょ?」
ほっとする奈美。
そして笑顔になる二人。
数分後。
飲み物を買いに一旦、部屋を出る瞳。
飲み物を買い終えた瞳は急いで部屋に戻ろうとした。
すると通路の曲がり角の所で店員とぶつかる瞳。
「きゃっ」
「おっと、危ない!」
そう言って倒れそうな瞳の腕を掴んで支える店員。
「大丈夫かい?」
「う、うん。ありがとう。」
見ると、さっきのカウンターに居た店員とは違う店員だった。
名札を見ると『糸井 翔』と書かれている。
「(いとい・・・しょう?って読むのかな?)」
するとカウンター越しに居た店員が声をかける。
「おーい!翔、こっち手伝ってくれ!」
「はい!店長!」
「("かける"って読むんだ・・・)」
「じゃあな、気をつけろよ。」
と言いながら瞳の額を人差し指でツンと突付く翔。
去って行く翔の後ろ姿を見ながら瞳はポツリと呟く。
「なんか、馴れ馴れしい奴・・・
ふーんだ!」
と言いながらアッカンべ〜をする瞳。
部屋に戻った瞳。
不機嫌な瞳の表情に気付く奈美。
「何かあったの?」
「ううん、何でもない。」
そして数分後、カラオケ店を出た二人。
「また、付き合ってくれる?」
「もちろん!
奈美ちゃんの恋の成熟の為に付き合うよ?」
「そんなんじゃないって!」
瞳はポツリと呟く。
「気に入らない奴も居るけど・・・」
「ん?何か言った?」
「ううん、別に、こっちの話。
あはは・・・」
「?」
奈美と分かれた瞳は自宅へと向かう。
だが、その途中、鈴音らしき人物が前を歩いていた。
思わず声をかける瞳。
やはり鈴音だった。
しかし振り返った、その表情は今にも泣き出しそうな表情だった。
「鈴音ちゃん!?」
すると瞳の胸に飛び込み、泣き出す鈴音。
「鈴音ちゃん、どうしたの!?
何かあったの!?」
瞳の問いに何も答えず、ただ泣きじゃくるばかりの鈴音だった。
鈴音の身に一体、何が?
第3話に続く
第3話:予告
「鈴音の身に一体、何があったププ?」
「鈴音ちゃん、元気出して!」
「またダークソルジャーが現れたププ!」
「こんな時に!」
「しかも、よりによって最強のダークソルジャーだププ!」
「最強の秘密は、これだったのね!?」
「これじゃあセーラーフォーンは勝てないププ!!」
「でも、あたしは負けない!!鈴音ちゃんを守らなきゃ!」
次回、「最強のダークソルジャー出現!フォーン大ピンチ!!」
お楽しみに!
「ププは、あたしが絶対に守る!」




