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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

自慢話

作者: 竹屋竿竹

 

 歩美あゆみと初めて会ったのは小三の頃だよ。

 彼女は東京からやってきた転校生だったんだ。


 第一印象は……なんていえばいいんだろう。作り物のようにしか見えない綺麗な女の子だった。


 それを人形みたいって言うんだろうね。

 間違いなく美少女だった。


 自己紹介をする彼女の姿を初めて見たときから、俺も含めたほとんどの男子やつらはみんな見惚みとれてたよ。

 でも当時はまだガキだったからさ、みんな意地はってたね。黒髪ロングだったから幽霊みたいで気持ち悪ぃーとか言ってた。

 もちろん俺もその一人だったよ。興味ねーしとか言ってごまかしてた。


 そう言っておきながら、授業中に何度も彼女の方をちらちら見てたんだけどね。

 他の男子やつらもそうだったと思うよ。


 彼女の姿は、どの角度からでも男の目を引きつけてた。



 当時俺の知ってる女子なんて性格悪いブスがほとんどだった。

 顔が整ってるやつも当然いたけど、そういうやつに限ってボス猿みてーなやつでさ、やたらと威張り散らしてたから嫌いだった。

 特に嫌いだったのがそいつの周囲の女子だったね。そいつの前では合わせてヘコヘコしてるくせに、そいつがいないと悪口ばかり言ってたもんだからさ、女子ってみんな腹黒いのかなって思ってたよ。


 歩美はそういうタイプじゃなかったよ。

 性格は大人しめだったけど、自分の意見をハッキリいう女の子でさ、彼女は違うなって思ったことが何度もある。


 どちらかといえば、気は強い方だと思う。

 クラスのリーダー格の女子に対しても気にせず自分の意見を言うからね。ほとんどのやつらは合わせたようなことばかりするからさ、彼女を見てるとビックリしたのと同時に凄いなって思ってた。

 歩美はそこらへんのやつと違って、ちゃんと自分を持ってる女の子だったよ。


 いや、うちのクラスにいじめはなかったよ。

 ……多分ね。

 少なくとも彼女にはなかった。


 彼女がやってた可能性はないよ。ないない。


 いや、好きな人だったからそう言ってるわけじゃなくてさ、同じクラスだったときはほぼ毎日のように見てたから、悪いところがあれば嫌でも目に付くよ。

 俺の見ていないところで何かしてたとしても、そういう悪い噂ってすぐ入ってくるからわかる。歩美の悪い噂なんて聞いたことない。そういうのじゃなくて、むしろ彼女を悪い女にしようとしてる女子の情報ばかり入ってきてた。


 実際の彼女と話したことなんてないよ。

 いや、あることはあるんだけど……まあ、なんていうか大した話はしたことなかったんだ。俺は他の男子やつらと違って、歩美が転入して数ヶ月経っても一言も話し掛けることができなかったからさ。

 理由は……帰り道が違ったってのもあるし、席替えがあっても席が隣になるどころか近くになることすらなかったからね。

 席替えはいつもくじ引きだったんだけど、俺くじ運悪くてさ。小二の頃に運を使い果たしちゃったんだ。



 ニンテンドーDSって知ってるよね?

 うん、それそれ。俺が小学生の頃に使ってたゲーム機なんだけど、あれを小二の夏に神社の縁日にあるくじ引き屋で当てたんだよ。


 そうそう! 束ねてあるヒモを引くやつ。それで当てたんだよ。すごいでしょ?

 この話するとね、みんなあれ釣りじゃなくて本当に景品としてあるんだーとか言って驚くんだよね。

 周りからはお前しばらくラッキーなことないぞって言われたよ。ほんとその通りだった。


 俺の親は昔からゲーム機買うの反対するタイプなんだけど、さすがに景品で当てたら何も文句言われなかった。

 前から欲しかったゲームソフトもあったし、お年玉の残り持ってすぐに買いに行ったな。


 小学生の頃はポケモンばかりやってたよ。

 当時はあれだけが取り柄だったんだ。聞かれればなんでも答えられたよ。それぐらいよくやってた。

 今でも結構憶えてるよ。

 個体値とか努力値とか、当時は全然知らないやつが多かった。レベルさえ上げれば強いって思ってるやつ多くてさ。

 対戦とか俺が勝ってばっかだったから、いっつもズルしてるとか卑怯だとか言われてたよ。当時の友達にはせめてネット見ろよって何度も言ったね。


 ゲームボーイって……ハハ、古すぎだろ。俺はDS世代だったから、それを見たことはあるけれど、使ったことはないからわかんないなぁ。


 ああ、俺もゲーム機欲しくて親に泣きついたことあるよ。

 子供あるあるだよね。でもそれで買ってくれたなら良かったじゃん。俺なんか買ってもらえなかったからね。


 ポケモンはもうやってないよ。中学に入ってからはやらなくなった。周りがやらなくなったのもあるし、部活でテニスやってたから時間がなくてさ。


 軟式やってたんだよ。

 自分で言うのもなんだけど、あんまり上手くはなかったな。でも練習は楽しかったから毎日出てた。

 部活終わって家に帰り着くのなんて七時か八時ぐらいだったから、飯食って風呂入ったら、もうテレビ観るか勉強して寝るぐらいしかできなかったね。

 高校に入ってもその延長だから、ゲーム機なんて今日まで触れてもないよ。空いた時間にスマホゲームをちょっとやるぐらいかな。


 いや、もっと時間があればやりたいなって思うよ。ポケモンはやってて良かったって思うことが多かったんだ。あれのおかげで歩美と会話できるようになったわけなんだし。


 歩美も小学生の頃はポケモンやってたんだよ。見た感じ優等生なイメージあったけど、成績は普通だったしゲームもそれなりにやってたんだ。

 当時は俺ポケモン博士って呼ばれててさ。いろんなやつらから質問されてるぐらい詳しかったんだ。それで歩美にも話しかけられたんだよ。

 それが初めての会話だった。ポケモンのおかげで会話できるようになったんだよ。


 たかがクラスメイトに質問されただけなのに、そのときは緊張したなぁ。


 質問の内容は簡単なものだったよ。かわいいポケモンを全部ゲットするのが目標だったらしくて、欲しいポケモンの生息地が何処どことかそんなのばっかりだった。

 達成したときは嬉しそうな顔してたよ。はしゃいでた姿が凄い可愛かった。今でも憶えてるよ。


 小学生の頃は結局それぐらいしか接点がなかった。ヘタレだったからどうにも攻められなくてさ。他の男子やつらなんかみんなあれこれ理由作って接近してたっていうのに、俺だけほとんどなにもできずに過ごしてた。

 ……今思うとホント情けなかったなぁ。



 歩美は俺と違ってよく告白されてたよ。

 小学生のときで5回ぐらいあった。

 何組の誰々《だれだれ》が歩美に告ったとか、そんな話聞くたびに心臓がドキドキしてた。

 それでいつも結果聞いて、ああ良かったーってホッとしてたんだ。


 中学になると先輩とかまで告りに行くからすごくてさ、中学時代は6回くらい告られてたんじゃなかったっけかな?


 それ全部他に好きな人がいるってことで振ってたらしい。


 それが誰なのかをみんな探ってたね。アイツじゃないかとか言っていろんな予想してたけど、結局中学時代はそれが誰なのかもわからないまま終わっちゃったね。

 俺はクラス違ったってのもあるけど、相変わらずほとんど何も話せないまま卒業迎えちゃったんだ。

 まあ、高校が歩美と同じところだったから、それについてはあまり気にしなかったけどね。


 追っかけたっていうと違うよ。成績が同じくらいだったから、偶々だったんだ。

 でもまぁ、受験する高校が同じだと思うと、すげー勉強頑張ったね。ポケモンやる並みに頑張った。上のランクの高校でも良かったんじゃないかって担任に言われたぐらい頑張りすぎてた。


 歩美は高校に入っても相変わらずでさ、入学当初から男子はみんな騒いでたし、一ヶ月もしない内に告白されてた。


 騒ぐのも無理ないよ。

 高校生にもなるととびきりの美少女になってたからさ、しかも相変わらず振りまくってて、卒業するまで何人斬りするんだろうかって友達と話してた。


 ……それで内心、俺もその内の一人に入るんだろうなって思ってた。


 ……うん。いいかげん俺も勇気を出したよ。

 高校生活も残りわずかだったからね。

 さすがに大学は一緒になれないと思うから、もういいかげん行かなきゃって思ったんだ。ずっと抑えてたけど、もう笑われてもいいって玉砕覚悟だった。


 歩美は絵が上手かったから中高と美術部だったんだ。結構熱心にやってたから、放課後遅くまで絵描いてたことが多かった。

 それで告りに行く日は部活サボって、美術室の近くにある教室で歩美の帰りを待ってたんだ。


 もういいかなって思って行こうとしたらさ、俺よりも先に告白しに来たやつがいてさ。その現場を見た途端慌てて隠れたよ。

 そいつ陸上部の有名なイケメンだったからさ、ドキドキしながら聞き耳立ててた。それでこれはもう告る前に終わったかなって思った。


 そうしたらそいつもフラれたんだ。

 そのときはホッとしたんじゃなくて、ビックリしたよ。

 あんなイケメンでも無理なのかって、しばらくボーゼンとしてた。


 それで告白する前から俺自信無くしちゃって、一回家に帰ったんだ。

 俺なんかじゃ到底無理だと思った。

 フラれても仕方ないとは思ってはいたんだけど、小学生の頃からずっと片想いしてた女の子にフラれたときのことを考えると、立ち直れそうにない気がしたんだ。


 ふつーに俺ブサメンだからさ、自信なんて少しもなかったよ。女子に告白されたことなんて一度もなかったし。


 だから……どうしようか部屋の中でずっと考えてた。


 その日は飯も食わずに、一睡もしないで考えてたけど時間が足りなくてさ。それから一週間くらい学校にも行かなくなった。

 もちろん親に凄い怒られたよ。でも考えすぎたせいで何て怒られてたのか全然思い出せないんだ。

 それぐらい頭の中は考え事でいっぱいだった。間違いなく今までの人生で、進路のことよりも考えてたよ。


 それで、ようやく決心して行動したんだ。


 もちろん放課後の、人気のない時間帯を狙って歩美のことをずっと待ってたよ。

 他の人に見られたくなかったから、凄い緊張した。


 幸いなことに誰も通らないまま、帰宅しようとする歩美の姿が見えた。

 大分暗かったけど、歩美の姿は絶対に見間違えることはなかった。

 見た瞬間震えたけど、躊躇ためらっちゃダメだって勇気を出して行ったよ。



『私も……あなたが好き』


 そう、言ってくれたんだ……。

 もう昨日のことになるね。

 ……あれはもう生涯忘れられないよ。

 歩美が確かにそう言ってくれた。


 潤んだ瞳であんなこと言われると、もうヤバかった。

 本当に可愛かった。

 こんな可愛い子の彼氏になれる男って幸せ者だよ。

 生涯誰にでも自慢できる。

 みんな羨む。

 それぐらい本当に可愛い女の子だった。

 幸せにしてやりたいって、本気でそう思った。


 ああ、そうだね……うん。その後のこともちゃんと話すよ。

 正直言うと、むしろ話したい方なんだ。自慢したいからさ。


 まず最初に手を触れたのがあの白い足だった。

 細くて長くて、触れれば自分の手がいかに汚いかがよくわかる足だった。

 感触もすごかったよ。スベスベじゃなくてサラサラしてたっていうか、何に例えればいいんだろうね?

 多分その辺の女子のものとは全然質が違うと思う。

 エロ小説とかだと、上手い表現があるのかもしれないけど、俺にはそんな言い方できないな。


 とにかく、体のひとつひとつがすごかった。

 あの細くて長い綺麗な指とか、ギュッとするとわかる意外に小さな体とか、胸がちょっと大きかったこととかさ。

 巨乳に憧れてたから嬉しかったなぁ。すごい柔らかくてさ、何回もぱふぱふしちゃったよ。


 その次は開いた両足の間に顔を突っ込んだ。AVとかだと当たり前のようにやってるけど、俺はそれ正直やりたいと思ったことがなかったんだよね。だって人間の股って絶対汚いじゃん。

 でもまあ、せっかくだしと思ってやってみたよ。

 結果的には意外に良かった。好きな人とだったから、不思議と嫌じゃなかった。舐めるのも全然大丈夫だったよ。


 俺のもくわえさせたかったけど、まあ仕方ないよね。残念だけどそこは省いた。


 大体の前置きは終わらせたから、いよいよ本番ってことになったんだけどさ、暗かったし童貞だったから場所わからなくてさ、色々と手こずったよ。


 もしかしてこのまま入れられないんじゃないかと思って、ちょっと焦ってたなぁ。

 でも時間かかったけど、ようやく入れることができた。

 入れた瞬間はホッとしたのと、すごい優越感があったな。

 誰もが美少女って認める女の子と一番最初に繋がったわけだからさ、快楽よりも遥かに満足感の方が大きかった。


 歩美は処女だったよ。暗かったけど、それはすぐにわかった。

 もちろん俺も童貞。

 処女と童貞の初めて同士だったけど、俺はエロ漫画とかで手順はちゃんと見てたし、一週間毎日妄想してたから、手こずったけど失敗はしなかったよ。


 ちゃんと最後までやり遂げたんだ。


 ……本物は想像以上だったなぁ。すごい燃えたよ。

 何回出しても止められなくてさ、ようやく落ち着いた頃には二人ともヘトヘトだった。あそこも先っちょがヒリヒリしてた。歩美は最初だけ痛かっただろうけど、後はどうだったんだろう。気持ちよければ良かったんだけど。集中しすぎて歩美の声、全然聴こえなかったから、わかんなかったなぁ。


 終わった後は……考え事をしてたよ。

 普段一人でやるときとは違った賢者モードになってた。


 そのときはやたらと荒い自分の息とか、心臓の音がやけにうるさくてさ。


 それで……目の前で横になっている歩美を見てると、歩美のこれからのことを考え始めてたんだ。


 これからのことっていっても、明日とか明後日のことじゃないんだ。一年二年先のことだよ。そのとき歩美はどうなっているんだろうかってね……。


 歩美が強い女の子だってのは、昔から知ってる。

 彼女はどんな困難にも立ち向かえる女の子だ。昔から彼女を見てたから、それはよくわかる。


 歩美はきっと、数年もしない内に俺のことなんて忘れて、俺じゃない誰かと恋をする。その誰かは、歩美のことを受け入れてくれる懐の大きいやつなんだと思う。

 そして歩美は俺ではないそいつと、一緒になるんだ……。


 そう考えていたらさ――。


 彼女を、誰にも渡したくないって思った……。

 これから俺達が離れ離れになることはわかってた。

 もう二度と会うこともできなくなる。そう思うと胸が苦しくなった。

 だから絶対に、他の男に渡したくなんてなかった。


 だから……。


 ……うん、だからさ。


 だから……ね。


 ……刑事さん。聞いてる?


「それが――」


 ん?


「それがあなたのクラスメイトであった中瀬歩美をナイフで脅し、暴行して殺した理由ですか?」


 ……。


 …………。


 ………………うん、そうだね。そう、なるね。


「好きだと言わせて、嬉しかったんですか?」


 うん。嬉しかったよ。

 だって、そうすることでしか願いは叶えられなかったんだからさ。

 親には悪いとは思ってる。俺のせいでいろんなことが台無しになっちゃったわけだし……。生涯二人には恨まれるだろうね。


 俺は未成年だから死刑はないとは思うけれど、十年くらい檻の中なのは間違いないね。


 でもそれだけで済むなら安いもんだよ。

 なんたって俺は、どんなやつにでも自慢できる経験を手に入れたんだからさ。

 少しも苦じゃないよ。

 自分の生涯をかけて願いを叶えられたんだ。本当に良かったって今でも思ってるよ。後悔は少しもない。


 動かなくなった歩美を見たそのときも、今と同じ気持ちだったよ。


 ああ、最後に動かなくなった歩美と別れのキスをしたんだけど、あれはやばかったな。

 初めてだったけど、びっくりするくらいおいしかった。

 いや、味はないとは思うんだけど、舌を吸い込みたくなるぐらい舐め心地が良かった。

 あれだけで何分ぐらいやってただろう? そんなに夢中になるとは思ってなかったから、かなり時間食っちゃったね。


 だから、あんたらに捕まったんだと思う。


 あれだけは……本当に失敗だったね。



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